ツナま!   作:ばすけばすけ

64 / 66
第64話

「やあ 明日菜くん。久しぶりだね。元気にしてたかい?」

 

「久しぶりです。高畑先生!はい!元気にしてましたよ。先生は少し痩せましたか?」

 

「ハハハ 少し忙しくてね。エヴァも久しぶり。まさか明日菜くん達と一緒に京都に行っていたとは驚いたよ。」

 

「ふん。じじいに動いてもらってな。」

 

「学園長か・・・・それに君は?」

 

「あ!私、喫茶店でもアルバイトを始めたんですよ。そこのマスターの沢田綱吉さんです。勉強も教えてもらっています。」

 

「初めまして、沢田綱吉と申します。明日菜ちゃん達にはよくしてもらっています。」

 

麻帆良に帰ってきた四人はそのまま高畑が待ち合わせ場所に指定してきた世界樹広場にあるカフェのオープンテラスにて高畑と合流する。

事前に綱吉の情報を得てはいた高畑ではあるが、明日菜が嬉しそうに紹介している姿を見て戸惑いを隠せずにいた。

 

席についた五人は飲み物を飲みながら会話を続ける。続けるといっても話をしているのは高畑と明日菜であり、ツナとエヴァに茶々丸は黙って話を聞いていた。

 

高畑は明日菜からテストの順位や成績があがったこと、麻帆良祭でのこと、京都旅行のことを楽しそうに説明しており、高畑もそんな明日菜の話を笑顔で聞いていた。

 

「明日菜くん。急で申し訳ないのだが、僕はイギリスで暮らすことにしたんだ。」

 

「え!!イギリスですか!?どうして急に?先生はどうするんですか?」

 

「向こうでのボランティア活動に本腰を入れたくてね。教職は昨日でやめてきたよ。」

 

「そうなんですね・・・・・」

 

「明日菜くんには僕と一緒にイギリスについて来てもらう。今日には麻帆良をたつから準備を進めてほしい。もうここには帰って来れないから忘れ物はないようにしてくれたまえ。」

 

「え・・・・そんなこと・・急に言われても・・・」

 

「僕は明日菜くんの保護者だからね。親は子供を育て導く義務があるんだ。明日菜くんだけを残してはいけないんだよ。」

 

「高畑さん。ちょっと待ってください。」

 

高畑と明日菜のやり取りを黙って聞いていたツナだったが、泣き始めた明日菜のことを軽視するような高畑の態度にさすがに口を挟むことにした。

 

「これは僕達家族の問題だから部外者は黙っていてくれないか。」

 

「タカミチ お前の都合で振り回されるこいつの身にもなってやれ。」

 

「子供には子供の言い分があり、言いなりにならないものです。親はこの点を肝に銘じて振る舞わなければならない。子供たちは親の所有物でもペットでもない!高畑さん 貴方がしていることは明日菜ちゃんのことをきちんと考えての行動ですか?」

 

「君になにがわかる!!明日菜くんはイギリスに連れて行く。これは決定事項だ!!」

 

「きゃっ!」

 

高畑は若いツナからの殺気を含んだ説教ともとれる言葉に余裕をなくしたのか明日菜の手を取り席を立とうとするが

 

「はぁ 待つのじゃ高畑くん。まさかこんなことになるなんて思いもしなかったぞ。」

 

「学園長!何の用ですか!?」

 

「話をする前に落ち着いたらどうじゃ。明日菜くんの手を離して座りなさい。」

 

いつのまにか後ろに立っていた近右衛門により肩を押さえられて無理矢理座らされる。明日菜への力が緩んだ隙をついてツナは明日菜を抱き寄せていた。

 

「ツナさん・・・私・・行きたくない。行きたくないよ〜。みんなと急に別れるなんて。木乃香や夕映、本屋ちゃんに刹那さん、ちづねえにいいんちょとあれでお別れなんて嫌なの。まだみんなと一緒にいたいよ。」

 

「そうだね。さっき高畑さんにも言ったんだけど、子供だからって親の言いなりになる必要はないんだよ。明日菜ちゃんが行きたくないなら俺が明日菜ちゃんを守ってあげる。」

 

「明日菜くん・・・」

 

「高畑くんや。あれが君が望む未来なのか?明日菜くんを泣かすことが正しいというのであれば、儂はお主を軽蔑するわい。」

 

「タカミチ私も神楽坂明日菜やじじいの味方をさせてもらう。今回のお前の行動は身勝手過ぎる。」

 

明日菜がツナに抱かれながらポロポロと本音を話し始めると、それを聞いていた高畑は唖然とした様子で明日菜のことをみており、近右衛門とエヴァンジェリンから自身を否定する言葉をかけられると周りからの殺気にも気が付き始めた。

 

遠くの建物の屋上にはガンドルフィーニ、シスター シャークティ、神多羅木が会話を聞いており、近右衛門に連絡をしたのもこの三人である。特にシスター シャークティは明日菜を泣かせた辺りから臨戦態勢に入ってはいたが、高畑は近くにいたツナの気配によりかき消されており監視に気がついてはいなかった。

 

「近右衛門さん 以前いただいてお話ですが、正式に受けようかと思います。それに明日菜ちゃんの保護者の件ですが、問題がないなら俺がなりますよ。」

 

「なにを勝手に!」

 

「フォッ それはありがたいのぅ。夏休み明けから頼むわい。明日菜くんの保護者は高畑くんではなく、雪広くんのとこの祖父になっているから気にせんでも大丈夫じゃよ。」

 

「え?いいんちょのおじいちゃんですか?」

 

「そんな!まさか戸籍を!?」

 

「バカなことは言わんでくれ。最初からそういう手続きにしておるわ。さすがに若い君を保護者にすることなどできなかったんじゃよ。学園の費用も雪広家からもらっておる。君は明日菜くんになにをしてきた?ボランティア活動にかまけて年に数日しか一緒にいなかったではないか。それで保護者を名乗られても困るのじゃよ。」

 

「いくぞツナ。ここはじじいに任せておけばいい。神楽坂明日菜お前もだ。」

 

「え?・・・うん。・・・・高畑先生・・・今までありがとうございました。一緒には行けませんが、高畑先生は私からしたら大切な家族です。いつか・・・会いに行きます。」

 

高畑から覇気が消えたのを確認したエヴァはツナと明日菜に行くぞと声をかける。ツナは無言でエヴァに続くが、明日菜は高畑に頭を下げながら自身の思いを伝えるとツナ達の後を追っていった。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。