人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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友人より支援絵を頂いたので、あらすじの方に掲載させて頂きました。

掲載許可は貰ってます。


修理に出したナイフがやべーことになってた

日の出が遅くなってきた今日この頃、俺はキンジと強襲科のトレーニングルームに居た。

 

「――うぅっ、寒いな......で、こんな朝早くに俺を呼びだした理由はなんだ?――隼人」

 

キンジは自分の体を抱きしめる様にして軽く身震いした後、息を吐いて自分の手を温めながら俺に質問してきた。

 

「ああ、『桜花』の名前を決めた事と、これからについてだ」

 

俺がそう言いながら構えるとキンジも体を動かす事に賛同したのか、何も言わずに構えた。

 

一拍おいて、

 

「――やっとか。それと......これからの事?」

 

互いに駆け、右腕同士をぶつけ合い、「お前が真面目な口調の時はだいたい余裕がないときか真剣な時だけだろうししっかり聞くぜ」、とキンジは言った。

 

「ああッ、お前、もうじき武偵高(ここ)から出ていくだろ?だから――俺の戦う理由を見つけようと思ってな!」

 

半歩すり足で下がり、左腕を振り上げフェイント。

 

そのまま体を捻り、右脚の回転蹴りをキンジの顔目掛け繰り出す。

 

「ッ――あー!そう、かッ!お前、俺に付いてくとか言ってたな!」

 

キンジは左腕を上げ、回転蹴りを防御。そのまま左腕を外側へ弾く事で俺の脚を宙へ投げ出し、その隙に2歩半下がった。

 

「......ああ。でも、お前は居なくなる。でも、『極東戦役』は......まだ続く。だから――居なくなるお前の代わりに戦い続けようと思った」

 

「――!」

 

棒立ちになり、キンジをしっかりと見つめて思っていた事を告げる。

 

キンジはそれに少し驚いた様子で、何か言おうと口を開けるが、

 

「だが、それだけじゃあ――足りないと感じてな」

 

「......は?」

 

呆けた表情をするキンジを見て、少し苦笑しながらも言葉を続ける。

 

「お前の代わりに戦うのは――お前が少しでも早く、一般人になれるように祈ってるからだ。でも、それだけじゃ......俺が『極東戦役』に参加する理由にならないって気付いてな」

 

「それは......そう、だろうな」

 

キンジの表情が沈みかけた所で、走り出す。

 

距離を詰め、跳躍――直後に、両腕を使ったハンマーブローのような攻撃を行う。

 

狙いは勿論頭部。

 

「ぐっ!」

 

突然の奇襲に、キンジは慌てながらも的確に防ぐ。

 

「キンジ」

 

「なん、だ!」

 

両腕をクロスさせてハンマーブロー擬きを防いだキンジは、上体を反らしながら身体を捻じり俺を真横へ落とした。

 

勿論その隙を逃すキンジではなく、がら空きになった横腹へ容赦なく蹴りを放ってくる。

 

それを両手と両膝を使って更に横へ飛び退き、左手のみで着地、そのまま下半身を持ち上げ、片手側転を行い体勢を立て直す。

 

「――まだ、迷ってるし、悩んでる......何も決まってないが......それでも、戦う意味を探すよ。名前も知らない爺さんが言ってたんだ、『悩みは全てにおいて優先されるべき事柄だ』ってな」

 

「......そうか。なら、俺は何も言わないさ。お前が決める事だからな......好きなだけ悩んでくれ」

 

「言われなくても今も悩んでるっつーの」

 

そんな風に、話を一区切りつけて、再びキンジと組手を行い続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前の『桜花』は、なんて名前にしたんだ」

 

組手を終えた俺たちは、床に胡坐を掻いたままスポーツドリンクを飲んで一息吐いていた。

 

そんな時に、キンジから、そういえば、と言った切り口で質問が出てきた。

 

「『月華(げっか)』」

 

「『月華』......?」

 

「おう、月に華で月華だ」

 

「......いい名前だな。他には新しい技でも思いついたのか?」

 

「あー、まぁ、それなりに考えては見たが――そんな納得する物は出来てないなぁ」

 

「それでもいいから一応教えろよ、俺も気になってるんだ」

 

キンジは本気で気になっているのか、少し身を乗り出して詰め寄ってくる。

 

「分かった、分かった......まずは......」

 

トレーニングルームの端の方に置かれているホワイトボードの前まで移動し、マジックで棒人間でモーションを描いていく。

 

「と、まぁ第一案はこんな感じで、次のが――」

 

此方もまた、同じ様に描き加えていく。

 

とりあえず思い付いた分を全部描き切った所で、キンジがマジマジとそれらを眺め、体を動かしてモーションの再現をし始めた。

 

俺もそれに参加して、自分の中にあるイメージを形にしていく。

 

だいたい、こんな感じで毎朝を過ごしている感じだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ある程度時間が経ち、人が増えてきたので区切りを付けて早朝訓練を終え、各部屋へ帰っていく。

 

シャワーを浴びて汗を流して、着替えてダイニングへ行けば――

 

「おはよう、隼人」

 

「ん、おはよう」

 

エプロン姿のジャンヌが忙しそうに朝食の準備をしつつ、俺に気付いて挨拶をした。

 

新聞を読んでいた金一も、顔を上げて挨拶をしてくる。

 

「――おはよう、2人共」

 

それに挨拶を返して、席に座って、テレビを点ける。

 

そのまま暫くテレビで朝のニュースを眺めていると、朝食が食卓に並び切りジャンヌが席に座った。

 

「よし、揃ったな」

 

「ああ、それじゃ――頂きます」

 

一言告げて、飯を食い始める。

 

――やっぱり、ジャンヌの飯は美味いなぁ!

 

これだよ、この平和な時間。

 

何事も起こらないこの雰囲気が、堪らない。

 

「――ああ、そうだ。隼人」

 

「ん?」

 

ジャンヌが朝食を食べ終え、カフェオレを一口飲み、口元をナプキンで拭った所で俺を呼んだ。

 

「ナイフだが――修理・改造が終わったぞ」

 

「マジで?速くねぇか」

 

「そうか?普通だとは思うが――まぁいい。食事が終わったら書斎に来い」

 

「あいよ」

 

ジャンヌが一足先に書斎に行ったので、俺も急いで自分の分を平らげて、書斎へ早足で向かう。

 

やや乱暴に、書斎の扉を開けて中に入ると、ジャンヌが1mほどの長さの布に包まれた物を抱えて座っていた。

 

「来たか、速いな......流石に、あれだけ溶け切ったデュランダルを元のナイフにするには無理が過ぎた。神秘が薄れすぎてしまっていたのでな......故に、白雪――いや、星伽より祈祷を受け続け、神秘を籠められてきた玉鋼を譲ってもらった」

 

布の口を縛っている紐を、ジャンヌが解く。

 

「そして、溶けてしまったデュランダル・ナイフを星伽の巫女たちによる祈祷のもと、神秘を再び宿らせながら鍛冶師が叩き上げ、心金に使用した」

 

布で作られた袋からジャンヌは......少し長めの日本刀を取り出し、俺に渡してきた。

 

「この日本刀の作成には星伽の、刀匠、研師、鞘師、白銀師、柄巻師、塗師、蒔絵師、金工師が参加してくれた」

 

抜け、と目で言われ――鞘を握った左手を使い鯉口を親指で押し上げ、右手で柄を握って、慎重に引き抜く。

 

――重い。

 

鈍い光を放つ、重厚な重さを持つ日本刀は蛍光灯の光を浴びて、その輝きを俺に示していた。

 

「構造は四方詰め、刃文は虎徹帽子。茎は尻張り形で、鑢目は鷹ノ羽。切先は大切先で構成されている」

 

鍔を見れば、僅かに半月が描かれているのみで、余り誇張された装飾などは見当たらない。

 

柄巻は黒く、鞘はやや煤けた赤褐色の物だった。

 

刃渡りは目視で見て......85cm程。

 

だいたいの標準が75cm程だから、それよりもかなり長い。

 

何処を見ても美しさばかり感じてしまうこの刀を、実戦で振るうのは少し憚られてしまう。

 

芸術品として、飾っておきたい......そう思える一品だった。

 

身長に鞘に戻し、鯉口がしっかりと噛みあったの確認して、床に静かに下し――ジャンヌを見て、一言。

 

「――いい、刀だ」

 

「だろう?白雪や星伽には感謝しなくてはな」

 

「ああ、そうだな......ところでジャンヌ」

 

「どうした、隼人」

 

「俺、日本刀なんて振った事ねぇんだけど」

 

「えっ」

 

剣だとかは奪い取って勝手に振り回してたが、あれは青龍刀だったしなぁ......星伽の刀もそんなブンブンしてないし。

 

ジャンヌは俺が刀を使った事がないワケがないと思っていたのか、驚いた表情のまま少し固まっていた。

 

「ジャンヌー?おーい」

 

目の前で手を振ると、ジャンヌはハッと気を取り戻した。

 

「に、日本人は皆日本刀を振れるのではないのか!?」

 

「振れるワケねぇだろ」

 

「だがしかし!アニメではよく振っているではないか!」

 

「ここは現実だ目を覚ませ」

 

「――......なん、という......ことだ――日本人は皆NINJAではないのか......武偵だけか?武偵だけがNINJAなのか?」

 

ジャンヌの日本イメージが崩れ去っていくのが伝わる。なまじ近くに超スピード(俺)、忍者(風魔)、不死身(キンジ)、日本刀使い(星伽)、二刀流(アリア)などが居るから信憑性が高くなってしまったのだろう。

 

肩を落として落ち込むジャンヌを見て、ちょっと申し訳なくなる。

 

――まぁ、うん......振った事ないなら、練習すりゃいいだろ......うん。

 

「大丈夫だよ、ジャンヌ」

 

ジャンヌの頭に手を乗せて、撫でる。

 

「使えないなら、練習するだけだ」

 

ジャンヌはその言葉に、少しだけ気を良くしたのか小さく笑みを浮かべた。

 

――ナイフを主に使う戦い方だったからなぁ......戦闘方法変えねーと......

 

文化祭は目前まで迫っている。時間はどんどん短くなっていく。

 

悔いの無い様に、悩みを妥協させない為に。俺の戦う理由を見つける為に。

 

今日も一日、頑張っていこうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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ヴぇぁああ;w;

ようやく9巻の途中辺りまでです。

欧州が遠い_(:3」∠)_

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