乙葉と桜子に続いて、莉華がプレゼントを持って、一歩前に出る。
莉華にはまだ涼菜のことをよく知らせないままプレゼントを選んでもらったため、どんな物を渡すのかは、俺にも全く分からない。
莉華はその手に持った小さな箱を涼菜に渡すと、一歩下がって、涼菜の表情を窺っている。
涼菜は、うきうきとしながら箱の包装を綺麗に剥いで、プレゼントを開けた。
すると、そこに入っていたのは、白いものの上に赤いものが乗った、三センチくらいのフィギュアだった。
莉華がぺたんこな胸を張って言う。
「これは、一見ただのお寿司のフィギュアですけど、なんと。これはフィギュアではなく、消しゴムなんです!」
お、おお。
さっき俺がセンスの悪い代表として挙げた、寿司の消しゴムじゃないか。
歯医者さんとかで子供が治療した後に貰えるやつだ。
「すっごく可愛いですよね!」
莉華が鼻息荒く涼菜に近づく。
先に渡した二人と俺は凄く微妙な笑顔を浮かべているが、涼菜はといえば。
「うわぁ! これ、マグロとアナゴとエンガワですね! とっても可愛いです! この、アナゴとエンガワのチョイスになんとも言えないセンスを感じます!」
何故か大喜びだった。
この独特な感性がマッチするなら、きっといい友達になってくれるだろう。
兄としては、ひとまずホッとしたところだった。
そして、ついに迎えた俺の番。
プレゼントがまだ到着していない俺だったが、先程乙葉によって差し伸べられた救いの案で、なんとか誤魔化す。
緊張しながらも、口を開く。
俺の一挙手一投足に期待の色を浮かべ、何が貰えるのかとうずうずしている涼菜に、告げる。
「俺からのプレゼントは、俺だ!」
5秒程度の沈黙の後。
「「「……は?」」」
乙葉以外の三人の声が、見事にシンクロした。
そう、乙葉が考えた打開策は、俺をプレゼントとして涼菜にプレゼントすること。
いやもちろんエッチな意味でもないし、ただあげるだけでもない。
一度だけその場で言うことを聞く権利をあげるのだ。
そうすれば、取り敢えず妹を満足させられるだろうとの考えだ。
それに、面白くなりそうだから……って。
すると、桜子が石像のように硬直しながらひとこと。
「も、もしかして千秋くん。まさかここで服を脱ぎ出して、リボンの巻きついた裸体を妹さんに擦り付けて、プレゼントだって言って受け取らせる気じゃ……」
「違うわ!」
自分で勘違いされるような言い方をしておいてアレだが、自分で想像したらかなりの恐怖映像だったので、みんなが妄想しているであろう俺の醜態を掻き消すかのように、盛大に突っ込んだ……下ネタではない。
続く。