インフィニット・ストラトス 遥かなる虹の輝き   作:雷狼輝刃

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第7話  クラス対抗戦

 クラス代表対抗戦当日、1年生の試合が行われるアリーナの観客席は満席で異様な熱気に包まれている。

 その一方でシュート達は万が一の事態に備えて秘かに会場の警護にあたっていた。 シュートはマドカと、シャルロットはセシリアと二人一組となり見回っている。

 

 試合の組み合わせは3組対4組、1組対2組となっている。

 そして今まさに3組対4組の試合が始まろうとしていた。 当初は訓練機同士の対決としてそこまで注目されていなかったが試合会場に現れた4組の代表である簪が、専用機を纏っていたことで状況は一変した。

 

  そう簪の専用機はクラス代表対抗戦に間に合ったのだ。 タバネがあれから頑張って調整を重ねて前日までに完成させたのだ。 そして昨日の内に簪に手渡されフィッティングと一次移行を完了させたのだ。

 そして今、アリーナには翠色の第4世代型IS[ 翠華月(みかづき) ]の姿があった。

 

 

 

 第1試合 3組対4組

 

 その試合内容はまさしく圧巻だった。 最初から展開していた二つの武器ショットガンとガトリングシールドのみで、詰め将棋の如く相手を追い詰めていき。僅か1分で試合を終わらせたのである。

 日本代表候補生の力をまざまざと見せつけた簪。 客席に座る生徒達はその実力に惜しみない拍手を贈った。

 

 

 その一方、簪の力に危機感を抱いていたのはピットでその試合を観戦していた鈴音だ。

 

 

 (・・・・底が見えない、恐らく実力の半分も見せていないわ。 それにあの機体なんなの? 第3世代機とは思えないわ・・・一夏との試合だけを念頭においてきたけど、そういう訳にはいかなくなったわね。 手の内を明かさずに戦う必要があるわ)

 

 

 鈴音は2日前に一夏と大喧嘩をした。 きっかけは一夏が鈴音が日本を離れる際にした約束を正しく覚えていない上に、その意味を全く理解していない事だった。

 その後、売り言葉に買い言葉で口喧嘩が始まり、そして一夏がその最中に鈴音が最も気にしているNGワードを・・・体の一部分を揶揄する言葉を発して鈴音を完全に怒らせたのである。

 先程までは一夏への怒りで全力全開で打ち負かしたやろうと思っていたが、簪の試合を見て冷静になり、手の内を明かさずに勝つことに意識をシフトした。

 

 ちなみに、簪の機体についてはまだ正確に公表されておらず、誰もが第3世代機だと思っている。 

 

 

 反対側のピットでは、一夏が箒と共に試合を見ることもなく、リラックスムードで談笑していた。 

 本来なら関係者以外立ち入り禁止なのだが、箒はお構い無しに入り込んでいる。

  一夏はクラス代表決定戦の2連敗の後、箒とトレーニングを重ね、白式の力に気づいた。 姉である千冬と同じ力に、クラス代表決定戦の時にはまだ目覚めなかった力を手に入れて、一夏は自分が千冬と同じように最強の存在になったと思っている。

  

 そして入場を告げるアナウンスが聞こえてきた。

 

 

 「勝ってこい一夏!」

 

 

 「あぁ任せろ箒!」

 

 

 一夏は白式を展開してアリーナに飛び出す。

 

 

 

 アリーナにはすでに鈴音がISを纏って一夏が来るのを待っていた。

 

 

 「鈴、今日俺が勝ったらこの間の事説明してもらって、謝ってもらうからな! 」

 

 

 一夏の台詞に鈴音は

 

 

 「悪いけど一夏、その件は後回しにしてちょうだい。前座のあんたにかまっている余裕がなくなったの。 」

 

 

 バッサリと切り捨てる。

 

 

 「ぜ、前座?! どういう意味だよ鈴! まるで俺がお前には勝つことが出来ないみたいな言い方だな!」

 

 

 前座扱いされた一夏は怒って鈴音に文句を言う。

 

 

 「まさか一夏、あんた私に勝つつもりだったの? よく考えなさいよ。 私は代表候補生なのよ、ISを纏って1ヶ月にもならないずぶの素人に負けるはずないじゃない。 代表候補生の立場はね、そんなに生易しいもんじゃないのよ! 」

 

 

 「俺はもう誰にも負けない! 代表候補生だろうが何だろうが勝つ。 なんたって俺には千冬姉と同じ最強の力があるんだ。 誰にも負けるはずがねえ! 」

 

 

 その台詞を聞いた瞬間だった、鈴音の中で急速に一夏への恋心が冷めていくのを感じた。

 千冬と同じ力を持ったというだけで最強になったと妄信する姿は、鈴音が恋した一夏の姿とは余りにもかけ離れていた。

 実力が伴わない中で専用機という強大な力の象徴を得てしまったことで一夏は歪んでしまった。

 

 

 

 『 ただいまより、1組代表 織斑一夏VS2組代表 凰鈴音の試合を開始します。 それでは試合開始! 』

 

 

 試合開始の合図と同時に一夏の持つ雪片弐型は青白い光に包まれた。

 

 

 「これが千冬姉から受け継いだ最強の力、零落白夜だ。」

 

 

 いきなり、単一仕様能力を披露し自慢する一夏。

それを観客席の入口近くで見ていたシュートとマドカ

 

 

 「おいおい、初っぱなからあんなのを使うなんて何考えているんだ? あれじゃあどう足掻いても勝てないな。」

 

 

 バッサリと一夏の敗けを断言するシュート。

 

 

 「ところで兄さん、零落白夜ってどういう仕組みなの? 単に高出力のビームで相手のシールドやエネルギー武器を無効に出来るとは思えないんだけど? 」

 

 

 「あれはビームブレードの部分を更にシールドエネルギーでコーティングした二層構造になっているんだ。 例えばISのシールドに触れた場合 コーティングしているシールドエネルギーが相互干渉をおこしてシールドを中和してビームブレードで斬る。 すると絶対防御が発動せずにダメージを与える・・・斬る場所が悪ければ相手に大怪我・・いや殺す可能性もある武器だ。 」

 

 

 「そんなヤバい能力を持った武器を素人に持たせて大丈夫なの? 」

 

 

 「恐らく織斑はその危険性やデメリットに気づいてないだろうな。」

 

 

 「デメリット?」

 

 

 「スクリーンに表示されている織斑のSEのゲージを見てみろ。 徐々に減っているだろう、さっきも言った通りシールドエネルギーでコーティングしていると、つまり発動しているだけでSEが減っていく。更に相互干渉を起こせばそれに見合った分のSEが減る。 使えば使うだけ自分のSEが減っていく諸刃の剣だ。」

 

 

 

  「いくぜ、とりゃぁぁぁぁぁぁーーー」

 

 

 「そんなナマクラ当たる訳ないわ。」

 

 

 シュートがマドカに説明していると、一夏が鈴音に向かって突進していき剣を振るう。 

 しかし、鈴音は余裕でそれをかわす。そして手にしていた2本の青竜刀でカウンターを叩き込む。

 

 

 「くっそぉぉぉぉぉぉーーー」

 

 

 カウンターでダメージを受けた一夏は鈴音に向かって剣を振るうが再びかわされてカウンターをくらう。

 

 

 「それにしても、成長してないわね織斑。 上段からの幹竹割り、それが外れたらがむしゃらに剣を振るう。 パターン化してるわね兄さん。」

 

 

 「織斑は零落白夜の力を過信するあまりに練習の間に無意識の内に一撃必殺の必勝パターンを作り上げてしまった。 初撃が外れてしまい、そのパターンが崩れ混乱するんだろう。」

 

 

 シュートの話を聞きマドカは

 

 

 「ねぇ兄さん、仮に織斑を鍛える事になったとしたらどう指導する?」

 

 

 「そうだな・・・・先ずはあの欠陥だらけの専用機を取り上げて訓練機に乗ってもらい1からISの扱い方を覚えてもらい、次に生活リズムを徹底的に変える。 ちなみにこれが今の織斑の生活リズムだ。」

 

 

 そう言ってシュートは携帯電話に送られていた一夏の生活リズムの報告書を見せる。

 その内容を見てマドカは驚く。

 

 

 「何これ? 朝は7時に起床して朝食を取り登校、放課後は篠ノ之とのIS訓練、アリーナの使用許諾が下りなかった日は帰寮してテレビ観賞もしくは漫画を読む、19時に夕食を取り歓談室でテレビ観賞して21時に自室に戻り宿題をして就寝・・・・・・」

 

 

 最後のほうになるとマドカは呆れはじめていた。 IS学園に在籍する半数以上の生徒は一夏とほぼ変わらない生活を送っているだろう。

 しかし代表候補生や専用機持ちに一般生徒の中でも高みを目指す者は違う。自己を高める為の努力が惜しまない。  限られた時間の中で自己鍛練を惜しまない。

 無論シュート達もやっている。 一夏とはトレーニングの密度が違うのだ。 その差は埋るどころか広がるばかりなのだ。

 

 

 そんな話をしている間に一夏のSEは3割を切っていた。 いったん距離を取り零落白夜の発動を止めて構え直す一夏。

 

 

 「くっそぉぉぉぉぉぉーーー、次で決めてやる! えっ?!  うわっ!!」

 

 

 鈴音は青竜刀を構え直した。 次の瞬間、鈴音の姿が一夏の視線から消え、一瞬で目の前に現れた。 瞬間加速・・・ISの操作技術の1つでスラスターから放出されたエネルギーを再度内部に取り込み圧縮し解放し、その際に圧縮されたエネルギーが元に戻る力を利用して加速する。 

 瞬間加速により威力の増した青竜刀の斬撃をまともにくらいよろめく一夏。

 鈴音の攻撃はそれにとどまらず瞬間加速の力を利用して一夏の頭上を飛び越えて背後に回る。 そして一夏の背中にキックを叩き込んだ瞬間にスラスターの出力を全開にしてアリーナの壁に向かっていく。

 

 

 「ぐふっ!?」

 

 

 「さぁ一夏、これでフィナーレよ!」

 

 

 「えっ!? うわぁぁぁぁぁぁぁーー」

 

 

  ドゴォォォォォォーーーーン

 

 

 一夏は鈴音に背中を蹴られた状態のままアリーナの壁に激突した。

 その時だった。

 

 

 

    ズガァァァァァァァーーーーン

 

 

 

 アリーナの天井を赤い光が突き破って地面につき刺さる。 

 そして天井に空いた穴から見たこともない3機のISが現れた。





 翠華月     第4世代型IS
外見:ランドグリーズ・レイブン


 元々はタバネが何れ注文が来る予定だった代表候補生若しくは国家代表用に作り上げていた第3.5世代ISウラガンを簪用に改造した機体。 ツインコアシステムは搭載されていないものの、並の機体を大幅に上回る性能を持っている。 簪の希望を取り入れてマルチロックオンシステムを採用し、1対多での戦闘を可能にしている。
 なお、機体名並びに武装名は簪によるもの。


武装
ショットガン[烈火] ×1:小粒散弾・大粒散弾・一粒弾の3種類の弾丸を搭載しており、瞬時に切り替えて撃つことが出来る。


収束荷電粒子砲[春雷] ×2:本来ならリニアレールカノンを装備していたが、 簪の希望により荷電粒子砲に変更された。 


マトリクス・ミサイル[山嵐] ×4:大型ウィングに装着されている多弾頭ミサイル。発射後に15発に別れる、マルチロックオンシステムと連動して60発のミサイル全てを個別指定着弾できる。 拡張領域内に4セット予備があり、使うと同時にリロードさるる。


高周波薙刀[夢現]×2:薙刀を得意とする簪の為にタバネが作り上げた格闘用の武器。 


ガトリング内臓シールド[豪雪]×1:左腕に装着されているガトリングガンが内蔵されたシールド。 ガトリングガンはシールドに内蔵するために小型化されたが威力・射程は高めにになっている。


リニアライフル[紅葉]×2:電磁石を利用したライフル。


ステルスブーメラン[陽炎]×2:特殊な素材で作られたブーメランで、レーダーやセンサーのみならず視覚にも認識しにくいブーメラン。  またAI補助により思念誘導の負担が少ないて済む。


脚部裏側内蔵型プラズマステーク[ライダーキック]×2: 特撮好きの簪たっての頼みで付けられた武装。


腕部内蔵型ビーム砲[スペシウム光線]×2 特撮好きの簪たっての頼みで付けられた武装。  



単一仕様能力:三千大千世界  マルチロックオンシステムと連動して翠華月の全ての武装を同時起動展開し、一斉に撃ち出す能力。 




 


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