人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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12時に投稿しようかと思ったら遅れてました...( ˘ω˘)


ゲームに熱くなるとやべーことになる

7月8日...水曜日  夏休み二日目。

 

「こ、これが全部...ゲームなのか?」

 

「ああ、そうだ。さ、行こーぜ」

 

「ま、待て!置いて行くな!」

 

現在時刻は14時38分。ジャンヌと共にゲームショップへ行き、中に入ったところ。

 

ジャンヌは店内を埋め尽くすゲームやゲーム機に驚き、CMを垂れ流し続けているテレビに見入っている。

 

店の壁はポスターや来月販売予定と書かれた物や予約受付表のカードケースが掛けられていて本来の壁紙が見えなくなっている。

 

ジャンヌは初めて見た光景なのか先ほどから口が半開きになっている。

 

そんなジャンヌに声を掛けて目的の携帯ゲーム機コーナーに歩いて行くとジャンヌは置いて行かれるのが嫌なのか少し駆け足気味で俺の後ろを付いてくる。

 

「ここだ」

 

そう言ってジャンヌに携帯ゲーム機コーナーを指す。

 

「ほれ、選べ」

 

「選べ!?な、何を選べばいいんだ!」

 

「ハード」

 

「ハードとは何のことだ!こういうのはサッパリなんだ!」

 

「あー...ゲーム機本体のことだよ。ほら、ここ」

 

「う...どれだ、どれを選べばいい?」

 

「オススメは3000シリーズだな。出てからだいたい1年くらい経ってるが、最新モデルだ」

 

「3000シリーズとはどれだ、どこにある?」

 

ジャンヌはこういうのは初めてなのか、非常に慌てている。

 

「この列だよ、色を選んでくれ」

 

「い、色...?多いな...ど、どれにすればいいんだ」

 

「気に入った色でいいぜ。性能は一緒だしな」

 

「そうか...なら、銀にしよう」

 

「よし」

 

ジャンヌの選んだ色のカードを手に持って、少し歩く。

 

「さぁ、次はソフトだ」

 

「ま、また選ぶのか...?多すぎて見れないぞ...」

 

「いや、こっちは俺が選ぶよ」

 

「そうか...」

 

ジャンヌは草臥れた顔をしていたがソフトは俺が選ぶと言うと息を大きく吐いて少し表情を和らげた。

 

「まぁ、初めてだしコレでいいだろ。キンジとも一緒にやれるしな」

 

手に取ったのはモンスターみたいなハンターが頑張る奴。

 

「何だ、ソレは」

 

「簡単に説明するとだな...えーと、ファンタジーから出てきた様なモンスターを、神話から出てきた英雄みたいなプレイヤーがぶちのめして行く奴だ」

 

「面白いのか?」

 

「コレの最大の醍醐味はマルチプレイだぜ、ジャンヌ」

 

「マルチプレイ?」

 

「ああ、そうだ。1人で倒せない化け物がいるから、皆で力を合わせて倒す」

 

「なるほど...そうして絆を深めていくのだな?」

 

「絆が深まるかは知らんが...まぁ、楽しいよ。最初は難しいかもしれねーけど、俺も手伝うからよ」

 

「ふむ、分かった」

 

「よし、じゃあ...あとは小物でも買うか」

 

「小物?」

 

「ああ、本体だけを持ち歩くと落として壊れる可能性があるからな。ケース、保護フィルム、ストラップくらいは買っておこう」

 

俺はそう言ってテキパキと銀のケース、保護フィルム、青色の落下防止ストラップを手に取る。

 

「じゃ、会計いくぞ」

 

「あ、ああ」

 

会計を済ませて店内を出る。冷房の効いた店内から出ると外は熱かった。

 

「ちょっと暑いな...早めに帰るか」

 

「そうしよう」

 

買った物をVMAXのケースに入れて、ジャンヌが乗ったのを確認して出発する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐ、何だコイツは!さっきから私の邪魔ばかりして!って、あー!」

 

今、俺の目の前には面白い光景が広がっている。

 

ジャンヌがゲームをやり始めた。

 

だが、目的のモンスターを攻撃しようと突っ込んでいって周りの取り巻きに妨害を受け続けて思うように行っていないみたいだ。

 

そしてさっきの絶叫。思うにこれは1乙したんだろう。一応聞いてみるか。

 

「ククク、突然叫んでどーした?」

 

「さっきから邪魔をされて、動きが止まった所に討伐対象のモンスターたちが突っ込んできたのだ!あんなの、避けられるワケないだろう!」

 

ウガー、とジャンヌが吠えている。珍しいなぁ。

 

「ジャンヌ、そういう時は先に取り巻きを処理しておくモンだぜ」

 

「そうは言うが、あまり上手く行かんのだ」

 

「始めたばっかだしなァー...それに村クエは手伝えねーし」

 

あ、でも。始めたばっかの頃に買った攻略本やらモンスターの弱点属性や弱点部位が事細かに書かれた解体新書なる物を持ってたな。

 

本棚の方に行ってしばらく目線を動かしてタイトルを確認する。

 

「あったあった。ジャンヌ、コレ見て頑張ってみろ」

 

「なんだ、これは」

 

「相手のスペックがだいたい分かるデータ表」

 

「...いいだろう、私はジャンヌ・ダルクだ。知謀を巡らせて勝利を掴んで見せよう。相手の事が理解できれば手札は増えていく。これで、あの化け物共を打ち倒してやる」

 

「頑張れよ」

 

「隼人も、見ていてほしい。私の勝利する瞬間を」

 

――いやコレゲームなんだけどね?

 

ジャンヌはすっかり熱くなっている。だがここで何か言うのも野暮だろう。

 

それにコッチのほうが面白そうだしな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「よし!よし!やったぞ隼人!どうだ、私はあの、白い猿共に勝ったぞ!」

 

それから30分後くらいに、ジャンヌが突然叫んで、満面の笑みで画面を俺の方に見せながら四つん這いで近付いてくる。

 

「お、良かったじゃん......って、白い猿?」

 

ジャンヌの発言に疑問を抱き画面を見ると、白い猿を3匹倒せという、めちゃくちゃ簡単なクエストだった。

 

ジャンヌはやり遂げたような顔をしているが、これだけは言った方がいいだろう。

 

「ジャンヌ」

 

「なんだ、隼人」

 

「これ、一番最初の方にやるクエストだぞ」

 

「...?」

 

ジャンヌは意味を理解してないのか、そのまま首を傾けている。

 

「まだ始まったばかりだ。これからどんどん強いモンスターが出てくるぞ」

 

「何...!?奴らが、村を苦しめていたんじゃないのか!」

 

「こんなので苦しむ村ならやっていけねーよ...」

 

ジャンヌが絶望したような顔で画面を凝視している。

 

「まぁ、しばらくやってみろよ。ある程度装備揃ったら一緒にやろーぜ」

 

「...お前は私の先にいるのだな」

 

「そりゃやってる時間が違うからな」

 

「すぐに、追いついてやる」

 

「楽しみだ」

 

ジャンヌが気を引き締めて再びゲームを再開する。

 

真剣な表情でやり続けているジャンヌに声を掛けるのは悪いかと思いソファで横になって携帯をイジっていると、メールが届いた。

 

キンジからで、少しうげっとするが昨日問題は解決したばかりだし問題は起きないだろうと思いメールを読むことにした。

 

『2人確保成功。レキと白雪だ...これで提出してくる』

 

2人確保...カジノ警備の事だろうか。

 

なるほど、これで6人揃ったことになる。

 

返信用の画面を開いて文章を入力する。

 

『サンキュー!あ、そうだ。ジャンヌがゲーム買ったんだ。今度一緒にマルチしようぜ』

 

送信っと。

 

返信はすぐに帰ってきた。

 

『あの堅物そうな奴がゲームだと?以外だな』

 

確かに、普通なら買わないと思うだろう。

 

『ジャンヌも人の子ってことさ。今めっちゃやる気出してるぞ(笑)』

 

キンジから電話が掛かってくる。すぐに通話開始を押して、耳に携帯を当てる。

 

「へーいもしもし」

 

『メール怠いからコッチでやろう』

 

「それなー」

 

『で、ジャンヌがマジでやってんのか?』

 

「マジマジ、ジャンヌー、今大丈夫ー?」

 

キンジに証明するために耳から携帯をどけて、ジャンヌの方向にマイクを向ける。

 

「なんだ、隼人!今、忙しいんだ!ああ、この!何故そこで吠える!あ、ああーっ!」

 

ジャンヌがまた叫んで、床に上半身を倒していく。

 

それを見て携帯を耳元に戻す。

 

「クヒヒ、聞こえたか?」

 

『...マジみたいだな。とてもじゃないが、信じられないぞ...』

 

「これが現実だぜキンジ」

 

後ろの方で、ジャンヌは「もう一度だ!もう一度挑んでやる!」と言って体を起こしていた。

 

『ま、いいか...まぁ今度やる時になったら誘ってくれ。時間があったらやるからさ』

 

「おう、じゃーな」

 

『ああ』

 

通話終了を押して、携帯を閉じる。

 

ベッドに体を押し込んで、寝る事なく支柱に寄り掛かって胡坐をかいて小説を読む。

 

そのまま暫く小説を読んでいると、ジャンヌがベッドの方に入ってきた。

 

そのまま、ソロソロと移動して、俺の胡坐の上に座った。

 

何処となく落ち込んでいる様子だが十中八九ゲームのことだろう。

 

俺はちょっと笑って、小説に栞を挟んで枕元に置く。

 

そして、自由になった両手でジャンヌを抱きしめる。

 

「元気ねーなァジャンヌ。どーした?」

 

「...上手くいかんモノだな」

 

「たかがゲームだぜ、そう熱くなるなよ」

 

「ゲームであったとしても、隼人に置いて行かれるのは嫌なんだ」

 

「さっきも言っただろ...?やってる時間が違うんだ。経験の差はどうしようもないさ」

 

「むぅ...」

 

ジャンヌは不満そうに体を擦りつけてくる。若草の香りがする。

 

「まぁ、ちょっと休もうか。疲れちまった」

 

「寝るのか?」

 

「あー...そうする」

 

「分かった。私も一緒に寝る」

 

「へいへい」

 

ジャンヌが俺から降りて、先に布団を被る。俺も足を伸ばして体を滑り込ませる。

 

布団を被り、昼寝を始める前にジャンヌを抱きしめて引き寄せる。

 

「うー...」

 

「そうイジけんなよ...起きたら、飯にして...そしたら、俺もアドバイスするからよ」

 

「...本当か?」

 

「マジマジ」

 

苦笑を漏らしながら約束すると、ジャンヌは顔を俺の胸に押し付けて寝てしまった。

 

抱きしめている手の片方で、髪を梳く。指に髪が引っかかることはなく、サラサラと流れていく。とても、綺麗だ。

 

そんなことをしていると、眠くなってきたので目を閉じて昼寝を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ゲームに苦戦するジャンヌは、とても可愛かった。


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