人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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短くてすいません(´・ω・`)


やべーくらいに呆気ない決着

 

「......あら、次は......そう。そうなのね、トオヤマ。お前が......相手と言うワケね?」

 

キンジはヒルダと対峙しながら――アリアを見て、次に理子を見た。

 

釣られる様に俺もアリアを見れば、まだ戦意こそ喪失してはいない物の、先の落雷で完全に委縮し切っている。

 

そのまま流れる様に理子へ目をやれば、ぐったりと棺に背をもたれさせたまま、ヒルダを睨む事しかできていない。

 

ヒルダは、第4態ではないが未だにその身に雷を身に纏っている。

 

だが初の試みだったせいか、ヒルダは疲弊している様だった。

 

この状況で、満身創痍の俺は完全にお荷物だろう。

 

――頼んだ、キンジ。

 

今の俺に出来る事はキンジがどうにかしてくれるように祈るだけだ。

 

 

 

 

 

 

「――理子、いや......アリア。貸してもらうぞ」

 

キンジは、理子が背に収めていたアリアの小太刀を片方抜く。

 

「ヒルダッ!」

 

展望台の縁辺りに立つその足目掛けて、キンジは小太刀をブーメランの様に投げた。

 

回転しながら飛んでいった刃は、ヒルダのアキレス腱を切断したが――

 

「!」

 

何事も無かったかのように治ってしまった。

 

真っ黒な空が数瞬光り、顔を上げたヒルダを照らす。

 

不敵な笑みを浮かべて見せたヒルダは壊れた棺にハイヒールの足で上がる。

 

「アリアは剥製にしようと思っていたけど――ごめんなさいね。もう、それは出来ないわ」

 

青白い稲妻が、振り上げられた三叉槍の先端を踊る様に行き来している。

 

「第3態の私は――触れるもの全てを、焦がしてしまうから――こっちの方が、雷の力を上手く引き出せるのよ。当然の話だけれど」

 

――雷球......!

 

三叉槍の先端に、球状の雷がまた形成されていく。

 

だが......違う。

 

色が違う。

 

先ほどまでの、第4態とはパワーが違う!

 

セルリアンブルーの光を放ち、有り余るエネルギーが不安定な光を漏らしている。

 

触れてもいないのに、傍にいるだけなのに、腕時計、携帯、ベルトのバックル......

 

俺たちが身に着けている金属製品から極小の雷電が放電音を幾度となく鳴らしながら空中へ走っていく。

 

「『極星(ステルラ)』。これで今一度お前達を黒焼きにし、並べてこの串に刺し、お父様への贈り物にしてあげる」

 

ヒルダはその体から槍へ電力を供給し続け、1秒経つにつれどんどんと雷球を成長させている。

 

キンジはそれを見て、最後の小太刀を手に取り――アリアと理子を守る様に、ヒルダの立つ棺へと上がった時......

 

「人生の角、角は、花で飾るのがいい......あたしのお母様の、言葉だ......」

 

理子の声が、薄らと聞こえた。

 

身体をもう少しずらして覗きこめば、理子は、棺の周囲を飾っていた大きな花束の1つを抱えていた。

 

ヒマワリの花束を。

 

「だから......ヒルダ。お前にやるよ。お別れの、花......」

 

キンジの背中越しに声を掛けた理子に、ヒルダが視線を向ける。

 

「ほほッ......4世にしては殊勝な心掛けね。でも、謹んでお断りするわ。私、ヒマワリってキライなの。太陽みたいで、憎たらしいんだもの。お前も知っているでしょう?私は暗い所が好きなのよ」

 

「くふっ......暗い所が好きなお前に、1つ......日本の諺を教えてやるよ。『灯台もと暗し』......自分のすぐ足元にには、何があっても......大抵、気付かない」

 

理子は――ヒマワリの花束を解いていく。

 

「コレは。近すぎても遠すぎてもダメだった。ベストな距離が必要だった......」

 

花束の中から出てきたのは、銃身を短く切り詰めた――

 

ウィンチェスター・M1887。

 

「ショットガン......!」

 

理子の横で、アリアが目を丸くしている。

 

「理子、お前は――天才だっ!」

 

キンジは叫びながら横っ飛びに棺から飛び降り、キンジの陰にいた理子の銃に――

 

ヒルダが、息を呑んだ。

 

「今、サイコーのアングルだよ。ヒルダ。フィー・ブッコロス......!」

 

震える理子の腕を、アリアが支え――

 

稲妻にも似た轟音が大展望台に響き渡った。

 

一発しか飛ばない通常の拳銃弾やライフル弾と異なる、その散弾は無数の弾子となって、空中で散開し――

 

大量の軟鉄弾が、ヒルダの全身に余すところ無く浴びせかかる。

 

ヒルダは、苦しそうにふらつき、声にならないような苦悶の音を漏らし、その場に片膝を突いた。

 

その時。

 

今にも暴発しそうなほどに膨れ上がった蒼い『極星』が制御を失い、溶ける様に槍に戻り......ヒルダの体を通過して、足元へ流れていった。

 

瞬時に、ヒルダの全身を炎が包み込んだ。

 

再生出来る筈のヒルダが、燃え上がっていく。

 

自分の操っていた高圧電流によって、焼かれていく。

 

――魔臓が、全滅したのか。

 

その身を包み込む炎で喉までやかれたせいか、ヒルダは必死に口を動かし言葉を発してはいたのだろうが、声にならない慟哭は俺たちの耳に終ぞ届くことは無かった。

 

翼も燃え落ち、影になることも叶わず、ヒルダは空になった眼で辺りを見回し――這って逃げようとしているが、右往左往するばかりだ。

 

ヒルダを捕縛しようと、手錠を取り出したアリアだが......すぐ、ヒルダにはもう手出しが出来ないことに気付く。

 

キンジも助けようと思っているみたいだが、燃えている体に近づけないのだ。

 

「ヒルダ!そっちじゃない!そっちにいくな!」

 

展望台の縁の方へ這って行くヒルダにキンジが叫び、ワトソンが飛び出すが――

 

時既に遅く、ヒルダはもがき、苦しみながら、とうとう縁から手を滑らせ......

 

落ちていった。

 

――450mからの落下だ。助かるワケがない。ヒルダ......俺にやったことを、その身で味わうなんてな......

 

第二展望台で起きた激戦は、こんなにもあっけない形で終わりを迎え――辺りは俺たちを打つ雨音だけが響くのみ。

 

キンジが理子やアリアと話している。

 

俺も本来なら参加するべなんだろうが――行くべき場所......確認しておきたいことがある。

 

「ワトソン......キンジたちを、頼む。理子がヤバそうだ」

 

「あ、ああ......君もかなり危険そうだが、何処へ行くつもりだい?」

 

「確かめたい事がある。幸いにも足腰は無事だ......自分で病院に駆け込むからよォー......頼んだぜ」

 

それだけ言い切ると、俺は急いで来た道を引き返していき――スカイツリーから飛び出して、停電した病院へ走っていく。

 

あの女の子が、あの病院に居なければいいのだが。

 

そうあってほしい、という願いを胸に抱いて駆ける。

 

裸足の右足が痛みを訴えるが気にする暇はない。むしろ全身が痛みを訴えてくるが知った事ではない。

 

病院のロビーへ入ると夜勤の巡回中だった看護師が全身ズブ濡れで、所々から出血し、骨折の応急処置が施された俺を見つけて顔を青くした。

 

騒ぎになる前に、しおりちゃんの知り合いだという旨を伝えると――ここにそのような名前の患者さんは居りません、と答えてほしかったがそんな事は無く――看護師は表情を一層険しくして、俺を案内してくれた。

 

案内された先は、ICU。

 

集中治療室。

 

未だに電力が復旧しておらず、夜も更けているというのに多くの看護師や医者が慌ただしく活動し、電力会社の社員たちもかなりの人数が動員され、ガソリンを使った発電機でなんとか必要最低限の電力を確保している状態だった。

 

ソファーに腰を落とし、虚空を見つめる男性......しおりちゃんの保護者のその人に、声を掛けようとしたが――それより先に案内してくれた看護師に捕まってしまう。

 

「貴方も、治療が必要です」

 

「――でも」

 

「今の貴方は、誰かを心配する余裕を持ってはいけません!」

 

自分は大丈夫だと言いたかったし、できればこの場でしおりちゃんの安否を確認したかったが――看護師は医者を呼び、数人がかりで俺を保護して、治療室へ引っ張っていった。

 

無事であってほしい。

 

それだけを願って、俺は引かれるままにICUの前から退散した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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