デート!!
「早く早く!おいてくよー!」
「わかったわかった、今行くって」
小傘ちゃんに呼ばれ玄関へ向かう。忘れ物は……多分ないよな。
今日は小傘ちゃんと買い物に行く約束をした日。
小傘ちゃんも随分と楽しみにしてくれてたみたいでなによりだ。最初はそんなに乗り気じゃなかったのに。随分と仕事熱心になったもんだよ。
はいはい、そんなに急がなくても大丈夫だからね。
靴を履いて玄関を開ける。差し込んできた陽の光につい目を細める。天気は快晴。
「さ、いこいこ!」
小傘ちゃんが手を引っ張る。
しかしあれだな、こうして休日に女の子も2人で出かけるということは、これはもうデートといってもいいのでは?可愛い女の子と休日デート。うん、なかなか悪くない。
なーんて思ってみたり。
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「じゃ、取り敢えず服から買いに行こうか」
「え、他のお店見にいくんじゃないの?」
「それはお昼の時。まずは服とか買いに行こ」
「んー、わかった。じゃあまずそっちいこう」
若干頬を膨らませて小傘ちゃんがいった。いやなんでちょっと残念そうなんだよ。普通女の子って服とか見にいく方が好きなんじゃないの?いや、仕事熱心なのはいいことだと思うよ?でもさ、ほら、ねぇ?もうちょっとなんかあってもいいんじゃない?
「で、どこの店にいくの?」
「ん〜そうだな……どっか気になる店とかある?」
「んー、私そういうのよくわかんないから雪に任せるよ」
えぇ、任せるって言われてもなぁ……。
まともに女性と付き合ったこともない俺にそんなこと言われても正直どんな店がいいのかわからない。残念ながら女の子をエスコート出来るほどの経験は自分にはないのです。あれ、なんか自分で言ってて悲しくなってきた。
「………なんで泣いてんの?」
「いやちょっと目に髪がね」
いや本当ですよ?本当に髪が目に入ったからですよ?だからそんな悟ったかの様な哀れみの視線を向けないでください。
「はぁ、じゃあいいや。あそこのお店行こうよ」
そういって小傘ちゃんが一軒の呉服屋を指差した。
「ん、了解」
というか自分で選べるなら初めからそうして欲しかった。変に恥かいたじゃんかよ。
「変にカッコつけようとするからだよ」
「うっせえ」
女の子の前でカッコつけようとして何が悪い。男なんてそんな生き物じゃん。まぁそれで空回って恥かいてたら世話ないんだけどさ。
「いいわけはいいから。ほらっいくよ」
「アッハイ」
人間慣れないことはするもんじゃないね………。
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「私こういうとこくるのは初めてだ」
「まぁ人里にくるのも初めてだしそらそうだよね」
中には色々な種類の服があり、初めてこういったお店にくるのもあり気分が高揚する。
取り敢えず見て回りながら気にいるものを探す。とはいえどれが自分に合ってるのかもよくわからないんだけどね。
「いらっしゃいませー!今日は何をお探しですか?」
見て回ってると店員さんが声をかけてきた。すらっとした長い足にくびれた腰回り、整った顔立ち。長い黒髪は後ろで結ってある。同性の私からみても綺麗だと思える人。
「あ、えっと………」
「部屋着を1着と私服を2着ぐらい探してるんですよ」
私がどもってると雪が質問に答えてくれた。というかなんでこういう時は普通に対応できるんだよ。さっきはカッコつけようとして失敗した癖に。
「なるほど〜、ではよければ私がコーディネートしましょうか?」
それはちょっとありがたい提案。みていても楽しいけど自分に合うのがわからない私にはこの提案は嬉しい。
「じゃ…じゃあお願いします……」
「かしこまりました〜。ではこちらへどうぞ〜。あ、彼氏さんはここで待っててくださいね〜」
そういって店員さんは奥へと誘導してくれた。
あと別に彼氏じゃないからね。と思ったけど、私は口に出す事ができなかった。今更ではあるが、私は人見知りなのかも知れない。
「あ、はい。わかりました」
お前もなんで否定しないんだよ。なんかニヤニヤしてるし、さては面白がってるなこのやろー。
「どういったものがいいとかリクエストはありますか?」
どうやって仕返しをしてやろうかと考えてると店員さんが話しかけてきた。リクエストねぇ………。
「特にはないです」
リクエストと言われてもさっきちらっと見たくらいの知識しかないからこう答えるしかない。
「わかりました〜、では取り敢えず私の趣味で選びますね〜」
店員さんの趣味で選ぶのか。まぁ実際の所そうなんだろうけどもう少し他に言い方があるんじゃないかと思う。
「ではこんなのはどうですか〜?水色のシャツにベージュパンツを合わせた爽やかな感じに見えますよ〜」
んー、どうなんだろ?店員さんが言うんだから間違いはないんだろうけど自分には判断しにくい。
「取り敢えず着てみます〜?実際着てみないとわからないこともありますし」
私が悩んでると店員さんからそんな提案がとんできた。そういうものなのかな?それなら試してみる価値はあるかも。
「じゃあ着てみます」
「りょーかい。お嬢ちゃん可愛いからきっと似合うよ〜」
そうかな?普段可愛いなんて言われることないから少しくすぐったい。でも可愛いって言われると悪い気はしないよね。
そして渡された服を着て姿見をみてみる。うん、確かに悪くない。流石店員さんが選んでくれただけのことがある。だだ問題が1つ。
ズボンの違和感が半端じゃない。
普段スカートばかりでズボンなんて履いたことなかったからか違和感が凄い。特に腰回りに引っかかる感じとか凄い。
カーテンを開けて店員さんに服を返す。
「あ、どうでした〜?」
「ちょっとズボンに違和感があるのでスカートの方がありがたい……です………」
なんかこの言い方だと太ってて違うみたいに聞こえるけど断じて違う。他の表現が思いつかないんだよ。
「なるほどね〜。じゃあ次はスカートで持ってくるよ、ちょっとまっててね」
そういって店員さんは奥の方に戻っていった。
わざわざ取りに行ってくれる店員さんに感謝すると同時に少し申し訳ない気持ちになる。ごめんなさい。
少し経って店員さんが戻ってきた。
「お待たせしました〜。こんなのはどうですか?シンプルな白Tシャツに水色のスカート。アクセントで赤いネックレスです」
店員さんから再び服を受け取って着てみる。
全体的なデザインもいいし着ていて不快感や違和感もない。うん、いい感じだ。これで決まりでいいかな。
「どうでした〜?」
再び店員さんが声をかけてくる。
「えと、凄くよかったのでこれにします」
「お買い上げありがとうございます〜!それでは残りの2着もパパッと決めちゃいましょうか!」
「え、2着?」
「彼氏さんが部屋着1着と私服2着て言ってたじゃないですか〜。折角買ってもらえるんだからいい奴買っちゃいましょうよ〜」
あーそんなこといってたなぁ。
あと彼氏じゃないって………。
「私が完璧にコーディネートするので任せてくださいよ〜」
そういって店員さんが胸を張る。
まぁ自分じゃあ選べないしこの提案はかなり嬉しい。
「えと、じゃあお願いします」
「はい、任されました〜」
そして結局残りの服も全部この店員さんに選んで貰った。
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小傘ちゃんが店員さんに奥に連れてかれてかれこれ30分くらい経つ。なんというか、随分と長いんだな。まぁこれくらい普通なのかも知れないが、普段こういった経験がない俺には長く感じる。
「おっまたせー彼氏くん。終わったよー」
そんなことを考えていると店員さんが小傘ちゃんを連れてやってきた。
「お疲れ、随分と長かったね」
「女の子の買い物に付き合えない男は嫌われるよー彼氏くん。そしてそれよりも、お嬢ちゃんに何か言うことがあるんじゃないのかい?」
「何か言うこと?」
はて?何かあったっけ?
あ、服の感想まだいってないや
「かぁ〜小傘ちゃんも大変だね〜。こんなに鈍い彼氏を持つと」
「だから彼氏じゃないって言ってるじゃんか」
そう言われるとぐぅの音もでない。自分の不甲斐なさに涙がでるよ。
「ほんと申し訳ない。あと、似合ってるよ小傘ちゃん」
月並み程度の言葉しか出てこないのが非常にはがゆいが、思ったことを率直に言葉にした。
「うん、ありがと」
ありがととは言っているが若干機嫌がよろしくないように見える。まぁ俺がこのざまじゃあ仕方ないよなぁ。
「じゃあ彼氏くん、お会計よろしくね」
「あっはい、わかりました」
想像以上以上に俺の財布が軽くなった。
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「どう、楽しかった?小傘ちゃん」
「うん、楽しかった」
若干まだ不機嫌さが残ってるけども、まぁ楽しかったなら良かったよ。
「ま、まぁ機嫌なおしてよ。ほら、次はお待ちかねの喫茶店だから」
結構露骨だけども話題を変えてみる。
「喫茶店!?やった!!」
めっちゃ食いついてきた。あれ、結構ちょろいぞこの子。不機嫌そうな表情が一気に明るくなった。まぁ機嫌が直ってよかったよ。
「じゃ、早速いこうか」
「うん」
と言うわけで今回はデート回でした。
それではまた次回
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