次の日の夕方は予想した通り昨日同様の混み方だった。
木乃香達四人が学校から帰ってきて店に入ると
「いらっしゃいませー」
と知らない女性が三人接客をしていた。
「あの!貴女達は?」
と明日菜が声を出すと、奥からツナともう一人女性が出てきて
「彼女達は高校の時の同級生なんだ。みんなだけでも大丈夫だと思ったんだけど、接客の研修を頼んだんだよ。勝手にごめんね。」
と謝りながら説明した。
「私は笹川京子です。私は木乃香ちゃん担当なんだ。よろしくね。」茶髪ロングの癒し系美女。
「はひ!私は三浦ハルといいます。私は明日菜ちゃん担当です。ベリーキュートですー。」と黒髮ショートの活発系美女。
「六道凪。私は宮崎のどかちゃん。」と黒髮ロングのミステリアス系美女。
「黒川花よ。私は綾瀬夕映ちゃん担当。よろしくね」と黒髮パーマのキャリアウーマン系美女。
四人とも綺麗でツナ狙いで来ていた女子高生はツナに近寄れないでいた。比べられる対象のハードルがたかすぎるのである。ツナは最初、凪だけを呼ぶつもりでいたが、話をきいた黒川花が四人で行くべきと提案したため四人共麻帆良に来ていた。黒川花は店に来る客はツナ狙いというのを察知し、防波堤を引いたのである。
黒川の策略に負けた女子高生達は退散し、純粋にお店に惹かれ美味しいコーヒーとケーキを楽しみに来たお客だけが残ると研修が始まった。
京子と木乃香のペアはお互いにほんわかしており、木乃香自身にも接客に問題がなかったため、厨房に入りケーキ作りを教えている。
ハルと明日菜のペアは、料理よりも接客重視で持ち前の明るさで店内を明るくしていた。明日菜が接客が初めてなため、基礎から教えていた。
凪とのどかのペアは調理補助や飲み物関係を中心に、接客も多少行っていた。凪ものどかも自分から喋る方ではないため、要所要所を教えて静かに時間が過ぎて行く。
花と夕映は会計や備品関係を中心に教えていた。夕映がもともと考える力が強く、頭の回転も速いため覚えるのもはやかった。
そして19時になるとお客さんはいなくなり、あやかと千鶴が来店した。あやかと千鶴にも自己紹介し、
「私と花とつっくんは小学校から高校まで同じ学校だったの。」
と京子が笑顔で話す。つっくん呼びに驚きはしたが、それよりも
「まさかダメツナがね〜」
という花の発言が気になっていた。
「ダメツナってツナさんのことですの?」
とあやかが尋ねると
「懐かしいな〜、中学二年まではなにをやってもダメダメでね。ダメツナってあだ名だったんだ」
と笑っていうツナ。中学生組六人はいじめではないのかと思うが
「沢田は三年から急に成績も良くなったし、あんたをダメツナって呼ぶ奴はいなくなっていたからね。」
「ツナさんはすごい人です!」
とハルが花に食ってかかる。
「誰も認めてないなんて言ってないでしょ。」
ハイハイとハルを宥める花。
「ツナさんは昔から変わらない。」
と凪が呟く。
夕映が
「ハルさんと凪さんも昔からのお知り合いなんですか?」
と尋ねる。
「そうですよ。ハルは中学二年の時に出会いまして、溺れていたハルを助けてくれた王子様なんです。」
と頬に手を当てキャーキャー騒ぐハル。
「私も中学二年の時に知り合って、いまは同じ会社で働いてる。私はイタリアだけど」
と凪。
「皆さん私達の年の時に出会ったんですね。」
と千鶴が考え深そうに呟いた。ツナは遠いい目をしながら
「あの時が一番濃い人生だったよ」
といい凪が苦笑いを浮かべている。その後は京子と花がツナの昔話を暴露したり、ハルが六人に勉強を教えたりしていた。
次の日は、花の作戦が効いているのかツナ目当ての女子高生で満席になることはなかった。本来は土曜日も開店だが臨時で休みにすることにしたため、本日が週のラストになる。
京子達も今日がラストになるため、ペアの相手に教え忘れがないかの確認や仲を深めていった。
そして閉店し、京子達が帰る時間になる。
「ツナさん!またお手伝いが必要なら呼んでください。ハルはいつでも大丈夫です!」
「つっくん。楽しかったよ。また呼んでね。」
「沢田も頑張りなさいよ!」
「ツナさん。次は骸様と来る。」
とハル・京子・花・凪が次も協力するからと別れを告げる。
最後に凪が残り、ツナの頬にキスをして帰って行った。