Fate/Losers Order   作:織葉 黎旺

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誤字報告に感謝……!圧倒的感謝……ッ!


第一特異点 邪竜百年戦争 折零暗
第十四敗『死んでも守るから』


 

 

 

 「昨日は本当、散々な一日だったぜ……」

 

『あっはっは』『そういう運が向いてない日って……あるよね!』

 

 「あるよね!じゃねえよ!!」

 

 割と人を殺せるレベルの勢いで振りかぶられた短剣は、繰り出された螺子に止められた。しかし流石に本当に殺す気はなかったようで、短剣を放り投げてアンリは肩を回した。

 

 「はあ、まさか倒れるまで戦うことになるとは思わなかったぞ……」

 

『まさか倒れてもサーヴァントが帰ってこれるとは知らなかったよ』

 

 「知らなかったのかよ!?は、何アンタ何も知らずにオレを放置してたの!?カルデア(ここ)じゃなかったらもうオレ倒れて座に帰ってるからな!!気をつけろよ!!」

 

 ――今のカルデアには、サーヴァントの再召喚という手段がある。マスターが召喚に成功し契約を結んだサーヴァント達は、カルデアからの魔力提供を受け、この基地にそれぞれ存在の基点を作り一時的な受肉を果たしていた。このため、契約した英霊たちは彼らの本来いるべき場所――英霊の座ではなく、このときだけカルデアをホームとする。つまり、特異点や他の何処かで倒れても、サーヴァントはカルデアに帰ってくることができるということだ。

 

 

『そうか……気をつけるよ、助言ありがとう!』『つまりアンリくんはあっさりぽっくり死んじゃっても問題ないってことだよね?』

 

 「あるわ!問題しかないわ!!そもそもオレを特異点なんかに連れてくんじゃねえ!!」

 

『何言ってるんだ!アンリくんだって僕の大切な鯖……ごめん噛んじゃった』『サーヴァンツ……ごめん噛みまみた』

 

 「それはわざとだろ!?」

 

『大切な鯖の一人なんだ!君を置いてはいけないね!』

 

 「マスター……ちょっといい話っぽくしてんのに、鯖って呼称のせいで魚みたいになってシュールだぞー……」

 

『倒れてもカルデアに帰ってこれるってことはつまり、いくら盾にして壁にしても問題ないってことでしょ?』

 

 「やっぱ全然いい話じゃねえ!!」

 

『この世にいい話なんてないんだよ。あるのはよさそうな話だけさ』と相も変わらず空虚な戯言を吐いて、球磨川は目的地のドアに手を伸ばす。自動で開いたドアの先は管制室。待ち構えていたロマニと藤丸一行に、『待たせたね』と言って部屋に入った。

 

 

 

 「それでは早速レイシフトの準備に取りかかろう。今回はちゃんと二人用のコフィンも用意してあるから安心してね」

 

 「この私が調整した代物だよー?安全かつ迅速、快適にレイシフト出来るはずだから安心してくれたまえ!」

 

『あ、この人僕の嫌いなエリートだ』と、心の中でダヴィンチへの認識を改めた球磨川。とはいえまあ、昔に比べれば丸くなったので、エリートを見れば心を折りにかかった前と違って、目の敵にする程度に留めておくのだ。

 

 

 「特異点は七つ観測された。そして今回は、そのなかでも最も揺らぎの小さな――つまり、比較的安全な時代を選んだ」

 

 一呼吸置いて、ロマニは言葉を続けた。

 

 「歯痒いが、向こうに着いたらカルデア(こっち)は通信することしかできない……気をつけて。健闘を祈るよ、藤丸くん、球磨川くん」

 

 「はい。……行ってきます!」

 

『心配しないでロマンちゃん、みんな』『立香ちゃんのことは死んでも守るから』

 

 「禊くん……!?」

 

『アンリくんが!』

 

 「そこはアンタが守れやっ!」

 

『アンリくんは僕の鯖だろ?』『つまり僕の鯖たるアンリくんが立香ちゃんを守ることは、イコールで立香ちゃんを僕が守ったことになるんだ』

 

 「ならねえよ!テメーの命はテメーで守れや!」

 

 「ふふっ……なんか二人を見てると、漫才を見てるみたいな気持ちになるよ」

 

『そう言ってもらえると芸人冥利に尽きるよ』

 

 「もうツッコまないぞ……」

 

 クスクスと楽しそうに笑う藤丸。ふう、と大きく呼吸を吐いて頬を叩く。

 

 「よし……行ってきます!」

 

『適当に掻き乱してくるよ』

 

 その適当が誤用の方ではなく、正しい意味であることを祈りながら――カルデアの面々は、コフィンに入った二人を見送った。


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