BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第23話投稿。



中々話が進まない………。


第23話

第23話

 

 

 

「イオ………!どういう事かしら?私が今、そこのゴミクズを殺して、後悔する?あり得ないわ。」

 

 

 

ナインは睨み殺さんばかりの勢いでイオを睨む。しかし、イオはそんな殺気に少しも動じる事はなく、逆にナインに向けて笑い返す。

 

 

「後悔しない?本当にそうですか?ナインさんが今ラグナを殺したとして、もし、それが勘違いだったら、そんなつまらない事でセリカちゃんと仲が悪くなっちゃったら?それでも、ナインさんは本当に後悔しないって、心から言えるんですか?」

 

 

 

その言葉に、ナインはぐっと言葉を詰まらせた。どうやら、一度止められた事で、少し頭が冷えたらしい。イオは、そんなナインに、笑顔のまま言葉を繋げた。

 

 

 

「ね?そうは言えませんよね。なら、平和的に話し合いをしませんか?それなら、ナインさんも、セリカちゃんも。誰も後悔しないと思うんです。もし、話し合いが終わって、それでもまだラグナがセリカちゃんに危害を加える、って思ったなら、…………まぁ、その時はその時ですよ。」

 

 

 

「………おーい、それじゃあ俺が殺されそうになってる現実に変わりねぇだろうが。」

 

 

 

イオのあんまりと言えばあんまりな投げやり過ぎる最後の言葉に、ラグナは思わず突っ込みを入れる。その言葉に、イオはラグナの方を向いて笑う。

 

 

 

「あははは、それはセリカちゃんの説得の腕の見せ所だよ。大丈夫。本当に殺されそうになったら、その時はその時だよ。安心して、笑って見送ってあげるから。」

 

 

 

「んな言葉で安心しろって方が無理な話だろうが!」

 

 

 

にこにこと全く悪意の無い顔で笑いながらとんでもないような事を言い出すイオに、ラグナは更に突っ込みを入れる。その言葉に惚けた様な素振りで首を傾げたイオに、ラグナはいつか一撃頭を殴る、と決意を新たにした。

 

 

 

セリカはそんな会話をするラグナとイオから離れると、ナインに向かって静かに歩いて行く。そのまま、ナインの横まで行くと、

 

 

 

「お姉ちゃん。ちょっとこっちに来て。」

 

 

 

そう静かに言う。それに異論が無かったのか、その雰囲気に気圧されたのか、ナインは何も言わずに素直に付いていく。そして少し離れた所で二人は足を止め、セリカによる、ナインの説得が始まった。

 

 

 

 

 

 

「はぁ………はぁ……。ようやく、追い付きました〜。………何て言うか、頑張ってますね〜。二人とも。」

 

 

 

トリニティは、息を整えながらイオとラグナに近付いてそう言った。因みに、「二人とも」とはイオとラグナの事ではなく、セリカとナインの事だ。二人は、イオ達と距離をとる必要が無かったのではないか、と思ってしまう程に大きな声で言い争いをしていた。

 

 

 

「お疲れ様です。トリニティさん。すみません。置いてきちゃって。」

 

 

 

「良いんです〜。私から言った事なので〜。………それで〜、あなたがラグナさん、でいいんですか〜?」

 

 

 

「ん?ああ、そうだけど………何で名前知ってんだ?」

 

 

 

トリニティの言葉を聞いて、ラグナは疑問に思った事を口にする。イオはラグナの名前を口にしていないし、ナインもラグナの名前は知らないようだった。なら何故、トリニティは自分の名前を口に出来たのか。そう思っての質問にトリニティは笑いながら、

 

 

 

「さっきから〜、セリカさんがあなたの名前を大声で言ってますから。」

 

 

 

と言った。確かに、セリカは先程から「ラグナは悪い人じゃない!」等、ラグナ、という人名を連発している。そして今いる五人の中で、トリニティが名前を知らなかったのはラグナだけになる。

 

 

 

「ああ、成程「あんな害虫、駆除した方があんたの為よ!」………ってか人の事「害虫」はねぇだろ………。」

 

 

 

ラグナはトリニティの言葉に納得し、頷きかけた所でナインが大声で言った「害虫」が誰だかを察し、力なく突っ込みを入れる。トリニティは、それだけでラグナとナインにどういうやり取りがあったかを理解し、苦笑を浮かべる。

 

 

 

「………すみませんねぇ。ナインが色々と迷惑を掛けちゃった見たいで〜。あの人、妹さんの事となると、すっかり他の事が見えなくなっちゃうんです〜。」

 

 

 

「………まぁ、それだけ心配したって事なんだろ?……過保護過ぎるのもどうかと思うけどな。」

 

 

 

「まぁ、実質まだラグナの命の危機は去ってないんだけどね。」

 

 

 

「………それはお前のせいだろうが!」

 

 

 

ラグナはトリニティとの話の最中に口を挟んできたイオの、かなり他人事の様な口調にラグナは突っ込む。イオは、それに首を傾げると、

 

 

 

「へー、そんなこと言っちゃうんだ。ラグナ、私が何もしなかったら殺されてたんじゃないかな?私、どっちかって言えば命の恩人、位のポジションじゃない?」

 

 

 

と言った。ラグナはそれに言い返せずにぐっと黙り込む。イオの言っている事は真実なのだ。もしもあのタイミングでイオが現れなかったら、ラグナは殺されていたはずだ。いや、それ以前に、黒き獣の残滓に襲われた時に、イオが大量の残滓を相手にしなかったら殺されてただろう。だからこそ、イオが命の恩人である事は紛れもない事実なのだ。そこまで考えたラグナにイオは笑いかける。

 

 

 

「あははは。冗談冗談。私、命の恩人って柄じゃないしね。もしナインさんがラグナを殺そうとしても、何とか思い直す様に頑張って見るよ。………多分、セリカちゃんの必死さを見る限り、そんなの要らないと思うけど。」

 

 

 

「ふふっ、イオさんもラグナさんも、仲が良いんですね〜。」

 

 

 

ラグナとイオのやり取りを聞いていたトリニティは、笑いながらそう言った。それを聞いたイオとラグナは同時に顔をあげる。

 

 

 

「あははは、やっぱりそう思います?」

 

 

 

「んな訳ねぇだろ、イオ、お前も同意してんじゃねぇ!」

 

 

 

トリニティの言葉をあっさりと肯定するイオとすぐに否定するラグナ。しかし、ラグナの言葉にも、険悪そうな雰囲気はなく、それが余計に、二人の仲が悪くない、ということを分からせてしまう。

 

 

 

「ふふっ、なら〜、そういう事にしておきます〜。それよりも〜、セリカさん達、話が変わってますよ〜。」

 

 

 

トリニティの言葉にイオとラグナは意識をセリカ達の方へと向ける。すると、確かに、セリカ達の方からは、

 

 

 

「どうしてお姉ちゃんは父さんを探すのに反対するの!お父さんが心配じゃないの!」

 

 

 

「あの化け物が現れた日本で生きてる方が希少ケースなのよ。普通は死んでる、と思うのが普通だわ。」

 

 

 

等と、ラグナは全く関係の無い、セリカ達の父親の話が聞こえてくる。どうやら、ラグナの話は決着がついたらしい。その上で、ナインがラグナを殺しに来ない、ということは、

 

 

 

「良かったね、ラグナ。助かったよ?」

 

 

 

「………そう、みたいだな。」

 

 

 

イオの言った言葉に、ラグナは同意する。そしてそのまま、イオ達はセリカ達の元へと行く。

 

 

 

「生きてる人もいたよ!せめて、元気なのか、もう会えないかだけでも………。」

 

 

 

「確かめてどうするの!仮に生きてたとして、あの男が再開を喜んで、一緒に帰るとでも思ってるの?」

 

 

 

「違う。そうじゃなくて、ただ探したいの。怪我をしてたら治してあげたい。それで、また昔の父さんみたいに、世のため人のための研究を頑張ってほしいんだ。」

 

 

 

「世のため人のため、ねぇ。」

 

 

 

「良いじゃないですか、セリカちゃんのお父さんを探す位は。セリカちゃんのお父さんが心配って気持ちは、分からない訳では無いんですよね?」

 

 

 

ナインは、セリカの言葉を擁護する様に言葉を被せたイオを睨み付ける。

 

 

 

「………あんたに一体何が分かるのかしら?イオ。」

 

 

 

「いえ、正直に言えば何も分かりません。私には親なんて居ませんから。ですが、他人事、一般論の話としては、そうじゃないかな、なんて思って言ってるんです。」

 

 

 

「イオちゃん、親が居ないって、どういう………。」

 

 

 

「あははは、クローン、って言い方が一番分かりやすいかな?………まぁとにかく、ナインさん。納得出来ないのは分かってます。だから、こういうのはどうでしょう?私が、セリカちゃんの護衛になります。その上で、あと一ヶ所だけ、此処だけ探させて下さい。」

 

 

 

イオはそう言いながら、ナインにラグナの持っていた地図を渡す。ナインはそれを見て、

 

 

 

「………第一区画ね。誰だか知らないけど、余計な地図を渡してくれたものね。」

 

 

 

そう呟いて、セリカを見る。セリカの目には、決して諦める事の無いであろう決意が灯っている。それを見て、ナインは諦めた様に溜め息を吐いた。

 

 

 

「此処が最後よ。此処に居なかったら諦めて帰ること。分かった?」

 

 

 

「うん、分かった。」

 

 

 

「それに、イオ。しっかり護衛をしなさい。セリカに一つでも傷がついたら、あんたを殺すわよ?」

 

 

 

「あははは………分かりました。頑張ります。」

 

 

 

セリカとイオにそれぞれ念押しと脅迫をしたナインは、地図も見ずに歩き出す。少しして、イオ達がついて来ていない事に気が付き、くるりと後ろを振り向く。

 

 

 

「どうせ、セリカ。あんたの事だから道に迷ってたんでしょ?私が案内するから、その役に立たない地図は捨てなさい。」

 

 

 

そう言って振り向き、迷いの無い足取りで歩き出したナインに、イオ達は顔を見合わせると、その後をついて行った。


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