Armour IS Zone Re2   作:アマゾンズ

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その味を覚えた獣は飽きるまでそれを求め続ける。

それが例え生き物だとしても





※少しだけ書き直しがあります、ご了承ください。


第四話 A desire not to reach

中国の研究所から何かが脱走した同時刻。軍と研究所は対策会議を開いていた。

 

「どうするのだ!?貴重な研究体が脱走したのだぞ!」

 

「お静かに。実験を施す前に彼女の口から希望を聞いていたでしょう?それを利用するとしましょう」

 

「まさか、IS学園に?」

 

「はい。書類作成や手続きは済んでいます、仮に彼女が向かっても転校生として編入出来るように交渉もしておきました」

 

軍の人間である男は研究員の女性に対し恐怖をわずかに抱いた。この女の手腕はどこまで優れているのだろうと。

 

女性であるから今の時代において、優位性を発揮出来ている事は自分にも理解がつく。

 

しかし、あらゆる手回しをこの女性研究員は一人でこなしてしまう。その行動、先天性、その全てが的を射ている。

 

味方のうちは頼もしく感じるが、逆に敵に回った時の恐ろしさを軍人の男は考えていた。

 

今のうちにこの女研究員を始末しておくべきではないかと。

 

「今は私達の娘の行動を見守りましょう、それが親というものです」

 

女性の深い笑みに軍人の男はただ黙って見つめている事しかできなかった。

 

 

 

 

 

数日後、一人の少女がIS学園の前に来ていた。荷物は先に届いていると政府から伝えられており、IS学園の校舎を見上げている。

 

「ここにいるのね、アイツ等が!」

 

少女の左腕にはネオアマゾンズレジスターが装着されており、人間ではない。正確には人間であった事を示している。

 

「私は私、変わってないわよ!」

 

少女は受付に向かう為に学園の中へと向かった。敷地内が広く途中で迷いに迷ったのはご愛嬌である。

 

 

少女がIS学園への転校手続きを済ませた後、あるクラスは騒がしく、ガヤついていた。

 

「ねえねえ、聞いた?今日、転校生が来るんだって!」

 

「転校生か、ここって確かIS適性が高いか代表候補生にならないと無理じゃなかったか?」

 

「それがね、転校生は中国の代表候補生なんだって!」

 

女生徒の言葉に鏡夜と隣に座っていた一夏が一瞬だけ表情を変えた。

 

「中国か・・・」

 

「中国ねぇ、まさかアイツじゃ?」

 

「そうよ、相変わらずね?二人共!」

 

愚痴るように言葉を発すると同時に教室の扉が突然開いた。そこには髪をツインテールに結った少女が立っている。

 

明るさと元気さを強調するかのような高い声に視線が集中する。

 

視線は男性操縦者の二人に向けられており、男性側も驚きを隠せない。しかし、鏡夜だけは全く別の部分を見ていた。

 

彼女の左腕にある腕輪と彼女自身から発せられている同族としての気配と匂いを感じているのだ。

 

無論、隣にいる一夏は腕輪には気づいたが、気配までは気づかない。彼は人間として生きている故に。

 

「お前、鈴。鈴か!?」

 

「まさかの転校生が鈴だったとはなぁ、びっくりだ!」

 

「そう、中国代表候補生!凰鈴音よ!」

 

鈴の言葉に吹き出しそうになる二人だったが一夏は最も疑問だった部分を鈴に訪ねた。

 

「鈴、その腕輪一体なんだ?邪魔なら外せばいいのに」

 

「少し訳ありでね?これは外すことが出来ないのよ」

 

「(まさか鈴、俺と同じで?)」

 

鈴は僅かに自分の中から食人衝動が沸き起こりかけたが、レジスターのおかげで抑制されていた。

 

「あ、時間になるわね。挨拶したかっただけだから、それじゃあね!それと鏡夜!後で屋上に来てよ!?」

 

鈴はすぐに教室を出ていき、自分のクラスに戻っていった。

 

「今度、戦う相手ですのね。あの人が」

 

セシリアは鈴を自分の席から見ていた、クラス代表を務める自分としては対戦相手の事を知っておく必要がある。そんな思考を巡らせていた。

 

 

 

午後の授業が終わり、鈴に呼び出された鏡夜は約束通り屋上へと壁に手を着けながら向かい扉を開けた。

 

「来てくれたのね、鏡夜!最もアンタなら理由は解ってるわよね?」

 

「ああ、鈴。お前も俺と同じように?」

 

「そうよ、私もArmour(アーマー)細胞を移植されてアマゾンになっているわ。この腕輪が無かったら食事(・・)していたところよ」

 

「!もしも喰ってるなら・・・」

 

そう言って鏡夜は警戒の為に腰に巻いていたアマゾンズドライバーを見せグリップに手をかけるが、鈴は両手を慌てて振って戦闘の意志がない事を示す。

 

「わ、私はアンタと戦うつもりはないわよ!それに腕輪があるから人も食べていないから!」

 

「そう、か。早とちりだったかな?」

 

アマゾンズドライバーのグリップから鏡夜が手を離すと鈴は安心したようにため息を吐いた。

 

「それで、アマゾンの事だけを話に来たのか?」

 

鏡夜が質問すると同時に鈴は首を振って応え、口を開いた。

 

「違うわ、私は自分の気持ちをハッキリさせにきたの。居るんでしょ!?一夏!」

 

「っ!!な、なんで!?俺がいる事が分かったんだ!?」

 

扉の陰に隠れていた一夏は驚いたまま素直に姿を現した。姿を確認した鏡夜はおやおやといった様子で一夏に視線を向けている。

 

「教えてやる。Armour(アーマー)細胞から生まれた生き物や俺のように移植された奴は肉の匂いに敏感になるんだよ。Armour(アーマー)細胞は本来、人間が好物だからな」

 

平然と教えられるArmour(アーマー)細胞の好物に驚きを隠さないまま一夏は鈴に視線を向ける。

 

「なぁ、鈴・・・嘘だろ?鈴も鏡夜兄と同じになってるなんて?」

 

「嘘じゃないわよ?だから、ハッキリさせたいの。一夏、鏡夜・・・私は二人が好きなの。それが私の素直な気持ちなのよ、でもね?」

 

鈴はネオアマゾンズレジスターのスイッチを入れ、己の中のArmour(アーマー)細胞を活性化させる、自分の内側にいる獣としての姿を見せるためだ。

 

「アマゾン・・・!」

 

わずかな衝撃波と共に鈴の姿が一瞬で異形に変わってしまった。それはまるで鏡夜が自ら姿を変えたあの時みたいだと一夏は思った。

 

孔雀の羽根や爪のような物を持ち、異形であっても美しさは失っていないのが鈴の獣としての姿だ。

 

「コレデモ、ワタシノキモチニコタエテクレル?イチカ、キョウヤ」

 

曇りかけた鈴の声でクジャクアマゾンは一夏に訪ねてくる。異形の姿を晒したのは鈴自身の覚悟だろう。

 

「お・・俺は!」

 

一夏は迷っていた。自分の中に異形を鈴なのは変わらないと考える自分と化物として見ている自分の両方があり、揺らいでいる為だ。

 

探るように一瞬だけ鏡夜を見るが鏡夜は何もしていない。むしろ、答えは既に決まっているかのように何も言わないのだ。

 

口にするのを迷っている間に鏡夜は異形となった鈴に対し、言葉を紡いだ。

 

「鈴の気持ちは嬉しい。でも、正直俺はまだ鈴に対して恋慕を抱いているのかは解らない。だから俺はまだ答えを出せない」

 

鏡夜自身の答えは自分の気持ちがハッキリと鈴に向いているのかが分からないと答えを出した。普通に見れば振った様な言葉だが鏡夜自身、言葉選びが上手くなく口下手な故にこのような答えしか出せなかった。

 

「・・・・」

 

ネオアマゾンレジスターのスイッチを押し、抑制剤を再び注入したクジャクアマゾンは再び鈴の姿へと戻った。

 

「ありがとうね、これで私の気持ちもハッキリ出来たわ!」

 

「っ・・・」

 

「まぁ、俺も一夏も女性と付き合うってのがわからないってのが本音だからさ。悪く思わないでくれ」

 

「良いのよ。それじゃ改めてよろしくね?二人共!」

 

鈴の手を鏡夜はとって握手し、次に一夏も握手するがほんの僅かに震えていた。

 

第二の幼馴染で惚れ込みかけていた相手が異形(アマゾン)になっており、人間ではない。そんな考えが一夏の中に湧き上がっている。

 

「おい、何ボーッとしてんだ?夕飯に遅れるぞ?」

 

「え、あ!待ってくれよ!」

 

「全く、相変わらずね。って、鏡夜!?アンタ左目が?」

 

「事故ってな?気にしない気にしない!」

 

鏡夜の白く濁った左の瞳を見てしまった鈴は驚いたが、本人が気にしていない様子ゆえに深く追求はしなかった。

 

その後、三人は夕食を取った後にそれぞれの部屋に戻っていった。

 

 

 

深夜、一夏は眠ることが出来ずにずっと考え事を横になったまましていた。鏡夜や鈴が変身した姿、あれがArmour(アーマー)細胞の特性なのかと。

 

「鏡夜兄と同じようになれるのか?俺もArmour(アーマー)細胞を自分の中に」

 

一夏は危険な思考を巡らせていた。自分が兄と同じ境地に立てば全てを守る事が出来るのではないかと。

 

しかし、それは能力という力の側面しか見えていない思考である。一夏はArmour(アーマー)細胞が肉の匂いに敏感になるという部分を考慮していなかった。

 

肉の匂いに敏感だという事は肉を喰らう事でエネルギーを確保している事にほかならない。更には人間の肉を好んで喰らうという性質があるという事も危険である。

 

守るべき人間を自分の食料としてしか見れず、老若男女全て喰らってしまう存在に成れ果ててしまうのがArmour(アーマー)細胞の弊害だ。

 

力というものはただ力だけでしかないが危険であり、強力であればあるほどその魅力に引き込まれてしまう事が多い。

 

魅せられてその力を得ようとすれば、逆に力に使われる羽目になってしまう。

 

一夏はArmour(アーマー)細胞という強力な力に魅せられ、自分自身も手に入れたいと考え始めていた。




最近、更新出来る暇がほとんどありません。

時間を何とか確保したいです。


※クジャクアマゾンについて。

クジャクアマゾンはオリジナルです。何故に孔雀かというと羽根を武器にしたかった事と美しさを持たせたかった故です。

クジャクアマゾン

凰鈴音のアマゾン態。ネオアマゾンレジスターによって体内のArmour(アーマー)細胞を活性化させ、変身した姿。ISとしての登録もしてある[中国政府の裏取引によるもの]為に事実上、二機のISを持っている事になるが変身はさほど多くはない。戦闘力は高く、羽根を武器にする事でその素早さを生かしたかく乱戦法と羽根を使った接近戦が得意。

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