す、涼菜が俺と寝る……!?
それにチェーンソーで俺の部屋の壁に穴を開けるなんて……っ!
「お前、俺と……その、寝たいって、どういうことだよ!?」
とりあえず今、最大の疑問をぶつけてみる。
「お兄ちゃんと、寝たいんです。それ以外、何も聞かないでください……」
妹はしおらしい態度で答える。
いやいやいやいや、なにも聞くなって!?
正気かお前!!
この状況で何も聞かないとかなんだ!?
如来か!? 菩薩か!? 明王か!?
とりあえず、妹を泣かせるような真似はできないので、聞いてみる。
「どうして、俺と……寝たいだなんて、思ったんだ?」
「どうしても、話さなければならないでしょうか」
上目遣いで許しを乞うてくる妹君。
一瞬、クラっと妹の魅力に引き込まれそうになりながらも、俺は厳しい言葉をぶつける。
「ああ、駄目だ。納得できない。訳を話してくれないか?」
しかし、ここは探るように。
相談に乗るかのような優しい声で、話しかける。
「……はぁ。もう、しょうがないですね。いつまでも隠し通せることではありませんから」
言い終えると、妹は壁に空いた穴から自室に戻り、タブレットを持って再び戻ってきた。
画面が明るくなり、パスワードが打ち込まれる。
そして涼菜がいくつかの操作を手慣れた動作で行い、一つの画面を俺に見せた。
それは一作のウェブ小説。
そのタイトルは、『私がお兄ちゃんとらぶらぶする話。』
作者は、浜松鈴奈。
漢字は違うものの、音は涼菜と同じものだ。
まさか、もしかすると、これって……。
「私は、これまでずっと、ウェブ小説を書いていて……一定の人気を集めました。これは、全部兄妹の恋愛を描いた物語で……、お兄ちゃんと私の分身です。今週更新する22話で、私とお兄ちゃんが寝るシーンがあるんです……。お願いします、私と……寝てください」
嘘だろ……。
妹がウェブ作家で、俺とのラブラブなシーンを想像して小説を執筆していたなんて……。
普段の妹は、成績優秀、人望も厚く、容姿端麗。
全く落ち度のない女の子だったのに。
確かに、こんな可愛い女の子に一緒に寝てくれと言われてるんだ。
普通なら断らない理由がない。
「涼菜……よく聞け。兄妹でそういうことはいけないんだ。だから、俺と寝るのは諦めてくれ……」
しかし、俺はゆっくりと諭すように言う。
それに対し妹は、ショックを露わにした表情で、あわあわと口を動かしている。
「悪いな……。それに、涼菜は中学2年生で、処女だ。俺とエッチなんてしたら、俺が捕まっちまうよ」
と、言ってみたのだったが……。
「お兄ちゃん。何を言ってるんですか?」
「え、いや。お前が俺とエッチしたいって言うから……」
心底戸惑う俺。妹はなぜか顔を真っ赤にして俯いている。
「私が言ったのは、お兄ちゃんと寝たいっていう純粋な意志です。え、えええええ、えっちしたいだなんて、一言も言ってません///」
ばか! へんたい! と、何度も罵られる。
それは、それでいい気分だなぁと思いながら、自分の愚かさを嘆いて堕ちていく俺だった。
「で、寝てくれるんですか」
妹が迫る。
「……とりあえず、お前の書いた小説を読ませてもらおう」
話はそれからだ。
続く