俺が妹とらぶらぶする話。   作:雨宮照

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妹との同棲生活の、副作用。

 

俺の家の所在地を知らない莉華を駅に迎えに行く道すがら、俺は今日の妹の誕生パーティーについて思いを馳せていた。

よく考えてみると今日のパーティー、妹の同級生が誰一人として参加していないのである。

確かに妹の友達の前で久しぶりに母親が登場するというのもカオスな話なのだが、普段の生活からしても、妹から友達の影は感じられない。

 

ひょっとすると、涼菜は学校で孤立してしまっているのではないだろうか。

彼女は人気もあって、勉強も、運動だってできる。

それに、なんと言ってもあれだけの真面目さがある。

孤立することなんて、無いはずなのに……。

 

家に友達を連れてくるどころか、俺より遅く帰宅したことすらほぼ無い涼菜の友達事情が、とても不安な俺なのだった。

 

まあ、俺も男子の友達は一人もいない訳で、妹にどうこう言える立場ではないのだが。

……でも、この件に関しては俺が原因かも知れない。

妹が早く帰りたいと思うような理由として考えられるのは、三つ。

一つは、学校の居心地が悪いということ。

学校の居心地が悪ければ、早く帰りたいと思うのも必然的だろう。

しかし、涼菜は生徒会長をやっている訳だし、仕事もきちんとこなしていると聞いている。

居心地が悪いかどうかは本人に聞いてみないと分からないところだ。

 

それから、家の居心地が良過ぎるということ。

それが原因なら、俺が甘やかし過ぎたことが悪かったのだろう。

妹が大好きな俺は、妹を溺愛し、褒めちぎって、涼菜にとって居心地の良過ぎる環境を作り出してしまったのかも知れない。

 

もう一つ、最も俺が近いと思っている仮説は、涼菜が俺たち兄妹の料理や洗濯など、家事全般をやるために仕方なく早く帰って来ているという仮説だ。

妹は真面目過ぎる節があるため、栄養面や盛り付けの見栄えなど、全く妥協しない。

仕事はなんでも効率的に、最上のものをする。

それだったら、責任は保護者であるこの俺に全般がかかってくる。

妹との二人暮らしには、涼菜に友達がいないという副作用があったのかも知れないと不安に思う俺だった。

 

 

駅が近付いてくる。

ドジっ娘である莉華がちゃんと電車に乗れたのかが不安だが、彼女も高校生だ。

五歳児でも電車に乗る子はいるというのに、高校生が乗れないはずはないだろう。

そんな失礼なことを考えていると、そのドジっ娘からメールが来た。

開いてみると、本文にはこのような要件が書いてあった。

……時計が一時間ずれてました……。遅れます……。

 

田舎の電車の一本というと、思っている以上に時間があく。

莉華が来るのはいつになるのだろうか。

ーーーそして、両親はいつ到着するのだろうか。

 

俺はあの後、涼菜へのプレゼントを買うために近くの百貨店に行ったのだが、俺は何も購入せずに帰って来た。

理由は、プレゼントなら、既に用意していたからだった。

……それは、両親との再開という、少しずるいプレゼント。

 

しかし、一年間も妹が欲しかったであろうプレゼントである。

 

よって、両親が来てくれないと、俺の涼菜へのプレゼントは……莉華との初対面くらいしか無くなってしまうのである。

いや、莉華にはまた失礼なことを。

 

そんなさっきとは別種の不安を抱えていると、莉華の乗った電車がホームへと重厚な音を立てて入ってくる。

 

扉が開くと降りるときに躓いた彼女は、ふわっとした柔らかい笑顔で、「先輩、お待たせしました!」 と肩を上下させている。

……電車に乗っていたのに何故そんなに肩が上下しているのか、国にでも研究してみて貰いたいものだった。

 

続く。


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