BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第3話投稿。………ようやく3000文字を越えた………。



テルミさんの独自設定。観測されていなくても数分程度なら、テルミとして戦える、と言うことで。


第3話

第3話

 

 

 

銀のナイフが走り、黒い剣ががそれを弾く。そのままの勢いで黒い剣はナイフの持ち主へと切りかかるがナイフの持ち主である男は人を小馬鹿にした様に「おっと、危ない。」等と言いながら避けて、後ろへと後退する。後退した男は笑みを浮かべながら喋り出す。

 

 

 

「いやはや、予想以上に厄介ですねぇ。攻撃の方は素人同然だというのに、防御がなかなかに上手いなんて。…………ほんと面倒くさいので、さっさとあなたが何者か教えて貰えるとありがたいのですが。」

 

 

 

「残念。見るからに怪しそうな人に自分の事を教える程、私お人好しじゃないんだよね〜。」

 

 

 

まぁ、それじゃなくてもテルミって人の知り合いみたいだから教える気は無いんだけど。イオは心の中でそう付け足すが、それが目の前の男に聞こえる筈もなく、男は本当に面倒くさそうな顔をする。

 

 

 

「はぁ………。ま、良いんですけど。どうせあなたを倒して色々と聞くので。」

 

 

 

そう言いながら男は、それでも攻めて来ない。イオの出方を窺う様にその蛇の様な金色の目をイオの方へと向けている。

 

 

 

(…………成程ね。私の方から攻撃させよう、って事かな?)

 

 

 

さっきあの男は「イオの攻撃は素人同然」だと言った。それはつまり、攻撃であればいくらでも避ける、又は弾く事が出来る、ということである。そしてその事はイオ自身が誰よりも理解している。だからこそ、初めからイオは防御中心の戦闘を行っていたのである。

 

 

 

だが、イオは男の所に走り込んで剣を降り下ろす。

 

 

 

「いや〜、ほんと助かりました。あなたがこんな分かりやすい行動に乗ってくれるほどの素人で。」

 

 

 

男はそう言ってナイフを振るう。男のナイフの方が振られるスピードが早く、このままではイオの剣が男に当たる前に、ナイフがイオを切り裂く事になるだろう。…………イオが2本しか剣を持っていなかったなら、の話だが。

 

 

 

ギィン!という音が鳴り響き、男のナイフが黒い剣に弾かれる。驚きに細い目を見開いた男は、降り下ろされる剣を完全に避ける事が出来ずに、腕がスーツと共に切り裂かれた。

 

 

 

「………ほんと、あなたの相手は面倒くさい。背中のそれはお飾りかと思っていたんですが。………そんなことも出来たんですねぇ。それに、術式で普通の剣程度なら衝撃も通さないこのスーツを簡単に切るなんて…………厄介ですねぇ。」

 

 

 

「出来なきゃこれ、出して無いよ。そもそも飾りだけでこんなの出すなんて、ただ痛いだけでしょ?スーツの方は…………何かその術式の無いところにたまたま入ったんじゃないかな?」

 

 

 

勿論嘘で、本当はスーツに掛かっていた術式を無効化しただけだが、本当の事は言わない。イオは剣を構えながら男に向かって話す。

 

 

 

「そういう訳だからさ、私の事を聞くのは諦めて帰ってくれないかな?多分あなたじゃこれを抜けないでしょ?」

 

 

 

「そうですね。確かに私ではもうあなたに攻撃を当てられない。厄介厄介すぎますからね、それ。なので、…………テルミさん。お願いしますよ。」

 

 

 

そう男が口にした瞬間、男の雰囲気ががらりと変わる。今までの落ち着いた中にどこか怪しさをもったそれではなく、もっとずっと荒々しい、狂気を纏った様な、そんな雰囲気に。

 

 

 

「クク……ヒャーハッハッハッハー!!良いぜ、やってやろうじゃねえか!丁度「試作品」の実験も必要だったからな。ほら、行くぞクソガキ!」

 

 

 

そう言って男――――ユウキ=テルミはイオの方を向く。そして、ある言葉を紡ぐ。

 

 

 

「第666拘束機関解放!次元干渉虚数方陣展開!!コードS.O.L!『碧の魔導書(ブレイブルー)』、起動!!」

 

 

男が言い終わった瞬間、テルミの周りを緑色の鎖の様な何かが現れ、旋回を始める。

 

 

 

「あなた………誰?」

 

 

 

「ああ?さっきあいつが言ってたじゃねえか。テルミだよ、テルミ。それともてめぇはんな事も分からねえ馬鹿なのか?」

 

 

 

「………少し、いや結構まずいかな…………。」

 

 

 

何て私は馬鹿なんだろう、とイオは頭を抱えたくなる。これは敵を倒すのが目的のものではなく、敵から逃げ切れれば目的は達成されるものだった筈。つまり、さっき逃げておけば良かったのだ。だが、今の目の前の男からは、とてもじゃないが倒す所か逃げられる気さえしなかった。

 

 

 

「ほら、行くぜ。クソガキ!」

 

 

 

その言葉と共にテルミはほぼ一瞬でイオの元に移動し、ナイフを振るう。イオの反応は完全に遅れるが、背中に展開された剣のうち2本がイオを守る。

 

 

 

「く…………あ………!!」

 

 

 

イオは後ろへと弾き飛ばされる。空中で体制を立て直し、着地する。

 

 

 

(まずい。今の私じゃあ2本あっても受けきれない。このままじゃそのうち………何とか隙を見て逃げないと。)

 

 

 

「成程成程。その剣一本じゃ受け止めんのに限界があんのか。いやー、これは良い事知ったわ。んじゃ、これはどんだけなのかなーっと。『ウロボロス』!!」

 

 

 

テルミの手から蛇の頭の様な先端が付いた鎖が飛び出してくる。その鎖をまたしても背中の剣うち2本が、今度は受けきる。

 

 

 

「な〜るほど。これを2本か。ならもう一度、『ウロボロス』!!」

 

 

 

もう一本現れた蛇の頭の様な先端が付いた鎖――――ウロボロスを更に2本で抑える。

 

 

 

「おら!まだまだだ!!行くぜクソガキ!」

 

 

 

テルミはウロボロスを一気に収縮させ、手に持ったナイフで切りかかる。イオは片方を背中の剣の残った2本で、もう片方を手に持った剣をクロスさせて受け止めるが、そこまでが限界だった。

 

 

 

「隙有りだ!!おら!」

 

 

 

横から迫る蹴りをイオは避けられず、その細い脚にに似合わない、骨が折れそうな程の蹴りを受け、イオは弾き飛ばされる。

 

 

 

「……ぐっ……か………は……!」

 

 

 

地面に叩きつけられ、その痛みと衝撃で一瞬意識が飛ぶ。立ち上がろうにも、呼吸が出来ず、体に力が入らない。

 

 

 

(後ろに飛んで……衝撃を緩和したのに……動け。動け!動け!!)

 

 

 

何とか動こうとするイオにテルミは近付きナイフを振り上げる。

 

 

 

「どうした?終わりか、クソガキ?つまんねぇな、………おらよ!!」

 

 

 

そのままナイフは降り下ろされ、そして、一本の刀に弾かれた。

 

 

 

「なっ!」

 

 

 

「だ……れ………?」

 

 

 

そこに立っていたのは………猫。イオよりも少し小さく、茶と白のツートーンの毛並みに覆われており、直立二足歩行で、瞳は赤く、背へ伸びる尾は先が二股に別れている。

 

 

 

「安心しろ、お嬢さん。俺はあんたの味方だ。」

 

 

 

そう言った彼の姿に、イオは理由の無い安心感と、懐かしさを覚える。恐らく、懐かしさの方は私じゃなく、サヤのものだ、と思ったイオは、成り行きに任せる事にする。下手に動くのは失敗に繋がるし、少しづつ動ける様になってきたとはいえ、まだ立つことは出来ないからだ。

 

 

 

「猫又、てめぇ人の邪魔してんじゃねぇよ!!殺されてえのか!!」

 

 

 

「大口を叩く割には随分焦ってるな、テルミ。貴様、今外に出れるのはたった数分だけなんだろう?それで俺を殺せるのか?」

 

 

 

「チッ、相も変わらずムカつく猫だな。おい。………仕方ねぇ。もうそろそろ時間みたいなのであなたに殺される前に帰るとしますかね。テルミさんはともかく、戦闘が専門外な私では、10秒ももたずに殺されてしまいますからね。」

 

 

 

そう言って、テルミは去って行った。

 

 

 

 

 

 

「行ったか………。」

 

 

 

目の前の猫――――獣兵衛はそう呟き、イオの方に振り返る。

 

 

 

「大丈夫か?お嬢さん。」

 

 

 

「はい。さっきはありがとうございます。私、イオって言います。あなたは?」

 

 

 

「獣兵衛だ。なに、礼などいらない。俺はお節介が好きでな、襲われてるお嬢さんを放って置けなかっただけだからな。」

 

 

 

そう言って獣兵衛は笑う。イオはそれを見て、少し何かを考える様な素振りを見せた後、思い切ったように切り出す。

 

 

 

「獣兵衛さん。一つだけお願いがあります。」

 

 

 

「ん?何だ?」

 

 

 

「私に戦い方を教えてください!」

 

 

 

その言葉に獣兵衛は固まり、何かを考える様な素振りをしてから返す。

 

 

 

「………何故俺なんだ?俺以外でも良いだろう?」

 

 

 

「「彼女」が獣兵衛さんなら信用出来るって言ってるのと、私も獣兵衛さんを見て、同じ事を思ったからです。」

 

 

 

「彼女?」

 

 

 

その言葉に一瞬イオはその名前を口にするのを戸惑うが、意を決して口にする。

 

 

 

「サヤ、です。」

 

 

 

その名前を口にした途端、獣兵衛の雰囲気が鋭いものになる。

 

 

 

「お嬢さん、イオと言ったか。何者だ?」

 

 

 

その言葉に私は被っていたフードを取る。自分の肩を越える程の黒髪が視界の端に映る。目の前の獣兵衛の顔色が変わるのが分かるが、私は構わず、「本当の名前」で自己紹介をする。

 

 

 

「初めまして。「次元境界接触用素体」No.9 ――――Ι(イオタ)です。サヤは私の、言わばオリジナルです。」

 

 

 

「………成程、イオ、おまえがサヤを知っている理由と、俺を信用する理由は分かった。だが、何故戦い方を?」

 

 

 

「まずは身を守れるだけの力が欲しいんです。さっきのテルミさん、彼にはこれからも狙われるかもしれないので。後は、………誰かの「偽者」で居るのが嫌なんです。………もしこの世界を変えられれば、私は偽者なんかじゃないって、言えるような、気がしたから………。」

 

 

 

イオの言葉は、最初こそはっきりとしていたが、だんだんと小さくなっていき、最後には消え入りそうな声になる。獣兵衛はそれを聞いて少し考え、そして頷く。

 

 

 

「分かった。………俺の修行は厳しいぞ?途中で泣くなよ。」

 

 

 

「………もちろんです!獣兵衛さん。」

 

 

 

「これからは師匠と呼ぶんだ。」

 

 

 

「はい!師匠!」

 

 

 

「………あの馬鹿弟子にも見習わせたいものだ。」

 

 

 

そう獣兵衛は呟き、目的地へと足を向ける。頭の中でイオの訓練のメニューを考えながら。


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