まっしろレポートとふたつの炎   作:アリィ

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Report1-2 [はじめてのパートナー]

[Report1-2 はじめてのパートナー]

   翌朝

               オーキド研究所

 

スゥ「なんか昨日は興奮して眠れなかったな~・・・

  それにしても、研究所にこんな早くに来ても博士はまだいないかなー。」

               ガチャ

?「きゃあぁぁぁ~~~ッ!」

               バサバサバサッ!

 

スゥが研究所に入ったやいなや、盛大な物音が。

スゥ「わわ、また博士の研究資料か・・・。君、だいじょうぶ?」

バラバラになった資料の山を見ると、悲鳴の主の小さな手がちょこんと生えただけのような状態だった。

スゥは慌てて手をとる。

?「あぅ・・・ごめん。ありがとうね。」

中から出てきたのは火のように赤く、長い髪が特徴的な少女。

体はスゥより二回りほど小さく15歳頃の幼い顔つきをしている。

薄い赤色をした袖と裾の広い一続きの服をすっぽりと被って、首には白いマフラーを巻いておりふわふわした印象を与える。

スゥ「・・・?」

?「?」

スゥ「君、誰?研究所に女の子いたっけ?」

 

スゥは散らばった資料を慣れた手付きで整理しながら少女に尋ねる。

 

?「あ、はい。わたしはヒトカゲっていいます。みんなにはひーちゃんって。」

スゥ「ヒトカゲ?」

ヒトカゲ「はい。ポケモンのヒトカゲです。

   昨日、博士にここに来るように言われて来ました。」

スゥ「ポケモン・・・本物はじめて見た。ほんとに人間みたいだなー。」

  (・・・それに、可愛い・・・)

 「俺の名前は・・・」

ガチャ

ヒトカゲ「あ、博士ー。」

博士「おおヒトカゲ、資料の整理ご苦労さん。

   ・・・!

   スゥ!こんな朝早く、どうしたんじゃ?」

 

               ガチャ

ノン「俺も来たぜ、オヤジ。昨日の話の返事だ。なあスゥ。」

スゥ「ナイスタイミング、ノン。」

 

それから・・・

 

 

博士「・・・そうか、受けてくれるか。それでは、この図鑑を受け取ってくれ。」

スゥ「これがポケモン図鑑ですか。」

博士「そうじゃ。見つけたポケモンの姿が自動的に記録されるハイテクな図鑑じゃ。どうか頑張ってそれを完成させて欲しい。」

ノン「それでオヤジ。最初のパートナーはどうするんだ?腕ずくで捕まえてくるのか?」

博士「うむ、最初の一人なら心配いらん。ノン、スゥ、そこの机の上にボールがあるじゃろ。その中から一人選んで最初のパートナーとしなさい。」

スゥ「中、ってこのボールの中、って事ですか?」

博士「これはモンスターボールといって、これをポケモンに当てて捕まえるんじゃ。それ、選びなさい。」

スゥ・ノン「へぇ~・・・」

 

博士の指す机の上には3つのモンスターボールが。

 

ノン「とりあえずみんな出て来い。」

               ボンッ

中から現れたのは

一人目は澄んだ水のような青い髪の女の子。背中に甲羅のような飾り(?)を背負っているのが特徴的だ。

水色の上着を羽織っている、おとなしい印象の子だ。

 

二人目は若草のような緑色の髪の少女。頭には大きな何かの植物の種のような飾り(?)が。

若葉色の中に所々濃い緑色の模様の付いたトップに、短めの深緑色のスカートをはいている活発な印象。

二人ともヒトカゲと同程度の年齢だ。

 

三人目は・・・

 

スゥ「博士~。このボール空っぽですが?」

博士「うむ?

   おお、そうじゃった。ホレ、この娘が三人目じゃ。」

ヒトカゲ「私ですよっ♪」

スゥ「ヒトカゲが三人目?じゃあこの子も選んでいいんですか?」

博士「もちろんじゃ。」

ノン「なんだ、スゥ。その子知ってるのか?」

スゥ「いや、ついさっきね。」

ヒトカゲ「えへへ、さっきは助けてくれてありがとうね~、スゥ。」

スゥ「・・・。

  ねえ、博士。俺、この子選びます。

  いいかな?ヒトカゲ。」

ヒトカゲ「えと・・・」

スゥ「い、嫌だった?」

ヒトカゲ「ん~ん。スゥはさっき私を助けてくれたし、きっといい人だよ。

    喜んで。よろしくね、スゥ!」

スゥ「・・・ん。」

博士「もう面識があるみたいじゃが、改めて自己紹介したらどうじゃ、ヒトカゲ。」

ヒトカゲ「はいっ。

   私は[炎]ポケモン、ヒトカゲ。

好きな食べ物はリンゴ!得意なのはひっかく!」

緑の子「それと、力持ち。」

ヒトカゲ「ふーちゃんヒドい~・・・。

   と、とにかくよろしくっ!」

スゥ「ん。よろしく、ヒトカゲ!

  俺はスゥ。もう知ってるよね。」

 

ノン「じゃあ、俺は後の二人から選ぼうかな。まずは君、何て言うポケモン?」

青い子「・・・」

博士「その子はゼニガメといってな。水を操る水タイプのポケモンじゃ。恐らくまだ水の扱いは出来ないじゃろうがな。

   人見知りが激しい子だと助手から聞いとったが、本当じゃなー。」

ゼニガメ「・・・よろしく」

ノン「(・・・すっげ苦労しそうだな・・・会話。)」

 

緑の子「あたしはフシギダネっての。

    草タイプのポケモン。

    頭の蕾は飾りじゃないよー、ちゃんと生きてるの。

    好きなことはひなたぼっこ!

    よろしくねー。」

博士「さて、どうするんじゃ、ノン?」

ノン「どうするかな・・・。

  (一緒に喋りやすいのはフシギダネの方なんだろうけどな。

  ・・・ゼニガメは人見知りか・・・。)」

 

ノンはしばらく考え、何か決断する要素があったのか、こう答えた。

 

ノン「決めたぜ。ゼニガメにする。」

博士「うむ、そうか。

   ちゃんと心を開いてくれるといいな。」

ノン「それぐらいの事はできないと、きっといいトレーナーにはなれないだろうからな。」

博士「(ほぉ・・・。)」

 

ノン「よろしくなっ、ゼニガメ!」

ゼニガメ「・・・っ」

ゼニガメは見慣れない人間に喋り掛けられ、身を竦める。

ノン「怖がらないで。俺の名前はノン。間の抜けたような名前だろ?

  まあ、スゥも似たようなもんだがな。」

スゥ「むっ。ノンの方がのうてんきみたいな響きで間が抜けてるじゃんか。」

ノン「何言ってんだ。スゥなんて力が抜けてそうな名前してる癖に。」

スゥ「ぐっ。

  ・・・まあ、どっちもどっちって事にしといてやるよ!」

ゼニガメ「・・・クスッ」

スゥ「あっ」

ノン「おっ、笑ったな?一歩前進だな!」

ゼニガメ「・・・!あ・・・

    ・・・あの

    ・・・よろしくね、ノンさん。」

ノン「ああ。よろしく、ゼニガメ。」

二人の間の抜けたやりとりの可笑しさに、ゼニガメは少しだけ心を開いたようだ。

博士「(・・・まあ、ナイスコンビという事なんかのう。)」

 

博士「フシギダネ、スゥのお母さんはこれからスゥが居なくなって寂しいじゃろうて。

   スゥのお母さんに合ってみる気はないかね?」

フシギダネ「うん。いいよ~。あたしは冒険よりは家でのんびりとしてたいしね~。」

 

博士「それと、ノン、スゥ。」

スゥ・ノン「はい。」

博士「せっかくじゃ。それぞれに名前でもつけてやったらどうじゃ。

   ヒトカゲだのゼニガメだの種族名で呼ばれるのは、ワシらが人間、人間って呼ばれてるようなもんじゃからな。」

スゥ「あっ、言われてみれば確かに・・・。味気ないな。

  ヒトカゲ、どんな名前がいい?」

ヒトカゲ「えっ?

   ・・・ん~、かわいくてかっこいい名前!」

スゥ「え?"かっこいい"も入るの?

  んー、ずいぶん難しいの言ってくれるな~・・・

  ・・・

  ・・・

  ・・・ファルナっていうのはどうかな?」

ヒトカゲ「ファルナ?

   ・・・うん!すっごくいい!

   ねえスゥ、どういう意味?」

スゥ「いや、出元を言うとね、昔読んだ本の中の竜の名前なんだ。

  それが確か火の竜だったから、炎ポケモンのヒトカゲなら合うかな~って。」

ファルナ「へぇ~っ。

   それじゃあ、私ファルナ!改めてよろしくねっ。」

スゥ「ん。よろしく、ファルナ!」

ファルナ「えへへ、私の名前~♪ファルナ~♪」

 

ノン「ゼニガメ、お前はどんな名前が欲しい?」

ゼニガメ「ぇ・・・っと、ノンが決めてくれるのなら何でもいいよ。」

ノン「そうか。じゃあちょっと待ってろ、考えるから。

  (・・・これからも仲間が増えるごとにニックネーム付けるのなら、何か統一性があれば今後名づけやすいかな。

   見た目の特徴にするか、種族名をもじるか、さてさて。)

  ・・・

  よし、決めた。アクアっていうのはどうだ?」

ゼニガメ「うん。 

    ・・・ありがとう。」

ノン「よっしゃ!じゃあ、アクア。これからよろしくな。」

アクア「アクア・・・私の名前。

  よろしくおねがいします、ノンさん。」

アクアは自分に与えられた名前を気に入ったようだ。

彼女の表情からは分かりにくいが、明らかにノンへの口数が増えたことでノンはそう思った。

 

今までの種族を"名前"としてきたヒトカゲとゼニガメ。

スゥとノンから、自分達だけの名前を与えられた事をファルナとアクアは喜んでいた。

・・・そんな彼女達を羨ましそうに見ている者が。

 

フシギダネ「・・・名前、いいなぁ。」

 


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