まっしろレポートとふたつの炎   作:アリィ

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ハナダシティ編「1.5話」です。
思いの他、女の子組の服選びが長くなりそうだったので
変な区切り方になってしまいました。

日常パートが久しぶりなので、ゆったりした気分で書いています。


Report5-1.5 [ハナダシティの休日 ーファルナの服選び―]★

スゥ達が服を選んでいる時を同じくして、

ファルナとメルティは女性服のコーナーで品定めをしていた。

 

「わあ・・・ホントにたくさんの服!

 どれにしようか迷うね、メルちゃん!」

 

「ええ、初めて服屋さんに来ましたけど、

 可愛い服がいっぱいですね!」

 

二人は店頭に並ぶ服を見て興奮しっ放しの様子。

 

「ねえ、メルちゃんはどんな服が好きなの?

 今の服みたいなワンピース?」

 

「そうですねぇ、この服も気に入ってますよ。

 でも、せっかく他の服が着れるので・・・

 今回は全然違うイメージの服にしたいなって思ってます!」

 

メルティは胸の前で手を合わせて心を浮きたてていた。

彼女の言葉を受け、ファルナはふとツルハの言葉を思い出す。

 

「全然違うイメージ・・・かあ。」

 

(ドキッとする恰好よ♪

 『肌』を出すのよ、『肌』を!)

 

「・・・えぅ、ツルハさんはああ言ってたけど・・・」

 

彼女の呟きを聞いたメルティが首を傾げて問う。

 

「ファルナちゃん?

 ツルハさんに何か言われたんですか?」

 

「うっ・・・ちょ、ちょっとね。

 えーと・・・『肌』をもっと見せる恰好にしたら良いよって・・・」

 

その瞬間、メルティの目が怪しげに光った。

 

「なるほど、ファルナちゃんはスゥくんにドキドキさせたい訳ですね!」

 

「あぅ・・・。

 そ、そういう訳じゃなくて・・・!」

 

「わかりました!

 よーし、そういう事でしたら

 一緒に魅力的な服を選びましょう!

 さっそくお店の人に聞いてみましょ!」

 

「がう・・・

 メルちゃん、意外に人の話聞かない時あるよね・・・」

 

妙に乗り気なメルティに対して戸惑うファルナ。

そんな彼女を構うことなく、腕を強引に引いてメルティは売り場を連れまわす。

 

メルティは店員を探しているような様子で

周囲をキョロキョロと首を回している。

 

ピタッとその動きを止めたメルティ。

彼女の視線の先には、商品棚の服を綺麗に畳み直している女性の店員がいた。

 

「いましたっ!

 すいません、ちょっと教えて頂けませんか?」

 

メルティは礼儀正しく、彼女にお辞儀をしながら尋ねる。

 

 

「はい、何でしょうか?

 何かお探しですか?」

 

 

彼女に気付いた店員はメルティの方を向いて答えた。

メルティは繋いでいたファルナの手を放し、

店員の耳元で小さな声で相談する。

 

「・・・・で・・・・・な・・・

 ・・・感じでお願いします。」

 

メルティの言葉を聞いた彼女は、合点が行った顔をした。

そしてファルナの方を見て、少し考えている様子。

 

「よし、分かりました!

 お連れさん、ファルナちゃんですね?

 いい組み合わせを紹介しますね!」

 

「え、えぅ?

 メルちゃん・・・店員さんに何て言ったの・・・?」

 

「ふふ、それは服を見てのお楽しみですよ♪」

 

何が何だか・・・と言いたげな表情のファルナ。

とりあえずは店員が選んでくる服を待つファルナとメルティ。

 

 

 

そして彼女が戻ってきた。

籠に服を詰めて意気揚々とファルナに話しかける。

 

「一番オススメを持ってきましたよ!

 さてさて、それじゃあ試着室の方へどうぞ!」

 

「は、はい・・・」

 

ファルナは試着室の前まで連れてこられ、

自身満々な表情の店員から服一式を渡された。

 

(しちゃくしつ・・・ってよく分からないけど、

 この部屋の中で着替えるって事だよね?

 何だか恥ずかしいかも・・・)

 

服を抱えながら、カーテン一枚で隔たれた試着室を見てファルナは思う。

しかし周囲を見てみると、女性も男性も顔色を変えず試着室に出入りしている。

これが普通なんだろうな、と理解し、いそいそと個室の中に入るファルナ。

 

カーテンを閉め、渡された服を一つ一つ広げて見てみる。

 

それらを見たファルナは個室の中で一人、顔を真っ赤にした。

 

 

(なっ・・・なな、何これーっ!

 このスカート短すぎるよ!)

 

 

彼女の手にある物は、かなり丈の短い黒いスカート。

履けば膝上どころか、少し仰いだ角度で見ると際どい部分まで見えてしまいそうなもの。

 

ファルナはすぐさまシャッと音を立てて勢いよくカーテンを開け、

店員に不満を言う。

 

「お、お姉さん!これ短すぎですーっ!

 こんなの履いて人前に出られないよー!」

 

渡されたミニスカートを二人によく見えるように手で持ちながら主張した。

それを見たメルティは目を輝かせて店員に言う。

 

「こ、これは・・・!

 店員さん、凄く良いと思います!」

 

「そうでしょ?今人気のデザインなんですよ!

 大丈夫、これくらいの短さはよくありますよ!」

 

ファルナの言葉に聞く耳を持たない二人。

ううぅ・・・と唸りながらファルナは二人を赤い顔で睨んでいる。

 

 

 

そんな彼女の様子に、メルティはファルナを再び試着室に押し込みながら言う。

 

「ふぁーるーなーちゃーん、ちゃんと着てみて下さい!

 せっかく店員さんが選んでくれたんです。

 文句は着てからにしましょうよ!」

 

「うぅぅ・・・メルちゃんの意地悪!

 わ、分かったよ!着てみるよ!」

 

逃がしてくれなさそうなメルティの態度に、ファルナは半ば諦めたように

試着室に再び籠る。

 

 

 

「こ、こんなのを本当に人間さんは履いてるの・・・?

 メルちゃんは妙に楽しみそうだし・・・

 もーっ!とにかく着てみるか!」

 

個室の中、小声でブツブツと言いながら意を決するファルナ。

 

 

彼女は自前のロングスカートを脱ぎ、綺麗に畳んだ。

改めて渡されたミニスカートを見て、眉をしかめながら履いてみる。

 

そしてスカートの裾を押さえながら、正面の鏡で自分の姿を見た。

 

「うう、やっぱり短い・・・!

 っていうか、これ下着見えちゃいそう!」

 

慣れない脚回りの涼しさに、心許なさを感じるファルナ。

とりあえず今の個室に居る限りは、誰の目にも触れない事を

何度も心の中で繰り返して落ち着きを取り戻す。

 

そして気を取り直してファルナは上着を広げてみる。

 

「こっちが上着だね・・・

 うーん、見た感じ普通そう?

 へー、今の服みたいなヒラヒラが付いてるんだ。」

 

両肩の部分でリボン結びされた、肩を出すデザインの白い上着。

スリーブにはフリルが付いており、服を広げて見た所は普通の可愛らしいもの。

 

今更ながら、宿泊場所でもないのに服を脱ぐ事に、

彼女は恥ずかしさを強く感じる。

 

「この服は・・・うん、多分こうやって着るんだよね。

 よいしょ・・・っと。」

 

白い服に袖を通すファルナ。

 

「うん、これは可愛いかも!特に変なところも・・・

 って、何これ―!!」

 

ぐるっとその場で自分の上着を着た姿を確認したファルナ。

着てみて初めて分かった事に対し、今日何度目か分からない赤面。

何事であったか、それは・・・

 

・・・胸元が大きく開いているデザインだったのだ。

 

 

 

「わーん!こっちもダメだったー!」

 

 

 

ファルナはカーテンで身を隠しながら、再び外の二人に顔を出す。

一通りファルナが服を着ている事を悟ったメルティは、

彼女に満面の笑顔で言う。

 

「ふふ、どうしたんですかファルナちゃん。

 カーテンが邪魔で見えないですよ、ちゃんと見せてください!」

 

「だ、だってー!

 上も下もこれ、大事な所が全然隠せてないんだけど!!」

 

「もー、大げさですねファルナちゃん。

 そんな服が売ってる訳ないじゃないですか。」

 

戸惑うファルナを見ながら、楽しそうに口元に手を当てて

メルティは笑って言う。

 

恥ずかしさで中々出て来られないファルナの様子を見て、

店員は彼女に言った。

 

「ふふ、着慣れない服って最初はみんなそういう感じですよ。

 絶対に変じゃありませんから、お連れさんに見せてあげて下さい!」

 

「うー、そういう物なのかなあ・・・」

 

ファルナは店員の言葉で説得され、渋々と全身を見せた。

 

フリルの付いた白い上着と、プリーツの多い黒のミニスカート。

対照的な色の組み合わせで、色合いだけを見れば爽やかでファルナ自身も気に入ってはいる。

 

しかし問題にしているのは上着もスカートも、やたらと肌の露出が多い事だった。

彼女を見た瞬間、メルティは両手を組んで浮き立った。

 

 

「わぁ・・・!ファルナちゃん、可愛いですよ!

 店員のお姉さん、良い感じです!こんな感じです!」

 

「そうですか!

 ご要望通りに選べて良かったです!

 是非検討してみてくださいね。」

 

盛り上がっている二人とは反対に、半分涙目でいるファルナ。

普段と露出が違いすぎる今の衣装に慣れる気がしなかった。

 

彼女は胸元とスカートの裾を手で隠しながらメルティに尋ねる。

 

 

「メルちゃん、本当に一体何てお姉さんに言ったの?

 肌を出すって言ったけど、これはさすがに・・・」

 

彼女の問いに、メルティは悪びれずに答える。

 

「ふふふ、私なりにちゃんと考えてお願いしましたよ♪」

 

「えぅ・・・?」

 

 

 

「気になる男の人をドキドキさせるような

 『少しエッチな服』でお願いしちゃいました♪」

 

 

 

「がうぅぅぅーーー!!がうーーっ!!」

 

【挿絵表示】

 

 

 

 

久々に繰り出されるファルナの『なきごえ』。

・・・涙目で繰り出しても、何の迫力も効果も無かったようだが。

 

 

「ま、まあまあ!

 これならスゥくんもドキドキですから!

 自信を持ったらいいと思いますよ、ファルナちゃん。」

 

「うー・・・本当かなあ。

 だけど、せめてもう少しだけ胸は隠したいんだけど・・・」

 

ファルナは胸元を押さえたまま、妥協案を二人に求める。

彼女の言葉を聞いた店員は、ファルナと二人で試着室に入った。

 

「そういう事でしたら、この服はこんな事も出来ますよ?」

 

「お、お姉さん?

 わ、わーっ!ほどかないで!脱げちゃうよ!!」

 

店員はカーテンを閉めて、両肩の部分のリボンを緩めた。

そしてリボンを長めに結び直した。

 

すると胸元の布が上の方に引っ張られ、

幾分か隠れる面積が増えた。

 

「どうですか?

 これくらいなら慣れそうですか?」

 

店員に言われ、鏡で自分の正面を見てみるファルナ。

彼女はほっとした顔で店員に言う。

 

「わあ、だいぶ隠れた!

 うーん・・・これぐらいなら・・・」

 

渋々な口調とは裏腹に、ファルナの表情は少し嬉しそうな物であった。

メルティにツルハとの話を正直に話した時点で

ある程度の露出は覚悟していたという事もあるが、

次第に見慣れてきて服のデザインの良さを感じ始めていた。

 

ファルナは試着室から出て、メルティに向き合う。

メルティはファルナの変化を見て言った。

 

「あらら、ちょっと隠したんですね?」

 

「うん、これでもまだ恥ずかしいけどね。」

 

「むー・・・ファルナちゃん、せっかく胸があるのに勿体ないです・・・」

 

メルティは自分のそれと比較して渋い顔をする。

 

「そ、そんな事言ったってー・・・

 でも、何だか気に入ってきちゃった!

 私、この服にする!

 ・・・

 ごめんね、メルちゃん。

 せっかく手伝ってくれたのに文句ばっかり言っちゃって。」

 

落ち着きを取り戻したファルナは、

これまでのメルティへの発言を反省してうなだれる。

メルティは特に気にしない様子で返事をした。

 

「ふふ、いいんですよ!

 結局ファルナちゃんが気に入る服が選べたんですから!」

 

「うん!

 本当にありがとう、メルちゃん!」

 

「どういたしましてです!

 それに・・・」

 

メルティは意味深な笑みで言葉を続ける。

 

「慣れてそのリボンを下げる日も楽しみですし♪」

 

「そ、そんな日は来ないよーっ!!

 がうぅぅぅーーーっ!!」

 

 

何はともあれ、ファルナは気に入る服が選べたようだ。

 

 

 

 




個人的には露出の少ないふわっとした服の方が好きですが、
普段そういう服を着ている子が露出の多い服を着るのって良いと思いませんか・・・?
というノリで書きました。

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