妹。
血の繋がった女の子で、彼女が生まれた時から1つ屋根の下で暮らしてきた女の子。
部屋は隣。
階段を上がった二階の壁に扉が2つ。
一つは俺の部屋。
もう一つは可愛らしいピンク色のネームプレートがぶら下がった、妹の部屋。
妹と俺はかれこれ10年以上、同棲している。
最近でも、お風呂や寝る時、遊ぶときもいつも一緒だ。
そんな妹に、見られてしまった。
俺が妹モノのエロゲに熱中しているところを!!
それも、妹キャラに自分の名前を呼ばせている光景をだ!!
こめかみを一筋の冷たい汗が伝う。
社会的に死ぬ。家庭的に死ぬ。
取り敢えず死ぬ!!
妹は俺と一瞬目が合ったあと、心底申し訳のなさそうな眼をして部屋を出て行った。
数十秒の静寂が流れる……。
俺は自分がしてしまった事の重大さを再確認し、取り敢えず続きをクリックしてみる。
画面の中の妹は、『千秋お兄ちゃんさいてー!』と、プログラム通りの虚しいセリフを俺に浴びせかけてきたのだった。
それから俺は、撮り溜めたアニメや、積み本を消化して過ごした。
そして、晩御飯の時間。
いつもなら、夕食の支度を終えた妹が俺を下の階にあるリビングキッチンから呼ぶ。
まあ、俺はいつも『天使の呼び声』と呼んでいるのだが、そんなことは今は重要ではない。
19時30分。
やはりいつも通りに天使の呼び声が降臨なさる事は無いのかと思って諦めていたところ、ついに時は訪れた。
コンコン。と、控えめなノック。
キィィと小さな音を立てて扉が開かれる。
そこには、目を見張るほどの美少女が立っていた……。
まぁ、妹なのだが。
妹はちいさく開いた口から、弱々しい声を発する。
「お兄ちゃん…………家族会議、緊急で、するから、きて」
終始うつむいて妹は話す。
もちろん、俺はその声に従い、一階へとついて行く。
ーーー覚悟を決めて謝ろうじゃないか。
そう決めた時だった。
リビングのテーブルにはいつも通りに夕食が並んでいるではないか。
「す、涼菜……、お前……」
「……いつもとおんなじ。たべたら、話するから……」
あ、おおぅ。
それはそれで怖いぞ我が妹よ。
覚悟を決めたところを先に伸ばすな。
恐る恐る妹の顔色を伺いながら、トマトとチーズのスープを口に運ぶ。
食べ進めると、底の方に白い大きな具が沈んでいるのが分かった。
「涼菜、今日ははんぺんが入っているのか?」
「ちがう。よくみて」
明らかに不機嫌そうに妹が言う。
俺は、機嫌を損ねないように、また、好奇心から、それをスプーンですくってみた。
のだが…
「な、なんだこれ!?」
「私の……ぱんつ」
なんですと!?
な、何を思って涼菜はこんなことを!?
こ、これは幾ら何でもおかしい!
俺の妹は、俺の妹は……こんな変態じゃない!!
と、そこで俺は目を覚ました。
汗をかいている。
ああ、風呂に入った後、自分の部屋に来て、そのまま寝てしまったんだったか。
「あんな夢……」
思い出すと、顔が赤くなってくる。
妹とそんな関係になんて、なるはずが無いじゃないか。
妹と寝ることなんてまず無いし、妹と風呂なんてもっての外だ。
内容だって、名前や見た目は合ってるものの、涼菜は敬語で話すし、スープにパンツを入れることもない。
ごく普通の、だが仲の良い方ではある、兄妹だ。
「よし、もう一勉強して、また寝るかぁ」
そう言って机に向かった時だった。
こんこん。
控えめなノックが聞こえる。
両親と離れて暮らす俺には、俺の部屋に夜中訪ねてくるやつなど、妹以外にあり得ない。
だかしかし、妹がこの部屋に来る時は普通にドアを開けて入ってくる……! ま、まさかさっきのは夢じゃなかったとか!?
しばらく放置すると、ぱたぱたと自室に戻る妹の足音。
またしばらくすると……
『『『vvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvvv!!!!??』』』
音になりきれてない音を発しながら壁に刃が突き刺さった!!
「危ねっ!」
俺がおののいている間にも、壁は円形に削られて行く。
そしてついには、まん丸い穴が開いてしまった。
そこから顔を出したのは、俺の妹。涼菜。
中学2年の美少女で、とにかく美少女。
頭も良くて、人望も厚く、一年生の時から生徒会長を任された程だ。
妹は言った。
「お兄ちゃん、私と……寝てください」
「……」
俺は、固まるしかなかった。。。
続く