──カルデア、管制室。
「『
その絵画のような端正な顔立ちを曇らせて、ダヴィンチはモニターを見つめていた。が、ドアの開閉音を耳にして振り向いた。
「お帰り、ロマニ。向こうの様子は良くも悪くも変化なしだ」
現在藤丸たちは、アルゴノーツが求めているアークを捜して島を回っている。揺れる海面に反して戦況は静かなもので、アークに連なる手がかりはなければ敵からの接触もなかった。
「了解。楽な展開を期待していたわけじゃないけれど、今回も厳しくなってきたね」
「ああ。私も決して期待していたわけじゃないんだけれど、その様子を見ると、どうやらそちらも聞くまでもない展開だったみたいだね」
「そうしておいてくれると助かるよ」
『何が助かるって?』
「うおっ!?」
背後から響く声。音も気配もなく忍び寄ってきていたのは球磨川禊だった。思いもよらぬ人物の登場にロマニは動揺し、ダヴィンチは眉を顰めた。
「く、球磨川くん……!? いつからそこにいたんだい!?」
『あはは、今来たところだぜ』『そういえばロマンちゃん、ご飯ありがとう。美味しかったよ』
「それはよかった。……球磨川くん、それでさっきの話だけど」
「ちょっと待ってくれ、ロマニ」
話を遮ったのはダヴィンチだった。その言葉を受けて、『……何かな、ダヴィンチちゃん』と球磨川が応じる。
「ひとつ聞きたいんだが、君は
『………………………………』
閉口する球磨川。しかし、神妙な面持ちで頭を下げた。
『ごめんなさい』
「……え?」
思いもよらなかった球磨川の反応に、ロマニが思わず声を漏らした。球磨川は姿勢を直して、言葉を続けた。
『今までレイシフト中の反応を誤魔化していたのも、所々で起きたおかしな事象も、すべて僕の魔術──じゃなくて、スキルの力なんだ』『あれこれ聞かれるのが面倒で、ずっと隠してた』
「……隠し事をしていたこと自体は、みんな気づいていた部分ではある」
球磨川の言葉で場に生まれた重い空気を壊して、ダヴィンチは話し続ける。
「話したくないことがあるなら別に話さなくてもいいさ。でも──これから、私たちの味方でいてくれるかどうか。それだけはここでハッキリさせてほしい」
「──味方さ」
括弧つけずに、球磨川はただ淡々と言葉を放つ。
「僕は
「──よし、その言葉さえ聞ければ満足さ!」
これまでの張りつめた空気を緩めるように、ダヴィンチは微笑んだ。
「それだけ聞ければ後はなにもいらない! 医療スタッフとしてサポートしてくれ、なんて指令は撤回だ! 球磨川くん、君には現地で藤丸くんとともにこの特異点の修正に挑んでほしい! 厳しい状況だが、どうか力を合わせてこの困難を乗り越えてくれ!」
「……いいのかい、そんなにあっさり信用して?」
「いいんだよ。だって、
嬉しそうに笑うロマニを見て、球磨川はきょとんと間の抜けた表情を浮かべる。しかし再び破顔して、『あーあ……ロマニちゃんには敵わないぜ』と括弧つけた。
「もう
『やれやれ、ダヴィンチちゃんも意外とせっかちだねえ』
おどけたように笑って、球磨川は