Report0[人間とポケモン] & Report1-1[はじまり]
[Report-0 はじまりのはじまり]
この世界での「人」とは2種の生き物をまとめた呼称である。
1つは「人間」。力こそ非力ではあるが、知能・知恵に恵まれ、科学を生んだ。
科学はこの世のあらゆる困難を可能にし、彼らは世界中へその種を増やしていった。
もう1つは不思議な容姿・生態・能力をもつ「人間」に近い形をしたもの
-「ポケットモンスター」-
と呼ばれる種である。ポケットモンスター、略してポケモンは炎、水、電気、大地、植物といった自然の力を自在に操る能力を持つ。。
ポケモンの中には人間のパートナーとなる者もいれば、人間とは相容れずに時には人間を襲う者、迫害される者、そして果ては神として崇められるものなど、様々な者がいる。
ポケモンの信頼を得て、共に旅をする人間をポケモントレーナーという。
ポケモンの能力を磨き、それを競う「ポケモンバトル」を彼らは生業とし、トレーナーなら誰もが憧れる「ポケモンリーグ」の制覇を目指し日々精進している。
この物語の主役である少年「スゥ」も、そんなポケモンバトルに魅せられていく者の一人である。
[Report1-1 はじまり]
マサラタウン スゥ宅
?「・・・・・・ぃ」
?「・・・・なさい」
ガッ!!
スゥ「ヅぁっ!・・・つぅ~・・・」
?「いい加減起きなさい!スゥ!」
スゥ「いたた・・・もう少し優しく起こしてよ母さん。結構痛いよ、そのオタマ!」
母「優しく言っても起きないからよ。そもそも普段なら起こすのも面倒くさいから放っとくわよ。
今日は博士から呼ばれてる特別な日なんでしょ?遅れたら失礼じゃないの。」
スゥ「あー、そういえば。昨日電話でそんなこと言われたっけ、何の用事だろ?
・・・どうせ博士の資料を整理するのを手伝わされたりだとか、面倒な事なんだろうけど。」
母「文句言わないの。それに博士と色々話すんだから、いい勉強になるじゃないの。
あれこれ言わないで早くご飯食べて行く準備しなさい。」
スゥ「ん。」
母「その 「ん。」は偉そうだからやめなさいって言ってるでしょ。」
スゥ「ん。」
母「この子わぁぁ~」
スゥ「ん”ん”ん”~・・・」
スゥの母はスゥの頬を斜め下に引っ張った。
よく口答えをするスゥ、そして我が子には容赦無い母、というこの組み合わせにはよくある光景だ。
オーキド研究所
スゥ「やっほー博士ー。遅れてごめ・・・って博士いないや。」
?「お、なんだスゥ。オマエも呼ばれてたのか?」
スゥ「あれ、ノンも?」
ノン「なんか大事な話だとか言ってたけど、そう言っときながら自分が遅刻するか?あのオヤジ・・・。」
スゥ「あっ!
でも、お陰で俺の遅刻は無かったことになったけどね。」
ノン「オマエもオマエだ。まったく、真面目にやってる俺だけバカ見てるじゃねーか。」
まだ来ていない博士を父と呼び、彼とスゥに文句を垂れているのはスゥの幼馴染であるノン。
博士の息子として育ってきた為か、普段は年齢の割に落ち着いた言動を取る。
・・・父と、スゥに対してを除いて。
カチャ
スゥ「あ、やっと来た博士。」
ノン「遅いぞオヤジ。」
オーキド博士「おお、すまんすまん。つい用事が長引いてな。」
ノン「で、話ってなんだ?スゥも呼んで。」
博士「うむ。二人とも、ワシがポケモンの研究をしてるのは当然知っとるな。二人にはワシの研究の手伝いをしてもらいたいと思ってるんじゃ。」
スゥ・ノン「なんだ、いつもの事じゃん。」
博士「いや、今度の事はお前達の人生にも関わるような話なんじゃ。心して聞いて欲しい。」
スゥ・ノン「えっ?」
博士「ワシはポケモンの生態について研究してきた。若い頃は自分でトレーナーとなって世界各地を渡り歩いたりしたもんじゃ。」
ノン「俺が小さいときあまり家に帰ってこなかったよな。」
博士「すまんのぅ、ノン。それがワシの生きがい、人生じゃったからな。」
ノン「分かってるって、もう気にしてないから。オヤジが研究に人生をかけてるってのも今なら分かる事だし。」
博士「・・・それでじゃ。ワシはもう随分歳をとってしもうた。若者のように自由に動き回ることはもうできないじゃろ。
だから二人にはワシの代わりとなって世界のポケモンの生態をその目で調べ、ポケモン図鑑を完成させて欲しい。」
スゥ「え、~っと・・・つまり俺たちにポケモン図鑑完成の旅をしろ、って事?」
博士「そういう事じゃな。いきなりこんな話をしてすまんのう。
じゃが、お前達もそろそろ自分の道を考えなければならない年になってきたのは分かるじゃろ。
ワシの話は、受けたならそれはポケモン研究者兼ポケモントレーナーとなる事を意味する。
世界を旅するには強いトレーナーとなり、あらゆる危険から自分の身を守れなければならんからな。
ワシの願いをお前達のこれからの人生の選択肢として、考えてみてはくれんか。」
スゥ「ポケモントレーナー・・・!でも、俺達はポケモンを扱ったことなんて有りませんよ。
いつも博士の手伝いって言ったら、資料の整理とか木の実取ってくるとかばっかりだったから。」
ノン「そうだな。ちょっと考えさせて欲しいかな。」
博士「不安なのは当たり前じゃろう。出来る限りワシもサポートはするつもりじゃ。
受けてもいいと思ったなら、また此処へ来てワシに教えてくれ。すぐではなくても良い、よく考えてくれ。今日の所はこれまでじゃ。」
夕方 マサラタウン某所
スゥ「ねえ、どうする?ノン。」
ノン「正直、俺に出来るのか分からないけど、オヤジの力になりたいと思ってる。」
スゥ「そっかー。お父さんの跡を継ぐっていう事にもなるしね。」
ノン「別に継ぐとかそういうのじゃ無いかな。あのオヤジが人生をかけるものがどんなものなのか興味がある、っていう所だな。」
スゥ「俺は・・・前から少しだけポケモントレーナーになってみたいなと思ってたんだ。
それで今日この話をされた。でも、いざトレーナーになって旅をするんだと思うとすごく不安でさ・・・。
今はまだどうしようか迷ってる。」
ノン「それならよ・・・一緒にこの話受けようぜ!当然、俺だって図鑑を完成させるにはポケモンを強くしないといけないしな。
オマエがライバルになったら張り合いがあるだろ!」
スゥ「ノン・・・!。
・・・
それ、いいね!!ノンがライバルか!なんか不安が吹っ切れたよ。やっぱり俺、トレーナーになりたい!」
ノン「ちゃんとオヤジの図鑑完成も手伝ってやれよ。
一緒に頑張ろうぜ!それじゃあ、明日オヤジに返事しようか。」
スゥ「オッケー!じゃあ、また明日!」
夜:スゥ宅
母「博士の用事って、そんな大事な話だったの!?」
スゥは母に、今日博士から聞いたことをそのまま話した。
スゥ「それで、俺はトレーナーになって、博士の図鑑完成も手伝おうと思ってる。」
母「・・・そう、男の子は旅に憧れるものだからね。それにあなたも自分の事を決められる年だものね・・・。
・・・寂しくなるわね。時々は帰っておいで、絶対に体は大事にね。」
スゥ「ん。ありがとう、母さん。」
母「もう、だから「ん。」はやめなさいって。」