一通り俺のプレゼントについて説明すると、恥ずかしそうにモジモジし出す涼菜。
なにかエッチなことでも考えているのだろうか、それともブラコンな妹は俺との甘いひとときを妄想しているのだろうか、時々顔がすもものように紅くなる。
俺としては涼菜に、その場しのぎとはいえプレゼントをあげられたことで一安心なのだが、背後から煮えたぎったような殺気を感じる。
……振り向くと、案の定冷たい目や睨みをきかせる俺のハーレム達がいた。
「だれが先輩のハーレムですか!」
……えーと。またもや声に出てた。
乙葉がやって来て耳打ちする。
触れるいい匂いの柔らかい髪の毛と、かかる吐息がこそばゆい。
「あららー。涼菜ちゃんにプレゼント出来たのはいいけど、ギャラリーがご立腹のようだねぇ」
「頼む! 乙葉さん何とかしてください!」
俺はもともと無いプライドを捨てて、乙葉に懇願する。
すると乙葉は笑って。
「ふふっ……仕方がないなぁ。いいよ。その代わり、あたしのお願いは後で三つほど聞いてもらうからね!」
そう言い残すと、嬉嬉としてギャラリーの方へ帰って行った。
ギャラリーの方へ戻った乙葉は、高らかに宣言する。
「ここでギャラリーの方たちに朗報でーす! 見てるだけで怒りが爆発しそうな皆さんを見兼ねて、千秋があたしたちのお願いも聞いてくれることになりましたぁぁぁ!」
え、ナニコレ聞イテナイ。
良くやったと乙葉にハイタッチを繰り返しているギャラリー、もとい参加者に対して俺は、もっとメディアリテラシーの力をつけて欲しいと、切実に願うばかりだった。
結局、全員のお願いを聞くことになった俺なのだが、みんなのお願いが決まらないようなので、決まった人から実行に移すことに。
すると、開始一分くらいで「整いましたぁ!」 と勢いよく手を挙げたのは、この中で最年長の先輩、桜子だった。
「先に言っときますけど、キスとかはNGなんで。そういうのは断りますからね?」
あとから言ってずるいと言われても反論できる自信が無いので、先に言っておく。
すると、嗜虐的な笑みを浮かべて先輩。
「何を言っているのかしら千秋くんは。そんな非常識なことを言うはずがないじゃない」
おっと。俺の心配は杞憂だったようだ。
そう、俺が安心していると、先輩が続ける。
「キスなんて刺激が足りないわ! 私が望むのは千秋くんとのセッ……」
この人は、誕生日会が終わるまで寝かせておいた方が良さそうだった。
続いて手を挙げたのは、莉華。
莉華がどんなことを俺に望むか興味があったので、ドキドキしながら身構える。
すると、莉華が言ったのは、普通の女の子らしいお願いだった。
「この間行けなかった分、私と遊園地デートをしてくださいっ」
……かわいい。
顔を赤らめて恥ずかしそうに上目遣いで言ってくる莉華があざとい。
しかし、これは許可できない理由があった。
「残念っ! この場でできるお願いじゃないといけない上に、そこから何かに発展しそうなものはNGっ! 改めて考えてきてねー」
参加者兼審判の乙葉が叫ぶと、莉華が涙目になりながら、俺の前を離れる。
そんな莉華に、俺は。
「デートくらい、いつでもするよ。俺も、莉華とデートしたいし。この間出来なかったときも、その後したかったって、後悔したから……」
すると、今度は涼菜が声を上げる。
「お兄ちゃん! ずるいです!」
「……何がずるいんだ。別に俺は妹ともデートしたいよ」
「なっ!…………うぅ」
今度は全員とデートすることになりそうな予感が凄いんだが、当たりだろうか。
未だにまともな回答が出ないまま、昼食の時間を迎えるのだった……。
続く。