衣装では多少のゴタゴタはあったが、ツナの服装は燕尾服に決まった。
夕方になり2-Aのメンバーは帰宅したが、ツナは昼間に慌ただしくて出来なかったことを理由に、厨房を確認したいと一人残っていた。
「初めまして。そんなところでどうしたの?」
ツナは何もない空中に向かって言葉を投げかける。
「相坂さよちゃんだよね?」
「え!?私のこと見えるんですか?」
ツナの目には相坂さよの姿が見えており、さよはびっくりしましたーとツナの前に降り立つ。
「私と友達になってくれませんか?」
さよはお辞儀をしながら片手をツナに差し出し握手を求めてくる。
「俺でよかったら喜んで。」
「ありがとうございます!!」
ツナはさよの握手に応じて手を握る。さよは嬉しそうに飛び跳ねていた。
ツナが何故相坂さよの姿を確認できたのかというと、調和の力を目に宿らせることによりさよを視認できるようになり、触れたのも同じ原理によるものだった。
「俺は帰るけどさよちゃんはどうするの?」
「夜の学校は怖いので、コンビニか飲食店によく行ってます。」
ツナは幽霊なのに怖がりなんだと苦笑し
「なら家に来ない?」
「え?いいんですか!?ぜひお願いします!」
自宅へと誘いをかける。さよは久しぶりに人と話せた嬉しさと、ツナから感じる暖かい雰囲気に家にいくことを即決する。
さよはプカプカと浮きながらツナの歩く速度と同じスピードで進んでいく。その間に麻帆良学園から出られないこと、何年も学園にいることを話していた。
「ここが家だよ。喫茶店をやってるんだ。」
「お邪魔しま〜す。喫茶店をやっているのはクラスの人達が話していたので知っていましたー。」
ツナはさよに家を案内してあげながら説明をしていく。三階に着くと
「三階は三部屋空いているから一部屋好きに使って大丈夫だよ。」
「え!!お部屋なんていらないですよ〜。話し相手になってもらえれば・・それだけで」
「使ってない部屋だから気にしないで大丈夫だよ。気が向いたらで構わないよ。」
さよは顔の前で手をブンブンと横に振って申し出を断る。ツナは考えといてといいお風呂へと消えて行く。
翌朝
麻帆良祭の準備が意外と重労働だと感じ、”麻帆良祭に向けた共同店舗準備のため臨時休業のお知らせ” と明日から麻帆良祭が終わるまで休業することが書かれた案内を貼っていた。
「おはよ〜ございます〜。きゃっ!」
「ガウッ!」
さよが眠気眼を擦りながらプカプカ浮かんで店内に降りてくると、ナッツが突然さよに向かって飛びかかる。
さよは咄嗟のことに悲鳴をあげてしまうが、ナッツが頬を舐め始めると笑いながら
「ツナさん!この子も見えるみたいです〜。」
と嬉しそうにナッツを撫で始める。ツナは開店前で良かったと胸を撫で下ろした。