人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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ピンク髪のやべーやつ

「行くぜアリア...覚悟はよォー...出来てんだろーなァ!!」

 

「先に抜けアリア」

 

キンジと拳をぶつけ合った後、即座に離れあって狙いを分散させる。

 

「アンタたちが先でいいわ。抜きなさい」

 

「レディーファーストだ。抜け」

 

キンジがアリアにそう言うと同時――

 

ガガンッ!!

 

アリアは目にも止まらぬ速度でガバメントを持ち上げ、射撃してきた。

 

黒いガバメントから撃ち出された銃弾は、キンジの方へ向かっていく。

 

白いガバメントから撃ち出された銃弾は、俺の方へ来る。

 

キンジはあの曲芸みたいな銃弾を銃弾で弾く技で対処しようとしているらしい。

 

マジによくやるぜ、と感心する。

 

――俺も大口叩いたんだから、やるコトやらねーと...

 

「格好がつかんよなァ!」

 

『エルゼロ』を発動させて...飛来した銃弾を握り込む。

 

そのまま『エルゼロ』を終えて元の速度に戻ると、ギィン!!とキンジの撃った銃弾がアリアの撃った銃弾とぶつかった音が聞こえた。

 

室内に置いてあった花瓶にぶつかり合った銃弾のどちらかが当たったのだろう、ガチャンという陶器の割れる音が聞こえ、飾られていた花が飛び散った。

 

飛び散った花が降る中、アリアが走り出した。

 

アリアはキンジの右側に全力で駆け抜け、そのまま跳躍し、身を捻りながらキンジに銃弾の雨を降らせている。

 

キンジはそれを跳躍して回避した。

 

だが、アリアがそれを見逃すはずもなく―――

 

「跳んだらいい的よ、キンジ」

 

先に着地したアリアが、スライディングをしながら滑り込んできて、まだ体が宙に浮いているキンジに照準を合わせている。

 

「ああ、そうだろうな」

 

確かにアリアの言う事は当然の話だ。

 

跳んだら、まともに動けない。

 

ただし、それは...

 

「俺が1人だったらの話だがな」

 

そう、その通りだ。キンジの言った通りこの場には俺が居る。

 

『アクセル』で加速した俺はキンジの服を掴み、横に放り投げるように振るう。

 

その動作の数瞬後に、ガバメントの銃弾が2発宙を切った。

 

キンジは放り投げられた後、回転受け身を取り、アリアにベレッタを向け数発撃った。

 

アリアはすぐに体を起こし、キンジの銃弾を流れるような動作で回避し、同時に攻撃をしてくる。

 

俺もXVRを構えて撃ってはいるが、アリアはその全てを見切っているようで当たらない。

 

 

 

 

 

 

キンジがアリアとの戦闘のコツを掴んだのか、次第に動き回るアリアのガバメントに銃弾を掠め始めている。

 

アリアはそれを受けて、ピタリと止まり射撃戦に持ち込んだ。

 

ステンドグラスを背にしたアリアに、キンジと俺の同時射撃を行うがアリアはヒラリヒラリと避けていく。

 

片手突きバック転をしたアリアは、撃たれた銃弾をスッと避けていく。

 

冗談じゃねぇ、なんて回避能力なんだ。

 

アリアに当たらなかった銃弾が、アリアの背後のステンドグラスにぶち当たり、高そうなガラス細工の一枚絵は見るも無残な状態になっていた。

 

動き回るアリアに射撃を加え、リロードをして、また射撃する。

 

しかしアリアは本当にちょこまかと動いて銃弾を回避する。

 

――ええい、オメーは赤い彗星か何かか!

 

当たらなければどうという事はないをマジに実行する当りやべーやつだと再認識する。

 

髪の色もピンクだし目の色は赤いし生まれ変わりなんじゃねぇのかとさえ思い始めてきた。

 

アリアはそのまま回避を続け、大理石の祭壇の裏に隠れてしまった。

 

そこで、気付く。

 

 

ステンドグラスが割れているのは気付いていた。

 

だが――

 

()()のステンドグラスだけが残っていた事には気付けなかった。

 

アリアは逃げながら、誘導していたんだ。

 

俺たちの銃弾が赤色以外のステンドグラスを割るように、誘導していた。

 

――これが、Sランク武偵か。

 

キンジも気付いたのか、舌打ちをしている。

 

その時、アリアが右側に飛び出した。

 

キンジは射撃しようとアリアを目で追うが予想進路が分かり辛くなっている。

 

その理由は、ステンドグラス。

 

赤い光しか差し込まなくなったこの大聖堂の中で、アリアの髪は保護色になっていて明瞭に見れない。

 

曲線的な動きをしていたアリアが、突如L字にターンして、キンジに飛び掛かっていった。

 

「キンジ」

 

「ああ」

 

それを見た俺たちは瞬時に判断する。アリアはきっと、アル=カタに持ち込むつもりだ。

 

接近戦なら、俺の方が相性がいい。

 

それをキンジに伝え、キンジも理解した様で一瞬で飛び退く。

 

そしてキンジの居た場所に俺が割り込む形で入っていき、アリアとかち合う。

 

アリアと俺が同時に射撃し、互いの銃弾が飛び交う。

 

それをほとんど同じ動きで身を捻り、回避し更に接近する。

 

――この動きは、アリア。オメーから教えてもらったモンだぜ!

 

互いの腕が交差し合う距離にまで接近した俺とアリアはそのまま、怒涛の攻防戦を繰り広げる。

 

アリアの腕を俺の肘で弾き、俺の手をアリアが掌底で払い、互いの銃口を反らしあう。

 

だが、俺の銃は一丁で、アリアは二丁持っている。

 

必然的に、俺が防ぐ手数の量は多くなる。

 

『アクセル』を使って、加速しながらアリアの挙動――その全てを見て、攻撃に繋がるモーションの全てを弾き、反撃に出ようとする。

 

だがそう簡単には行かず、俺の攻撃も全てアリアに防がれてしまう。

 

俺のXVRはリボルバー...弾数は5発まで。ガバメントに威力で勝っていても、装弾数で負けている。

 

使い所は慎重に決めなければならない。

 

片足バック宙をしたアリアが、その動きのまま俺の顎を蹴りつけようとしてくる。

 

それを体を反らしつつ、横に捻じり込んで回避する。

 

その体勢のまま体をドンドン反らしていき、片足バック転をし、アリアを蹴ろうとする。だが、バック転には至れず片手ブリッジの状態から片足を浮かせただけになっている。理由は、アリアだ。

 

アリアは片手で着地し、その手を軸に回転して勢いを付けた蹴りを叩き込んでくる。

 

アリアの足と、俺の足がぶつかり合う。

 

十字架を作るようにクロスした足と足が、そのまま鍔迫り合いの様にギチギチと攻め合い、突如として離れる。

 

片手ブリッジの体勢から、地面に手を突いている力を利用して、体を捻り...手だけで体を支え、その体勢のまま手を払い体全体に回転を加え、足の裏でアリアを蹴りつける。

 

アリアはその動きに驚き、距離を少し取って回避する。

 

さっきの攻撃の影響で地面にうつ伏せになっていた俺は、上半身を腕立て伏せの要領で持ち上げ、一気に膝を曲げて軽くジャンプ、そのまま腕の力で持ち上げた体を振る。

 

その力で膝を腹に近づける事が出来たので体を捻り、背中を向けていたアリアの方に足払いをしつつ振り返る。

 

アリアは足払いを回避するために跳躍した。してしまった。

 

口がニヤリと裂ける。

 

――跳ぶのはダメなんだよなぁ?

 

「キンジ」

 

「ああ」

 

跳躍して、回避する手段が圧倒的に不足した状況で俺は自分で撃つのではなく――キンジを呼んだ。

 

キンジがベレッタを構えて、アリアを撃つ。

 

ガガン!ガガン!

 

2点バーストで撃たれた銃弾は、アリアのガバメント1丁を手から弾き、もう2発は防弾制服を着たアリアの脇腹に命中した。

 

「きゃぅ!...アンタたち...卑怯よ!」

 

「何とでも言え」

 

「勝てば正義だ」

 

近付いてきたキンジと一緒に、アリアに銃口を突きつけてホールドアップさせる。

 

アリアは大変悔しそうな顔をしている。

 

「アリア...お前の負けで――」

 

「――俺たちの勝ちだ」

 

ゲスい笑いを2人して浮かべ、ハイタッチをする。

 

二対一とは言えアリアに勝てた。やっと、勝てた。

 

カナは呆れたような表情をして溜息を吐いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キンジとアリアは積もる話もあるだろうと思い、キンジとアリアを祭壇の前に残して、俺はカナの方へ向かった。

 

「呆れた...コンビネーションは流石男の子って感じだったけれど...本当に手段を選ばないのね?」

 

カナはやや呆れたような表情を浮かべて苦笑していた。

 

「チャンスは掴める時に掴め。シャーロックも似たような事言ってただろ」

 

「隼人くんの将来が私は心配よ」

 

「俺の将来はない。あったとしても、やりたい事をやりたいだけやって...終わりだ」

 

「...そう。そうね...貴方は、そういう生き方をするもの」

 

カナの表情は憂いに満ちている。

 

キンジたちの方に目を向けると、アリアは大粒の涙を零してキンジに抱き着いていた。

 

「あの子...キンジも、成長したのね」

 

「ああ...キンジは、ずっと強くなり続けてる」

 

「アリアの為に?」

 

「アレ見せつけられて他になんて言うんだよ」

 

「はい、ハンカチ」

 

「...助かる」

 

ホロリと目から零れていった涙をカナから借りたハンカチで拭く。

 

「...2枚目?」

 

「予備は持っておくものよ」

 

「グスン、グスン」

 

「泣かないの、男の子でしょ」

 

「この涙は嫉妬の涙なんだが」

 

「それもそうね...じゃあ好きなだけ泣く?」

 

カナが俺の発言に少し考えるような表情をして、すぐに意味深な笑いを見せる。

 

「いや...もう涙は止まった」

 

「残念」

 

カナは残念そうな顔などしていないのに、そう言った。

 

「アンタ...これからどうすんだ」

 

「どうするって...何を?」

 

「シャーロックを、ぶっ飛ばして捕まえた...その先の事だ」

 

「...どうしようか、悩んでいる所よ」

 

「...ほーん、キンジの傍には居てやらねぇのか?」

 

「あの子は強いわ。私なんか、もう必要ないくらいには強くなった」

 

キンジを見つめるカナの目は優しいもので、愛を感じた。

 

「じゃあさ」

 

「?」

 

「俺んとこ来いよ」

 

「...え?」

 

「ジャンヌが言ってたぜ、アンタの事を敬愛してるって!だからアンタが居ればジャンヌも喜ぶだろ!」

 

「えっえっ」

 

「それにあの部屋ならキンジの所にも遊びに行けるしよ!それがいいだろ!」

 

「え、あの、いいって言ってない...」

 

「よし、決まり!意地でも連れて帰るぜ!」

 

「......はぁ......本当に、強引ね。女の子にそんな事言ったら嫌われちゃうわよ?」

 

「それこそ知らねーよ。俺は『俺の成すべきと思った事』をする」

 

決意はもう揺るがない。そんな顔つきでカナを見る。

 

ニィ、と笑うと...カナも苦笑交じりではあるが笑ってくれた。

 

「そうね、そういうのも良いのかも知れない。でも...先ずは――」

 

「ああ、シャーロックを」

 

「「ぶちのめす/逮捕する」」

 

 

アリアとキンジが、こっちに戻ってくる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シャーロックはすぐ近くに居る。絶対に、ぶん殴って―――逮捕してみせる。


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