妹の部屋に入る。
初めて入った妹の部屋は綺麗にまとまっていて、『女の子の部屋』という表現がぴったりと当てはまる。そんな部屋だった。
入った時から女の子独特のいい香りが部屋中に広がっているし、そんな匂いが鼻をくすぐるたびに、今の状況を認識せざるを得なくさせる。
ーーー妹と、これから寝るんだ。
「お兄ちゃん、恥ずかしいので、先に寝ててください///」
涼菜が顔を沸騰させて言う。
「ああ」と、言われた通り涼菜のベッドに転がる。
なんだか、あったかい。
これはきっと、妹の羽毛布団のせいだけではないだろう。
羽毛布団からは、部屋の空気よりも、より一層強く妹のいい匂いがする。
しばらくすると、パジャマ姿の妹は、結んでいた髪をほどき、俺と同じ羽毛布団にゆっくりと入り込んできた。
「お兄ちゃん。反対側を向いて寝ましょう」
反対側を向いて寝る?
俺はその言葉に違和感を覚えた。
「それじゃあ、お前の恋愛小説のネタにするのに、少しインパクトが弱いんじゃないか?」
「……察してくださいっ。恥ずかしいんです……」
若干涙目で妹が言った。
なにこの可愛い生き物。。。
「悪かった悪かった、冗談だよ。じゃあ、俺が壁側向いて寝るよ」
壁と妹に挟まれるように寝る。
妹の方はよく見えないが、妹も反対側を向いて寝ているのだろう。
少しすると、くぅくぅと安らかな寝息が聞こえてきた。
…………眠れない。
もう2時間は経つだろうか。
妹のお風呂上がりの匂い。
妹のベッド。
妹の布団。
妹の髪の毛の匂い。
度々当たる妹のすべすべの小さな脚。
そのどれもが愛おしく感じて。
「兄貴失格だな…」
そう声に出してみたりなんかして。
「そんなことないよ」
なんて、返ってくるはずもないのに……。
そんなことをしていると、背中で何かが動くのがわかった。
まあ、妹の他にあり得ないのだが。
恐る恐る音のした方に寝返りを打つと、妹のとってもかわいい寝顔が、目の前にあった。
ーーー妹も寝返りを打っていたのだ。
ここから舌を出せば、すぐに妹の口に届く。
そんな距離。
本心では妹の顔を舐め回したい。
めちゃめちゃぺろぺろしたい。
そんな気分なのだが、兄妹でそんなこと、できるはずがない。
いや、兄妹じゃなくてもしていいはずがない。
妹の顔を小1時間じっくりと目で堪能した後、また元の壁の方に寝返りを打つ。
すると、背中に突如、柔らかくてあったかい何かが触れた。
それはずっとくっついたまま離れず、俺の背中にとどまっている。
世の変態紳士諸君はこの説明だけで分かっただろうが、一応補足しておくと、おっぱいだ。
おっぱいとは、男のロマンであり、永久の宝物。
人類はおっぱいと共に生き、おっぱいと共に死んでゆく。
大昔には、土偶でおっぱいがあらわされ、また発展すると、ラブドールやフィギュアも作られた。
おっぱいマウスパッドやおっぱいプリンなどの、おっぱいに関連した商品の売れ行きも良く、グラビアアイドルなど、おっぱいを魅せる職業もある。
都会にはおっぱいパブ、通称おっパブという、女の子のおっぱいを好き放題できる大人のお店もあり、おっぱいはもはや生活の一部となっているのだ。
まあ、嘘だけど。
そんなおっぱいが!
しかも完璧美少女な俺の妹のおっぱいが!
俺の背中に当たっている!!!!
かの有名な兵長ならこんな時、こういった名言を残すだろう。
おい俺のムスコ。これはどういう状況だ。ってな。
……焦り過ぎて思考回路が変な方に行ってしまった。
しかもよく喋り過ぎた。
まあ口に出してないんだけど。
妹の控えめなおっぱいは、ふにふにとした、『おっぱい!!』というような感触ではなく、『おっぱい…///』というような、ぷにぷにした感触だった。
しかし、楽しい時間は終わりだ。
この状況はマズすぎる。
「お、おーい涼菜さーん……。お胸が当たってるんですがー……」
寝ているはずの妹に向かって、一応呟く。
「むにゃ……馬鹿なことを言わないでください……」
すると、睡眠中であるはずの妹が答えるではないか。
「ただ寝てて、こんなに胸が当たると思いますか?」
「それって……」
「……当ててるんですよ、お兄ちゃん♡」
「…………」
思考回路が消えた。
遮断された。と言った方が適切だろうか。
妹の言葉と行動はそれだけ、俺の心を熱くさせた。
胸が、疼いた。
脳が、くちゅくちゅと、とろけた。
……涼菜。
俺が妹に恋をした瞬間だった。
続く