リビングに向かった俺達は、妹が昨晩作ってくれたご飯をチンして食べ、学校へと向かう。
妹の通う中学とは同じ方向なので、途中まではいつも一緒に通う。
兄としては、妹がいつまでも友達と学校に通わないのは心配でならないのだが、かわいい妹を連れていると周囲に自慢ができるので悪い気はしない。
しばらく歩いていると、俺の腕に温かい感触が伝わった。
ふと横を見ると、妹が俺の腕に絡みついて来ているではないか。
「お、おい。人前でやめろよ……」
取材の一環であることは分かっているのだが、ここは外である。
人目に付くところでイチャイチャするのはお互いに良くないだろう。
しかし妹は、ちっとも離れようとしない。
「これは取材です! お兄ちゃんを独占したい妹が、周りの女の子に敵意をむきだしにして、お兄ちゃんに甘えているところなのです!」
しゃー! と、妹は威嚇してみせる。めっちゃかわいい。
また少し歩くと、別れ道が見えた。
そこで本来ならば妹とは別の道に行くはずなのだが……。
電信柱の影に人がいるのを感じる。
しかも、着いてきてる。
確実に俺を尾行してる。
妹の匂いがする。
……恐る恐る振り返ると、そこには……
俺の胸に当たる妹の鼻があった。
「いや近ぇ! 尾行ですらねぇ! 」
「いやぁ/// 離れるのが寂しくてぇ。えへへ」
えへへ。じゃねえ! かわいいけれども!!
俺はやっとの思いで妹を振り切ると、遂に学校の近くまで来た。
ぎりぎり遅刻にはならなそうだ。
さっきまでは早歩きだったのだが、まだ余裕があることを知って、ゆっくりと歩き始める。
すると、背中に急な衝撃が伝わった!!
「いてて…ご、ごめんなさいっ! 私、急いでて…それで…」
その急な衝撃は、よほど慌てていたらしく、その勢いのまま頭を下げた。
見ると、彼女の腕時計は五分ズレている。
「……って、なんだ。先輩か。誤って損しました。」
「おいこら夏波。損したとはなんだ損したとは。」
知り合いだった。
綺麗な黒髪ををツーテールにしたこの娘は、委員会の後輩で一年生。
夏波 莉華という。
ゆるふわとドジっ子の二つの属性を持つ、キャラ渋滞キャラである。
彼女は休み時間などもよく一緒に俺のところに来てくれて、趣味のライトノベルの話などをする。
委員会も図書委員なので、本が大好きなのだろう。
その中でも、ライトノベルという現代文学に興味を持ったそうな。
莉華に時計がズレていることを話すと、ホッと安心したように息をつき、俺の隣で歩き始めた。
一年生の教室は2階なので、階段を登ったところでお別れする。
俺達二年生の階は4階なので、もう少し登る。
いつもいつも、休み時間の度に大変な4階まで来てくれて、莉華にはほんとに感謝してる。
教室に入ると、俺は目立たないように、窓側の自分の席に座って、カバンの中身を机に詰め始めた。
一通り詰め終わって、ラノベでも読もうとカバンに再度手をかけると、クラスメイトの1人が近寄ってきた。
同じ陰キャでクラス1仲のいい、田島だった。
「おいおい、今日は後輩ちゃんと登校か? お熱いねぇ! 爆ぜろ!」
「フッ、まあな。お前も女と来ればいいのにw」
「てめぇ!」
と、まあこんな感じで、午前中はいつも通り過ごした。
莉華が俺を呼び出したのは、そんな日の昼だった。
続く