例えそれが大切であっても己の糧にする為に
Prologue1 The birth 誕生の時
ある場所に隠されているようにそびえ立つ研究所、そこでは実験を続ける科学者達がいた。
「やはり動物では限界が来たようだな」
一匹の動物が投与された物に適合できず崩壊していった。崩壊した姿はまるでコールタールのように粘り気のある物になっている。
「しかし所長、望んで人体実験に参加した者達も暴走してこのように崩壊したんですよ?」
「ふ、それならば適合しやすい肉体を手に入れれば良い。出来れば十代半ばの若い者をな」
所長と呼ばれる人物とその助手は話に熱が入っていた。目には実験を成功させようとする意志しか無い。
「この
今現在の世の中は工学に力が注がれており、生物学は見向きもされなくなっているが、この研究所では工学以上の何かを作り出そうとしている。
所長と呼ばれた人物は含み笑いを見せるとすぐに命令を出した。
「必要であれば拉致してきても構わん!実験体を大量に連れて来い!」
「了解しました」
「世界を変えるのは工学ではない、私の生物学の研究の結晶
大量に拉致された若人は実験体となったが、誰一人として適合できず難航していた。
誰もが
「ぎゃあああああ!」
「クソッ!何故だ!?なぜ適合しない!?」
「所長、それならば適合率が高い者を選別して連れて来るべきでは?」
助手はコンピューターに実験記録を打ち込むとそう博士に意見した。能面もような顔からは実験体にされた人への慈悲などない。
「ふむ、それもそうだな」
「今も検索をかけていますが、なかなか適合する者はいませんね」
コンピューターのキーを叩き続け、送られてくるデータを見ているが一向に不適合の結果が送られてくるだけだった。
「ならば、しばらく時間を置くとしよう」
「は?」
「焦っても仕方ないだろう?時間を置けば新しい者達の中に適合者が生まれるやもしれん」
「なるほど、可能性は高いですね」
所長の意見に納得し、助手は頷いた。焦っても手に入らないのならば機会を待てばいい、それはまるで熟成を待つワインのように。
「目覚めの時を待つがいい、今は・・・な」
◇
それとは別にある家庭では夫婦らしき男女が話し合いをしている。その隣ではその子供らしき少年が微睡みの中にいる。
男女は自宅にも関わらず白衣を着ており、子供を見ている。
「この・・・子・・養子・・・・」
「ああ・・・それ・・・一番」
両親が話しているんだろう、聞き取りにくいが声はしていた。
「織斑家に・・・」
「・・・・・」
どんな形になろうと生き抜いてやると彼はぼんやりと睡魔が襲ってくる思考の中で思っていた。
そして幼年期の6年に差し掛かったその日に歯車は動き出した。
「織斑鏡夜、今日からうちの養子になった子だ」
「ほらお姉ちゃんと弟だよ?」
「おねえちゃんと・・・おとうと?」
「おりむらちふゆだ」
「おりむらいちか」
「今日から鏡夜をたのむぞ?二人共」
「よろしくたのむぞ、きょうや!!」
「よろしく、きょうやにい」
「よろしくね、ちふゆ、いちか」
「む、わたしのほうがおねえさんだぞ?ちふゆねえとよべ!」
「じゃあ・・・ちふゆねえ、これでいい?」
「うん!それでいい!!」
「はは、すっかり仲良くなったようだな」
「ちふゆねえ、ずるい、ぼくもきょうやにいとおはなししたい!」
「これからはいっぱいはなせるよ、かぞくなんだから!」
「そうだな!」
「きょうやにい!ずっといっしょだよ!!」
これは鏡夜が初めて家族と出会った日であり、織斑家に養子となった鏡夜はISと呼ばれるものと出会うことになる。
Armour IS Zoneをリメイクしようと思い立った理由はシーズン2です。
Armour IS Zoneからほぼ写しになりますが、ネオアマゾンズドライバーは使う予定です。
人物設定も大幅に変わります。