人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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年末に向けて超絶ブラック企業モードが発動したので投稿速度大幅ダウンです。

師走はどこの業界も忙しそうです(´・ω・`)


なんでやべー銃ばっかなんだお前らは

「冗談じゃない。ふざけんなカボチャ頭、頭にデカいネジぶち込んでるツギハギ野郎。バスカービルはジーフォースに襲われた直接の被害者だぞ。それでなくとも、あんな危なっかしいヤツ――」

 

「じゃあ他に手はあるのかい?ボクらには今、それくらいしか打ち手がないんだ。それに、キミはそういうのが得意だろう?女の子をたらしこむのが。アリアを始め、白雪とか、理子とか、レキとか、中空知とか、その他もろもろとか」

 

ワトソンのその言葉に、全員がキンジを見る。

 

『まぁ......そんなに。さすがはカナさんの弟さんですね。とても人気があるようで』

 

画面からメーヤの感心した声を出す。

 

キンジは四方八方から犯罪者を見つめるような目で見られ――助けてくれ、と俺に目線で縋りついてくるが実績がある故に庇護も難しく、目を伏せる事で諦めろと告げる。

 

少しだけ瞼を開けてキンジを見れば、ジャンヌを見ており、頑張れとでも言われたのか顔を青くして俯いていた。

 

「では遠山の。任せたぞ」

 

「ではって......何がではなんだ!俺に何しろって言うんだよ!」

 

「ジーフォースと仲睦まじくせよ。存分に可愛がり、仲間に取り込めるように努力するのじゃ。『師団』の興亡、この一戦にあり。奮励努力するのじゃぞ」

 

ずう、と玉藻がメロンジュースを飲みきり、その態度にイラついたキンジが卓袱台返しをしようとしているのが見えたので慌てて止めようと椅子に手を掛け立ち上がろうとしたところで、

 

『トオヤマさん。私も夕方――あっ、日本では昨日の深夜になりますが、ジーフォースによる襲撃の映像を拝見しました』

 

メーヤの声で、キンジがストップした。

 

『接近するにも大変危険な相手であると思います。そこで、聖騎士団に許可を頂き、まずはアリアさんとトオヤマさん、サエジマさん宛に支援物資の作成・送付の手配をしました』

 

「支援――」

 

「――物資ィ?」

 

『はい。倒すことは出来なくとも、身を護る程度のお役には立てるかと』

 

「良かったな遠山の」

 

「頑張れ遠山。後で経過を報告するのだぞ。報連相だ」

 

「トオヤマ、任せた。ボクはアリアたちの看病をする」

 

芝居がかったやり取りが即座に成され、俺たちは俺たちが来る前に話を済ませていた事を把握した。

 

「......あー、コーヒー、お代わりとかって......いるゥ?」

 

「――特別苦いのを頼む」

 

キンジの顔色は青いままだった。

 

 

 

 

 

 

狐に化かされた......というか、誑かされたその後。

 

俺たちは武偵病院に来ていた。

 

アリアたちのお見舞いと、当時の詳しい状況把握のために。

 

4人の相部屋があるという武偵病院のA棟、その3階へエレベーターで上がると......

 

ぞ...

 

ぞぞ......

 

――お?

 

ぞぞぞ......

 

廊下の床を、金属製のトレーが独りでに移動していた。

 

誰も居ないのに、動いている。

 

「......『眷属』の追撃か?」

 

「――かもしれない」

 

普通の人間ならビビって腰を抜かすか、トリックかなんかだと思うだろう。

 

だが俺たちは違う。

 

アリアたちが負傷し、弱っている情報を手に入れた『眷属』側からの追撃かもしれないと判断した。

 

臨戦態勢に移行すると、トレーがビクリと派手に揺れ――影が這い上がり、人の形を作った。

 

「あ、あらトオヤマ......それに、サエジマも」

 

奇遇ね、と言わんばかりに俺たちに向き合う、ヒルダがそこに居た。

 

なぜか、ナース服で。

 

知った顔であったからか、キンジは気を緩め――俺もXVRを懐に収める。

 

そこで暫く話をして――と言うより、向こうがしてきた――ヒルダは現在、理子の看病をしているらしく、トレーに載っている物のほとんどが理子の好物である事が分かった。

 

で、いつもの様に理子にお礼をしに行く最中に俺たちに見つかり、今に至るようだ。

 

「さ、私の話はこれくらいにして――ひどくやられたようね、バスカービルは」

 

ヒルダは、自分の話を打ち切って凛とした声で話題を変えてきた。

 

「相手が誰であろうと、お前たちは私を破ったのよ。お前たちが敗北するという事は、私の不名誉にも繋がるわ。トオヤマ、サエジマ......きっちりと下手人を処理するのよ?」

 

随分と自分勝手な事を言うなぁ、と、思い苦笑すると、キンジは不満げに眉を寄せていた。

 

「今日は璃璃色金のせいで不調だけれども、しばらくして体調が戻った暁には――理子が傷つけられそうになったら、私を呼びなさい。その敵を串刺しの剥製にしてやるから」

 

そう言って俺たちに背を向けたヒルダは、ヒールを鳴らして階段を降りていく。

 

「日没か日の出まで――夜は私に任せなさい。お前達も、気が向いたら助けてやらない事もないわ」

 

ヒルダのツンデレ発言のような物に、キンジは溜息を吐いて階段から廊下へ戻っていき......俺もそれに続いた。

 

すると、階段からは死角になっていた廊下の壁際に――

 

「......」

 

額と片腕、それと太ももに包帯を巻いた理子が寄り掛かっていた。

 

「......聞いて、いたのか」

 

「まあね」

 

背中をよく見れば、ソードオフショットガンのウィンチェスター・M1887を革ベルトで肩掛けしているのが分かった。

 

「じゃあ、これ。くれるんだとよ」

 

理子は、キンジから渡されたトレーの上に載ったイチゴ牛乳や菓子類を一瞥して、手でかき寄せるようにして反対の手でたくし上げた制服のスカートに移した。

 

「で、どうすんだ理子。ヒルダは仲直りしたいみたいだぞ」

 

「バカ言うな。アイツはいっぺんあたしを殺してるんだ。そう簡単に許せるかよ」

 

なんて言っているが、貰える物は貰っておく辺りが理子らしいというか、なんというか。

 

確かに、戦った直後に仲良くしましょう、なんてそう簡単に出来るワケが......ワケ、が......―ジャンヌ、カナとの戦闘を振り返って言葉に詰まる―うん、仲良くしようと思えば出来るな。

 

ただ相手を選ぶ必要があるってだけだ。うん。

 

そこから暫く、会話をして――理子の案内のもと、俺たちはアリアたちの病室に辿り着いた。

 

理子からの情報によると、平賀さんも来ている様だ。

 

なぜ、平賀さんが居るのかと聞けば、

 

「それは来てからのオタノシミ」

 

と、しか教えてもらえなかったので、それ以上の言及はしなかった。

 

――お楽しみ、オタノシミか......

 

嫌な予感を感じつつも、先に理子に手を引かれ303号室へ入っていったキンジの後を追って入室する。

 

「......!?」

 

「――......え?」

 

俺たちの目に飛び込んできたのは、狼コンビ。

 

オオカミのコスプレをしたレキと、ハイマキ。

 

レキの傷の具合はどんなものかと軽く見てみれば、包帯を巻いている箇所以外に目立った傷は無さそうで、一先ず安心することが出来た。

 

しかし、その......隣に置いてあるソレは......何?

 

――いや名前は分かってるよ?ただなんでそんなのが病室にあるのかってことだ。

 

あれか、杖か?杖にするつもりか?

 

キンジがレキのコスプレの話を逸らして、レキの横に鎮座しているソレの話題を持ち上げた。

 

「だいたいソレは何だ!なんでそんなモンが置いてある!?」

 

ソレとはつまり、バレットM82。

 

イラク戦争で使用された長距離狙撃ライフル。

 

「平賀さんから、購入しました」

 

「なんで!?」

 

「昨日の敵に対抗する為です」

 

抑揚のない声でサラッと言ったが、レキは対人目的でM82をぶっ放すつもりらしい。

 

――マジかよ。あれって12.7mmだろ?掠るだけでミンチになるぞ、オイ。

 

身内の武装を見て冷や汗をかく俺を尻目に、キンジはレキに説教を始める。

 

「そいつはアンチマテリアルライフル。つまり対物ライフルだぞ、対人への発砲は国際法で禁止されている」

 

「......」

 

レキはその言葉に、はい、も、頷きもしない。

 

殺意に満ち溢れている様だ。

 

「くふふふー。アレよく読むと、50口径禁止とは書かれてないんだよ、キーくん」

 

「それ以前の問題だろ。武偵法9条もある。理子、お前のショットガンだって武偵が持つのはダメなんだからな?人を殺さないように撃てない銃なんだ」

 

キンジがリーダーらしく説教をすると......

 

理子とレキは二人揃って俺たちにA4サイズの紙を突きつけた。

 

「なんだこれ......げぇっ!?」

 

「お?......ファッ!?」

 

顔を近付けて内容に目を通せば......

 

公安委員会が発行する、銃器検査登録制度――通称『銃検』の登録証であることが分かった。

 

――きょ、許可、されている......ッ!どちらとも、既にッ!

 

「こ、これ偽造だろ?」

 

「あややの仕事に抜かりはないのだ!不可能な事などない、ですのだ!」

 

カーテンを開けて登場したのは、装備科の平賀さん。

 

「今月より、あややは銃検の代理申請サービスを始めましたのだ!ふはふははっ!」

 

平賀さんは儲かって仕方がない時の笑い声を上げて、喜びを表現している。

 

きっと法の目を掻い潜るようなヤべー手段を使っているのだろう。

 

――勿論、高ぇんだろうなぁ。

 

「とーやまくんも、ちょーどよかったのだ!はい、『左手』用のオロチですのだ!」

 

キンジが爺さん婆さんに借金してまで金を払ったオロチが、両手分揃った。

 

「あ、ああ。ありがとう」

 

それから、キンジと俺はワトソンがスカイツリーで使った、試作品の繊維弾を受け取り――キンジの声に反応して出てきた星伽と遭遇した。

 

天使のコスプレで、M60を使って胸を隠している星伽と遭遇した。

 

――疲れてるのか、俺。さっきからやべー銃しか目にしてないぞ。

 

本格的に幻覚でも見え始めたのかと思い目を軽くマッサージしてから再び星伽を見るが、その腕には相変わらずGPMG......汎用機関銃たるM60がしっかり握られていた。

 

M60。米軍が大好きな汎用機関銃でベトナム戦争では歩兵は勿論、ヘリにもドアガンとして装備されていたバラマキ銃である。

 

「白雪お前それ!使うなって言っただろうが!」

 

「だ、だって、だってぇ......平賀さんが銃検取ってくれたし......イロカネアヤメ、取られちゃったし......」

 

M60で顔の下半分を隠し、涙目でキンジを見上げる星伽に、キンジは一瞬たじろぐが.......

 

「――それに......あの、小娘ェ......ッ!」

 

それまで愛くるしい表情だった星伽の顔が一転、般若のような目つきになってしまった。

 

声はドスのきいた物に代わり、一瞬で背筋が凍った感覚に包まれる。

 

「こ、小娘?あ、ああ~......お、お前を襲ったジーフォースのこと......で、しょう、か?」

 

――キンジィーッ!声裏返ってる!しっかりー!キャラもブレてるぞ!

 

「――あの子、可笑しいんだもん。私と戦った時......自分こそがキンちゃんと一番近い存在だ、とか言ってたの。可笑しいね、可笑しいよね、キンちゃん。うふ、うふふ。うふふふふふふ......――可笑しいねェッ!」

 

――ヒエッ......

 

星伽はM60を抱きしめたまま、光を失った目で虚空を見つめカラカラと笑い続けている。

 

天使とは一体......。

 

「ねぇレキ、白雪、理子。これ見て見て、さっきの航空便、『パステル』だったわ」

 

壊れ掛けの星伽の対処をどうしようか悩んでいた所に、揚羽蝶っぽいシースルーに身を包んだアリアがももまんを食べながらやってきた。

 

「――って、キンジ?な、何よ、来るなら来るって事前に連絡しなさいよ」

 

「お前も元気そうだな、アリア。心配して損したとは言わんが、心配3割引きくらいにしとけば良かったぜ」

 

「なにそれ。アンタそんなに器用じゃあないでしょ?――ところでキンジ、ハヤト、『カクテル』って届いた?こっちは『パステル』ってセット名よ」

 

「カクテル?酒か?」

 

「いや......そんな名前の物、まだ見てねェな」

 

眉を寄せた俺たちに、アリアはクレヨンのケースのような物を見せてくる。

 

「武偵弾倉よ。さっきバチカンから、お見舞いの手紙付きで届いたの」

 

話しながら開けたケースの中には、本物のパステルみたいに色鮮やかに着色された.45ACP弾が敷き詰められていた。

 

思わず感嘆してしまう光景に、弾を見せてもらうと――徹甲弾、破砕弾、飛散弾、炸裂弾、閃光弾、音響弾、煙幕弾、焼夷弾などが見えた。

 

成程、この『パステル』とやらは武偵弾一式のことらしい。

 

メーヤが言っていた支援とは、コレの事だったのだ。

 

「イタリアの弾丸職人は、腕がいいのだー、一度でいーから留学したいのだー」

 

特殊な弾丸ばかりが揃う武偵弾だが、一発一発がアホみたいに高い。

 

それらを詰め合わせて3人に送り付けてくるなんて、教会って金持ちなんだろうな。

 

「ていうかお前ら、養生しろよ。なに病室で銃検取ったり武装強化したりしてんだ」

 

キンジが御尤もなことを言うと、

 

「これは強化合宿よ。やられっぱなしはダメでしょ」

 

「キンちゃんに一番近い存在は私なの!あんな女はダメ、ダメ、ダメッ!」

 

「くふふふ。こういう女子会、面白くてさぁー。理子ワクテカしちゃうっ」

 

「武偵は一発撃たれたら、一発撃ち返すものですから」

 

4人はそれぞれの意見を口にした。

 

――ああ、全員リベンジしようとしてるのか......

 

この状況、あまりよろしくない。

 

ジーフォースを仲間に引き込む必要のあるこの場面で、これはいけない。

 

「キンジ、ハヤト、アンタ達も手を貸しなさい。バスカービル総出で掛かるわよ。アタシはもう1つ、平賀さんにバックパック方式のロケットブースターを――」

 

「ああ、もう......アリア、ちょっとこっちに来い」

 

キンジはジーフォースの計画の話をアリアにする為か、アリアを近付けた後にカーテンを閉め切ってしまった。

 

それを機に、一斉に静かになる病室に、ようやく落ち着けるという意味で溜息を吐いてから――床に胡坐を掻いて、刀を鞘ごと抜き取り、抱きしめる様にして肩に掛けた。

 

そのまま目を閉じ、深い呼吸を何度も行う。

 

呼吸音を立てず、静かに、しかし深く。

 

暗く、何も見えない虚無の空間で、キンジたちの声が薄らと聞こえ――集中できてきたのか、聞こえなくなっていく。

 

その状態のまま、鯉口を切り、僅かに刀身を露出させ――戻す。

 

キィンッ......

 

音の波が広がっていく。

 

落ち着かせた心を波立たせる様に、風が吹き湖面を荒らす様に。

 

一瞬の静寂の後に吹き荒れる山嵐の様に。

 

イメージの波が、真っ暗な視界の中を突き進む。

 

――剣の腕は未熟。技術も御粗末なもの。振りさえまともに出来ず、構えすら危うい。

 

この刀を、どう扱うか。どのような戦い方にしていくのが最良なのか。

 

それを、自分に問う。

 

刀を投げる不意打ち?『アクセル』の状態で放つ、常人には視ることすら敵わない突き?もしくは、連撃。不格好ながらに上段、下段、突き、払いを織り交ぜた手数勝負か。

 

そして、それらの内のどれか1つ、もしくはその全てを使ったとして――

 

――もしもの時。俺は、あの男......ジーサードに勝てるのだろうか。

 

無の世界に、イメージが作り出したジーサードが現れる。

 

作り出した刀の波紋を、指一本で割って嗤うジーサードが近付いてくる。

 

『ハハハハハハハハハハッ!ハハハハハハハハハハッ!!!』

 

遠方から、目の前に。目の前から――真横に。

 

『もっと強くなって、俺を笑わせてくれ』

 

俺の作り出したイメージ。劣化に過ぎないソレの殺気に――

 

「――っ!」

 

気圧され、俺の精神統一は終わりを迎えた。

 

一人冷や汗を流している俺は、ざっと病室内の様子が変わった事を把握し、その原因を調べ......

 

「妹は最強なんだ!お兄ちゃんと妹の間には、誰も入れない!兄妹の繋がりは、絶対の繋がり。他の女とは違うんだッ!」

 

病室の入り口で、キンジを庇うように立つジーフォースが、妹最強宣言をしているのを見つけ、

 

――えーと。

 

「キンジ、良かったな?」

 

なんかもうキンジが軽く説得するだけで仲間に出来そうなジーフォースを見て、俺はキンジにそんな場違いな発言をしてしまった。

 

 

 

 


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