BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第1話を投稿。
最初よりは長く書けたと思うんだけど、まだ短い。


もっと長く書ける様になりたい。


第1話

第1話

 

 

 

イウラの都市を焼き尽くし、その夜の闇を紅く染め上げた火は、明け方には収まり、現在空を覆っている雲は、数分の後には雨を降らせ、未だ微かに残っている熱気さえも洗い流してしまう様に思える。

 

 

 

その都市であった瓦礫の中、偶然瓦礫の無い場所に、一人の少女が倒れていた。

 

 

黒いフードの付いたロングコートを身に纏う長い黒髪の少女は、一見爆発事故の犠牲者――――死人の様に見えるが、静かに規則正しい呼吸をしており、彼女が生きている事を示している。

 

 

 

最初からここに倒れていたのであろう、黒いコートは汚れているが、少女自信に傷は見当たらない。それが多少不思議ではあるが、命に関わる様な状況ではない様だった。

 

 

 

…………そして、イウラの都市に雨が降り始める。

 

 

 

 

 

 

ポツリ、と、頬に冷たいものが落ちる。

 

 

 

「……………ん……」

 

 

 

ポツリ、ポツリ、と数滴当たり、その冷たいものを雨だと理解すると同時に急激に意識が覚醒し、少女は目を覚ました。

 

 

 

「あ……れ?ここは…………?」

 

 

 

目を覚ました少女は、現状の把握の為に辺りを見回し、顔をしかめる。あまりにも周りの惨状が悲惨だったから。かろうじて残っている看板から、ここがそれなりに大きな都市で、沢山の人が住んでいた、という事が分かるのに、その全てが、崩れ、砕け、灰になっていて、元々人が居なかったんじゃないか、そう思う程に静かだったから。

 

 

 

酷い。そこまで思った所で、一つの事に気付く。

 

 

 

「あれ?何も思い出せない?」

 

 

 

そう。彼女は、自分の事を思い出す事が出来なかった。何時からここに居たのかも、今までどうしていたのかも、自分が何者なのかすらも。

 

 

 

「………うん。全部一気に考えようとするから駄目なんだよ。一つずつ考えて行けば分かるはず。…………多分。」

 

 

 

そう思い直して彼女は一つずつ考え始める。先ずは自分の名前から。

 

 

 

名前から考え始めた理由は簡単だった。思い出し易そうだったからである。少しの間考え込んでいたが、頭に突如それらしきものが浮かんでくる。

 

 

 

――――――次元境界接触用素体 No.9 Ι(イオタ)

 

 

 

「…………名前っぽくは無いけど、これが私みたいだね。取り敢えずは……イオタ……イオタ……イオ……うん。これからはイオって名乗ろ。」

 

 

 

少女――――――イオは取り敢えずそれで納得する。さらに、今の名前が出た時点で、自分の記憶が無い点にも納得がいった。「次元境界接触用素体」と言うのは、何かの実験体の事なのだろう。ここにも何かの実験の為に運ばれたとするならば、イオにこれまでの記憶がある筈がない。人を実験体に使っているのは悪趣味極まりないが、こう説明すれば納得はいく。

 

 

 

だが、イオはそこで思考を止めなかった。先程の単語、「次元境界接触用素体」と言う言葉に何処か引っ掛かるものを感じたから。何かを思い出せそうだったから。

 

 

 

だから、何かを思い出せるかもしれない、そう思い考えていると、またしても浮かんでくるものがあった。

 

 

 

だが、それは記憶と言うには長すぎるものだった。言うなれば、記録、と言った方が正しいと思う。

 

 

 

それは記録。永く、百年近く続き、繰り返す物語。

 

 

 

それは決まって2100年に突如黒き獣と呼ばれる怪物が現れる所から始まる。

黒き獣はやがて六人の英雄に倒され、世界は徐々に傷付いた文明を癒し、百年と言う時を過ごす。

そして、2199年12月31日。第13階層都市カグツチに現れたラグナ=ザ=ブラッドエッジが地下の「窯」の破壊に失敗し、次元境界接触用素体No.13と共に「窯」に落ちることで、世界はリセットされる。

 

 

 

そんな、繰り返される物語。だが、イオの頭にはそれ以上のものが浮かび上がってくる。

 

 

 

――――その繰り返される物語は、ラグナ=ザ=ブラッドエッジをノエル=ヴァーミリオンが助ける事により終わりを告げ、その後、世界のループを行う「事象兵器」であるタケミカヅチを、レイチェル=アルカードが止める事により世界のループは終わりを迎える。という記録が。

 

 

 

「………どうしてループが終わる記録まであるのかな?………ま、いっか。多分私じゃ分からないしね。」

 

 

 

そう言って、先程の記録について考える。そう、あの記録には自分の存在は無かった。爆発事故もそう。あの記録の中で爆発事故は一度しか起こらない。更にそれも第12素体――――ノエルのやったものであり、イオの起こしたものではない。

 

 

 

「………つまりこの世界で私の介入は予定されていない、か。なら、私が介入して、世界のループを止めてみるのも有りかな?」

 

 

 

その言葉と共にコートのフードを深く被ったイオは、日が高く昇る前に、イウラから姿を消した。


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