色々あったので投稿が遅くなりました。
第8話
二度ある事は三度ある。そんな諺が元々日本、と呼ばれていた所にはあったらしいな。と黒い髪に青い目を持つ少女、イオは考える。その上で、三度目の正直、と言う言葉を思い出して、どっちが正しいのかな?と少し考えてみて、すぐに結論は出る。前者だろう、と。何故なら、
「ここ…………何処?」
イオ自身、通算三度目の迷子となっているからである。
「はぁ………。何でまた迷子になってんだろ。ついこの前迷子になったばっかりなのに…………。」
そう言ってイオは溜め息をつく。そもそもこの迷子はイオにとって今までの2回と比べても更にショックを隠せない類いのものである。今までの2回の原因は分かりきっている。準備不足、簡単に言えば地図を持っていなかったのである。(それも論外ではあるが。)だからこそ、今回は念を入れて地図を入手し(当たり前の事である。)たにも関わらず、相変わらずの迷子。これにはもう、自分に呆れるしかない。
「はぁ………。私って、こんなに方向音痴だったかなぁ?」
イオはそんな事を言いながら、どうやってこの状況を打破しようか、と思考を巡らせる。一応野宿は出来ないことはない(師匠に叩き込まれた。)し、食料にも困ってはいない。いざとなったらそこらの食べられる木の実や獣を狩って、どうにでもなる。という事で、このまま真っ直ぐ進んでいき、出会った人に道を聞く、という方針で行くことにした。
「……………ん〜。誰かいないかな〜?」
そんな事を言いながら10分程歩いていると、遠くに煙を上げている、大きな………飛行船?の様なものと、それの手前に立っている一人の人影が見える。それを見てイオは、
「あれ………事故、かな?…………道は知らなそうだけど、放って置くのも嫌だし………うん。助けてあげよう。」
そう言って、人影の方へ向かって行った。…………その人影の特徴も確認せずに。
◆
「はぁ………。どうしよう。」
壊れて煙を上げている飛行船の前で、青いポンチョを着込んだ金髪碧眼の少女――――ノエル・ヴァーミリオンは途方に暮れたように溜め息をついていた。
とある任務を受けて飛行船に乗ったのは良いが、途中で飛行船が故障し、墜落。幸い、自分以外は誰も乗っておらず、衝撃吸収と保護の術式のお陰で目立った怪我は無いが、飛行船が大破してしまった為に、連絡もとれない上に、現在位置さえも分からない。正直に言って、お手上げだった。
(私………こんな所で死んじゃうのかな?マコト………ツバキ………嫌。嫌だよぉ。)
「えーと、大丈夫ですか?」
ノエルが不安でいっぱいになり、涙を流しそうになった時、後ろから声が響く。そのただ純粋にこちらを心配するどこか自分に似た声に、ノエルは後ろを振り向く。そこには、黒いコートを着て、コートに付いたフードを顔が隠れるまで被った、(声からして恐らく)少女がいた。
◆
「………えっと、あなたは?」
「………あ!えっと、初めまして。イオって言います。今は旅をしてます。」
目の前の少女が発した声に、イオは正気に戻る。そのまま、話しかけた時の口調を保って返すが、頭の隅では思考が動き続ける。
(ノエル・ヴァーミリオンさん…………第12素体、こんな所で会う気は無かったんだけど………顔隠してて良かった。)
「ご用件は何でしょうか?」
「いや、私からは特に………何か困ってるみたいだったので力になれたらな、何て思ったんですけど………。」
「………良いんですか?」
「勿論。困ってる人を見捨てる何て私が嫌ですから。その代わり………」
「その代わり?」
ノエルはイオの言葉を聞き返す。何を要求してくるか分からないからである。その言葉に対してイオは、
「いや………まあ何ていうか………地図はあるんだけど道に迷っちゃって………あなたの目的地までで良いので案内して貰えませんか?」
と言った。その言葉は、ノエルにとってあまりにも予想外のもので、
「………ふふ……ふふふふ」
「あ!笑うことは無いじゃないですか!結構恥ずかしかったんですよ!これ言うの!」
つい笑ってしまい、それを見たイオが怒った様な口調になる。今はフードで顔が見えないが、顔が見えたなら、真っ赤になっていたことだろう。
「す、すみません。………でも、旅をしてる人なのに迷う事もあるんですね。」
その言葉に、イオは拗ねた様に、
「えぇ、えぇ。分かってました。分かってましたよ。どうせ私は方向音痴ですよー。」
と返す。少し不満を言いたかっただけなのか、その後は元の口調に戻って、
「ま、良いや。そんな事より、はい。これが地図なんですけど、目的地まで行けますか?」
と言って地図を差し出す。ノエルはそれを手に取り、暫く見た後、
「あ、はい。歩いて3日位は掛かりますが、こっちに行けば辿り着くと思います。」
と言った。イオはそれを聞いて、地図を見ただけで現在位置を把握するノエルを少しだけ羨ましいと思いながら、
「そうですか。なら、そうですね…………バイクでも使っちゃいましょう。」
そう言いながら背中に黒い剣を三本出現させ、それらをぶつける様にして放つ。ぶつかった三本の剣は、弾かれ合うのではなく、一つに統合されていき、形を変えて行く。少しすると、剣たちはサイドカーの付いた黒いバイクヘと形を変えた。
「え?………えぇぇぇぇぇぇぇ!な、何をしたんですか!?」
剣がバイクに形を変えている間、目を丸くして固まっていたノエルがようやくフリーズから解放されたのか驚きながら問い掛けてくる。それにイオは苦笑しながら、
「私が持ってる武器の「ある程度の大きさまでなら自由に形を変えられる。」っていう特性を利用してバイクに形を変えただけですよ。安心してください。ちゃんと動きますから。」
「………免許って持ってるんですか?」
「失礼な。ちゃんと持ってますよ。教習所に行かないで、試験センターに行って、学科と実技で文句がつけられない位の成績を叩き出しましたよ。…………試験官に睨まれましたけど。」
イオは懐かしい思い出を語る様に言う。………実際に剣の形を自由に変えられるようになってから、ラグナと獣兵衛が止めるのも聞かずに、一発で免許を取ってきた時は驚かれたものである。
「ま、そう言う事ですから。サイドカーの方に乗って下さい。」
「あ、はい。分かりました。…………えっと、」
「イオです。あ、それと敬語じゃなくても良いですよ。私も改まった口調で話されるのはあんまり慣れて無いですから。」
そう言いながらイオはバイクに乗る。それを見てノエルもサイドカーに乗った。
「あ、はい。私も敬語じゃなくて良いです。あ、名前はノエルって言います。」
「うん、そっか。じゃあ行くよ。ノエルちゃん。最初はこっちで良かったんだよね?」
「あ、はい!そっちです。」
ノエルのその返事と共に、ドン!という音を上げて、バイクは走り出した。