Armour IS Zone Re2   作:アマゾンズ

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獣が最も危険な時は何か?

怒っている時か?

邪魔された時か?



飢えている時だ。


第七話 Worshippers who are stupid

クラス代表トーナメント襲撃事件から三週間が経過し、学園では普段通りの日常を取り戻しつつあった。

 

鏡夜は相変わらず水筒に入った生卵をアスリートのように飲み干し、後は本を読んで過ごしている。

 

「あまみーはいつも生で卵飲んでるよね~?気持ち悪くならないの?」

 

本音が生卵を飲んでいる鏡夜にゆったりとした口調で話しかけてくる。鏡夜自身、本音の事は嫌っている訳ではない為、応えた。

 

「頻繁って訳じゃなく、時間の間隔を置いて飲んでるから大丈夫なの」

 

「でも、生卵を飲む人なんて珍しいよ~?スポーツ選手みたい~」

 

「鍛えてるからって事で納得してくれないかな?のほほんさん」

 

「う~ん、分かった~」

 

そういって本音は自分の席へと戻っていく、鏡夜は悪い気はしないまでも軽くため息をつきながら本を自分のカバンへしまった。

 

それと同時に担任の千冬と副担任である真耶が教室へと入ってくる。

 

「諸君、おはよう。授業に入る前に皆に発表することがある。山田先生」

 

「はい、なんとですね。このクラスに転校生が来ます!それも二人です!」

 

転校生と聞いてクラスがざわめきだす。転校生が二人も来るとなれば驚くだろう。

 

「静かにしろ!廊下で待たせている入ってこい」

 

千冬の一括と同時に教室の扉が開き、二人の生徒が入ってくる。

 

一方は金髪の男性のようで、もう一方は銀髪と眼帯が特徴的な少女だ。

 

そんな二人を見た鏡夜は違和感を感じていた。一方は男性にしては体つきが柔らかく見え、男装した女性ではないかというほど違和感があった。

 

銀髪の少女からは自分と似ているような、同族に出会った時と同じ感覚を抱いた。

 

「シャルル・デュノアです。不慣れな事もありますがよろしくお願いします」

 

自己紹介を終えたシャルロットの後に何が起こるか予想していた鏡夜は素早く耳を塞いだ。

 

「キャアアアアアアア!」

 

「男子!三人目の男子よ!」

 

「しかも守ってあげたくなる系の!」

 

「お母さん、産んでくれてありがとう!」

 

「ここは一夏×デュノア?あえての鏡夜×デュノア!?」

 

「いやいや、三人まとめて!」

 

「鏡夜君だときっと『お前を喰うのは俺だ』とか言いそう!キャー!」

 

なんだか女子の妄想のネタにされているような気がするが、気のせいかな?

 

「静かにしろ!バカ者共!」

 

千冬の一声で騒いでいた生徒達は一瞬で静かになり、正面を向いた。

 

「では、次の生徒さんですね」

 

「・・・・」

 

「あの・・・?」

 

「ラウラ、挨拶しろ」

 

「はっ!」

 

「ラウラ・ボーデヴィッヒだ、よろしく」

 

「それだけですか?」

 

「それだけだ・・・っ!?」

 

ラウラは自分と同じモノを誰かが体内に潜ませている感覚を味わった。視線を向けるとそこには鏡夜がラウラに視線を向け続けていた。

 

「・・・・・」

 

「・・・・・っ」

 

鏡夜の唇がラウラにだけわかるように動く。読唇術によって内容を知ったラウラは動こうとせずに指示を待った。

 

「(そのまま終わらせた方が良いぞ)」

 

敵意もなく善意でもなく、ただこの場は穏便に終わらせたほうが良いという内容だった。

 

「では、デュノアとボーデヴィッヒは空いている席に付け。授業を始める!」

 

 

 

 

 

授業終了後、僅かな休み時間の間に一夏は姉である千冬に呼び出されていた。

 

「一夏、白式を返すぞ。ロックが完了したからな」

 

「あ、ああ」

 

待機状態の白式を受け取るが一夏はどこか浮ついた返事をしていた。それを見抜いた千冬は一夏に言葉をかける。

 

「一夏、お前は力を望んでいるようだが、その前に己の弱さを自覚しているのか?」

 

「え?」

 

「私と同じ事をしても私にはなれん。これは今日転校してきたボーデヴィッヒや私に憧れる最上級生にも言っている事だが、お前はお前だ。私と同じ剣、私と同じ技を使おうともな」

 

「な・・・けど、俺は!」

 

「己の弱さを自覚できず、制御も出来ていない奴が力を求めようとするな。過ぎた力は麻薬のようなものだ。それにな」

 

千冬は言うべきか迷っていた事をあえて口にした。それは一夏にとってはその口から最も聞きたく無く、信じたくない事であった。

 

「私も一人の人間だ。いつまでも世界最強という看板は背負ってはいられん。私を超える者もいずれ出てくるだろう」

 

「そ、そんな事あるかよ!千冬姉を超える奴が出てくるなんて!」

 

一夏は必死になって否定するが、千冬の目は次世代が出てくるのは当たり前だと訴えかけているように見えた。

 

「一夏、私を超える奴は必ず出てくる。この世に永久に強い奴などいない、いずれは廃れる。お前はお前だけの強さを見つけねばならん」

 

「だけど!」

 

「いつまで私の陰を追いかければ気が済むんだ!お前は!?」

 

「っ!?」

 

それはハッキリとした千冬からの叱咤であった。今までこうした厳しい言葉はかけられていたが、今回は性質が違っている。

 

「お前に構っていられなかった事は事実だ。私がお前に強さを見せた事も認めよう!それでもだ!お前はお前の道を行かねばならない時が来る!」

 

「っ・・・!」

 

「お前の事だ、すぐにでも力が欲しくて雨宮と同じようになろうとしただろう?それは私が許さん!」

 

安易で危険な力を得る事は許さない、ましてやArmour細胞を使う事を。

 

「私も時間が取れるか分からんがお前を鍛えてやる。ただし、弱音をはくなよ?」

 

「!ああ!」

 

千冬に鍛えてもらえると聞いた瞬間、一夏は水を得た魚の如く明るさを取り戻した。

 

「そうだった。今更だが零落白夜に関して説明を忘れるところだったな」

 

「!」

 

「本当なら封印される前に教えるべきだったのだがな、私のミスが招いた事だ」

 

千冬の顔が僅かながらに曇る。最初に危険性を説明しておけば、鏡夜の左目が失明に近くならずに済んだのではないかと。

 

しかし、既に起こってしまった事は戻らない。それを承知の上で千冬は説明を始める。

 

「零落白夜は知っての通り、自分の機体のSEを犠牲にして発動する能力だ。その攻撃力の高さはお前がその身を持って経験しているな?」

 

「ああ・・・」

 

一夏は震えそうになりながら千冬の言葉に頷く。

 

「しばらくは使えんが、エネルギーを制御する特訓は出来るからな。制御をモノにしたらロックは解除してやる。それまでは訓練を続けろ、いいな?」

 

「はい・・・」

 

 

 

 

実技の授業が終わり、鏡夜は珍しく中庭を歩いていた。特に意味はなはい、ただ気分が乗った事と学園の校舎の外を歩いてみていたいと思っただけだ。

 

しばらく歩いていると千冬に対して何かを叫んでいるラウラを見つけた。距離を開けてその様子を伺う。

 

「やはり、戻ってきてはくれませんか」

 

「帰る時に言ったはずだ。お前はお前自身で立って歩けと」

 

「しかし、我がドイツにおいても貴女に鍛えて欲しいと願う者が多く!」

 

「いい加減にしておけ、私とて万能ではない。鍛えた時にそう言ったはずだが?」

 

「う・・・」

 

千冬の冷静な意見にラウラは反論できずに黙り込んでしまう。

 

「それにな、お前の身体もようやく抑え込めているのだろう?私を迎える前に自分自身の心配をしろ。話はそれだけだ」

 

「っ・・・」

 

ラウラは諦めたかのようにその場を歩いて去っていった。一瞬、振り返り鏡夜のいる方向へ視線を向けたが、何も見ていなかったかのように再び歩き出した。

 

「さて、居るのだろう?鏡夜」

 

「バレバレですか?」

 

「当然だろう」

 

バレていた事を感念した鏡夜は木の陰から出て、千冬の傍に立った。

 

「念の為、聞いておくけどあのラウラって子・・・」

 

「ああ、お前と同じようにArmour細胞を体内に持っている」

 

「やはりな・・・同類の感じがしたからもしやと思ってたが」

 

「アイツはドイツで実験体として生まれた。その過程でArmour細胞を試験的に組み込まれたらしい」

 

「遺伝子レベルでの投与か、俺とは全く方法が違ってるな」

 

Armour細胞と聞いて鏡夜は表情を顰めていた。もしも、ラウラが人を喰らっているのならば自分が狩らなければならないからだ。

 

「それにアイツは気に入らない物は壊してきた。自分が自分でない時があると言ってな」

 

「なるほど、次に何を壊そうとしているかなんとなくわかる」

 

「そうか」

 

「それじゃ」

 

鏡夜は千冬と別れ、ラウラに対する警戒を強めようと考えていた。

 

「(今、アマゾンズドライバーは不調だ。なら、使うとすればもう一本か)」

 

 

 

数日後、部屋で休んでいた鏡夜は鳴り響くインターフォンの音で少しイラついていた。

 

「何だ?一体」

 

「鏡夜兄!」

 

「一夏?それにシャルルか」

 

「鏡夜兄!入ってもいいか!?」

 

「ダメだといっても強引に入るんだろう?」

 

仕方ないといった様子で二人を招き入れる。鏡夜自身、こういった時は一夏が厄介事を持ってくる事が多いと自分の直感が告げている。

 

二人をテーブルに案内し、事情を聞こうと口を開く。

 

「それで?詳しくは?」

 

「ああ、実は」

 

一夏の口からシャルルが女性である事、自分の実家であるデュノア社から男性操縦者に近づき、そのデータを盗んでくるよう命令されていた事などを聞いた。

 

しかし、鏡夜は軽いため息をつくと同時に質問をした。

 

「で?一夏は何とかシャルルを助けたいと、肝心の本人の意志は聞いたのか?」

 

「え・・・?」

 

「え?じゃないだろう?本人の意思を確認しないまま、勝手に助けるとか行動してちゃ唯の独善行動だ」

 

「何だよ!鏡夜兄はシャルルがどうなってもいいって言うのかよ!」

 

「少しは冷静になれ、シャルルは助けてくれとお前に頼んだのか?よしんば助けてくれと頼まれたところでお前はどうするつもりだったんだよ、ん?」

 

「それは・・・」

 

鏡夜の質問に口ごもってしまい、一夏は口を閉ざしてしまった。何も対策を考えず、ただ助けるといった感情だけで動いてしまった事のツケだ。

 

「で、シャルル。お前は助けて欲しいのか?助けるとしたら俺は織斑先生に相談するけどな」

 

「!僕は・・・」

 

「鏡夜兄!なんで千冬姉に相談するんだよ!?」

 

「はぁ、あのな?俺達は権力も何もない、ただの男性操縦者っていう肩書きを持ってるだけの高校生だぞ?一国の代表候補生が性別を偽り、入学してスパイ活動をしてたなんて俺達の手に負えるか?」

 

「けど!方法は何かあるはずだろ!?」

 

「お前の言う方法ってのは、まさかと思うが特記事項じゃないよな?」

 

「!」

 

「その狼狽え方からして図星か。特記事項は確かに使えるかもしれない。けどな?国からの帰還命令と言われたら学園側はその人物を返さなきゃいけなくなる。何故だかわかるか?」

 

「な、なんで?」

 

「代表候補生は自分の機体や国への報告義務があるんだよ。データの更新や機体の改修も含まれるから」

 

「解説ありがとうな、シャルル。ちなみにこれは学園の干渉を簡単に跳ね除けられるぞ。強制ではなくさっきシャルルが言ったように、自国の代表候補生の機体に対し、データや改修をしたいと国側が申し入れれば正式な手続きになる」

 

「なっ!?」

 

特記事項によってやりすごそうと考えていた一夏にとって、正式な方法での抜け道の存在を明確にされ、助けることが出来ないという現実を見せつけられた。

 

「お前の方法は間違ってはいない。でもな?どんな事にも必ず抜け道はあるんだよ、正式か正式じゃないかの差はあるけどな」

 

「うう・・・」

 

一夏は自分の認識の甘さを恥じていた。特記事項があればシャルルを助けられると思ったが正式な方法や非合法な方法などで連れ戻すという可能性を視野に入れていなかった為だ。

 

それを元・義兄に指摘されたことで一夏は俯いてしまった。間違っていないと言われてもなんの慰めにもならない。

 

「で?シャルルはどうしたい?諦めないってんなら織斑先生に相談したほうがいいぞ?」

 

「僕は・・・此処にいたいよ!もう戻りたくないんだ!」

 

「なるほど、なら一度。織斑先生の所に行かないとな、そこで相談しないと」

 

「うん、わかったよ」

 

「一夏も来い、織斑先生に迷惑はかけられないとか考えるなよ。俺達が手に負えるレベルじゃないぞ?コイツは」

 

「く・・・わかったよ」

 

 

 

 

三人はすぐに寮長室にいる千冬の所へ向かい、シャルルの事を話した。

 

「ふむ、確かにそれは見過ごす訳には行かん」

 

「千冬姉!それなら」

 

「だが、私にそこまでの権限はない。だが、学園長には掛け合ってみよう」

 

「お願い・・・します」

 

「すまないが織斑とデュノアは部屋を出てくれ。雨宮と話さねばならない事があるからな」

 

「なんで、みんなと話した方が!」

 

「一夏、行こう。どうしても聞かれたくない密談みたいだから」

 

「あ、ああ。分かった」

 

「すまんな」

 

二人が部屋から出て行ったのを確認すると千冬は鏡夜に視線を向けた。

 

「で、だ・・・私の所に来た時点で切り札の事を相談しに来たんだろう?」

 

「ええ、あの人がやってくれるとは思いませんがね」

 

「お前の頼みならやってくれる可能性は高いだろう。気まぐれとは言えな」

 

「連絡手段はありますからね、やってみますよ」

 

「ああ」

 

鏡夜も千冬の部屋から出ていき、ある人物の元へ連絡する。気乗りしないが人助けの為だと割り切った。

 

「はいはーい、みんなのアイドル束さんだよー!おお、きょうくん!何の用かな?」

 

「ええ、束さんに頼みたい事が二つほどありまして」

 

「んー?何かな?」

 

「一つはアマゾンズドライバーのメンテナンス、もう一つはデュノア社の不正を暴いて欲しいだけです」

 

「前者は喜んで引き受けるけど、後者はめんどくさいなぁ」

 

電話越しでも分かり易いほど束はめんどくさいという様子が目に浮かぶ。

 

「そこをお願いしますよ、束さん」

 

「うーん、きょうくんの頼みだもんね。わかったよ!アマゾンズドライバーは今日は訓練で使うだろうから、終わったら部屋に置いといて。しばらくはネオアマゾンズドライバーになるから身体の負担を考えてね?」

 

「わかりました、お願いします」

 

「それじゃ、バイビー!」

 

電話が切られ、鏡夜は空を見上げていた。

 

「結局、頼らないとダメなんだもんなぁ」

 

自分の立場を改めて認識した鏡夜はスマホをしまい、自室に戻った。

 

 

数日後、クラス対抗トーナメントが発表され、タッグマッチ方式になったとクラスメイトから聞かされた。

 

俺達が織斑先生に相談している間にセシリアと鈴が訓練中にアリーナでラウラと戦い、ISが損傷し怪我をしたらしい。

 

鈴は保健室から飛び出して食堂へ向かい、肉まんなどを始めとする肉料理をたらふく食べて怪我を治したそうだ。Armour細胞の再生力はタンパク質さえあれば活性化させられるから大丈夫だろう。

 

出場は可能だそうで甲龍ではなく、ISとして登録されているアマゾンの姿で出るそうだ。

 

甲龍はラウラとの戦いで損傷し、修理のためにしばらく使えないらしい。と、本人から今現在説明を受けている。

 

「鏡夜、私と組んでくれる?」

 

「ああ、俺も鈴に頼もうと思っていたんだよ」

 

「じゃあ、当日まで訓練しましょ?負けたら肉系のご飯を奢るって形で!」

 

「負けられなくなるな、それは!」

 

二人はアリーナへ向かうと対アマゾンを想定した戦闘訓練を開始した。

 

鏡夜はアマゾンズアルファの姿で、鈴はクジャクアマゾンの姿となって戦闘訓練を始めたが、周りで訓練している生徒達がその戦闘に見入っていた。

 

「うおおおおおお!」

 

「クアアア!」

 

アルファの冷静な切り返しや攻めは見ているだけでも参考になり、クジャクアマゾンの速さを生かした攻めは羽根の飾りも相まって非常に美しい。

 

「ぐっ・・!」

 

「コアアアア、ワタシノ勝チネ?キョウヤ!」

 

アルファの正拳突きを躱したクジャクアマゾンはカウンターで腹部に一撃を入れていた。

 

「俺の負けか、今日は俺のおごりだな」

 

「ふふん、遠慮なくご馳走になるわよ!」

 

「ほどほどにしてくれよ?」

 

戦闘訓練を終えた二人は元の姿に戻り、アリーナから食堂へと向かい始める。向かう途中、アマゾンズドライバーを束の指定通りに部屋に置いた後、改めて向かった。

 

 

 

 

 

試合当日、トーナメント表を見るためにアリーナに赴くと組み合わせの表示に鏡夜と鈴は苦笑した。

 

「まさかこうなるとはなぁ・・・」

 

「意外って言えば意外だけど・・・」

 

対戦表にはこう書かれていた。

 

雨宮鏡夜・凰鈴音VSラウラ・ボーデヴィッヒ・篠ノ之箒と。

 

「行くか?」

 

「ええ」

 

二人は待機場所であるピットへと向かい、準備を始めた。

 

鏡夜は生卵を飲み、鈴はゆで卵の殻を剥いて食べると二人で揃ってアリーナへ飛び出した。

 

「来たか」

 

「ああ、少し準備に戸惑ってな」

 

「鈴、加減はせんぞ!?」

 

「反省したようね?いいわよ全力で相手してあげる」

 

鏡夜はいつものアマゾンズドライバーではなく、単眼でネオアマゾンズレジスターを大型化したのかのような物を腰に装着した。

 

これこそがもう一つのアマゾンズドライバー、ネオアマゾンズドライバーでありそれを見たラウラは驚愕している。

 

「アマゾン!」

 

「アマゾン・・!」

 

鏡夜は何かを注入するような形をしたアマゾンズインジェクターをネオアマゾンズドライバーに差し込み、セッティングするかのようにホルダーを持ち上げ、注入するための上部分を押し込む。

 

鈴はネオアマゾンズレジスターのスイッチを押して己の中の獣を解放する。

 

 

NEW OMEGA(ニューオメガ)

 

 

音声と同時に衝撃波と炎が上がり、二匹のアマゾンが姿を現す。クジャクアマゾンは構えを取り、もう一方はアマゾンオメガだが、左の複眼は白く所々が機械と融合しているような姿だった。

 

背中にはIS特有の翼が融合しており、それ以外に変わったところはない。

 

「(これは・・・確かに負担がデカイ。慣れるまで時間かかりそうだな)」

 

二人がアマゾンの姿を見せ、ラウラは内に潜む己自身が獣として戦えと訴えてくる。

 

「(まだだ、今はレーゲンで戦う!)」

 

葛藤している間に試合開始のブザーが鳴り、二匹のアマゾンは同時に走り出す。

 

クジャクアマゾンは箒に付き、ニューオメガはラウラに付いた。戦闘が開始され、射撃音と金属のぶつかり合う音が響き渡る。

 

「く、強い!」

 

「ワタシハ手加減ナンテシナイワヨ!クアアアア!!」

 

クジャクアマゾンは己の羽根を短刀代わりにし、箒を追い詰めていた。一刀流が二刀流に負けるという事は無いが、二刀流は守りに特化しているだけに攻め入る隙が少ないのだ。

 

一方、ラウラとニューオメガの戦いは拮抗していた。

 

「グアアアア!」

 

ワイヤーブレードによる連続攻撃を受け、地面を転がるがすぐに持ち直しパンチや貫手などで反撃する。

 

ラウラ自身もレーゲンの特殊兵装を使えば楽なはずだが、彼女は焦っていた。

 

目の前に現れたアマゾンに喰われるのか、殺されるのかという恐怖に対して。

 

「私は、私は!ガハッ!?」

 

迷いを隙として繰り出したニューオメガのパンチは絶対防御によって操縦者は守られたが、衝撃を逃がすまでにはいかなかった。

 

「ぐ・・う、ダメ・・か。レーゲン・・・すまな、い・・・休んでいて・・くれ」

 

ラウラはシュヴァルツェア・レーゲンの拡張領域から何かを取り出し、機体を解除すると同時にピットに近い壁際に置いた。

 

「これを使う日が来るとは・・・な!」

 

「!それは!ネオアマゾンズドライバー!?」

 

ラウラが手にしているのは鏡夜が使っている物と同型のネオアマゾンズドライバーその物であった。

 

「私は・・・人間だ!人間なんだ・・・!姿が変わろうとも人間なんだァァァ!」

 

鏡夜がやったようにラウラはネオアマゾンズドライバーを腰に装着し、眼帯を取るとアマゾンズインジェクターをネオアマゾンズドライバーにあるホルダーに装着させ、持ち上げると同時にセッティングを終えた。

 

NEO(ネオ)

 

アマゾンズインジェクターの上部分を押し込み、その中にあった物質が乾いた喉を潤すかのように、ラウラの中にあるArmour細胞を活性化させていく。それに反応しているのか、ラウラの紅と金のオッドアイが金色に染まっていく。

 

「アマゾォォォン!!」

 

衝撃波と炎が上がり、中から現れたのはニューオメガと似た姿であり、機械化された一匹の青黒い(アマゾン)であった。




ようやく、かけた・・・。

夏風邪を引いたり、ストレス性胃炎になったりと散々な状態の作者です。

ようやくネオを出せました。おまけに長い・・・。

次回はアマゾン同士の戦闘です。暴走どうしよ・・。

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