俺が妹とらぶらぶする話。   作:雨宮照

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主人公が朝から美少女としか喋っていない件について。

翌朝。

 

俺は、妹に叩き起されて、説教されていた。

 

特殊性癖の持ち主諸君にとってはご褒美なのかも知れないが、俺は普通に嫌だ。

なぜなら俺の妹は13歳の中学生で、俺は高校2年生。なぜ実の妹如きに説教を食らわなければならないのか。

まあ、理由は明確で、俺が妹と夜を共に過ごさなかったからで。

しかし理不尽では無いだろうか!

この妹、俺のこと好きすぎるだろ!

などと都合のいい解釈を脳内に刷り込んでいると、妹の説教は終わった。

 

「お兄ちゃんは、私のものであるという自覚をちゃんとしてください! 私のお兄ちゃんなんですから、私のことを第一に考えていてくれれば、それでいいんです」

 

……いつから俺がお前のものになった。

 

突っ込みたいのはやまやまなのだが、説教を受けてる立場で言えることでは無い。

少し顔が緩んでしまってはいるが、これは仕方の無いことだ。生理現象だ。

いやだって、かわいい女の子に 「私のもの」 なんて言われたらみんな顔が熱くなるだろ!

え? そんな経験無い?

その時点で俺の勝ちだな童貞め!

 

そんな俺の考えを見透かしたかのように妹は。

 

「お兄ちゃんには怒っても意味が無いような気がしてきました。馬耳東風とはまさにこの事ですね。経験させてくれて感謝します」

 

これはかなり怒ってるな……。

後で機嫌取りにプリンでも買って来てやるか。

 

そんな妹だったが、ちゃんと俺の分の朝飯も用意して、一緒に朝食をとってくれた。

 

よし、そろそろ学校に行こう。

そう思った時だった。

妹が俺にべったりくっついて来た。

 

「今日は、嫌な予感がします。だから、お兄ちゃんについて行っていいですか?」

 

「ああ。構わないぞ」

 

中学校に行く別れ道までな。と、付け加える。

 

すると妹は浮かない顔を少ししたが、素直に途中で中学校へと向かっていった。

 

しばらく1人で学校への道を歩いていると、後ろから声をかけられた。

 

「せんぱーいっ! ボッチで歩いてて寂しくないんですか?」

 

うるさい。

 

「俺は1人が好きなんだ。ほっといてくれ」

 

「そうなんですか? じゃあ、私が一緒に学校に行くのも迷惑だったんですね。 じゃあ、先に行きます」

 

「いや、待て。1人は好きだが、その。何ていうか、行かないでくれ」

 

「どうしてですか?」

 

ニヤニヤと後輩がしてやったりと笑みを浮かべる。

顔がうるさい。

 

「さあさあ、どうしてです〜? 先輩はどうして私に行って欲しくないんですかぁ〜?」

 

こいつ、ドSか。

語尾がうるさい。

 

仕方ない。

俺の実力を見せる時が来たようだな。

 

「わかった、言うよ。俺、莉華と話したり一緒に学校行ったりするのが凄く楽しい。だから、行かないでくれ。お前ともっと一緒にいたいから」

 

「な、ななな、ななななな……!」

 

莉華が何かの曲のコーラスパートみたいな声を出して、真っ赤になって俯く。

そして、蚊の鳴くような声でポツリと呟いた。

 

「先輩は、ずるいです。恥ずかしいことを平気な顔で言うから……」

 

どうも、ずるい先輩です。

ド直球に好感を示すことによって相手を赤面させる技だ。どうだ。参ったか。

 

そんな呟きが本人に聞こえてると知ってか知らずか。後輩は自分の頬を両手で軽く叩くと、俺に向き直ってこう言った。

 

「先輩、放課後デートに行きませんか? そ、そういうんじゃないですよ! あ、あくまでも小説に付き合ってくれたお礼ですからねっ!」

 

今度は俺が赤面する番だった。

おい、不意打ちはやめろよ……。

 

しかし、内心ではガッツポーズをし、態度をしっかりと立て直し、俺は断る。

普段なら断る必要など皆無なのだが、いやむしろ喜んで遊びに行ってお持ち帰りしようと悶々と午前中を送るはずなのだが。

今の俺にはピンポンダッシュ事件の真相を突き止めるという使命があった。

 

「すまない、今日は予定があってな」

 

「……っ。そうですか。じゃあ、仕方が無いですね……」

 

心底残念そうに、すぐにでも泣き出しそうに言った後輩に罪悪感を覚えながら、俺は4階の教室へと向かった。

 

教室に入ると、今朝は臨時朝会があるとかなんとかで、クラスメイトは大いに盛り上がっていた。

聞くところによると、1年間の長期留学を終えた先輩が帰ってきたらしい。

 

……と、いうことは。

あの人が帰ってきているっていうことか。

 

その人は、俺とはかなり深い関わりのある人で、俺がピンポンダッシュ犯候補として最初に思い浮かべた人物だった。

 

全員が体育館に集まり、しんと話し声が止むと、校長がステージに登壇し、あの人の名前を呼んだ。

 

「留学から帰ってきた、笹原桜子くん。入ってきたまえ」

 

拍手の音と豪奢なファンファーレと共に、彼女は入場してくる。

 

堂々とした彼女の様子は、一年前と何も変わっていなかった。

 

続く


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