その男、復讐者なり   作:雪原野兎

13 / 27
第11話 敗戦後、二人の想い

レーティングゲームの翌日、玲士はオカ研部室へと来ていた。

 

リアスの眷属達は3名を除き冥界へリアスと共に向かい、兵藤は現在もなお、目を覚まさないままである。

 

玲士【…無茶をしたな、一誠。籠手が更に変化したらしいがそれでも不死鳥を倒すには足りん…。】

 

そう1人思案していると、部屋に紅い魔法陣が展開され一人の男が転移してくる。

 

男「既に来ていたみたいですね。」

 

玲士「呼んだのはお前だろう?ルシファー。」

 

ルシファー「そうだね…。」

 

返事をするとともに目を細め、魔力が漏れ始める。

 

玲士「殺したところで結果は悪くなる以外存在しない、貴様らの欲張りすぎが原因なのに八つ当たりするとは流石『悪魔』だな?」

 

ルシファー「…ふう、冗談さ、君の気持ちも分かったからね。それよりも君に頼みたい事があるんだ。」

 

一息吐き、すぐに魔力を消して玲士へと視線を移す。

 

玲士「ほう?まさかとは思うが披露宴に乗り込めなどではないだろうな?」

 

ルシファー「いや、流石にそれはないさ、君に頼めば確実に達成してくれるだろうけれどそれはゲーム中に君が言った通り、評価が下がるからね。」

 

玲士「そうか、ならばなんだ?」

 

ルシファー「これを赤龍帝の彼に届けて欲しいんだ、彼ならきっと、リアスを助けてくれるだろうからね。」

 

そう言い、魔方陣が描かれた紙を取り出し、玲士へと手渡す。

 

玲士「…これを兵藤に渡せば良いんだな?」

【そうやって、貴様ら悪魔は一誠を利用するのか…。】

 

ルシファー「ああ、彼なら乗り込んできてくれるだろうからね。」

 

玲士「…そうか、渡しておく。」

 

ルシファー「頼んだよ、ゴーストくん。」

 

そう言い、ルシファーは魔方陣を展開しその場を後にする。

 

玲士「…とりあえず家に行って兵藤の部屋に侵入するか。」

 

そう呟いて、部屋を後にする…。

 

 

 

翌日の夜…玲士は魔法陣で兵藤一誠の部屋へと転移する。

 

一誠「ッ!?って、ゴ、ゴーストさん!?」

 

玲士「む、起きていたか。」

 

一誠「は、はい、それでゴーストさんはどうしてここに…?」

 

玲士「…なに、少し話がしたくてな、兵藤も何か話したいことがあるなら話せば良い。」

 

一誠「そうだったんですね…。」

 

その言葉を聞くと同時に一誠は顔を俯かせる。

 

一誠「ゴーストさん、戦いは、レーティングゲームはどうなったんですか…?」

 

玲士「…分かっているだろう?俺とお前がまだ戦えるのにも関わらず奴が諦めて降参して負けだ。」

 

一誠「そんな、嘘ですよね!?自ら負けを認めるなんて部長に限って…!」

 

玲士「口伝てで聞いただけだがライザーがお前を殺そうとしたから他の眷属の頑張りを無駄にしてでも降参したそうだ。」

 

一誠「そ、そんな言い方…!」

 

玲士「事実だ。」

 

一誠「ぐっ…なんで、なんでライザーを倒してくれなかったんですか!ゴーストさんはライザーを倒せる手段があったはずでしょう!?」

 

そう言いながら、両手で玲士の胸ぐらをつかみ、睨む。

 

玲士「…貴様がその可能性を潰したくせに何を言っている。」

 

一誠「えっ…?俺が、潰した…?」

 

玲士「運動場で囲まれた時、俺がグレモリーの元に向かってライザーと対峙すれば倒せていた、なのに貴様はグレモリーを心配するあまり、勝手に小猫を連れて俺にあいつらを押し付けただろう?貴様が、その可能性を潰したんだ。」

 

一誠「お、俺は部長が心配で…。」

 

玲士「…心配だからと感情的になって行動するのは集団戦において愚策中の愚策だ。」

 

一誠「う、ごめん…それでなんですが…部長は、どうなったんですか?」

 

玲士「あの戦いの後、アーシアとお前を置いて他の眷属と共に冥界へと向かった、結婚披露宴の準備をする為にな。」

 

一誠「そう、なんですね…。」

 

その言葉を聞き、一誠は涙を流し始める。

 

一誠「ゴーストさん、俺…俺、なんて弱いんだ…部長に大見得切っておきながら…あんな無様に負けて…縁談を無しに出来る道を自分から潰して…俺は…。」

 

玲士「…落ち着け、一誠。」

 

一誠「…はい。」

 

玲士「そんなに、あんな奴が大事なのか?お前にはアーシアがいるだろう?お前を転生させた理由もお前じゃなくその神器が欲しいから転生させたからだ。…それでも、奴を助けたいと思うのか?」

 

一誠「ゴーストさん…。」

 

一度目を瞑り…涙を拭いてゴーストを見据え。

 

一誠「それでも…それでも俺は部長を助けたいんです!部長は家に縛られて…いつもグレモリーの名がついて回って、部長は一人の個人として見られてこなかった…!例え、部長が俺の神器だけが目当てで転生させたとしても!俺は!部長の力になりたいんです!あの時、俺が無様に負けた時…部長が泣いていた…泣いていたんです…!例え家が決めた事であろうと…部長が嫌がっていることを嫌々するのを、俺は見たくない…見たくないんです!」

 

玲士【…そこまで、そこまでなのか…これ以上俺は介入できない…考え直してくれなかったか…。】

 

そう思い、玲士は懐より1枚の紙を取り出す。

 

玲士「…兵藤、そこまで言うなら最後のチャンスをくれてやる。」

 

そう言いながら、その紙を一誠へと手渡す。

 

一誠「えっ?ゴーストさん、これは…?」

 

玲士「披露宴会場傍まで行く転移魔法陣が刻まれた紙だ、グレモリーの兄からお前に渡してくれとな。」

 

一誠「俺に、部長の披露宴に付き添えって言うんですか…部長の兄さんは…!」

 

玲士「たわけ、乗り込んで来いって事だ。グレモリーの兄には何か作戦があるようだ、お前は乗り込んでグレモリーは俺の物だとか言えば良いんだろうよ。」

 

一誠「俺が、乗り込む…ゴーストさんがじゃなくてですか?」

 

玲士「俺が乗り込めば確実に縁談を破棄できるだろうな、だが…そんなことをすればグレモリーの評価はダダ下がりだ、そこでグレモリーを想っていて最近眷属になったお前に白羽の矢が立ったというわけだ。」

 

一誠「…俺が、部長を…。」

 

玲士「行くのであれば準備していく事だな、どうあってもライザーとの戦いは免れないだろうからな。もし部長を取り戻せたなら紙の後ろの魔法陣を使えとの事だ。」

 

一誠「ゴーストさん…。」

 

玲士「武器は貸さん、俺が手を貸したって事が広まるからな…だが、これぐらいはくれてやる。」

 

そう言い、懐から星の絵柄が描かれた角ばった球形のオレンジ色の小さなストラップを取り出し、一誠へと手渡す。

 

一誠「え、これって…!」

 

玲士「…投影品だ、お前がこの本を読んでいたのを見てな、投影しようとしたがうまくいかず角ばってしまった。」

【…今の俺には必要の無い物だ、お前が持っておけ。】

 

一誠「え、あ、ああそうだったんですね、ありがとうございます、ゴーストさん。」

 

玲士「…準備を怠るなよ?それじゃあな、頑張れよ。」

 

そう言い、魔方陣を展開して部屋を後にする。

 

一誠「…ゴーストさん、俺…頑張ります!」

 

そう言いながら懐にストラップをしまい、握りこぶしをつくり、一人呟く…。

 

 

 

場所はバイサーがいた廃墟…玲士はそこへ転移する。

 

玲士「…あとは兵藤の頑張り次第か…。その紙は無駄になったようだな、グレイフィア。」

 

そう言うと、白い魔法陣が展開してグレイフィアが現れる。

 

グレイフィア「ええ、その様ですね。ちゃんと渡してくれたようで何よりです。」

 

玲士「あいつの本音も聞けたからな…あとは兵藤次第だ。」

 

グレイフィア「…聞きたいことがあるわ、何故あなたはリアスを嫌うのですか?」

 

玲士「…無能だからに決まっているだろう?出会った時からずっと無能無能無能無能…眷属の事すら把握もしようとしない奴など俺は嫌いだ、依頼でなければ助ける気すらおきん。」

 

グレイフィア「…そういう事にしておきましょう。」

 

玲士「…話は終わりか?」

 

グレイフィア「ええ、これからもリアスを助けてあげてくださいね、傭兵として、眷属として。」

 

玲士「眷属としては断る、俺は『人間』だ。」

 

グレイフィア「…そうですか、まあ良いでしょう、それでは失礼します。」

 

そう言って魔法陣を展開し、その場を後にする。

 

玲士「…この拠点もそろそろ潮時か、そろそろ退去するか。」

 

そう言いながら、家具を一つずつ消していき始める…。




一誠「おっす!今回はここまでだ!今回の担当は俺、部長の『兵士』兵藤一誠と!」

玲士「傭兵の近衛玲士が担当させてもらう。」

一誠「あの後は無事、あのホスト野郎をぶっ飛ばして部長を助け出せたぜ!その後は…えへへ。」

玲士「…はぁ、とりあえず解説に移ろうか、侵入って言ったのは文字通り侵入だ、仕事着スタイルで訪問なんて出来ないからな。」

一誠「その後は大体グレイフィアさんの役割を玲士が担当した感じだな、多少言葉が悪くなっているけれどな。」

玲士「その後の問答は俺の本心だ、一誠を心配するからこそ諦めて欲しくアーシアを出汁に使ってでも、グレモリーが転生させた目的を言ってでも止めようとした。」

一誠「だけど俺はそれでも部長の力になりたかったから原作の言葉を紡いで自身の気持ちを玲士に伝えたんだ。」

玲士「まぁ、それ以上俺が介入するわけにもいかず、納得したく無かったが紙を渡した感じだ。」

一誠「そう言えばその後にストラップを受け取ったけどあれって…。」

玲士「もちろん投影品ではなく現物だ、過去、幼少期に学校で紙粘土を使った授業の際に作った物だ、一誠はそれを知っていたから驚いたが、投影とはどういうものか理解してないから簡単に騙されて投影品だと思ったんだ。」

一誠「その後、廃墟の拠点でグレイフィアさんと会話してたけれどグレイフィアさんは嫌っている理由を怪しんでいる、前々回の朱乃に語った内容で無能だからだけの嫌悪じゃないって分かったからだな。」

玲士「その後は色々客人が来られると迷惑だから退去を開始した、今度は堕天使騒動の協会の地下でも拠点にしようと思っている。…そういえばなのだが、前々話で作者がやらかした気がするんだよな、ハルペーについてだが…不死に対し効力を持つのは鍛冶の神ヘファイストスが打ったアダマントのハルペー『アダマスの鎌』なんだよな…。」

一誠「それが何か問題なのか?」

玲士「神が打った武器という事は神造兵装という事だ、そしてそれを投影しようとすると…自滅かオーバーロードしてしまうんだよ、高精度すぎてな…。」

一誠「そ、そうだったのか…。」

玲士「すまないが前々話で投影したのは詠唱してない中途半端な精度の武器と思ってくれ。」

一誠「じゃあ、今回はここまでだな。」

玲士「次回から聖剣騒動に入る、久々の二人目の幼馴染の登場だな。」

一誠「では、次回もお待ちくださいませせせせせせせせせせせせ。」

玲士「今回渡す物でアゾット剣渡してレストォ!で倒す案もあったが一誠に士郎と同じ行動させるのもどうかなと思ったからこれは没になった。…さて、ライザーにドラゴン型ストロベリーケーキを持っていってやるか。」

一誠「と、トラウマになってるんだからやめてやろうぜ…。」

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。