発:海軍省 宛:トラック泊地鎮守府司令長官   作:戦闘工兵(元)

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いやっふぅぅぅぅぅっ!! 夏イベ達成したぜぇぇぇぇ!!!

新しく着任した皆いらっしゃぁぁぁぁい!!!


ーーえ? 艦娘を作中で登場させる約束はどうしたかって?………………!!Σ(゚Д゚;

はわっ……はわわっ…!!



36

「ーー引き続き対空見張りを厳となせ!戦死者と負傷者の搬送急げ!!機銃の弾もだ!!」

 

 敵攻撃隊の猛攻を躱し続けた重巡 蔵王の防空指揮所で艦長 前原大佐が見張員達へ警戒を続けるよう厳命し、続けて伝声管を掴むと矢継ぎ早に命令を下す。

 

(ーー魚雷、爆弾を全て躱すとは…)

 

 疲労した様子を感じさせない艦長を横目に捉える桂木が内心で驚嘆する。

 

 来襲した敵攻撃隊のほとんどが蔵王へ襲い掛かり、投弾或いは投下された爆弾と魚雷は各々15発以上。

 

 至近弾が数発、肉薄され数えきれぬ機銃掃射こそあったが直撃弾は皆無ーーもはや奇跡、もしくは神がかり的と言う他なかった。

 

 正確な数は後で戦闘詳報を纏める際に記録へ目を通すしかないーーもっとも生き残れたらの話だが。

 

「ーー艦長。本艦の損害は?」

 

「ーー目立った損害は皆無のようです。しかし爆弾の破片や機銃掃射で現在確認出来るだけで戦死17、負傷は11であります」

 

 戦死者の中には戦闘中、この防空指揮所で爆弾の破片で片腕をもぎ取られた見張員も含まれている。

 

 艦長からの報告に桂木は短く、そうか、とだけ返す。

 

「ーー然れど我が艦隊、他の艦隊も含めて損害は軽微とのこと。本艦へ攻撃が集中したのが幸いしました」

 

 傍らに侍る前原艦長が重ねて報告した。

 

 それを受けた桂木が改めて輪形陣を組んだ全ての艦へ視線を遣ればーーいずれの艦も健在であり、落伍、あるいは沈んだ艦は一杯もない。

 

 輪形陣中央へ固めた空母も無事だ。在空待機させていた第一次攻撃隊が次々と母艦へ着艦していく様を桂木の目が捉える。

 

「…不幸中の幸い……とは言えぬか。まだ来襲する筈だ」

 

「長官……お尋ねしても宜しいでしょうか?」

 

 小声で桂木へ質問の許可を得る艦長へ彼が軽く頷いて見せる。

 

「…敵機に発見された時点で我が艦隊その悉く…敵を引き付ける囮となるのが本作戦の目論見なのでは…?」

 

「ーー…俺も作戦の全容を知らされてはおらんのだ…が可能性としては皆無ではない」

 

 苦し気に吐かれた言葉は艦長へ彼の考えと桂木のそれが酷似していると暗に伝えていた。

 

「…申し訳ありません…」

 

「…こちらこそ済まん。だがーー」

 

「…なんでしょう?」

 

「…仮に囮だとしても預かった艦娘、艦隊や将兵、いずれも無意味に喪うような采配はせん。戦をする以上、何かを喪い、その対価として勝利を得るのだ。幾多にして幾万もの犠牲を積み重ねた末の勝利は後世の者達から無能の烙印を押されるだろう。“必要な犠牲だったのか”、“別の作戦は無かったのか”とな。それで構わん。結構ではないか。少なくともそれが語られる程度には人類は生き残っているという事なのだからな。現在を生きる俺達は最良だろう道を模索し、それを進むより術はないのだ。評価は未来に任せよう。だからこそ…その未来を生きる者達の為ならば俺は自らの命も捧げてやる。覚悟なんぞ今更だ。とうの昔に命は皇国(みくに)へ捧げておる」

 

 桂木の小声ーーしかし、はっきりとした澱みのない返答を聞いた艦長が庇を摘まみ、目深に戦闘帽を被る。

 

 彼の眼に嘘の色は一切なかった。それを認めた艦長が心中で深々と溜め息を零す。

 

(ーー嗚呼……これが…)

 

 帝国海軍へ人生の半分近くを捧げた前原艦長だが、久しく感じていなかった感情ーー感動というそれが身心を襲った。

 

(…この方は全ての責任を背負うつもりだ。幾多の艦を沈め、幾万もの将兵の屍を代価として勝利を得る。血と臓物で溢れ、怨嗟の声が満ちる道を歩かれるつもりだ。…これが…将帥ーーいや“提督”という者か…)

 

 庇の奥から艦長が横へ立つ桂木を盗み見る。

 

 彼はただ真っ直ぐに前のみを見詰めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー湾口に敵艦多数を視認!」

 

 発艦させた偵察機に搭乗する“妖精”からの報告を受けた赤城が自身と同じく航行する周囲の艦娘達へ吠える。

 

「ーー赤城さん!」

 

「ーーえぇ!」

 

 第一航空戦隊ーー赤城と加賀が携えた弓の弦へ背中の矢筒から引き抜いた矢を番えた。

 

「第一攻撃隊ーー発艦して下さい!」

 

 隣で海原を駆ける相方へ合図を出した刹那の瞬間、互いの矢が放たれーーそれが空中で6機の零戦と変わる。

 

 間断なく次々と放たれる矢ーーそれらは悉く航空機となり空を駆け出す。

 

「ーー更に報告!敵艦の種別は駆逐艦が9、軽巡に重巡6、戦艦4、空母はヲ級を含めて3……それだけ?…それだけですか!?もっと良く探しなさい!」

 

 傍目から見れば大きな独り言ーー偵察機の報告に応答しているだけなのだが、それを聞いた加賀が眉を顰める。

 

「想定していたよりも敵が少ない……赤城さん、どういう事でしょうか?」

 

「…判りません…罠の可能性ーー待って下さい。……えっ?」

 

 新たな報告を受信した赤城が一瞬間が抜けた声を発した。

 

「…別の偵察機からです。戦艦棲姫を中核とした艦隊を東で発見した、と。針路はーー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー先発の赤城より至急電!“ハワイ沖ニ戦艦棲姫ヲ含ム大艦隊見ユーー」

 

 蔵王の防空指揮所へ駆け上がって来た通信兵からもたらされる報告を桂木は煙草を喫しつつ静かに耳を傾けていた。

 

 報告にあった敵艦隊の位置、速力、そして戦力を頭の中へ叩き込んだ海図と照らし合わせる。

 

「ーー敵艦隊 針路ヲ南東ニ取ル”。以上であります」

 

「ーー可能な限り接触を続けるよう送れ」

 

 紫煙を吐き出した彼が兵へ静かに告げた。

 

 それへ意気軒昂と了解の応答をした通信兵へ桂木は更に続ける。

 

「ーー6F 梶本長官へ信号。“我此レヨリ対深海棲艦戦闘ノ指揮ヲ執ル。離脱サレタシ”。加えて艦隊全艦へ信号“我ニ続ケ”。復唱要らん。急げ」

 

「はっ!」

 

 通信兵が走り去る。

 

 その姿が見えなくなるかどうかの瞬間ーー桂木の口角が緩く吊り上がった。

 

 だが直ぐにその表情を引き締め直すと彼は傍らの艦長へ声を掛ける。

 

「ーー艦長」

 

「はっ」

 

「対深海棲艦戦闘用意を伝えてくれ。主砲にはーー“五式弾”を」

 

「ーー了解。ーー対深海棲艦戦闘よーい!砲術長、“五式弾”揚弾始め!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真珠湾の湾口ーーそこへ集結した第一次、第二次攻撃隊の空襲から生き残った残存艦艇へ艦娘達による総攻撃が加えられる。

 

「ーー第一次攻撃隊、駆逐イ級1、ロ級2撃沈!重巡リ級、戦艦ル級はそれぞれ中破!」

 

「空母ヲ級、軽母ヌ級 1杯ずつ撃沈です」

 

 砲雷撃戦へ移る前の航空攻撃は確かな戦果を上げた。

 

「ーーChargeシマース!Follow me!」

 

 金剛が背負った艤装の35.6cm連装砲ーーにしてはだいぶ小ぶりであるがーー4基の主砲の砲口を敵艦隊へ指向させつつ全艦娘の先頭を切って突撃を始める。

 

「ーー敵艦隊 射程内へ収めました!金剛さん!」

 

「ーーOK!」

 

 彼女の後方を航行する大和が金剛と同じく艤装の主砲を敵艦隊へ指向させながら叫んだ。

 

 発砲の許可を得た大和の目が細められる。

 

「ーー敵艦捕捉!全主砲……薙ぎ払えっ!!」

 

 気迫が込められた号令一下ーー彼女が背負った46cm三連装砲が火を吹いた。発砲の衝撃で彼女が航行していた海面が半球状に抉れる。

 

「ーー撃ちます!!Fire!!」

 

 先頭を駆ける金剛も砲撃を始める。

 

「ーー敵艦隊発砲!!」

 

「だんちゃーく…今っ!!…夾叉!次は直撃させます!」

 

 大和が次弾を発砲しようとした時ーー敵艦隊へ迫る艦娘達の周囲へ次々と敵弾が雨霰と降り注ぎ、数多の水柱が昇った。

 

 特に先頭を駆ける金剛は敵の集中砲火を浴び続ける。

 

 敵弾が彼女の直ぐ側へ落ち、立ち上った水柱の飛沫を浴びるが金剛は目をカッと見開き、敵艦を捉え続ける。

 

「ーーDon't make a fool of me!!」

 

 彼方の敵艦へ啖呵を切った彼女が再び発砲したーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 旗艦 蔵王を先頭に単縦陣を組んだ第四艦隊の重巡、軽巡、駆逐艦 10隻が続く。

 

 深海棲艦の大きさは艦種ごとに違うが概ねは人間と大差ない為、電探で感知するのは至難の技である。

 

 頼りとなるのは人間の眼だ。

 

 彼方の海面を大型双眼鏡で見張り続けていた一人の見張員が叫ぶ。 

 

「ーー左艦首 敵艦隊視認!!距離1万!!」

 

 瞬間、艦長と桂木が首から下げた双眼鏡を目へ宛がう。

 

 艦長が合戦の命令を下達する中、桂木が一人の見張員へ歩み寄った。

 

「ーー代わってくれ」

 

「ーーはっ!」

 

 首から下げている双眼鏡では黒い点々が多数ある程度にしか見えなかった。

 

 これから交戦する敵艦隊をより良く観察する為、彼は見張員から譲られた大型双眼鏡を覗き込みーー

 

(ーー…なんだアレは)

 

 ーー敵艦隊の中心にいる現実離れした異形のモノを視界に捉えた。

 

 一見すれば肌が異様に白く、額へ角が生えた艦娘ーーだがその背中には彼女の背丈を遥かに上回る艤装がある。

 

 “艤装”とは言ったが、艦に搭載する艤装と酷似しているのは主砲だけだ。それ以外は“生物”と呼ぶ方がしっくりと来るかもしれない。

 

 黒々とした頭部。大きく裂けた口に生える歯。そして筋骨隆々と形容するに相応しい両腕。肩と思われる場所には2基の主砲が乗っている。

 

 それが彼女ーー戦艦棲姫と呼称される深海棲艦だ。

 

「ーー長官」

 

 前原艦長が彼へ声を掛けて来た。

 

 掴んでいた大型双眼鏡を見張員へ返した桂木が艦長に向き直る。

 

「間もなく合戦です。艦橋へーー」

 

 想像していた通りの言葉を桂木が首を横へ振り拒んだ。

 

「ーー言った筈だぞ艦長。俺は特等席におらねば気が済まん性分だと」

 

「存じ上げております。しかしながら砲戦となればーー」

 

「ーータマにしか当たらんから弾と言う、そんな戯れ言もあるのだ。俺は構わん。艦長は降りて指揮を執ってくれ」

 

 明確な拒絶を示した桂木が元いた羅針盤横へ再び仁王立ちとなる。

 

 深々と溜め息を吐いた艦長だったがーー次の瞬間には苦笑を顔へ張り付け、自身よりも背の高い艦隊司令長官の真横へ陣取った。

 

「ーー降りんのか?」

 

「ここからでも指揮は出来ます」

 

 火が点いていない煙草を銜えた艦長が見下ろしている長官へ向けて言い放った。

 

 それも尤も、と首肯しつつ桂木も煙草を銜える。

 

「例の新型砲弾ーー五式弾ですが…効果はあるでしょうか?」

 

「実戦投入は今回が初だ。それに…艦長は勘違いをしているぞ。基本的に艦砲射撃は“当たらん”。命中率は平時の訓練で最高でも15から9%程度だ。実戦ともなれば5%以下。…まぁ…当たったとして…効けば良し、効かねば…通常弾で直撃を喰らわせれば良いだけだ。的が小さくとも当てるのは不可能ではない………理論上はな」

 

「えぇ。理論上は、ですが」

 

「応。……頃合いだ。艦長、始めてくれ」

 

「はっ。ーー対深海棲艦戦闘!左砲戦用意!おもぉぉかぁぁじっ!」

 

 旗艦 蔵王が舵を切った。

 

 その回頭点で後続艦が次々と面舵を切り、旗艦の航跡を辿る。

 

「ーー砲術長!」

 

 主砲の砲口が左舷側へ向けられたのを見た艦長が伝声管を掴んで吼える。

 

<ーー試射、いつでも宜しいです!>

 

「ーー応!」

 

 ポケットをまさぐり目当てのマッチを引き摺り出した桂木がそれを擦って煙草へ火を点けた刹那ーー主砲が咆哮した。

 

 




へっぽこ作者の力ではこれが限界なのです……m(__)m

明日8/15は終戦記念日……毎年、この日の正午は靖国神社がある方角を向いて黙祷する作者。物心ついた頃から教えられて育ったので同級生からは「変なの」と言われた苦い記憶があるのです。



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