俺の彼女は妖狐……だけど可愛い。   作:恋愛物

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第2話 笑顔と元気のある彼女

「あっぶらあげ〜あっぶらあげ〜♪」

 

 

 家の中に入った彼女はキッチンまでつくと、ふんふんと鼻歌を鳴らしながら冷蔵庫の扉を開けた。

 

 冷蔵庫の中を数秒間、黄色い耳を立て、長い尻尾を揺らしながらじーっと見ていた彼女だが、数秒後、冷蔵庫の扉をゆっくりパタンと閉めると、こちらへ向かって歩いて来た。

 

 

「ない」

 

「えっ?」

 

「あ ぶ ら あ げ が無いよおぉぉぉぉぉ!!」

 

「あっ、ごめんごめん」

 

 

 何に使ったっけ…あぁ、そうか。

  一昨日友達が遊びに来た時にうどんを作ったんだったな。 すっかりあるつもりでいたよ。

 

 手をポンっと叩き、俺は彼女の方を見る。

 彼女は赤く頰を膨らませ、こちらをジトーっと見ている。

 

 

「その…買いに行くか」

 

「待ってました!」

 

 

 彼女は元気よくそう言うと、耳と尻尾を隠し、「早く早く!」とでも言っているかのように俺の服の裾をグイグイと引っ張る。

 

 

「子供かよ…って待って待って!!」

 

 

 麦茶の入ったコップを流しに持って行こうとしたが、それを彼女は止め、玄関に俺を引っ張る。

 女の子とは言え、彼女は妖狐。 それなりの力は持っているのだ。

 

 

「むっ…3秒間だけだよ」

 

「わ、分かってるって」

 

 

 ガラスのコップを急いで流しに置き、彼女の方へ戻る。

 

 

「よし、じゃあ行こうか」

 

「うん!」

 

 玄関に置いてある黒い長財布をとった俺は、それを後ろのポケットにしまい、家を後にするのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うっわぁ〜何これ何これ!!」

 

「あ〜、それはお菓子だな。 ポテトチップスっていう」

 

「ぽてとちっぷす?」

 

「そうそう、ジャガイモから出来てるからそう言うんだよ」

 

「へぇ〜」

 

 

 そう、ポテトチップス。

 今は確か、北海道がジャガイモ不足とかで、北海道のジャガイモを使ったポテトチップスは、あまり出品はされてないみたいだけど、地域で取れたジャガイモで作ったオリジナルのポテトチップスは販売していた。

 

 

「え…えぇ!?」

 

「ど、どうしたんだ?」

 

 

 何か驚くものでも見つけたのか、彼女はビックリしたように目を見開きながら、その商品棚から一歩身を引いている。

 

 どれどれ…

 

 そう思って見て見ると、そこには一つのカップ麺があった。

 

 

「こ、これ、()()()うどんって書いてある…まさか…私たち…を…」

 

「そんな訳無いよ!? 普通のうどんだよ、上に油揚げが乗ってる普通の」

 

「なーんだ、ビックリしたぁ…狐を擦り刻んでうどんにしたのかと思った」

 

「怖いこと言うなよ…」

 

 

 

 

 

「いらっしゃーい、試食はいかがですか〜? 当店自慢の豚肉で調理した肉巻きですよ〜!」

 

「肉巻き…?」

 

「どうせなら食べるか?」

 

「うーん…食べる」

 

「何、別に変なものじゃないから」

 

 

 試食コーナーにはあまり人は並んでおらず、比較的直ぐ肉巻きをもらえた。 肉巻きと言ってもそこまで大きくはない。

 ちゃんと一口サイズで、小さい子供でも食べられるようにはしてある。

 

 爪楊枝を使って、肉巻きを口の中に入れる俺と彼女。

 

 

「美味し〜」

 

 

 彼女はそう言って嬉しそうに笑みをこぼす。

 そんな彼女を見て俺もフッと笑みをこぼし、隣に置いてある豚肉のパックに手を伸ばし、それをカゴに入れた。

 

 

「あら、ありがとね零くん。 何その子、彼女さん? かなりお似合いじゃない」

 

「うっ…聡子さんにはバレましたか…」

 

「あら当たり前じゃない。 小さい頃からあなたを見ているのよ?」

 

 

 予想外だった。

 試食コーナーの隣の店員が聡子さんだったなんて…

 聡子さんは俺が3歳の頃から、付き合いがある面倒見のいいおばさんで、よく聡子さんの家には遊びに行ったことがあった。

 

 

「それじゃ、また遊びましょうね〜」

 

「子供じゃないんだから遊びませんよ!」

 

 

 カゴをしっかりと掴み、俺たちはその場から早く離れると油揚げがあるコーナーへと足を進める。

 

 

「ふふ…ふふふ……」

 

「どうした? そんなに油揚げが嬉しいのか?」

 

 

 彼女は四角い油揚げの袋を手に取り、下を向きながら肩を震わしている。

 

 

「それもあるけど…1番は、ね?」

 

「?」

 

「私たち()()()()だってさ…ふふ…」

 

「あ、あぁ…それか…まぁ、確かに嬉しいな」

 

 

 油揚げの袋をカゴに入れた彼女は、カゴを持っていない逆の手を掴んだ。

 

 

「えっ…あっ…」

 

 

 親指から小指にかけて彼女は一本一本ゆっくりと、俺の指に絡ませる。

 

 恋人繋ぎだ。

 

 コレをするのは初めてのはず。

 

 

「嫌…だった?」

 

 

 彼女は上目遣いでこちらをチラッと見る。

 流石の俺も、これには動揺をしざるを得ない

 

 

「ぜっ、全然そんなことない…ただ…」

 

「ただ?」

 

「ここがスーパーじゃなかったらな…って」

 

「ま、いいじゃんいいじゃん!」

 

 

 明るく笑って見せた彼女は、とても可愛く、どこか幼げだった。

 

 

 

 

 

 

 

 


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