人類最速の俺が逝く緋弾のアリア   作:じょーく泣虫

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UAが8000を超えていて手が震えております。

初めての作品ということで読んでくれるといいなぁ、読んでくれなくても自己満足で投稿すればいいかな、という気持ちで連載を始めたのですが予想以上に閲覧して頂いてるみたいで私の乏しい語彙力では表現しきれないくらいには喜んでいます。

本当にありがとうごいます!


やべー事件はこれにて終わり

 

ジャンヌを警察に引き渡した後、俺たちはアドシアードの閉会式でバンドとチアをやっていた。

 

キンジたちとテンポを合わせて弾き続ける。チラリとキンジの方を見ると、いつものキンジに戻ったのか目つきはやや悪く、不機嫌そうにギターを弾いていた。

 

せっかくの軽音なんだし、楽しんでやらなきゃダメだろう。

 

そう思って、ベースを弾いたままキンジの方に歩いて行く。

 

キンジは此方に気付くと、面倒臭そうな顔をするが、いい笑顔で笑いかけると苦笑を漏らして俺の方を向いた。

 

そのままキンジと俺で互いに向き合い、ギターとベースを弾き続ける。音がハモっているのが視覚的に観客に伝わり、より盛り上がった空気が生まれる。

 

それを受けて、キンジの笑みは深まっていく。それでいいんだよ、こういうのは楽しむもんだ!

 

――そう、楽しんだ者勝ちだ。

 

曲調が更にアップテンポになると、主役は俺たちではなくなる。キンジと俺は観客の方へ体を向けて、BGMに徹する。

 

舞台袖から、アリアと星伽を含むチアたちが出てくる。

 

星伽がチアやってる...ああ、アリアか。

 

キンジに目で問いかけると、キンジは顎を引いて正解だ、と教えてくれた。

 

ジャンヌ...。警察に引き渡され、綴先生に色々喋らされることになるんだろう。

 

そんな事を考えながら演奏を続ける。チアたちが、ポンポンを空高く放り投げ、空砲で撃ち始めた。

 

歌詞の通り、BANG BABANG BANBANG...って感じで。

 

観客はそれを見て、ボルテージは最高潮。

 

熱狂した空気が伝わってくる。

 

チアたちが一斉にポーズを決め、紙吹雪が舞う。

 

その紙吹雪が、地下で見たダイヤモンドダストのように輝いていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、なんでファミレスで打ち上げなんだ」

 

キンジがムスーっとした顔でアリアを睨んでいた。

 

コイツ、チアたちが台場のクラブ・エステーラで打ち上げしたことを根に持ってるな。

 

「まーそう怒ンなよォキンジ。俺たち地下組の打ち上げってことでいいじゃあねぇかよ」

 

「俺は地下でほとんど何もしてないぞ」

 

「そういう事もあるだろォ?俺だってハイジャックの時は途中から寝てただけだし」

 

俺とキンジが適当な会話をするが、星伽とアリアが会話に入ってくることがない。

 

2人してチラリと見ると、星伽とアリアは互いを見合ったまま、動かない。

 

「おい、キンジ。ありゃなんだ...」

 

キンジの肩に手を回して引き寄せて、ひそひそと喋る。

 

「知るか、さっきからずっとあんな感じだ」

 

キンジは少しビクビクしながら、水を飲んでいる。

 

「「あの」」

 

と、星伽とアリアの声が被った。

 

「あ、アンタが先でいいわ」

 

「アリアが先でいいよ」

 

これグダグダになるやつだ!

 

「...俺と、キンジ...席外してるわ」

 

そう言ってキンジと共に立ち上がろうとするが、星伽に止められた。

 

「大丈夫。というか、キンちゃんにも聞いてほしいの。冴島くんは......えっと、ごめんね?あっでも、居ていいからね!」

 

...星伽の優しさが辛い。

 

視界がなぜか潤っているので、脱力しつつ天井を見上げる。

 

――照明が明るいなぁ。

 

「私、どうしてもアリアに言っておかなきゃいけないことがあるの」

 

星伽はそう言うと流石のキンジも少し姿勢を直して、真面目に聞き始める。

 

「私、キンちゃんに嘘ついてました」

 

「うん、この間風邪をひいた時に、薬を買ってきたのは私じゃなくて......アリアでしょ?」

 

「アリア...だったのか?」

 

「な、なーんだ、そんなこと。もっと大事な話かと思ったわ」

 

アリアは少し頬を赤らめてチラッチラッとキンジを見ている。

 

「ごめんねアリア。私、イヤな女だよね...でも、イヤな女のままで居たくなかったから、謝らせて。ごめんなさい!」

 

「別に気にしてないからいいわよ。この話はそれでお仕舞い。じゃあ次あたしの番ね!」

 

「う、うん」

 

アリアはおほん、と一つ咳払いをして、とんでもーことを言いだした。

 

「白雪、アンタも私のドレイになりなさい。そこで呆けてるハヤト、アンタもよ」

 

空気が固まる。

 

ギチギチと首を下げて、アリアを見る。

 

天井の照明を眺め続け、潤いの消えた目が濁っていくのが分かる。

 

――ここファミレスなんですけど。

 

キンジが視線をバッバッと素早く回し、絶望した表情になる。

 

――聞かれてたかぁ。

 

頭が一気にガクリと垂れる。TPOを弁えてほしいものだ。

 

「ありがとう、白雪」

 

あれ星伽の返事無くね?コイツ一人で決定しやがった!

 

――暴君だ、ここに暴君がいる。

 

「魔剣を逮捕できたのは...3割がアンタのおかげよ。ハヤトも...ありがとう。アンタが4割、レキが1割、あたしが2割」

 

キンジが割合計算に自分が含まれてないことに一瞬声を漏らしたが、すぐに

 

「そういや俺何もしてないわ...」

 

と首を垂れた。いやいや、キンジ。お前は星伽を助けただろ。

 

「今回の一件で痛感したわ、これからは1人1人の能力で奴らと渡り合うのは無理よ。だから、力を合わせるの」

 

アリアは真剣な表情で話し始める。

 

「チームを組んで、朝から晩まで一緒に行動して、チームワークを養うわ。と言うわけでハヤト、白雪。コレキンジの部屋の鍵ね。いつでも来ていいわ」

 

「ありがとうアリア!」

 

「ほいキンジパース」

 

星伽は速攻でカードキーをポケットに仕舞い、俺はキンジにカードキーを投げる。

 

「ちょっと!なんで受け取らないのよ!」

 

アリアがガルルと唸るが、俺は制服の内ポケットからカードキーが2つ入ったケースを取り出した。

 

「俺もう持ってるし」

 

1年の頃にキンジの部屋に遊びに行ったときに貰ったものだ。

 

ちなみにもう1枚は武藤の部屋のカードキーだ。

 

俺のは右側の内ポケットに入っている。

 

「隼人はともかく、アリアと白雪はダメだ!」

 

「なんでよ」

 

「ええ!?」

 

アリアと星伽が不服そうに声を上げる。

 

「だって男子寮じゃないか」

 

と言いかけた所でアリアがチラリとガバメントをキンジに突きつけていた。

 

「文句は?」

 

「ありま...せん」

 

キンジは今度こそ放心したようで、ちょっと青白くなっている。

 

「よし、それじゃあ新しいドレイを歓迎して、乾杯!」

 

「かんぱーい!」

 

アリアと星伽がグラスを持ち上げる。

 

「あれ俺ら返事してないんだけど。まぁいいや!かんぱーい!キンジも、速くしろ!」

 

キンジに声を掛けると、ヤケクソ気味にグラスを掴み、俺たちのグラスにガチンとあてた。

 

「ええい、どうにでもなれ!乾杯だ!」

 

打ち上げは賑やかに進んでいった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

打ち上げが終わって、解散して今は自室にいる。

 

風呂から出たばかりで喉が渇いてるし何か飲もうかなと冷蔵庫を開けた所で部屋のインターホンが鳴った。

 

「へーい、今出まーす」

 

覗き穴からドアの前にいる人物を見ると、草臥れた顔のキンジがいた。

 

ドアを開けて前に出る。

 

「どしたぁキンジ。こんな時間に」

 

「......泊めてくれ」

 

「あ?」

 

擦り切れるような声で、キンジが呟く。

 

次の瞬間、ガシッと両肩を掴まれて、キンジが切実な叫びを上げた。

 

「アリアと白雪が俺の部屋でドンパチやってんだ!あんな所で寝られるか!頼む隼人!一晩だけでいい、泊めてくれ!頼む!」

 

キンジが掴んだ肩をガクガクと揺らす。

 

「わ、分かったよ。上がれ」

 

キンジを部屋に迎え、2人で携帯ゲーム機を使って協力プレイをしたり、飲み物を飲んだりして時間を潰し、眠くなってきたのでキンジにソファを貸して眠りについた。

 

 

 

 

 

アリアと白雪はまだ暴れているのだろうか。部屋が遠いから物音1つ聞こえない。

 

キンジは既に寝息を立てている。

 

昼から夕方はあれほど忙しかったのに、夜は耳が痛くなる程の静寂が支配している。

 

瞼が重くなっていき、ゆっくりと意識を手放し始める。

 

 

 

 

夜は静かで、何事もなく、ただただ静かに過ぎていった。

 

 

 

 

 

                                 魔剣編おわり


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