この度、第10話を前回無事に投稿できた節目としまして、(11話だけど)この場で感謝を伝えようと思います。
そこで、今回は文字数をいつもの2倍程度に増やした、豪華内容でお送りさせていただきます。
それから、もう1つお知らせがあります。
この作品の、未だに決まっていなかった主人公の名前ですが、ついに決定いたしました!
その名も……!!
『浜松 千秋』です!
これは単純に私が、男で千秋っていう名前かっこいいよな。と、安直につけた名前でございます。
えーと、長くなりましたが、本編をお楽しみください!
そして是非、これからもご愛読下さい!
作者より。
ここは、我が家の脱衣所。
俺は今、妹が風呂に入ってるにも関わらず、脱衣所であぐらをかいていた。
いや、別に妹の風呂を覗きに来たとかそういう理由じゃないぞ!
きちんと妹を守るという使命が俺にはあるのだ!
とは言っても、やっぱり意識はしてしまう。
壁の後ろ側からは、シャアアアというシャワーの音が鳴り響いている。
俺の目の前には、鏡越しに我が家の風呂の扉が見えている。
その磨りガラスの部分からは、妹の肌色だけが綺麗に、輝くように、映っていた。
しばらくするとシャワーの音は止み、妹が声をかけてきた。
「……お兄ちゃん、いますか?」
妹には申し訳ないが、不安そうに震える声に、不覚にもかわいいと思ってしまった。
俺はドキドキしてることを悟られまいと、優しい兄貴ぶって妹に答える。
「ああ。いるよ。不審者がいたらすぐに呼べよな」
すると、妹は少し躊躇うような間のあと、こう切り出した。
「お兄ちゃん、あの、少しお話いいですか?」
「うん。なんだ?」
「正直に、私の小説って、面白いと思いますか?」
「もちろんあれは面白かった。お前があんな小説を書けるだなんて、信じられないほどだ」
俺は嘘偽りなく、思ったことを告げる。
しかし妹は、こんなことまで聞いてきた。
「お兄ちゃんは、あの小説より、私の小説の方が面白いと思いますか?」
……言葉に詰まった。
妹の小説が面白いと思っているのは本当だし、兄として1番であって欲しいとは思っている。
しかし、後輩の小説もとても面白かったのだ。
それに、小説を書いているときの後輩のあの笑顔……。
……どうしよう。何か答えなければ。
俺は妹の小説が1番だと何度も言おうと思ったのだが、なかなか自分に嘘をつく決心がつかなかった。
すると、突如遠くに聞こえるインターフォンの音。
「ちょっと行ってくるな。何かあったら叫べよ? すぐ助けに来るから」
俺は急いで玄関へと向かい、扉を勢いよく開ける。
まただ。またいない。
そこで、俺はふと風呂に1人残した妹のことを思い出した。
……しまった。
犯人の目的はこれだったのかも知れない。
犯人の正体が妹のストーカーであると、俺は確信を持った。
そして風呂へと戻り、風呂に突入する。
「涼菜ぁっ! 無事か!」
ドアの向こうには、顔を真っ赤にして身体を隠すようにタオルを持った、なんの危機にも晒されていない妹がいた。
「おおお、お兄ちゃんのばか! 早とちりしないでくださいっ! あと、早く閉めてくださいっ! 閉めろぉぉ!」
あとでめちゃめちゃ怒られた。
怒った涼菜にお湯をかけられた俺は、脱衣所にならバスタオルがあるではないかと思いつき、脱衣所に留まる。
風呂からは、「次に入ってきたら絶対許しません。次の日から毎日一緒に寝てもらいます……」 と、健全な童貞男子高校生に対して拷問のような内容の独り言が聞こえてくる。
それを極力聞かないようにしつつ、俺は手元にあったカゴに入っているタオルを掴み、顔を拭く。
そのタオルは少し甘酸っぱいようなとてもいい匂いで、さくらんぼを思わせる。
手触りも心地よく、ずっと触っていられる気さえしてくる。
あまりの使い勝手の良さを疑問に思い、広げてみるとそれは、妹のパンツだった。
妹のパンツは白をベースとした、ふんわりとした生地。
それに、イチゴの刺繍が可愛らしくされている。
なんとも可愛らしい、中学生にふさわしいパンツだった。
しばらくその香りと手触りを堪能していると、俺が既に部屋に戻っていると思っていた妹が、風呂から少し緊張が和らいだような柔らかい笑顔で出てきた。
そして、すぐにその表情を凍らせた。
「お、お兄ちゃん! あなたって人は本当に……! 今回は完全に意図的にえっちなことをしてるではないですか!」
妹は、自分のパンツを熱心に嗅いでいる兄を目の前に、ハリセンボンのように膨らんだ。
膨れた頬が可愛らしい。
桃のように食べてしまいたい。
すると妹は、何かを察知したのか、静かに言った。
「お兄ちゃん……今、えっちなこと考えましたよね?」
なんのことだ。
濡れ衣だ。俺はそんなこと微塵も……。
そういえば、濡れ衣ってエロいな。
あ、考えてましたすいませんごめんなさい。
そのあと俺は、風呂で妹の残り湯に浸かった後、夜のコンビニへと買い物に出た。
妹と俺のぶんのアイスを買うためだ。
5月とはいえ、気温は既に30度近くになる日もある。
アイスでもないとやってられないのだ。
近所のコンビニに行くと、夜遅くて普段からあまり人のいない時間のため、客は俺しかいないようだった。
自動ドアをくぐると、俺は何か温かいものに包まれた。それに、柔らかい。
そう。俺がこの時間に理由は、アイスを買うためだけでは無かったのだ。
俺を包んだ暖かさの正体は、バイトの女子高生だった。
女子高生って言いかたをすると少し卑猥な気がするのは俺だけだろうか。
……それはともかく、彼女は俺の同級生にして、幼馴染。現在では生徒会会計をも務める模範生徒、滝沢乙葉だ。
彼女は実は、かなりの特殊な性癖の持ち主で、一週間に2回は俺に抱きつかないと、居ても立っても居られなくなるらしい。
だから俺はこうして、このコンビニにちょくちょくと通っているのだ。
なぜ夜に来るかというと、彼女が世間体を凄く気にする性格だからだ。
学校で生徒の模範となるべきである生徒会のメンバーが異性の生徒に抱きついているとなっては、学校の風紀を乱してしまう。
それに、人のいない時でないと、コンビニのバイト中に抱きつくことももちろん許されない。
本当なら人のいない時間であっても、バイト先の先輩やらなんやらがいて普通は抱きつくことなど不可能なのだろうが、ここは幸い田舎の個人でやっているコンビニ。
バイトをしているのは今の時間彼女だけである。それに、店長は乙葉をすっかり信用して、店を任せて裏の自宅に帰ってしまっている。
そういった好都合のオンパレードのもとに、このエロい関係は長らく続いているのである。
本当に運命に感謝だ。
1分も俺の身体を堪能させてやると、満足そうに乙葉は俺から離れ、レジにつく。
「いらっしゃい千秋! 今日も涼菜ちゃんと2人ぶんのアイス?」
……なぜ一度レジに戻る必要があった。
俺は千秋の予言通り、妹の好きないちごのアイスと、俺の好きなぶどうのシャーベットを買って、店を後にする。
商品を渡すとき、乙葉がこんなことを言っていた。
「千秋のご両親、もう一年も経つんだね……」
言われるまで気が付かなかったが、来週で俺たちが両親と離れて暮らすようになってから、丸一年を迎えることになる。
妹との二人暮らしも、もう一年か。
何か二人で豪華なものでも食べに行こうかな……。
そんなことを考えながら歩いていると、もう家の前に着いていた。
そこで俺は、玄関に落ちた一冊の小さな本のようなものを見つけた。
不思議に思って拾い上げてみると、それは、不審者の手がかりとなる、最重要な証拠だった。
続く。