BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

15 / 63
第14話投稿。



イオは今の強さは、獣兵衛よりも少し弱い位です。武器の相性と、戦闘技術的に、ジンには圧勝出来ます。


第14話

第14話

 

 

 

「………貴様、誰だ?」

 

 

 

予想していなかった再開の仕方に、少しの間呆然としていたイオは、自分の背中ヘと掛けられた氷の様な声にはっと我に帰り、直ぐに剣を構えて後ろを振り向く。振り向いた先には、統制機構の制服を身に纏った、金髪碧眼の青年がいた。

 

 

 

―――――兄様。

 

 

 

そんな単語が頭に浮かび上がると共に、イオは心臓がどくんっ、と跳ね上がった様な感覚を覚える。しかし、イオを襲ったその感覚は、ラグナを前にした時や、教会を前にした時よりは小さい。更に、目の前の青年――――ジン=キサラギが放つ氷の様な殺気が、イオを冷静にさせ、イオは直ぐに感覚を抑え込む。

 

 

 

「…………ノエルちゃんの姉で、イオって言います。」

 

 

 

そう答えたイオに、ジンはその感情の無い眼をノエルヘと向ける。

 

 

 

「ノエル=ヴァーミリオン少尉。貴様、姉が居たのか?」

 

 

 

「え?あ、えっと、あの…………」

 

 

 

「答えろ。ノエル=ヴァーミリオン少尉」

 

 

 

「…………はい。少し前に。」

 

 

 

ノエルがジンの問いに答えると、ジンは少しだけ考える様な素振りを見せてから、

 

 

 

「…………まぁ、良い。そこを退け。退かなければ殺すぞ?」

 

 

 

と言い放つ。イオはそれに、いつも通りの笑みを顔に浮かべて、

 

 

 

「あははは…………それは出来ないかな。だって、私がここを退いたら貴方はノエルちゃんを殺そうとするでしょ?」

 

 

 

「…………あぁ。」

 

 

 

「やっぱり。それじゃあ、私はノエルちゃんのお姉ちゃんとして、ここを通す訳にはいかないよ。…………兄様。」

 

 

 

と、そう返した。最後の「兄様」は、ジンだけに聞こえる様に言ったものだ。ジンはその言葉に驚いた様に眼を見開き、そして、口の端を吊り上げる。それは、笑っている様にも、憎んでいる様にも見えた。

 

 

 

「そうか…………貴様も、僕の「障害」か!!」

 

 

 

ジンはそう言いながら斬りかかってくる。イオはその剣を受け流しながら後ろのノエルに向かって聞く。

 

 

 

「ノエルちゃん。こうなっちゃったんだけどさ、どうすれば良いかな?気絶させちゃえば良い?」

 

 

 

「あ、えっと、出来れば、あまり怪我をさせずに気絶させてもらえれば。」

 

 

 

「了解。」

 

 

 

そう言いながらイオは一旦ジンと距離をとり、剣を持っている腕の力を抜く。ジンはイオを追う様に何本もの氷の剣を放つ。頭や腕、腹などを狙い射出されたそれらを、イオは流れる様に最小限の動きで避ける。ジンはそれを見て、大きな氷の剣を作り出し、その腹に乗ってイオに突っ込んで行く。イオはその氷の剣に自らの黒い剣を当てる。それだけで、氷の剣は最初から何も無かったかの様に消え去った。

 

 

 

「なっ!」

 

 

 

ジンは驚愕に眼を見開く。イオは、驚きで一瞬動きの止まったジンの腹に剣の柄を打ち込む。そのまま、肺から空気が押し出され、自然と体をくの字に曲げたジンの顎に、もう一度剣の柄を打ち込んだ。

 

 

 

「が…………は………。」

 

 

 

軽く空中ヘと打ち上げられ、意識が飛びかかっていたジンは、地面に叩き付けられた衝撃と痛みで意識が引き戻された。直ぐに立ち上がろうとするが、脳を揺らされたらしく、体の反応が鈍く、思う様に動かない。結果として、頭を押さえながら、立ち上がろうとして、地面に倒れるだけになってしまった。

 

 

 

「…………えっと、これで暫く動けないと思うんだけど………結構強くやったし。」

 

 

 

イオのその言葉を聞いて、ノエルはジンの方へと駆け出して行く。イオはそんなノエルを見て、そのまま、何気なくジンの方を見る。その時、ジンが、強く自らの剣である、ユキアネサを握り締めたのが視界に入った。

 

 

 

「――――危ない!!ノエルちゃん!」

 

 

 

イオは背中に展開していた剣の2本を人一人を覆い隠せる程の大きさの盾へと形を変えてノエルの前へと入る。次の瞬間、ジンを中心として、膨大な量の氷が吹き出してくる。イオが盾を構えた所では氷が消え去っていくが、それ以外の場所はまるでその場所を閉じ込めようとするかの様に凍り付いていく。暫くすると、氷の噴出が止まる。イオが盾を剣へと戻した時には、ジン=キサラギの姿はどこにも無かった。

 

 

 

 

 

 

「…………ごめんね。しっかり意識を飛ばしておけば良かったよね。」

 

 

 

「え、そんな、お姉ちゃんのせいじゃないよ。あんな状態で動けるなんて私も思わなかったし、それに、元々私がやらなきゃならない事だったんだから………。」

 

 

 

「でも…………」

 

 

 

「ノエル=ヴァーミリオン少尉の言う通りです。むしろ貴女のミスは殆ど無いと言っても良い。ご協力感謝しますよ。イオさん。」

 

 

 

ノエルとイオしか居ない筈の場所に、突然響いて来た声に、イオは身構えて声のする方向ヘと視線を向ける。そこには一人の男性が立っていた。黒いスーツを身に纏い、黒い帽子を被った緑髪のその男性を、イオは昔、見たことがあった。

 

 

 

「…………ハザマさん……。」

 

 

 

「あららら、随分警戒されちゃってますね、私。いや、まぁ、最初があんな感じだったので当たり前なのかも知れないんですけどね?流石に少尉に協力なさっている人を逮捕、何てしないので安心してくださいよ。」

 

 

 

男性――――ハザマはへらへらと愛想笑いを浮かべながらそう言う。ノエルは、ハザマが発した言葉が不思議になったのか、ハザマヘと質問する。

 

 

 

「あの………ハザマ大………ハザマさん。お姉ちゃんと知り合い何ですか?」

 

 

 

「いえ、知り合い、と言うかですね、前に一度、間違って逮捕しそうになっちゃいまして…………あぁ、その時の謝罪がまだでしたね。申し訳ありませんでした。」

 

 

 

「いえ、別に………」

 

 

 

「…………そうだ。出来るなら、キサラギ少佐を捕まえるまで、ヴァーミリオン少尉の護衛をお願いできませんか?」

 

 

 

その発言に最も驚きを見せたのはノエルだった。

 

 

 

「ハザマさん?どうして…………」

 

 

 

「どうしても何も…………我々だけではキサラギ少佐に太刀打ち出来ませんからね。良いとこ、二人でかかっても返り討ちにあうのがオチですよ。私は戦闘は専門外ですのでどうしようもありません。ですが、先程は偶々取り逃がしてしまった様でしたが、それでも「イカルガの英雄」と言われる程の実力の持ち主であるキサラギ少佐を倒せる程の実力を持ったイオさんがいれば、任務達成はずっと楽になる筈ですよ?」

 

 

 

疑問を投げ掛けようとするノエルに対して、ハザマはへらへらと少し人を馬鹿にした様に笑いながら答える。イオは、その二人の会話を聞いて、

 

 

 

「…………分かりました。ノエルちゃんの護衛はしっかりやらせて貰いますよ。ハザマさん。」

 

 

 

とそう答える。その言葉に対して、ハザマは、へらへらと笑いながら、

 

 

 

「そうですか。改めて、ご協力感謝します。それでは、私はそろそろこの辺で。これでも一応諜報部に所属していますので、一度戻ってやらなきゃいけない事が沢山有るんですよ。」

 

 

 

そう言ってくるりと後ろを向き、姿を消した。イオとノエルは、その姿が無くなるのを確認してから、

 

 

 

「じゃあ、これから少しの間、よろしくね。ノエルちゃん。」

 

 

 

「よろしく。お姉ちゃん。」

 

 

 

そう言いながら、ジンが消えたと思われる方向――――統制機構の支部へと向かって歩き出した。

 

 

 

「さて………行きましたか……。」

 

 

 

そんな二人の様子を、ハザマは屋根から見下ろしていた。角を曲がった後、直ぐに登ったのである。別に曲がった角から覗いていても良かったのだが、何となくそれはストーカー的で気が引けた為に屋根の上に登ったのである。

 

 

 

「これからが本番ですね。…………今回で、終わらせられるかも知れませんから、準備はしておかないといけませんね。」

 

 

 

ハザマは誰に言うでもなくそう呟くと、姿を消した。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。