まっしろレポートとふたつの炎   作:アリィ

13 / 72
Report2-8 [お勉強会]

Report2-8 [お勉強会]

 

 

ノン「もどってこい、アクア!」

 

アクア「はい!」

 

ノン「やったなアクア!リベンジできたぜ!」

 

アクア「ノンさんのおかげですね。」

 

ノン「お前が強くなったからだよ。

  ありがとな!」

 

ノンはアクアの頭を少し強めに撫でてやった。最初のバトルが終わった時とは違う意味を込めて。

感情を表に強く出さないアクアも、今回はリベンジを果たせた事がずいぶん嬉しいようだ。

 

アクア「はいっ♪」

 

スゥ「ファルナ、よく頑張ったな。」

 

ファルナ「・・・スゥ、ごめんね。

   止めてくれてありがとう。もう力が残ってなかったの・・・。」

 

スゥ「そんなに凹まないで。今日もちゃんと[ひのこ]が使えただろ?

  それだけでもすごい進歩なんだし、今日はそれでいいよ!」

 

ファルナ「で、でも・・・」

 

スゥ「確かに、負けたのは悔しいけどね。だけど頑張って負けたんだから、仕方ないよ!

  また今度は俺達が勝ってやればいいだろ!

  頑張ってくれてありがとうな、ファルナ!」

 

ファルナ「・・・うん!」

 

スゥ「あ、そうだ。後ろ向いて。リボン結びなおしてあげるから。」

 

ファルナ「ありがとう。おねがい、スゥ。」

 

スゥ「えーと、こうでいいのかな?」キュッ

 

 

ノン「おいスゥ。」

 

スゥ「ノン、今回は負けた。

アクアの新しい技、強いな。

  ファルナの[ひのこ]なら勝てると思ったんだけど・・・。」

 

ノン「ああ。こっちだって短い間だけど鍛えてたからな。

  だけどな、アクアとファルナの強さにはそんなに差は無いと思うぜ。」

 

スゥ「え・・・?」

 

ノン「今回は絶対に勝つ自信があったんだ。

  アクアはファルナに対して『相性』が良いからな。

  俺達の方がずっと有利なんだ。」

 

スゥ「『相性』?」

 

ノン「やっぱり知らなかったんだな。まあ、まずはファルナをポケモンセンターに連れて行ってやれ。

  俺もアクアを診てもらうから、そこで教えてやる。」

 

スゥ「ん、わかった。ファルナ、歩けるか?」

 

ファルナ「うん。歩くくらいなら平気!」

 

スゥ達はそれぞれのポケモンを治療してもらう為にポケモンセンターへ戻ることにした。

 

 

               ~道中~

 

               トレーナー組

 

ノン「あ、そうだ。

  スゥ、お前が負けたんだから賞金を払って貰わないとな。」

 

スゥ「や、やっぱり払わないといけないか。」

 

ノン「別に今じゃなくても構わないぜ。どうせ今は貧乏なんだろ?」

 

スゥ「び、貧乏って言うな!・・・その通りだけど。」

 

ノン「まあ、金が無い理由はどうやら『アレ』を買ったから、って所だろうけどな。」

 

ノンは前方を歩いているファルナの髪を見ながら言った。

 

スゥ「あれはいい買い物だったよ!

  ノンもそう思うだろ?」

 

ノン「わかったわかった。

  ま、いずれ賞金は払ってくれ。トレーナーの規定だからな。

  賞金は1000円、って所でいいかな? 

  ・・・多分、あのリボンよりは安いだろうけどな。」

 

スゥ「ぐっ、相変わらずチクチク刺してくるな、ノン・・・

  今度会ったときには払えるようになってるから、その時に払うよ。

  だけど、次は俺が賞金を貰う側だよ。」

 

ノン「勝って兜の緒を締めよ、ってな。俺は油断しないからな。」

 

スゥ「分かってるって。強くなってるから、楽しみにしとけよ!」

 

スゥ「ところで、アクアがずいぶん口数増えたね。ちゃんと仲良くなれたんだな。」

 

ノン「ああ、アクアはただ人見知りが激しいだけだ。

慣れた人間ならよく話せる子だ。」

 

スゥ「いやー、ノンはぶっきらぼうな所が有るからアクアに怖がられてないかなー、って少し心配だったんだけどな。」

 

ノン「いらないお世話だ!」

 

スゥ「あはは、ほら言った傍から。」

 

ノン「む・・・。」

 

 

              一方、ポケモン組

 

アクア「ファルナちゃん、大丈夫ですか?」

 

ファルナ「大丈夫だよ、ありがとう。それにしても、アクアちゃん強くなったね!」

 

アクア「ファルナちゃんも、[ひのこ]が使えるようになってたのは驚きました。

  あんなに火を怖がってたのに、何か有ったんですか?」

 

ファルナ「えへへ、スゥのおかげなの♪

   スゥが『火は怖いばかりじゃないよ』って教えてくれてたから。」

 

アクア「そうだったんですか。

  スゥさんもファルナちゃんを大切にしてくれてるんですねー。

  嬉しそうにしゃべってるファルナちゃんを見てるとよく分かります。」

 

ファルナ「へっ!?

   え、えっと・・・うん。」

 

アクア「ファルナちゃん、髪の毛みたいに顔が赤くなってますよ?

   私、ファルナちゃんが前よりも可愛くなった理由が分かった気がします♪」

 

ファルナ「えぅ・・・そんな事ないよっ!もー、アクアちゃんは前よりなんだか意地悪になったね。」

 

アクア「そうですか?意地悪したつもりはありませんよ?仲が良いんですね、って言っただけです。」

 

ファルナ「あぅぅ・・・。」

 

アクア「ふふふ♪」

 

ファルナとアクアはポケモンセンターまで引き返す道中、近況報告も織り交ぜながら気心知れた者同士の会話を楽しんでいた。

近況報告が転じてファルナはアクアにからかわれる事になったが・・・。

からかっているアクア自身も、旅を始めるまではこれほど相手と冗談を交わす性格では無かったのだが

この数日の旅が良い影響なのか、少し性格が明るくなっていたようだ。

 

               

 

                 治療後

            [ポケモンセンター待合所]

 

スゥ「ノン、さっき言ってた『相性』って何だ?」

 

ノン「まずはな、ポケモンには『属性』っていうものが有るんだ。

  例えば、

  アクアなら『水』、

  ファルナなら『炎』

  フシギダネなら『草』

  といったな。ここまでは分かるな?」

 

スゥ「うん。」

 

ノン「それでここからが『相性』の話だ。

  『水』属性っていうのは『炎』タイプに対して攻撃、防御の両方で有利なんだ。

  水の技[あわ]は炎タイプのファルナには効果が抜群。

  逆に、ファルナの[ひのこ]は水タイプのアクアにはあまり効かない。」

 

スゥ「そうだったんだ・・・。確かに、火が水に弱いっていうのは分かるけど、ポケモン自身にも相性って有ったんだ。」

 

ファルナ「じゃあ、私の[ひのこ]がアクアちゃんの[あわ]に押し返されちゃったのも、弱点だったから?」

 

ノン「そういうことだ。逆に、ファルナの『炎タイプ』はフシギダネのような『草タイプ』に強い。

  他にもたくさんの『属性』が有って、それぞれの間での『相性』っていうのはまだまだたくさんある。」

 

スゥ「はあー、ポケモントレーナーになるって結構勉強もしないといけないんだな。」

 

ノン「当然だ。それに出会った事のないポケモンだらけだしな。

  ・・・

  フッフッフ・・・それじゃあ、今から勉強会をお前とファルナの為に開いてやる。

  さあ、メモを出せ、スゥ!」

 

スゥ「え、ええっ!?いや、何も今じゃなくても・・・!」

 

ノン「今やらなくて何時やるつもりだ?

  大体、俺と張り合うつもりなら相性くらいは完全に覚えてないと話にならないぜ。

  ほら、さっさとメモを開け!」

 

スゥ「ええー!!勉強は嫌いなんだって!お前も知ってるだろ!!」

 

ノン「問答無用!」

 

ファルナ「あ、あはは・・・

   ねえ、ノン。私は後でスゥから教えてもらうから、外でアクアちゃんと遊・・・」

 

ノン「お前もだ、ファルナ。そこに着け!」

 

ファルナ「うわあぁーん!アクアちゃん、助けて~!」

 

アクア「それじゃあ、ファルナちゃん。がんばってください♪」

 

ファルナ「アクアちゃんまで~!!」

 

それから勉強嫌いな二人に、ノンによる勉強会が行われた。

 

ノンは得意気に語るとおり、『属性の種類・相性』が完璧に頭に入っていた。

ちなみにアクアは旅の道中、ノンからこういう知識を教わっており、アクアの物覚えが良かった為か、

彼女もノンの助手を務められる程に『属性』に関する知識が定着していた。

 

 

                  4時間後(夕方)

              [ポケモンセンター待合所]

 

 

スゥ「・・・・・・・・」

 

ファルナ「・・・・・・・・・」

 

ファルナ「・・・スゥ。今ね、私、スゥに選ばれて本当に良かったと思ってる・・・。」

 

スゥ「・・・そうか。俺は今、ライバルに選ぶんなら他を当たれば良かったって思ってる・・・。」

 

ノン「お前らな・・・」

 

放心状態の二人は、有り難い授業を延々と行ってくれた誰かへの当てつけの言葉をつぶやいた。

 

アクア「ふふふ。ノンさん、さすがに一度に全部は疲れますよ。」

 

ノン「でも、アクアはよく覚えてたじゃないか。俺がうっかり忘れてた事も覚えてたし。」

 

アクア「私は、お勉強は別に嫌いじゃありませんから。ノンさんのお話は、私が知らない事ばかりで楽しいですし。」

 

ノン「ほら、スゥとファルナ。どうだこの心掛けの違い。」

 

スゥ「へーい・・・」

 

ファルナ「ふぁーい・・・」

 

アクア「だけど二人とも、よく頑張りましたね。」

 

ファルナ「どうしてアクアちゃんこんな難しいの覚えられるの~・・・。」

 

スゥ「つ、疲れた・・・。それにお腹空いたな~・・・。」

 

ノン「ああ、そういえば昼ご飯食べてなかったな。」

 

スゥ「お前、それを忘れて授業してたのかよ・・・。」

 

ノン「ははは、じゃあ、ご飯食べに行こう。もうこの時間なら晩ご飯だな。」

 

アクア「スゥさん、ファルナちゃん、一緒にご飯食べに行きましょう。」

 

ファルナ「よし行こ!ねえスゥ、早く行こっ!戦ってからずっとご飯食べてないからもうペコペコだよ!」

 

スゥ「おう!さあ、何食べようかなー。」

 

ノン「ご飯食べに行くって言った途端に元気かお前ら。」

 

 

 

              「オムライス専門店 ポケの樹」トキワシティ店

 

スゥ「おお、このオムライスでかい!」

 

ファルナ「本当!これで普通の大きさなんだよね?」

 

ノン「しかも安い。」

 

アクア「お腹も空いてるから、絶対に美味しいですね!」

 

全員「いただきまーす!」

 

スゥ達は待ちに待った夕食に舌鼓を打っていた。

特にバトルと詰め込み勉強の上に、昼食抜きだったファルナはこの時を待ちわびていたようだ。

 

ファルナ「スゥ、そのチーズのやつ少し食べてみたい!私のもあげるから!」

 

スゥ「ん、いいよ。ほら、あーん。」

 

ファルナ「え、えっ・・・?

   ・・・あ、あーん・・・」

 

ノン「・・・

  (こいつら、自分達が恥ずかしい事やってるって分かってるのか・・・?)」

 

アクア「(・・・いいなー・・・ファルナちゃん)

  ・・・」(ジー)

 

ノン「うん?どうした、アクア?ソースでも付いてるか?」

 

アクア「・・・(はぁ)

  いいえ。なんでもありません。」

 

ノン「?」

 

スゥ「なあ、ノン。」

 

ノン「なんだ?

  あのな・・・まずは口を拭いて喋れ。」

 

スゥ「あ、ほんとだ。

  ・・・

  えーと、それでさ。ノンは10人以上も図鑑データ登録したのに、まだ仲間増やしていないんだね。」

 

ノン「そうだな。そろそろ仲間を増やさないといけないかな、とは思ってるさ。

  アクア一人だとアクアの負担も大きいし、苦手な属性相手だと苦しいしな。」

 

アクア「私の事は心配いりませんよ。じっくり考えて増やしてください。」

 

ノン「ありがとうな、アクア。だけど、これからはきっと苦しくなってくるだろうから

  二人目のポケモンを探してみようかと思ってる。」

 

スゥ「誰にするか、もう考えてるのか?」

 

ノン「だいたいな。」

 

スゥ「誰?」

 

ノン「それを言ったら対策を取られるから言わない。」

 

スゥ「ちぇっ、ケチだな。」

 

ノン「賞金、今ここで払うか?」

 

スゥ「ウソですごめん。今度会うまでの楽しみにしておきます。」

 

ノン「分かればいい。

  俺もだけど、スゥもそろそろ増やした方がいいんじゃないか?」

 

スゥ「うん。俺もそのつもりでモンスターボールは買っておいたんだ。」

 

ノン「そうか。じゃあ、選ぶポケモンはしっかり考えるんだな。手持ちで連れて行けるのはリーグの規定で6人までだ。」

 

スゥ「そうなのか?6人を超えたらどうなるの?」

 

ノン「6人を超えたら、それ以外のポケモンはポケモンセンターの管理するパソコンに転送される。」

 

スゥ「ぱ、パソコン・・・って、博士の研究所にあるあの小さい箱!?そんな所でポケモンは暮らせるのか?

  ・・・と言うか、そもそも入るの!?」

 

ノン「一応、『快適な空間』らしい。

  言っておくが、あの箱の中に『ポケモンを押し込む』ワケではないからな。

  お前は何か勘違いしてるかもしれないが。」

 

スゥ「あ、違うのか?」

 

ノン「やっぱり誤解してる・・・。モンスターボールにポケモンを収納できるだろ?それの応用らしい。

  オヤジが『ポケモンを量子データ化してどうこう・・・』だとか何とか難しい説明してたけど、

  さすがに理解できなかった。」

 

スゥ「さっぱり分からないけど、とりあえず大きいモンスターボールみたいな物かな?

  パソコンの中っていうのは。」

 

ノン「そんな感じかもしれないな。

  まあ、それでも俺はパソコンにポケモンを預けるっていうのは抵抗があるんだ。

  だから、捕まえるのも出来る限り6人丁度にする。」

 

スゥ「俺もなんだか嫌だな。ファルナをパソコンに預けたりしたら、寂しくてかわいそうだ。」

 

ファルナ「私は寂しいのはイヤだなー・・・」

 

アクア「『快適な空間』かもしれませんけど、やっぱり寂しいのは辛いです。」

 

ノン「普通はそうだと思うぜ。

  だから、無闇には手持ちを増やさないでしっかり考えるんだな、スゥ。」

 

スゥ「分かった。ありがとうな、ノン。」

 

 

 

                   [食後・夜]

              [ポケモンセンター宿泊施設]

 

ノン「今の内にさよならを言っておこうか。

  明日は俺とアクアはちょっと寄る場所があるからな。」

 

スゥ「わかったよ。次はいつ会えるか分からないけど、しばらくお別れだね。」

 

ファルナ「アクアちゃん、また会おうね!楽しみにしてるよ!」

 

アクア「ファルナちゃんもお元気で。今度会った時、またお話聞かせてくださいね♪」

 

ファルナ「えぅ・・・。アクアちゃんからかうから、あんまり話さないかも・・・。」

 

スゥ「ん?話す話さないって、何の話?」

 

ファルナ「な、何でもないっ!!スゥには内緒のお話だから!」

 

スゥ「俺には内緒?」

 

ノン「スゥ、女性の内緒話は無理に聞き出すもんじゃない。」

 

スゥ「ぐむ・・・」

 

アクア「くすくす」

 

ノン「じゃあな。またいずれ会おうな。」

 

スゥ「ん。元気でな、ノン。」

 

そうしてスゥ、ノン達は別れの挨拶を済ませ、それぞれの部屋へ帰っていった。

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。