BLAZBLUE 黒の少女の物語   作:リーグルー

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第11話投稿。



CT編スタート。今回は猫娘が登場します。次回は………顔無しがでるかも。


第11話

第11話

 

 

 

第13階層都市カグツチ。街並みを幾重にも重ねて建造されたこの都市の下層、工事中であるにも関わらず、放置されているらしい場所に、黒いコートを纏った少女、イオは立っていた。イオはそこから動く事もなく、ただ俯いている。よく見ると肩も震えている様に見える。その理由は通行人には分からないだろう。何故なら、

 

 

 

「やった…………久しぶりに、迷わず目的地に着けた…………。」

 

 

 

…………普通はそんな事になる筈は無いのだから。

 

 

 

「さて、と。まず、カグツチの上層までいく道を見つけなきゃね。うん、出来るだけ統制機構とはいざこざを起こしたくないし、出来れば手っ取り早く着ける抜け道とかを。」

 

 

 

ひとしきり喜んだイオは、取り敢えず街を歩きながらこれからの事を確認するように口に出していく。勿論周りの通行人には聞こえない様にして。そのまま特に当てもなくふらふらと歩いていると、遠くから何か金属同士がぶつかり合う様な音が聞こえてくる。続いて少し前に聞いたような声。

 

 

 

「…………ラグナ?」

 

 

 

その声を前の階層都市で会った兄弟弟子のものだと断定したイオは、未だに鳴り続けている音の方へと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

「…………何やってんだろ?あれ。」

 

 

 

音の鳴っている所に辿り着いたイオはそう呟く。そこには二つの人影があった。片方は銀色の髪に赤と緑のオッドアイをした、イオもよく知っている人物、巷では「死神」として名高いラグナ=ザ=ブラッドエッジ。もう片方は上半身をすっぽりと覆う服を着た、丸い赤の目と白い牙を剥いた三日月型の口が特徴的な少女。イオの記憶ではカカ族、と呼ばれる種族だった筈だ。

 

 

 

二人は剣と爪をぶつけ合っている。一見すれば戦っている様にも見えなくは無いが、どちらにも敵意が無く、むしろ、どちらかと言えば、

 

 

 

「………じゃれてる?」

 

 

 

そう、突然じゃれて来た猫の相手をしている内にむきになり始めた犬、そんな表現がピタリと当てはまる様な雰囲気だった。イオはそれを見て一つ溜め息をつくと、

 

 

 

「はいはい、ストップストップ。何が有ったかは全然分かんないけど、取り敢えず落ち着いて話し合おうね。」

 

 

 

と止めに入った。その言葉にラグナとカカ族の少女はイオの方を見る。

 

 

 

「にゃ!黒い人はタオの邪魔をするニャスか!」

 

 

 

「え?いや、邪魔する訳じゃ無くてね。落ち着いて話し合えば早く解決するんじゃないかなって。…………ん?タオ?それに黒い人って…………あ!もしかしてタオちゃん?」

 

 

 

「んにゃ?タオと黒い人は会った事があるニャスか?」

 

 

 

会った事はある。獣兵衛に連れられてカカ族に会った時、ラグナをからかって遊んでいた筈だ。

 

 

 

「うーん、覚えてないかな?ほら、タオちゃんの小さい頃、一回あなた達の村に遊びに来た「黒い人」なんだけど。」

 

 

 

そこでカカ族の少女、タオカカはしばらく考える様な素振りを見せた後、ぽんっ、と手を打って答える。

 

 

 

「ああ、あの時遊んでくれた黒い人ニャスか!じゃあ、その黒い人は何の様ニャスか?」

 

 

 

タオカカのその言葉に、イオはさっきも言ったんだけどな………と苦笑しながら簡単に答える。

 

 

 

「タオちゃんは何でこの人を襲ってたの?」

 

 

 

「これは勝負ニャス!その白い人に勝ったらタオは白い人にご飯を奢って貰うニャス!」

 

 

 

「だからんな約束してねぇっつの!!」

 

 

 

タオカカの台詞にイオは大体の事を理解する。恐らく、タオカカが突然ラグナを襲ってそれを言い出したのだろう。それを想像したイオはあははは、と笑うと、タオカカに向かって、

 

 

 

「いくらお腹が空いてるからって、突然人を襲うのは駄目だよ。タオちゃん。これからはもうしないって約束して。出来るなら、私が奢ってあげる。」

 

 

 

そう言うと、タオカカはがばっ、と顔を上げてイオの方を見る。そのまま満面の笑みを浮かべて、

 

 

 

「ほんとニャスか!するする、約束するニャス!」

 

 

 

と矢継ぎ早に話す。その言葉にイオは頷くと、ラグナの方を向いて、

 

 

 

「ラグナも来る?今、私それなりに機嫌が良いから、ラグナの分も奢ってあげられるよ?」

 

 

 

とそう言った。ラグナはそれを断ろうとするが、口を開こうとする前に腹の音がなる。それを聞きつけたイオは、あははは、と笑って、

 

 

 

「本人よりお腹は正直者みたいだね。それじゃ、行こっか。」

 

 

 

そう言いながら、ラグナの手を引いて、タオカカの示す方向ヘと向かって行った。

 

 

 

 

 

 

白いクロスがかけられた丸いテーブルの上に、いくつもの皿が並んでいる。青菜の炒め物に、海老団子の揚げ物、麺料理や蒸し飯、揚げ麺に肉饅頭。それらの料理が所狭しと置かれてるのを見て、ラグナは言葉を失った。

 

 

 

「いっただきニャ〜〜〜〜ス!!」

 

 

 

タオカカは威勢よく宣言すると、目を疑うかの様な勢いで頬張っていく。みるみるうちに肉饅頭が数を減らしていくのを見てラグナは慌てて自分の分を確保する。

 

 

 

「あははは…………よっぽどお腹が空いてたんだね。美味しい?タオちゃん。」

 

 

 

「うまいニャス!あれもこれもぜ〜んぶうまうまニャス!」

 

 

 

「あはは。そっか。良かった。」

 

 

 

そう話しているイオに対し、ラグナは少し心配になって声を掛ける。勿論タオカカには聞こえない様に。

 

 

 

「…………イオ。お前、財布の中身は大丈夫か?」

 

 

 

「うん、まぁ、思ってた以上ではあったけど。この位ならまだ大丈夫だよ。」

 

 

 

そんな会話をしている前で、タオカカは海老団子の乗った皿を抱える。何をしようとしているか気付いたラグナは、その暴挙を止めようとするが、間に合わない。

 

 

 

「くっそ、俺まだ一口も食ってねぇんだぞ、その海老団子!」

 

 

 

そう言って怒りに震えるラグナ。隣では、いつ取ったのか、イオがいつの間にか確保していた海老団子をもぐもぐと頬張っている。元凶のタオカカはラグナの方を不思議そうに見ると、

 

 

 

「ん?どした白い人。食べないニャスか?ダメニャス。腹が減っては咎追いも出来ないニャス!」

 

 

 

と言う。言い返そうとしたラグナだったが、タオカカの言葉に疑問を投げ掛ける。

 

 

 

「咎追い?」

 

 

 

「ニャス。タオは今日から咎追いになったのネ。そんで〜、この『らぐにゃ』ってやつをぶっ飛ばすニャス。」

 

 

 

「「『らぐにゃ?』」」

 

 

 

そのふざけた様な名前に、ラグナとイオは同時に手配書を覗き込む。そして、次の瞬間、

 

 

 

「ぶほっ!」

 

 

 

「あ、あはははははははは!な、何これ!ほ、ほんとに………酷………あ、もう無理。我慢でき…………あはははははははは!!」

 

 

 

そこには酷く不細工な似顔絵と、ラグナ=ザ=ブラッドエッジの文字。それを見たラグナは肉饅頭を吹き出しかけ、イオは腹を押さえて爆笑する。

 

 

 

「これ俺か!?何だこれ!似てないにも程があんだろ!顔知らねぇなら似顔絵なんて作ってんじゃねえよ!ちょっと傷つくだろ!後、イオ!いつまで笑ってんだ!!」

 

 

 

その言葉に、イオは自分の出来る精一杯まで笑いを噛み殺して答える。

 

 

 

「い、いや、だって、さ。あの………顔、だよ。あ、あれ、で、あれ、………あはははははははは!」

 

 

 

が、途中で我慢出来なくなり、笑い出す。そのままひとしきり笑った後、イオは少し気まずそうな表情でラグナに言う。

 

 

 

「ところでさ、ラグナ。………ここ、不味くない?」

 

 

 

「何が?」

 

 

 

「ほら、そこら中から殺気がするし。………ね、タオちゃん。今回はこれ位にしてくれないかな?私、そろそろお代を払ってくるからさ。」

 

 

 

「にゃ?」

 

 

 

タオカカの疑問を合図にしたかの様に、店の半数以上の客が立ち上がる。それを見たラグナは、イオとタオカカの腕を強引に掴むと走り出す。

 

 

 

「金払ってる場合じゃねぇ!逃げんぞ!お前等も俺と飯食ってたんだから、仲間だと思われて袋叩きにされちまうぞ!!」

 

 

 

「あ、あの、えっと、ごめんなさい!!」

 

 

 

「にゃ?白い人と黒い人はタオの仲間ニャスか?」

 

 

 

ラグナの言った事に対し、イオは少し迷った後、店の人に対して謝罪をしながら走り出す。それに続いてタオカカを引きずりながら走り出したラグナに、立ち上がった咎追い達は、「逃げやがった!」「あいつが「死神」だ!捕まえろ!いや、むしろ殺せ!」等と叫びながら追いかけてくる。唯一状況を掴めていないタオカカだけが場違いな疑問をあげる。

 

 

 

「あ?いや、だからあいつらにとってはそうだって事だよ。………それよりどっか逃げるとこねぇか!?捕まるわけにはいかねぇんだよ!」

 

 

 

「ニャ!分かったニャス!黒い人は恩人だし、白い人も仲間ニャスから、カカの村に特別に案内してやるニャス!」

 

 

 

そのままタオカカはラグナの前に立ち、ぐんと速度を上げて走り出す。そのまま前を走るイオにも同じことを伝えたようで、「分かったよ!」と言ったイオもぐんと速度を上げる。………ラグナをおいてけぼりにして。

 

 

 

「おい!待て!俺を置いていくんじゃねぇ!」

 

 

 

ラグナは、逃げる時よりも必死になって、タオカカとイオを死にもの狂いで追いかけていった。


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