他の作品の更新をお待ちの方々には申しありませんが、これはこれでよろしくお願いします。
他の二作品も徐々に執筆再開しておりますので近いうちに更新出きると思いますので何卒ご容赦ください。
追記:とるべりあさんの御指摘により誤字修正いたしました
ホテルの部屋の窓から射す日の光が、俺に朝という時間を知らせた。
東京でもトップ3に入る高級有名ホテルのロイヤルスイートルーム。
目を覚まし上半身を起こし壁時計を見れば、既に起床時刻をとっくに過ぎていた。
仕方ないことだ、昨夜はみんな揃って休みが取れるとあって遅くまで過ごしていたのだから。
自分の左右を見れば3人の女性が生まれたままの姿でシーツにくるまれて、安らかな寝息を立てていた。
トントントン
部屋の扉から控えめなノックが三回、誰がノックしたのかはすぐにわかった。
「 どうぞ、入っていいよクロエ。」
俺が言うと扉が開き、銀髪の少女・・・義妹のクロエ・アルカンシェルと実妹のマドカ・アルカンシェルが入ってきた。
「 おはようございますお兄様。 どうやら、お姉様達はまだおやすみのようですね。 」
「 おはよう兄さん。仕方ないよクロエ、久々の休みにみんなで会えたんだもん! 」
そう言ってクロエは手にしていた人数分のバスタオルをソファーに置き、マドカは数部の朝刊をテーブルに置く。
「 おはようクロエ、マドカ。3人は後10分ほどしたら起こして、それからみんなで朝食に行こう、もっともスコールとオータムは待ちきれずに行ったのだろう。」
「 はい、お二人とも待ちきれないと仰有って先程向かわれました。なんでも、今日こそは限定和朝食を食べるんだと言ってました。 」
クロエの答えに苦笑した。 仕方ない事だ、二人は大の日本食好きなのだが、前回来日した際にこのホテルの一階にある和食レストランの限定朝食を寝坊して食べ損ねていたのだ。
このホテルの和食レストランは某ガイドブックに星がついて載ったほどの有名店、それ故に食べ損ねた事を悔やんでいた二人は、この日を待ち望んでいたのだ。
話ながらバスルームに行きシャワーを浴びて着替える。 そろそろ三人を起こそうとした時だった。
ドンドンドンドン!!! バン!!!
ドアが激しくノックされて開かれる。そして凄まじい足音を立てて二人の女性が部屋に入ってきた。
噂をしていた二人、スコールとオータムが息をきらせながら入ってきた。
俺達の姿を確認したスコールは俺達に向かい
「 た、大変よ、すぐにあれを見て!! 」
スコールが指差す先にはテレビがあり、オータムが電源を入れ、ベッドに寝ている3人を揺さぶり起こす。
「 タバネ、シャル、刀奈、いつまでも寝てんじゃねえよ! 起きろ! 大変な事が起きたぜ!!」
オータムに乱暴に起こされて目を覚ます3人、タバネ・アルカンシェル、シャルロット・デュノア、更識刀奈は、寝ぼけ眼でテレビを見るとそこには女性キャスターが焦った様子で原稿を読み上げる姿が写し出された。
《 ・・・・繰り返しお伝えします。 国際IS委員会の発表によりますと先日、日本国内で世界初となりますISの男性適性者が確認されたとの事です。 男性の名前は織斑一夏さん、15才。東京都内の中学校に通う男性です。 しかもあの日本が世界に誇るブリュンヒルデの異名を持つ織斑千冬さんの弟だそうだす。 この事態を受けて国際IS委員会は同世代の男性を対象にISの適性検査を実施することを決定しました。 これにより、第2第3の男性適性者の発見が有ることが望まれております。 繰り返しお伝えします・・・・》
余りの事態に言葉を発することも忘れていた。
「 あっちゃー、よりによって愚兄君が公式上の世界初の男性適性者で見つかったか。 ちーちゃんの苦虫を潰した顔が目に浮かぶよ。」
タバネがベッドから半身を起こし呟く、そう公式上の1人目、だが実際には2人目。何故なら俺こそが最初の男性適性者なのだから。 タバネの言葉に続けて
「 確か、シュートとマドカと同時に産まれた兄さんでしたっけ? 」
シャルの疑問に刀奈が
「 そうよ、織斑一夏君。シュートとマドカのお兄さんで織斑家の長男よ。 もっとも戸籍上はシュートとマドカの名前は織斑家には無いけど・・・・ それにしても、何でISの適性がわかったのかしら?」
刀奈の疑問に手元のタブレットを操作しながらクロエが答える。すぐさま情報収集をしていたようだ。
「 どうやら彼が受験予定だった藍越学園の入試の試験会場とIS学園の入試の試験会場が同じ施設だったようです。 彼は施設内で迷子になった挙げ句にIS学園の試験会場に入り込み、会場内にあった試験用の打鉄に触れて起動させてしまったようです。」
クロエの答えに、全員言葉を失う。
「・・・・・あきれ果てて何も言えないな。」
俺の呟きにマドカも頷きながら
「 本当にあれが私達の兄なのかしら? 」
マドカの呟きに同意せざるを得ない。 もっとも、織斑千冬・一夏の二人とも俺とマドカの血を分けた姉弟だが産まれてこのかた、全く顔を合わせた事が無い。
何しろ俺達は姉弟と知っているが、向こうは俺達の存在すら知らない。 戸籍に無いのだから仕方ない。
ともかく、これからが大変だ。すぐさま対応にかかろうとした瞬間だった。
「 お兄様、ルヴェール国連最高議長から暗号通信による緊急指令が届きました。 今から開きます。」
そう言ってクロエは手元のタブレットを素早く操作して俺達に見せる。 そこには
[ ミッションプランA ー2を実行せよ。]
とだけ書かれていた。 俺達はそれだけでそれが何を意味するのか理解していた。
俺達には2つの顔が存在する。刀奈を除いた7人はフランス、いやヨーロッパ最大のISメーカーアルカンシェル社の経営者と社員。 刀奈は日本の更識財閥の令嬢でその傘下企業にはアルカンシェル社と業務提携を結ぶISの部品メーカー、更識重工がある。さらに刀奈はIS学園の生徒会長で日本代表を勤める。
だが、もう1つの顔は国連直属の特殊秘密部隊[ファントムタスク]のメンバーだ。
部隊の存在を知るのは国連の中でも極僅かで、俺達に指令を送る事が出来るのは国連最高議長ただ1人だけだ。
そこまで俺達の部隊が秘匿されるのは訳がある。 俺達ファントムタスクは対IS用の特殊部隊だからだ。
そして国連は現状の女尊男卑の風潮を良しとせず、それを推し進めている国際IS委員会を信頼していないからだ。
何故なら国際IS委員会の主要メンバーの大半は女性権利団体や女性至上主義団体に所属している。
もっとも表向きは公正な組織を謳っている上に、主要な会議や議事録、予算や経費の使い道等に国連からの細かいチェックが入る為に無茶苦茶な事は出来無い。
だが、万が一暴走した時の為に、ファントムタスクは存在する。
そう俺達は国際IS委員会の対抗手段として設立された部隊なのだ。
そして今回指示されたミッションプランA ー2とはISの男性適性者が発見された時の為のプランなのだ。
目的は男性適性者のガードと外的要因の排除
「 タバネ姉さん、織斑一夏はこのあとどうなると思う? 」
「 国際IS委員会もすぐには手を出さないでしょ。 恐らく予定通りにIS学園に入れさせて隔離。 それから何らかの理由をつけて研究所送りか暗殺という手段にでるんじゃないかな。 まあちーちゃんの目があるから派手な手段は取れないと思うよ。」
「・・・・となると故意に成績を落とさせて研究所送り、または病死に見せかけた暗殺にハニートラップが疑われるわね。」
スコールが起こりうる事を淡々と述べる。
「 やっぱり、身近でガードするしかねえか。 だが、刀奈1人じゃキツイな学年も違うし。となると・・・・」
オータムが呟き視線を俺とマドカとシャルに向ける。
「 同じ学年に入ってガードしないといけない訳で、それが可能なのは俺達3人か、しかも俺が現れる事で更なる男性適性者が発見される可能性を示唆し揺さぶりをかけるか・・・・仕方ないプランβで実行する。」
俺の決断に全員が頷く。 俺達ファントムタスクはいずれこのような事態が起こる事を予見し幾つもの対処方法を立てていた。
プランβ・・・・それは対象の側に近づきガードし、更に俺という存在を公表することで世界の目を更に集めて外的要因からのリスクを減らすというプランだ。
「 みんな悪いけど休日は返上だ。 すぐに行動に移るよ。 スコールは刀奈と一緒にIS学園に向かって理事長と打ち合わせを。 オータムとシャルは一足先にフランスに帰国、フランス政府と会社の重役達との打ち合わせを頼む。 マドカは各国にいるファントムタスクメンバーにプランβを指示し行動開始を連絡。 俺とタバネ姉さんは更識重工に行って俺とシャルとマドカの専用機の搬入手続きと整備の打ち合わせ。 以上、質問は? 」
全員無言だ。 俺が号令をかける。
「 ファントムタスク、作戦開始。 」
1週間後、フランスから世界に二人目の男性適性者が発見されたことが発表された。
side:千冬
「 はぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~ 」
職員室に響き渡る盛大なため息。 だが、他の教師達は見向きもしない、いや見ることができなかった。
何故なら理由を知っているからだ。 それに出来れば自分たちも盛大にため息をつきたい。男性適性者が見つかって2ヶ月、息のつく間の無い忙しさだった。
例年に無い忙しさにどの教員達も疲労の色を隠せないでいる。
入学式当日だというのに。
つまるところ、千冬にかまっている余裕すら無いのだ。
そんな千冬のいる机の上には自分が担当するクラスの3人の生徒のプロフィールの書かれた用紙が並べられている。
1人は今回の騒動の発端となった自分の弟、一夏の物。
だが千冬が気になっているのはあと2人の兄妹の方だった。 プロフィールに添えられているその写真の顔。
銀髪に碧眼、白い肌。日本人とは明らかに違う、しかし千冬は2人の顔から目を離せないでいた。
( しかし、何度見ても似ているな私と一夏に )
そう思うほどに兄のシュート・アルカンシェルは一夏に、妹のマドカ・アルカンシェルは自分に似ていた。
無論、千冬には一夏以外には弟も妹もいない。 戸籍にも記載されていない。
それでも、千冬には何か引っ掛かっていた。 他人の空似ではすまされない、何かが千冬に訴えていた。
或いは、突如として姿を消した両親がなんら関わっているかもという疑念。
どちらにせよ、千冬は2人の動向に注視することに決めていた。
お読みいただきありがとうございます。
色々突っ込みたい方もおられると思いますが、未熟者の書く話なので何卒ご容赦ください。