BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第17話投稿。



今回だけは長いです。まぁ、無理に最後を詰め込もうとした結果何ですが。………あ、次からフェイズシフト編です。


第17話

第17話

 

 

 

「…………え?」

 

 

 

………どうしてこうなったんだろう。ゆっくりと展開されていく思考の中で、ノエルはそう思いながら今の状況を理解しようとする。現在、ノエル前に広がっている光景は、宙を舞って散る赤と、それを受けて赤く染まる剣、そして、

 

 

 

「け……ほ………!」

 

 

 

「お姉………ちゃん?」

 

 

 

ノエルの方を向き、背中からニューに刺されている、ノエルの姉、イオの姿だった。そこまでをノエルが理解したとき、ノエルの目の前に、地面に刺さる何かが見えた。

 

 

 

「あ、これ………お姉ちゃんの………。」

 

 

 

それは、イオが使う黒い剣だ。それを認識したノエルは、その瞬間、状況を理解してしまった。

 

 

 

「あ、あぁ、ああああぁぁ。」

 

 

 

つまり、イオは、ノエルを護ったのだ。今まで戦っていた、イオを殺そうとしていた相手に背を向けて、自分が無防備になるのも構わずに。それが解ってしまったノエルは、

 

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

 

そう言いながら、ニューに吹き飛ばされたイオに駆け寄った。

 

 

 

 

 

 

(…………やられたなぁ。)

 

 

 

剣を振り上げたイオは、視界の端に映った光景に、心の中でそう呟く。イオの視界の端、ノエルの後ろには、緑髪のスーツを纏った男――――ハザマが立っていた。

 

 

 

「(ちゃ、ん、と、護ってくださいよ?)」

 

 

 

ハザマは口の形だけでそう告げると、へらへらと笑みを浮かべながら、その手からウロボロスを放った。その速度は遅い。だからこそ、それは迎撃させるための攻撃であることはすぐに解った。もっとも、迎撃するのはノエルではなく、イオであるが。

 

 

 

(あーあ、ハザマさんの思い通りになっちゃうな〜。)

 

 

 

イオはそう思いながら、ニューに背を向けてノエルの方を向き、自分の両手にある黒い剣を投合する。背中に展開していた剣達は、最後にニューに走り寄る時に消していた。ニューの剣を避けるとき、剣は邪魔にしかならないからである。そして、剣がウロボロスを弾くのを見る前に、背中から腹にかけて、ドスッという音と共に鋭い痛みがイオを襲った。

 

 

 

「け……ほ………!」

 

 

 

あーあ、とどこか傍観しているような声を出そうとしたイオは、喉から駆け上がって咳と共に口から吐き出された血によって声を出せなくなる。イオは今、全身に力が入らなく、刺されている剣によって体が支えられている。体の器官は殆ど傷ついてはいないが、それでもしばらくは動けないだろう。

 

 

 

「…………消えろ。」

 

 

 

イオがそこまで考えた所で、無機質な声が響き、イオの体から剣が抜かれる。重力に押されるままに地面に崩れ落ちそうになったその体は、しかし、脚の傷が治りきったニューの脚から放たれた、何処にそこまでの力があるのか、と問いたくなる程の威力を持つ蹴りによって吹き飛ばされた。

 

 

 

「うぁ………か……は………。」

 

 

 

「お姉ちゃん!!」

 

 

 

受け身も取れずに何度も地面に叩き付けられたイオの元に、目に涙を溜めたノエルが駆け寄ってくる。

 

 

 

「お姉ちゃん、大丈夫!?」

 

 

 

「あははは………ちょっと無理………し過ぎちゃったかな?………けほ!………暫く………動けない、かも。」

 

 

 

「そんな、どうして、私なんかの為に………。」

 

 

 

ノエルがそこまで言った所で、ノエルの額に軽い衝撃が走る。イオがノエルの額を軽く押したのだ。

 

 

 

「「私なんか」何て………言わないで。ノエルちゃん。」

 

 

 

「お姉………ちゃん?」

 

 

 

「私は……ノエルちゃんを助けたかったから助けたんだよ?………だから、それをノエルちゃんが……後悔する必要は………無いんだよ。それに、さ。そんな………泣きそうな顔されたら………助けた私がバカみたいじゃん。だから、笑っててよ。ノエルちゃん。」

 

 

 

「だけど………」

 

 

 

「だけども何も無いよ。………妹は、お姉ちゃんの言うことを聞くもの………だよ?」

 

 

 

イオはいつも通りの笑顔を浮かべながらノエルにそう言う。重症な筈なのに。喋るのも辛い筈なのに。それでも、イオはいつも通りにノエルに話してくる。それは、とても、

 

 

 

(強い、なぁ………。)

 

 

 

ノエルはそう思いながらイオに言われた通り、目に溜まった涙を拭って笑顔を作る。イオは、それに嬉しそうに笑みを浮かべると、少し困った様な表情になって、

 

 

 

「ちょっと不味いかなぁ。私はあんまり………動けないし、ノエルちゃんじゃあ………ニューちゃんには………勝てないし。」

 

 

 

「ユニット接続。ペタル展開…………滅べ。」

 

 

 

イオがそう言うのに被せる様にして、ニューは言葉を紡ぐ。次の瞬間、巨大な魔方陣が現れ、そこから巨大な剣がイオとノエルに向けて射出される。それを見ながら、イオは、

 

 

 

「だから、後、よろしくね。ラグナ。」

 

 

 

自分達と剣の間に入り込み、剣を弾き飛ばした青年――――ラグナにそう言った。

 

 

 

「ったく、何が「後、よろしくね。ラグナ。」だ。無茶し過ぎだ。馬鹿が。」

 

 

 

「あははは、ごめんね。私も………ちょっと反省してる所………だからさ。」

 

 

 

「………ったく、本当ならんな頼みなんざ断る所だけどよ。俺もあれを壊すのが目的だからな。………仕方ねぇから、頼まれてやるよ。」

 

 

 

「ノエルちゃん。あれが………ツンデレってやつだよ。ラグナは、あんな風に、優しくする前に………必ず一度……厳しい言葉を………掛けてくるんだ。」

 

 

 

「イオ………てめえ。怪我治ったら叩きのめしてやる。」

 

 

 

「ラ〜グナぁ!久しぶりだね。またニューを壊しに来てくれたの?」

 

 

 

ラグナは怒りながらイオの方を振り返ろうとして、ニューが発した声にその行動を遮られる。

 

 

 

「じゃあ、そうしよっか。ニューはラグナのもの。だから、ニューはラグナになぁ〜んでもしてあげる。全部壊したいなら、そうしてあげる。だから、ラグナ。ニューと一つになって、全部全部、壊しちゃおう!」

 

 

 

「………愛が深いなぁ〜。」

 

 

 

「…………上等だ!またぶっ壊してやるよ!!」

 

 

 

ラグナは、イオの呆れたような呟きに聞こえないふりをして、ニューに斬りかかって行った。

 

 

 

 

 

 

「お姉ちゃん、大丈夫?」

 

 

 

「うーん、まだちょっと動けないかな?普通に喋れる様にはなったけど。」

 

 

 

イオは心配する様な口調で声を掛けてくるノエルに笑いながらそう答える。事実、体の痛みも、先程までとは比べ物にならない程に収まっていて、呼吸も楽に出来るこの分なら、もう少しすれば、動く事も出来る様になるだろう。その答えにノエルは安心したような表情を浮かべ、次に少し遠くで戦っているラグナを見る。

 

 

 

「ラグナさんは………大丈夫かな?」

 

 

 

「それは、分かんない。………でも、あのままだと、あの子と一緒に『窯』に落ちちゃうかも。」

 

 

 

「え?どうして?」

 

 

 

ノエルは首を傾げる。なぜラグナとニューが『窯』に落ちるのかが分からなかったからだ。それを見たイオは、ノエルに向かって、

 

 

 

「多分、それがあの子の目的だからだよ。ラグナと一つになる、ってそう言う事。」

 

 

 

と、そう言った。ノエルはそれを聞き、『窯』と呼ばれた場所を見る。そこは、遠目から見ても分かる程、一度落ちたら帰っては来られなさそうな所であった。

 

 

 

「それじゃあ、このままじゃラグナさんは………」

 

 

 

「…………そうだね。ノエルちゃん、私のお願い、聞いてくれる?」

 

 

 

そう言って、イオはノエルに向かって何事かを呟く。それを聞いたノエルは、強く頷いた。

 

 

 

「…………やってみる。任せて。お姉ちゃん。」

 

 

 

「ごめんね。こんなこと、任せちゃって。」

 

 

 

「ううん。私がやりたいからやるんだよ。それに、妹はお姉ちゃんのお願いを聞くもの、でしょ?」

 

 

 

ノエルは、謝ってきたイオに、先程イオが言った言葉を返す。イオは一瞬ぽかんとした表情を浮かべた後、

 

 

 

「あはは、そっか。じゃあ、よろしくね。ノエルちゃん。」

 

 

 

そう言って、ノエルに笑いかけた。

 

 

 

 

 

 

(く………そが……。)

 

 

 

ラグナは、剣に貫かれて、宙を舞っていた。目の前には、自分に抱き付く様にして、ラグナと共に剣に貫かれている、ニュー。ラグナは走り込んだ所を重力場によって動きを封じられ、そこに何本もの剣を刺された。そして、状況を打開しようと「蒼の魔導書」を発動させたが、暴走し、動けなくなってしまう。そして、ラグナに抱き付いてきたニューと共に剣に貫かれ、今、『窯』に落ちようとしている。

 

 

 

(まぁ………良いか。こいつと、一つになって………!?)

 

 

 

諦めようとしたラグナの右腕に、何かが刺さった様な音が響く。それと同時に、今まで動かなかった体が、自由に動くようになる。右腕を見ると、刺さっている黒い剣が見えた。

 

 

 

(イオ………か……。)

 

 

 

そう思ってイオの方を見ると、膝を付いて苦しそうにしているイオの姿があった。

 

 

 

(………ったく。あいつはいつも無茶ばっかしやがって……。まぁ、あいつがあんな無茶すんなら、もう少し、足掻いて見るか。)

 

 

 

ラグナはそう思いながら、何か掴まれそうなものを探す。しかし、何もなく、くそっ………、と内心舌打ちをした所で、

 

 

 

「諦めないで!」

 

 

 

そう、声が響く。そこには、イオの妹、確か、ノエルがいた。ラグナは、その差し出された手を、咄嗟に掴む。

 

 

 

「あ………。」

 

 

 

そう茫然として言ったニューと共に、ラグナを貫いていた剣はラグナの体から簡単に抜けて落ちていった。そして、世界のループは終わりを告げたのであった。

 

 

 

 

 

 

「…………ったく、ウサギのやつ、何が言いてぇか分かんねぇんだよ。」

 

 

 

「あははは。レイチェルさん、遠回しな言い方が好きだからね。仕方ないよ。」

 

 

 

ラグナの呟きに、ほんの少し前に動ける様になったイオは笑いながら答える。ノエルは、ラグナを助けた後、緊張が解けたのか眠ってしまっていた。今、二人は、窯を閉じようとして、窯の口付近にいた。ラグナは、その脇にある機械を弄ろうとして、

 

 

 

「…………あ?」

 

 

 

「ラグナ!!」

 

 

 

足場に付いていた、自分の血によって足を滑らせ、窯へと落ちていく。イオは、咄嗟にラグナの手を掴むが、腕を伝ってきた衝撃により開いてしまった傷と、血によって滑る床に、すぐに自分も落ちてしまう事を悟る。

 

 

 

「ラグナ。私が戻るまで、ノエルちゃんの事、よろしくね!」

 

 

 

「は?イオ、お前何言って、ってうおぁ!!」

 

 

 

イオは、そう言って、イオの言った事を理解出来ていないラグナを自分のいた場所とラグナのいた場所の位置を入れ替えるように投げる。そしてそのまま、ラグナが自分の事を呼ぶのを聞きながら、境界へと落ちていった。


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