人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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これからも私のペースではありますが投稿を続けていきます!



7月5日13時頃の日間ランキングに35位でランクインしていました!

とても嬉しいです!(語彙力不足)


開催!やべー宣戦会議

軽い夕立があってから、空は晴れ......薔薇色の夕焼けが、東京を覆った頃――

 

学園島の西端、海を望む転落防止柵の外に、キンジと俺はレキとハイマキを連れ込んだ。

 

あの山での狙撃戦で約束した、魚肉ソーセージ箱買いの約束を果たす為に呼んだ訳である。

 

「――ほら、食えよ。これ全部ビニール剥くの面倒だったんだからな」

 

「ハイマキ、オメーは勇敢な漢だぜ!よくやってくれた!」

 

キンジと俺で、魚肉ソーセージ60本入りのを1箱ずつ買って合計120本。

 

それをドン、とハイマキの前に置く。

 

その魚肉ソーセージで出来た山を見たハイマキは――

 

「ウォオンッ!」

 

と、一吠えして、頭を魚肉ソーセージの山に突っ込んで、ムシャムシャと食い始めた。

 

白い尻尾はプロペラみたいにブンブン振り回されている。

 

「......」

 

レキはハイマキの傍らに膝を揃えてしゃがみ、その背中を撫でてやっている。

 

相変わらず無表情だが――キンジは何処となくレキの事が分かっている様で、口元が少し笑っているのが見て取れた。

 

俺は夕焼けで金色に光る海を眺め、潮風を胸に吸い込む。

 

この時間帯になると、風が涼しい。

 

夏ももう――終わるな。

 

「そう言えばアリアの奴、ポジションまで勝手に申請してやがったぞ。知ってたか?」

 

キンジの言葉にレキはしゃがんだまま顔を上げ、ふるふると首を横に振った。

 

「俺もそりゃあ初耳だなァー...で、どんな感じなんだ!」

 

前衛(フロント)が俺とアリア、そして隼人――アリアが先駆け(PM)で、俺が隊長(UL)。隼人も先駆けだな......で、白雪とレキが支援(サポート)後方(テール)が理子。突入時には俺とアリアが拳銃弾で圧すか――奇襲で隼人を単独でぶつける。もしくは三人で弾幕射撃をする。その際に支援が中・遠距離で援護。理子はバックアタック警戒に備えたり、撤退時の殿をしてもらう。それと、隼人には偵察も任せる可能性があるな」

 

キンジは足元に転がった小石を適当に並べて、役割の説明をする。

 

――偵察に、ポイントマンに、奇襲役か。選り取り見取りだな。

 

レキも無言でキンジを見続けてる辺り、特に異存はない様だ。

 

キンジとアリアのコンビもいい、3人で組んでも問題ない、アリアと俺、キンジと俺でもコンビネーションは良好だ。星伽は攻防両方をこなせるオールマイティユニット。刀に鬼道術で前進も良し、下がって狙撃の観測手や負傷者の治療も可能。後方は麒麟児レキの狙撃、背面には危険の感知に敏感な理子。

 

 

 

アリア―Sランク

 

キンジ―Eランク(元Sランク)

 

星伽―Aランク

 

理子―Aランク

 

レキ―Sランク

 

俺―Aランク

 

成程、キンジをSランクとしてカウントすればSランク3名、最低ランクがAというランク平均の極めて高いチームのワケだ。

 

一人一人の癖の強さもアレだが、キンジが何とかしてくれるだろうし、俺も出来る限りのフォローはしたいと思ってる。

 

そんな事を思いながらレキを見ると、何か話したそうにキンジを見て、俺を見た。

 

――把握した!

 

きっと俺が居ると話し辛いやつなのだろう。ならば邪魔者は退散すべきだ。

 

「ん、じゃ!俺ぁそろそろ帰ってジャンヌの飯でも食うとするよ......じゃあな、ハイマキ」

 

ムシャムシャと魚肉ソーセージを頬張り続けてるハイマキの背中を軽く撫でて立ち上がる。

 

「じゃー、レキ、キンジ...また明日な」

 

「おう」

 

「はい」

 

俺は手を上げて、振り向き、沈んでいく太陽を背に受けて男子寮へ向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

玄関に入り、靴を揃えてリビングの方へ歩いていく。

 

「ただいまーっと」

 

「お帰り、隼人」

 

「遅かったじゃないか」

 

俺の帰宅を告げる声に反応して、キッチンからジャンヌが、リビングのソファから金一が顔を覗かせる。

 

鞄をベッドに置いて、ジャケットを脱ぎネクタイを緩めて捨てるようにベッドに放る。

 

シャツのボタンを外して、脱ぐ。

 

少し冷えた外気に肌が晒されて、寒気を感じる。

 

「夕飯はもうすぐで出来るみたいだし、どうだ、隼人...俺と話でもしないか」

 

リビングのソファを占領して夕刊を読んでいる金一は、顔を新聞から逸らして俺を見ながらそう言う。

 

ズボンを脱ぎ捨て、部屋着に着替える。

 

そして、金一の方に向き直って、近づいて行く。

 

「そろそろ『不可視の銃弾』を教えてくれてもいいんじゃねーの?」

 

金一が姿勢を変え、ソファのスペースを開けてくれたのでそこに腰を落とし、金一に『不可視の銃弾』のやり方を教えてくれ、と強請ってみる。

 

「隼人ならもう出来るんじゃないか?」

 

「へ?」

 

「『不可視の銃弾』はホルスターに収まった拳銃を可能な限りの高速で抜いて、高速で狙いを定め、高速で射撃して、また高速でホルスターに仕舞うだけだからな」

 

金一はそれだけ言うと、夕刊をぱらり、と捲って次の紙面を読み始めた。

 

「つまり......超スピードってことでいいのか?」

 

「そういう事だ。まぁ......XVRはバレルが長い。ちょっと速射には不向きなんじゃないか?」

 

「まぁその辺も何とかするさ......俺流にイジってみるのもアリかもなァー」

 

そんな話をしてから、夕食を終えて――

 

 

 

 

 

 

 

「隼人、少し......いいか?」

 

ソファに深く腰掛け、ニュースを見ていた俺の隣にジャンヌがやって来た。

 

その表情は真剣で、凛としている。切れ長のサファイアの瞳が微かに揺れていることから、若干の迷いがあるのが見て取れた。

 

「――ああ、いいぜ」

 

ジャンヌは俺の了承を聞くと、くる、とその場で反転して背を向け、ダイニングの方へ歩いて行く。

 

その後を付いて行くと、既に金一が椅子に座っていて、金一の隣にジャンヌが腰を掛けた。

 

俺は空いている対面の席に座り――金一とジャンヌの剣呑な雰囲気に、若干気圧されてしまった。

 

「そんな真剣な顔して......どうしたんだよ、2人共」

 

そう尋ねてみるが、金一も、ジャンヌも何も言わない。

 

やや重い空気が場を支配し、肌がピリピリと張り詰めた感覚を痛いくらいに訴えてくる。

 

時計の針が進むカチ、カチ、という音だけがハッキリと聞こえる。こんなにも時計の針の音は大きかったのか、と疑問に思う程に音がない。

 

その時計の針が進む音を何十回か聞いて――ジャンヌが、息を微かに吸った為か肩が少し上がるのが見えた。

 

「冴島隼人。我々イ・ウーは遠山金次率いるお前たちの影響によって、『崩壊』した。この事実を以て、我々イ・ウーに所属していた組織・団体・機関・結社は――次に進まなければならない」

 

ジャンヌの口から、イ・ウーの話が上がった瞬間――

 

ズゥッ――――――

 

と、体中から殺気が溢れ――体の奥が灼熱に支配されていく。

 

目は俺自身でもどうかと思う程据わりジャンヌを見つめて、離さない。それに――ビリビリと空気が震えているのが伝わる。

 

「落ち着け、隼人......ここに、敵はいない」

 

金一が殺気溢れる俺を落ち着かせ、イ・ウーのメンバーによる襲撃はないと知らせてくれる。

 

そうは言っても武偵高にココたちが居たことを考えると、警戒しない方が可笑しい。

 

――何時襲われるか、分からないからな。

 

「......警戒は、しておくべきだろう」

 

ジャンヌはそんな俺を見て、赤い蝋で封がされた純白の封筒を差し出してきた。

 

「これを、読め」

 

封筒を受け取り、丁寧に封を剥がして――中に入っている紙に目を落とした。

 

 

『 冴島隼人殿

 

  10月1日 夜10時

 

空き地島南端 曲がり風車の下にて待つ

 

  武装の上、一人で来るように

 

           ジャンヌ・ダルクより  』

 

 

と、書かれていた。

 

「......これは?」

 

「我々が――次に進む為の、集会みたいな物だ」

 

「次に、ね......相、分かった」

 

随分物騒な集会もあったもんだ。

 

色々と思う事はあるが、ここで何か話してもあまり本質的な解決は望め無さそうだったので、手紙を仕舞い、席を立つ。

 

疲れたのでもう寝る、とだけ告げて返事も聞かずベッドにダイブして目を閉じた。

 

10月1日まであと1週間。

 

一体、そこで何があるのか――俺には、全然理解できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一週間後。

 

9月30日――23時40分。

 

どうやって空き地島に行こうか悩んでいると、キンジがモーターボートを動かそうとしているのが見えたので、近付いて声を掛けることにした。

 

「キンジ」

 

「......隼人!お前も、呼ばれたのか」

 

「ああ、ジャンヌと金一...いや、今はカナか。まぁ2人は先に行っちまったよ」

 

「兄さんも?......嫌な予感がするな」

 

キンジの操作するモーターボートに乗り込んで、真夜中に学園島から空き地島の南端へと渡る。

 

錆びた梯子を伝って上った人口浮島の上は――

 

暗く、濃霧に包まれていた。

 

不明瞭な視界の左右には、東西に整然と並ぶ風車の柱が続いている。

 

その濃霧を掻き分ける様にして、俺たちは曲がり風車と武偵高であだ名されている、4月にキンジがANA600便を停める為にぶつけて曲げてしまった風力発電機の下までやってきた。

 

それにしても、この空き地島を覆う濃霧――自然発生した、というワケではなく......超能力のような、違うような...そんな力の残滓を感じる。

 

シャーロックが『予習』と称して発生させた霧に似ている、ような気がした。

 

「隼人、遠山――こっち、だ」

 

掛けられた声に振り向くと――

 

少し離れた所に、白銀の鎧を着たジャンヌが立っていた。

 

デュランダルの切っ先を真っ直ぐ地面に突き、杖の様に立て、柄頭には手甲を填めた両手を重ねて乗せている。

 

「なんだ、こんな所に、夜遅くに呼び出して」

 

キンジがそう言いながらジャンヌに近づいて行くので、俺も後を付いていくと――

 

ジャンヌの西洋甲冑は、かつて地下倉庫で戦った時よりも重厚になっていた。

 

あの時着けていた胸当てや脛当てに加え、スカート型の草摺り、曲線的な肩当てまで装備していた。

 

その淡麗な顔も、一週間前に話した時と遜色がなく――むしろ、更に表情は強張っていた。

 

「――間もなく零時です」

 

頭上から、レキの声がする。上を見上げれば、動かない風車のプロペラに、制服姿のレキが腰かけていた。

 

こちらも何時もは肩に掛けているドラグノフを体の前に抱えている。

 

臨戦態勢と言うワケではないが、かなり警戒を強めている。

 

かく言う俺も、何時でもXVRを撃てるように安全装置を外し、右手を自然とホルスターから銃を最速で抜ける位置に固定していた。

 

キンジは、ただただ困惑している。

 

「キンジ......ベレッタにデザートイーグルを、何時でも撃てるようにしとけ」

 

「――分かった」

 

キンジは俺の言葉を聞いて、ホルスターに手を突っ込み安全装置を解除した。

 

俺たちが警戒を強めたその時――

 

――――バッ――――

 

曲がり風車を大きく円形を囲むように、複数の強力なライトが灯った。

 

眩しさに腕で目を覆った俺たちが......再び、周囲を見ると。

 

光に晒された霧に、俺たち以外にも幾つかの――人影がある。

 

その姿形が、どれもこれも普通じゃない。

 

―――異形の、集団。

 

そうとしか言い様がない不気味な連中が、半径50mくらいの周囲に集っている。

 

その装いは皆バラバラで、まるで仮装大会の会場にでも迷い込んだ気分だが――そういう、お遊びじゃないってことは分かる。

 

――動けない。

 

銃を抜こうとするが、全体から鋭く、剣呑な殺気を受けて......動く事を許されない。動けば、先に俺がやられる――それだけがはっきりと理解できた。

 

シャーロック...には、及ばないが――それに近い物を感じる。

 

「――先日はうちのココ姉妹が、とんだご迷惑をお掛けした様で。陳謝致します」

 

恭しく俺たちの方にお辞儀してきたのは、糸みたいに目の細い男。

 

張り付いたような笑顔に、丸眼鏡を掛け、色鮮やかな中国の民族衣装を着ている。

 

その男から離れた地面では――ゾゾゾゾ......と、黒い影だけが、地面を這う様に蠢いている。

 

上に物がないのに、影だけが動いて......集まり、人型になって起き上がったかと思うと――

 

「お前たちがリュパン4世と共に、お父様を斃した者たちか。信じがたいわね」

 

白と黒を基調にした、不吉なゴシック&ロリータの衣装に身を包んだ金髪のツインテールの少女になった。

 

その雪のように白い手には、真夜中だというのに黒いフリル付きの日傘を持っており、背にはコウモリのような大きな翼が生えている。

 

その翼が飾りじゃない事を示す為か、それを大きく、バサッと、一つ羽搏いた後ろでは......

 

「――ヴンッ――」

 

と、別の人影が異様な音を上げた。

 

そいつはかなりの巨体で、ざっと3m程はある。全身を現代的な装甲で覆い、ガトリングガンを携え、肩には連装型のロケットランチャーを搭載している。

 

言うなれば、人型の二足歩行戦車(メタルギア)。その姿は正しく鋼鉄の王と呼ぶに相応しい。

 

その傍らには、白い法衣に身体を包み、十字架のような大剣を背負ったシスターと――黒いフード、大きなとんがり帽子、肩にはカラスという絵に描いたようなチビの魔女がそれぞれ垂れ目とツリ目で睨みあっている。

 

「仕掛けるでないぞ、遠山の、足の早い坊。今宵はまだじゃ。儂も大戦は86年ぶりで気が立つがの」

 

キンジの事を知っているような口ぶりで話し掛けてきたのは、梵字が描かれた藍色の和服を着た、アリアより小さい、小柄な女の子だった。

 

切れ長の目は日本人っぽいが、長いその髪はキツネ色だ。そして最も特徴的なのが、頭部に狐耳が生えている。ピクリ、と動いた事を見るからに飾りじゃないらしい。

 

周囲には他にも、トレンチコートを着て長剣を背負った美形の白人男、トラジマ模様のネコ科動物のお頭付き毛皮をワンピースにした原始人みたいな女の子、イヤホンから聴く音楽にノッて、コキコキ体を揺する姿勢の悪いピエロ......奇人、変人、大集合って感じだ。

 

視界の端にキラキラと砂が舞うのが見え――霧の向こうから肌も露わな衣装を着た女......

 

「ほほ、久しぶりぢゃの。トオヤマキンジ、そして憎き小僧......サエジマハヤト」

 

砂礫の魔女、パトラがその姿を現した。

 

そして、背後に人気を感じて振り向こうとするが、それより先に肩に手を置かれる。

 

「大丈夫よ、隼人。私だから」

 

そう言って声を掛け、俺の隣に歩を進めたのはカナだった。

 

濃紺に着色された大鎌を担ぎ、ロングコートを羽織り、編み上げブーツを履いたカナはキンジの方を見ると手を軽く振って挨拶をした。

 

キンジはそれを見て更に表情を苦々しくて、汗でじっとりと濡れた額を手の甲で拭った。

 

すっ――、とそのサファイアの瞳で一同を見回したジャンヌが......

 

どうやら司会者らしく、凛とした声で語りだした。

 

「では――始めようか。各地の機関・結社・組織の大使たちよ。宣戦会議(バンディーレ)――イ・ウー崩壊後、求める者を巡り、戦い、奪いあう我々の世が――次へ進む為に(Go For Next)

 

――Go For Next――

 

バラバラに唱和したその異形の存在たちを、キンジはヤケクソ気味に、俺は警戒しながら睨みつける。

 

キンジが望む、平凡な高校生が遠のいていくのが分かる。

 

――ドンマイだな、キンジ......オメーにはまだ、やらなきゃいけねぇ事があるみたいだぜ?

 

 

 

 

 

 

 

Go For NEXT...




番外編で本編と関わらない話(パロディとか)でもしようかなぁって思ってます。

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