BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第33話投稿



………文章が出てこなくなってきた…………。


第33話

第33話

 

 

 

「ここ…………どこ?」

 

 

 

軽い酔いの様な感覚と共に周囲に現れた景色に、セリカは戸惑ったように声をあげる。そこは、かつて田畑があったような痕跡が窺える無人の平地だった。

 

 

 

「さぁ、見当もつかないわ。とにかく適当に転移したから………。ただ、これだけ人数がいるから、誰かのイメージに引っ張られた可能性はあるけど。」

 

 

 

セリカの呟きに、ナインは気だるそうに返す。大人数を急ぎ、それもイシャナの結界を越えて転移したのだ。消耗はとても大きい。

 

 

 

「………ここ、何処かで見たような………?」

 

 

 

イオは辺りの光景をぐるりと見回しながらそう呟く。ここに来たことはない。それは自信を持って言うことが出来るのだが、いつか、具体的には窯から落ちる前に、ここの風景を見たことがある気がするのだ。

 

 

 

「魔素が濃いな。」

 

 

 

「そうですねぇ。一応、防護の魔法を。」

 

 

 

ヴァルケンハインの声に答えてトリニティはイオを除いた全員に防護魔法を施した。

 

 

 

「あ、あの、はい、質問です!彼女達は、お友達?」

 

 

 

セリカが勢いよく手を挙げて獣兵衛に質問をする。彼女達、というのは、獣兵衛の左右で笑みを浮かべている二人の人影の事だ。二人とも、顔が頭巾のの影に埋もれるように黒く、その中に目と口だけが浮かんでいる。

 

 

 

「おっと、紹介を忘れていたな。彼女達は…………。」

 

 

 

「アタイはスズカカさ。んで、こっちはトトカカ。この小さいドクロ飾りがチャームポイントニャス。」

 

 

 

セリカの質問に、思い出したように答えようとした獣兵衛の言葉を、二人のうちの背の大きい方――――スズカカが引き継ぐ。そのまま、小さい方――――トトカカを抱き上げると、セリカ達に向けてお辞儀させた。

 

 

 

「………よろしくおにゃがいします。」

 

 

 

「うわぁ、かぁわいい〜!」

 

 

 

しゃべって動くぬいぐるみのようなトトカカに心を奪われるナインとセリカ。その横で、イオはトトカカの頭に付いたドクロを見ていた。

 

 

 

「………この子、もしかして、タオちゃんの村の長老?………あ、そっか。じゃあ、此処ってあの時の………。」

 

 

 

何か納得したように頷くイオ。それを見ていた獣兵衛は首を傾げ、イオに問いかけようと口を開く。しかし、

 

 

 

「獣兵衛。この人達、獣人じゃないわよね?なんなの?」

 

 

 

そう問いかけてくるナインに、出かけた言葉を止める。そのまま、ナインの方を向き、苦く表情を歪めて、

 

 

 

「ああ、なんというか、簡単に説明すれば、俺の『子供』だな。」

 

 

 

そう答えた。ナインはその言葉に一瞬だけ納得するような表情を見せるが、次の瞬間にはその表情は凍りつき、そして燃え上がる。

 

 

 

「………うん、セリカちゃん。私の後ろにいて、動かないでね?大丈夫だとは思うけど、何処まで被害が出るか分からないから。」

 

 

 

「え?………う、うん。」

 

 

 

イオはセリカの前に立つと、そう言いながらセリカよりも少し大きい黒い盾を構える。セリカは状況を理解出来ないまま、それでもイオの言葉にしっかりと頷いて、イオの後ろに隠れた。そして、それと同時に、

 

 

 

「子供って、何処の誰との子供よ―――――!」

 

 

 

そう怒号が放たれ、辺り一帯が爆発に巻き込まれた。

 

 

 

 

 

 

「………あ、やっぱりカカ族の村はあんまり変わらないんだね。それにしても、獣兵衛さんの遺伝子から生まれたのがカカ族なんだ。知らなかったな。」

 

 

 

ナインが怒りに任せて魔法を放った後、事情を説明したスズカカ達に案内されて、イオ達はカカ族の村に訪れていた。そのカカ族の村を一人で歩きながら、イオはそんなことを呟いてみる。確かに、イオが元居た世界でも、師匠はカカ族から「獣兵衛様」と呼ばれていた。あの時は六英雄だから、と思っていたが、そうではなかったらしい。

 

 

 

「セリカちゃん達は今頃温泉に入ってる頃だろうね。楽しんでるといいけど。」

 

 

 

イオはそう言いながらセリカ達と別れた方向を向く。セリカとナイン、トリニティは村に到着し、スズカカから温泉がある、と聞くなりすぐに温泉に入る、と言う話になり、そちらへと向かって行った。イオも誘われたのだが、何故か嫌な予感がしたため、それを断っていた。

 

 

 

「………あれ?戻って来ちゃった。おかしいな。戻って来る気は無かったのに。」

 

 

 

周りがつい先程見たことのある景色になっている事に村の入り口まで来てようやく気がついたイオは、首を傾げてそう呟いた。どうやら、何処かで可笑しな方向に曲がったらしいが、イオ自身は全く気付かなかったようだ。

 

 

 

「はぁ………あ!イオちゃん。どうしたの?もしかして、ずっと此処に居たの?」

 

 

 

「違うよ。さっきまで村を回って見てたんだ。何処かで曲がる場所、間違っちゃったみたいで、たった今此処に戻ってきたんだけどね。………それよりセリカちゃん。疲れ、少しは取れた?何か、もっと疲れました、みたいな顔をしてるけど。」

 

 

 

イオの姿を発見し、問いかけてくるセリカにイオは答える。そのまま、セリカの顔を見て疲れているような雰囲気を感じ取ったイオは、それをセリカに聞いてみる。セリカは、何かを思い出すように遠くに視線をさ迷わせると、

 

 

 

「………これからはイオちゃんの「嫌な予感」を信じる事にするよ。私達の不注意が悪かったんだけど、トリニティさんの眼鏡、汚しちゃって………。」

 

 

 

ぼんやりと、そんなことを言った。あまり思い出したくないであろう事は、セリカの疲れきった表情と、微かに光が消えている目が表していた。

 

 

 

「あははは………うん、あれはキツいよね。セリカちゃん、只でさえ病み上がりだし。………あれ?ナインさん達は?」

 

 

 

「あ、そうそう。私、イオちゃんを呼びに来たんだ。お姉ちゃんが、イオちゃんが迷ってるかもしれないからって。」

 

 

 

「あ、うん。………よっぽど疲れてたんだね。ナインさん。」

 

 

 

イオが思い出した様に聞いた問いかけの答えに、イオは思いがけず呟きを漏らす。セリカはそれを聞き、むっと不満そうにイオを見る。

 

 

 

「………イオちゃん。それ、どういうことかな?」

 

 

 

「え?言葉通りだよ?私とセリカちゃん、二人だけで馴染みの無い所に来たら目的地まで辿り着けない筈だし、ナインさんならそれはよく知ってる筈だし、それに気付かなかった、っていうことはナインさん、凄く疲れてるんだろうな、って。」

 

 

 

セリカの問いかけにイオは当たり前だと言わんばかりの表情でそう返す。セリカはそれに、心外だ、というような表情をして、人差し指で一ヵ所を指差した。

 

 

 

「大丈夫。心配しすぎだよ。イオちゃんは。私だってさっき歩いて来たばっかりの道くらい覚えてるよ。」

 

 

 

「………うん。今セリカちゃんが指差したのが、さっきセリカちゃんの来た道と逆じゃなきゃもう少し信用できたんだけどね?」

 

 

 

自信満々にそう言いきったセリカにイオはそう返す。セリカが指差した方向は、カカ族の村の入り口の方向だ。つまり、今セリカを止めておかないと、セリカはそのまま、カカ族の村を出ていってしまうことになるだろう。

 

 

 

「セリカちゃん、ナインさん達が気付いてくれるか、知り合いの人が通るまで、此処から動かないようにしよう?きっとナインさんとトリニティさんが気付いて来てくれるから。下手に動くと私達じゃ迷っちゃうから。」

 

 

 

「大丈夫だって。こっちでしょ?行こ、イオちゃん。」

 

 

 

「いや、きっとそっちでも無いと思うんだけど………」

 

 

 

イオの提案をあっさりとはね除けたセリカは、イオを半ば強引に引き摺りながら恐らく見当違いであろう方向へと進んでいく。イオはそれを指摘しようと声をあげるが、セリカは既に殆ど話を聞いていない。

 

 

 

(………ナインさん。トリニティさん。頑張って私達を探してください。)

 

 

 

イオは内心諦めたようにそう呟くと、セリカにされるがままに引き摺られていく。その後、案の定セリカとイオは道に迷い、ナイン達が二人を見つけた頃には、太陽はすっかり沈んでいた。


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