ツナは夕方になるとお店の入り口に貸切の看板を立てて打ち上げの準備を始めていた。
今回は予約時に「食材は雪広グループから提供いたしますわ!!」とあやかが提案して来ており、午後一には多彩な食材がお店に到着していた。
ツナはその食材を前にどうしようかと悩んでいると
「私と皐月も手伝うネ。」
「お任せください。」
「助かるよ。ありがとう。」
超鈴音と四葉皐月が料理の手伝いをするために学校帰りに直接お店に顔を出した。ツナは笑顔で二人を厨房に招き入れて調理を開始する。
打ち上げ開始の時間が近づいてくると人も集まり始め、だんだんとお店の中が騒がしくなっていった。開始時間になり全員にドリンクが到着すると
「「「「「カンパーーーーイ!!!!」」」」」
明石裕奈が我先にと音頭を取り打ち上げが始まった。
乾杯が終わるとツナと超鈴音、四葉皐月が厨房から料理を運び始め、それを見た明日菜や木乃香といったアルバイト組も運ぶのを手伝い始める。
「これで全部なん?」
「また沢山作ったんですね。」
「いまので最後だよ。あやかちゃんが用意した食材が良いものが多かったし、超包子の二人も手伝ってくれたからね。」
木乃香達四人が他にも手伝えることはないかとツナの元に集まる。ツナは四人にもう大丈夫だからみんなも楽しんでと飲み物を手渡して背中を押した。
「ツナさんはどこで料理を覚えたのでしょう。」
「このスイーツも美味しい。これも手作りだよね。」
「ほんまや〜。しつこくない甘さがええな。」
「のどかと木乃香、もうデザートを食べてるの!?」
四人は分担して料理を取ってくると同じテーブルへと再度集まり会話を始めた。夕映はツナの料理のレパートリーや美味しさに首を傾げつつも堪能しており、のどかと木乃香はデザートから食べ始めていたため、それを見た明日菜が驚き声をあげるが店内の賑やかな声に掻き消されていた。
ツナの元にはあやかと千鶴が挨拶に来ており、ドリンクサーバーに補充をしながら会話をしていた。
「あやかちゃん。食材の手配ありがとう。結構いい食材が多かったけど、あれは注文とかもできたりするの?」
「今日はありがとうございます。いつもお世話になっておりますのでそのお礼ですわ。注文はできますので後日カタログをお持ちいたしますわね。」
「ツナさんも食べてますか?今日はツナさんへのお礼も含まれてますから遠慮しないでくださいね。せっかくですし・・・アーン。」
「「千鶴(ちゃん ウワ!、さん)!?」」
「なにをやっとるんだ那波千鶴!そしてお前はどこを見ていた!!」
「マスター落ち着いてください。」
千鶴がツナに食べさせようと身を乗り出して口元にフォークを持っていくが、エヴァンジェリンが横からツナに体当たりをし場所を移動させる。
「エヴァンジェリンさん!?」
「あらあら、ツナさん大丈夫ですか?」
「ツナならあれくらい大丈夫だろう。それで那波千鶴・・・その体勢は私に対する挑戦か?」
エヴァンジェリンの視線の先には前のめりになり、カウンターの上に胸を乗せて胸を強調させている姿勢の千鶴がいた。さすがのツナも胸に視線がいってしまっており、その瞬間をエヴァンジェリンが見逃すはずがなかった。
千鶴は「あらあら困ったわー。」と言いながらその場を離れてエヴァンジェリンがそれを追いかけて行ってしまった。残されたあやかと茶々丸はツナの状態を確認しようとカウンターの中に入り、ツナを助け起こした。
「あやかちゃん、茶々丸ちゃんありがとう。」
「お気になさらずに。それで・・見ていたんですか?」
「ンナ!ワザとではないよ!」
「約5秒ほど視線が固定されていたのを確認できています。」
茶々丸の補足説明であやかはツナをジト目で見て胸を腕で隠した。表情が読み取れない茶々丸も微妙に怪訝な視線を向けている雰囲気を出していた。
「いやいや!常日頃から見ているわけではないよ!茶々丸ちゃんもそんな目で見ないで!」
「冗談ですわ。ツナさんのことを信用していますから。では私も戻りますわね。茶々丸さんもエヴァンジェリンさんを止めに行きますわよ。」
「わかりました。」
「怪我はしないようにね。」
ツナは服を整えながら立ち上がり二人を見送ると溜息を漏らす。
そんなツナの元には先ほどのやり取りを見ていた新たなる刺客が迫って来ていた。