……読み終わった。
はっきり言って、妹の小説は、最高の出来だった。
主人公と兄貴がいちゃいちゃするシーンが最高に萌えて、胸がきゅんきゅんした。
話はすべて妹目線で描かれ、妹の兄に対する素直な気持ちや、複雑な心境、気持ちの変化が事細かに、また、詩的に彩られている。
こんなもの見せられたら……好きになっちゃうじゃないか。
よく考えたらこんな小説を兄に読ませるなんて、ラブレターを読ませているようなものだ。
涼菜は、初めて俺に自分の作品を見せた恥ずかしさからか、顔を赤くしながらこちらを伺っている。
読み終えたのを確認すると、声をかけてきた。
「お兄ちゃん、私の作品は、どうでしたか?」
俺は、戸惑う。
この作品は素晴らしい。
しかし、この作品を認めてしまっては、妹の愛を俺が受け止め、妹と結婚ーーーなんて事に……!
それだけは避けなければならない。
「これは、誰をモデルにして作ったとか、ないよな。完璧なフィクション作品だよな」
主人公たちが涼菜と俺じゃないことを確認するため、気持ちを落ち着けるために聞いてみる。
もちろん望んでいる答えは、フィクションだ。
「もう、お兄ちゃんったら聞いてないんですから。この作品に出てくる主人公の桜ちゃんは私の分身、兄の佑輔くんはお兄ちゃんの分身だって言ったじゃないですか」
ふふふ。と、妹が言った。
やはりこれは妹から兄に当てた、愛のこもったラブレターなのだろうか。
だがしかし、これが妹のラブレターであったとしても、俺はこの作品から逃げることはできない。
例え親の仇が書いた作品であっても、良い作品は素晴らしいのだ。
それは変わることのない価値なのである。
だから俺は、肯定することを、選択した。
「お前の作品は、素晴らしいものだった。妹がかわいくて、きゅんきゅんした。この気持ちを言葉に表すための、的確な言葉を俺は持ち合わせてないけど……脳が蕩けるような、そんな作品だった」
じゃあ、と目を輝かせる涼菜。
しかし、もう一方は肯定できない。
ただ寝るだけが、どうしてそんなに嫌かって?
恥ずかしいからに決まってるだろ!
家にある普通のベッドで、妹とはいえ超絶美少女と寝るんだぞ!
恥ずかしいし、ドキドキして寝られるはずがない。
「私と、寝てくれますか?」
太陽のような満面の笑みを浮かべる涼菜。
正直恥ずかしい以外に一緒に寝ない理由がない俺。
「ああ、寝てやる。お前の作品は面白かった。ぜひ、お前に協力させてくれ」
意気地がなかった。
やはり、美少女と寝るというのは魅力的すぎるほど魅力的なので、断ることはもったいなかった。
ーーー 賽は投げられた。
もう後戻りはできない。
今から俺にできることは、妹に興奮しないこと、妹に手を出さないこと、妹にあまりくっつかないこと、いびきをかかないことの4つだ。
いや、大事なものを忘れていたな。
アソコの膨張を抑えること、だ。
俺は壁に開けられた穴をヒョイっと抜ける妹に続き、妹の部屋に入るのだった……。
続く