Report2-7 [それぞれの成長]
ポケモンセンター待合所
翌朝、スゥ達は朝食を食べた後にこの日の行動予定について話していた。
ファルナの髪には昨日買ったお気に入りのリボンが結ばれている。
スゥ「昨日の夜に少し話したんだけど、
トキワシティにはポケモンリーグ公認のジムが有るみたいなんだ。」
ファルナ「ジムってなに?」
スゥ「ジムっていうのはトレーナーとポケモンが鍛える為の対戦用の施設なんだって。
あと、ポケモンリーグのバッジ認定試合もやってるみたい。
ジムに行けばトレーナーと戦えるんじゃないかな。
それに、ノンも同じこと考えてるかもしれないし。」
ファルナ「へえーっ。でも、みんな強いんじゃないのかな・・・?
私達、まだバトルの経験少ないし・・・。」
スゥ「それは見に行ってみないと分からないよ。
どんなレベルの人達がいるのか、とりあえず見に行ってみようよ!」
スゥはポケモンセンターを後にし、トキワシティのポケモンジムを目指した。
[トキワシティジム]
ファルナ「あ!あの建物かな?」
スゥ「大きい建物だなー!あの中でポケモンがバトルしてるのか~。
えーと、入り口はあそこだよな。」
スゥはジムの入り口ドアに手をかけて引っ張った。
しかし、鍵が掛かっているようで開く気配がない。
スゥ「あ、あれ・・・?開かない。朝早いからまだ開いてないのかな・・・?
ん?なんだこの貼り紙。」
周りをよく見ると、ドアの脇に貼り紙を見つけた。
スゥはその内容を口にしながら読み上げる。
『 [トキワシティジム来訪各位]
現在、ジムリーダーが体調不良で入院中の為、一時的にトキワシティジムを閉館させて頂いております。
それに伴い、『グリーンバッジ』認定試合及び、そのお申し込みはジム再開まで行えません。
皆様には大変ご迷惑をおかけしてしまい申し訳ございません。何卒ご了承ください。
[ポケモンリーグ運営委員会] 』
スゥ「ええっ、ジム閉館!?」
ファルナ「あらら…どうしよう、スゥ?」
スゥ「んー、完全に行く宛が無くなっちゃったなー・・・。
もう次の街に行っちゃおうか?」
ファルナ「私はそれでもいいよ!でも、もうトキワシティでやり残した事はない?」
スゥ「やり残したことか・・・。
ノンを探すっていうのも、ノンがこの街に到着してるかさえ分からないしなぁ…
あ!まだポケモンリーグ本部ゲートって見てないな。
タウンマップを見たら、この近くにあるみたい。
見に行ってから次の街に行こう!」
ファルナ「はーい!」
トキワシティジムが閉館中という事で、
街を去る前に近場の名所を見に行くことにしたスゥ達。
トキワシティの西に位置するポケモンリーグ本部ゲートを目指し、
レンガ造りの綺麗に整備された道を行く。
ファルナ「ねえスゥ、思ったんだけどね。ノンとアクアちゃん、もしかしたらもう次の街に行ってるかもね。」
スゥ「確かにそうかもな。ノンの性格なら、
ムダな事をしないですぐ次の街に行きそうだ。」
ファルナ「逆にスゥはのんびり屋さんだよね。
昨日はずっと着いてから遊んでたもんね!」
スゥ「ファルナは、これからは遊ばずにどんどん先に進む方がいいかな?」
ファルナ「ううん。私ものんびり行きたい!
ゆっくり楽しんで旅しよっ!」
スゥ「賛成!俺達は俺達のペースで冒険しような。」
ファルナ「あ、スゥ!前から来る人、あの人、もしかして・・・!」
ファルナは道の向こうから見覚えのある顔を見つけた。
ノン「あっ!スゥ、ファルナ!」
アクア「えっ?
あ!ファルナちゃん、スゥさん!」
ゲートまでの道が一本道であった事が幸いし、
ちょうどゲートから歩いて帰ってきたノン達と再会したスゥ達。
ファルナはまるで久しぶりに会ったかのように
アクアの顔を見た途端、嬉しそうに駆け寄った。
スゥ「ノン!アクア!」
ファルナ「やっほーアクアちゃん!元気だった?」
アクア「はい。ファルナちゃんも、スゥさんも、元気そうですね。
良かったです。
あの…ファルナちゃん、そのリボンは?」
ファルナ「えへへ、これね、スゥに買ってもらったの!
どうかな。似合ってる?」
アクア「いいなぁ、似合ってますよ。
ファルナちゃん、少し見ない間に可愛くなった気がします。」
ファルナ「そ、それは気のせいだよ!
でもありがとう、アクアちゃん。」
ほんの数日会っていないだけであったが、
ファルナもアクアもお互いに色々有った事で話が尽きないようだ。
彼女らだけではなく、残りの二人も立ち話で近況を語り合っている。
スゥ「ノン、まだトキワシティにいたんだ!」
ノン「ああ。まずはトキワを拠点に少しの間この周囲を探索しようと思ってな。
だけどジムに行ってみたら『ジム閉鎖中』と書いてるし、それなら仕方ないと思って
リーグ本部ゲートまで行ってみたんだが…
今度はガードマンに[バッジ]が無いと通れないと言われて引き返してきた所だ。」
スゥ「バッジが無いと…か。
そうだ、そもそもバッジって何なんだ?」
ノン「バッジは全部で8枚あって、全て持ってないと通してくれない。
バッジはカントー地方の主要8都市のジムリーダーを倒さないといけないらしい。
つまり、ポケモンリーグへの挑戦権って事だ。」
スゥ「ポケモンリーグ…
面白そうだな!
よし、まずはバッジ集めを目標にしよう!」
ノン「俺も同じこと考えてたよ。どっちが先に全部集められるか勝負だな!」
スゥ「望む所だ!絶対ノンより先に集めてやるからな!」
ノン「あ、そうだ。集めるといったら・・・
スゥ。お前図鑑どれだけ集まった?」
スゥ「ん?・・・
・・・・・あっ。」
ノン「おい、まさか」
スゥ「あ、あははは・・・『見つけたポケモンの数』は・・・
『4』だって」
ノン「おいおい、今まで何やってたんだお前は・・・。」
スゥ「ご、ごめん。図鑑のデータを取ること忘れてた・・・
コラッタ達に襲われてそれどころじゃなかったんだよ。」
ノン「やれやれ・・・。そんなところじゃないかと思ってたけどな。
俺はもう『12』登録した。もっといろんな場所調べてみろ。
少し場所が違うだけで色んなヤツがいるから。」
まあ、図鑑集めは俺の方が上ってことだな。」
スゥ「むっ。確かに『図鑑』じゃ負けてるけどな。
だけど、バトルだったら!」
ノン「…負けないと?
スゥ、次に会った時はバトルだと言った事、覚えてるよな。」
スゥ「覚えてるよ、勿論!」
スゥ「ファルナ、準備はいいか?」
ファルナ「大丈夫だよ!スゥ、このリボン預かってて!」
スゥ「よし、前より強くなった所見せてやろうぜ!」
ノン「研究所でのように行くと思うなよ、スゥ。」
アクア「ファルナちゃん、今日は勝たせてもらいます。」
ファルナ「今度も負けないよ、アクアちゃん!」
スゥ・ノン「勝負だ!!」
スゥとノンはお互いの戦意を確かめ合うと、合図をかけて戦闘を開始した。
ノン「まずは力を見させてもらうぞ!アクア、[からにこもる]!」
スゥ「ファルナ、[ひっかく]だ!甲羅のガードを破るんだ!」
ファルナ「はいっ!
いくよ、アクアちゃん!」
甲羅の模様を呈した光の壁に、ファルナの攻撃がぶつかる。
金属がぶつかるような鋭い音が響き、二人とも弾き返された。
アクア「っ!」
ファルナ「っく~!この甲羅、前よりも硬くなってる!」
スゥ「前よりファルナの攻撃力は強くなったはずなのにアクアが耐えてる!」
ノン「これくらいで驚くな!アクア、そのまま[たいあたり]だ!」
アクア「はあっ!」
アクアは光の甲羅を纏ったままファルナにたいあたりを繰り出してきた。
ファルナ「くあっ!!」
ファルナはアクアのたいあたりの直撃を受けて吹っ飛ばされた。
スゥ「ファルナ!!大丈夫か!?」
ノン「攻撃だってもちろん強くなってる。
しかも前とは違ってアクアへの反動はない!」
アクア「ノンさんが考えてくれた戦法なんですよ。どうですか、ファルナちゃん!」
ファルナ「あうっ、けほっ、けほっ・・・
・・・まだ大丈夫っ!」
スゥ「(まだ、あの時みたいに髪が光ってない・・・)
ファルナ、ガブの時の戦法だ![ひっかく]!」
ファルナ「うん!」タッ
ノン「(まだ甲羅の光は消えてない!押し切れる!)
[たいあたり]だ、アクア!」
アクア「いきます!」ダッ
アクアは背中の甲羅から突っ込むようにして[たいあたり]を繰り出し、向かってきたファルナに対抗した。
スゥ「今だ!」
ファルナ「やっ!」タタッ
アクア「あ、えっ!?」スカッ
ノン「!しまった・・・!」
そのままぶつかり合うように見えたが、ファルナがアクアの[たいあたり]をかわしてアクアの後ろに回り込んだ
ファルナ「やあっ!!」
バキッ!!
アクア「うくっ!!」
ノン「アクア!
くっ、勝負を急ぎすぎたか。」
スゥ「うまいぞ、ファルナ!ちゃんと分かってくれてたな!」
ファルナ「もちろんだよ♪」
ノン「大丈夫か、アクア!?」
アクア「う、うう・・・っ
ま、まだいけます!この前みたいには倒れません・・・!」
アクア「ファルナちゃん、今回は絶対に負けません!」
ファルナ「私だって負けないからね!!
スゥ!私、やっぱり怖いけど、頑張ってみる!」
ボォッ
コラッタ達に囲まれていた時のようにファルナの髪が赤く輝きだした。
スゥ「よし、ファルナ!前よりも強くなった所を見せてやろう!」
ノン「あれは!
やっぱり、ファルナも・・・!」
アクア「炎の力が使えるみたいですね。どうしますか、ノンさん?
もう使いますか・・・?」
ノン「出し惜しみしてる場合じゃなさそうだな。使うぞ、アクア!」
アクア「はい!」
スゥ「ファルナ、一気に決めてやれ![ひのこ]っ!!」
ファルナ「いっけえっ!!」
ボオォッ!
ファルナが繰り出した火の粉がアクアに向かって飛んでいく。
ノン「やっぱり炎の技か!!
アクア、[あわ]攻撃だ!」
アクア「はい!」
アクアが両手の平を向かい合わせると、両手の間に水の塊が出来た。
ファルナの方に投げられた水の塊が大量の[あわ]に分裂して、飛んでくる火の粉に向かっていった。
その泡は飛んできた火の粉を蒸気と変えて打ち消した。
まだ残っている[あわ]がファルナへと押し寄せていく。
スゥ「なにっ、[ひのこ]が!?」
ファルナ「!?
・・・きゃああっ!!」
波のように押し寄せてきた泡がファルナの全身を包み込み、あわの弾ける衝撃が彼女を襲った。
スゥ「ファルナっ!?」
あわが全て弾けてようやくファルナの姿が見えたが、
髪に纏っていた炎は弱々しく消えそうになってしまっていた。
ファルナ「はあっ、はぁっ・・・」
泡によるダメージと、慣れない[ひのこ]による精神的な疲れ、
さらに自分の一番の技が押し負けてしまったショックで
ファルナの戦意は既に残っていなかった。
スゥ「くっ、ファルナ、まだ行・・・
((・・・限界を推し量ってあげることも、トレーナーとしての大事な使命ですよ・・・))
・・・
ファルナ、ごめん。」
ファルナ「スゥ・・・」
スゥ「ノン、俺たちの負けだ。降参する。」
ファルナの弱っている姿を見てスゥはふと医者の言葉を思い出した。
ノンとのバトルはこの一言で決着が着いた。