発:海軍省 宛:トラック泊地鎮守府司令長官   作:戦闘工兵(元)

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イベントまであと少しぃぃぃぃ!!!

いやぁぁぁバケツがぁぁボーキがぁぁぁ!!

ーー半狂乱一歩手前の作者がとち狂って本編と全く関係ない話を投稿しました。

 本編じゃなくて申し訳ありませんm(_ _)m 明日、バリカンで頭丸刈りにしますので許して下さい。


閑話ーRADIO TOKYOー

「ーーむ。もうこんな時間か…」

 

 長官室の壁掛け時計が1900を告げた。

 

 本日はこれぐらいにしよう、と桂木が計画の草案を書き殴った下書き用紙の山を纏めて整え、執務机の抽斗へと納める。

 

「ーー提督。本日もお疲れ様でした」

 

「ーーあぁ、済まんな」

 

 本日の秘書艦ーー空母艦娘である赤城が茶を淹れた湯呑を桂木の眼前へ滑らせた。

 

 短く礼を述べ、直ぐ飲めるよう適温で淹れられた茶を一口啜る。

 

「ーーあっ。提督、申し訳ありません…内地とこちらの時差は一時間で宜しかったでしょうか?」

 

「…あん?…あぁ、そうだが」

 

 桂木が茶を啜りつつ赤城へ答えると彼女は慌てた様子で壁掛け時計に視線を遣る。

 

「どうかしたのかね?」

 

「ーーあっ、いえ…些末な私事ですので…どうかお気になさらず…」

 

 ーーその表情と声音では気にして下さい、と言っているようなモノではないか。

 

 湯呑を机上へ戻した彼が口を開く。

 

「ーー作戦も近い。些末だろうが私事だろうが……懸念があるのならば申告して欲しい。可能であれば、それに応えよう」

 

 真摯な視線と言葉を受けた赤城が更に言い淀むーーが意を決して彼女が口を開いたーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 長官室の片隅に置かれ、部屋の主がこれまで起動はおろか触った事すらない真空管ラヂオが勇壮な行進曲 軍艦を奏で出した。

 

「ーーまぁこんな場所では数少ない娯楽だろう。聞き逃してしまい次回まで待つ、というのは精神的にも苦痛だ」

 

「ーーお恥ずかしい限りです…」

 

 応接用のソファへ並んで腰掛ける二人の姿は対照的だ。

 

 桂木は足を組みつつ左腕をソファの背凭れへ投げ出した格好のまま湯呑を傾け、一方の赤城はーー縮こまっている。

 

「構わんよ。ところで番組の名前は…なんと言ったかな?」

 

「…RADIO TOKYOです」

 

 放送の時間が間近に迫っているという番組のタイトルを思い出した彼は似た名称の番組も次いでに思い出してしまった。

 

「…プロパガンダ放送ではないだろうな?」

 

「まさか!プロパガンダだとして、どうやって深海棲艦へ聞かせるのですか?」

 

「ふむ…尤もだな。済まん、気を悪くさせた」

 

「あっ、いえ…どうかお気になさらず…」

 

 男女二人が長官室という密室(扉に鍵は掛かっていないが)で並んで腰掛けているーーそのような状況で桂木と赤城はなんとも色気のない会話を続けていた。

 

 勇壮な行進曲が終わり、唐突に軽快な曲調の音楽が流れ始める。

 

 

 

 

 

<ーーリスナーの皆様、こんばんは♪こちらはRADIO TOKYO。今週もこの時間がやってきました。司会進行はお馴染みの僕、藤堂が務めさせて頂きます。どうかリスナーの皆様、お時間の許す限りお付き合い下さいますようヨロシクお願いしま~す♪>

 

 

 

 

 

 ラヂオが軽薄とも取れる若い男の声を発し続ける中、桂木はやや残念に思った。

 

ーーやはりラヂオのアナウンサーは若い女性の方が良い。耳に良いのはやはり女性の声だ。

 

「…赤城。“こちら”では、こういったのが流行りなのかね?」

 

「えぇ…まぁ。艦娘や若い軍人の方々も良く聞いております。それに大本営発表の放送よりは面白いかと」

 

「ふむ…それには同意しよう」

 

 とはいえ耳に良いのは若い女性の声だ、と彼は素直な心情を内心で吐露する。

 

 

 

 

 

<ーーさて、いつものお便りコーナーへ行く前に本日はBIGでSPECIALなお客様がいらしておりますよ~♪>

 

 

 

 

 

「ーーお便りコーナー?」

 

「えぇ。聴衆ーーリスナーから届けられたお便りをアナウンサーの方が読むんです。内容は相談事や生活で起こったちょっとした事件など……色々ですね」

 

「ほぉう。聴衆が参加出来るのか」

 

 

 

 

 

 

 

<ーー本日のお客様はーー海軍大臣 山本五十六元帥閣下で~す♪>

 

<ーーどうぞ宜しく山本です>

 

 

 

 

 

 

ーー聞こえてしまった声で啜っていた茶を吹き出しそうになった。

 

 吹き出しかけたものの寸前で耐えてしまったのがいけなかったのだろう。茶が気管へ侵入してしまい桂木が咳き込み出す。

 

 慌てて赤城が彼の背中を擦る中、ラヂオは声を流し続ける。

 

 

 

 

 

 

<ーーお忙しい中、御足労をおかけしました>

 

<ーーいやいやとんでもない。いつも拝聴しておりますよ。いつか出てみたい、とは常々思っていたのでお誘いが来た時はとても嬉しかったです>

 

<おおっ…まさかの海軍大臣閣下がリスナーの方だったとは…!>

 

<老人の数少ない娯楽ですよ。最近じゃあ海軍の部下と将棋を指すぐらいしか自分を慰める事がありませんので>

 

<そうでございましたか……では本日はお楽しみになって下さい。もしかするとリスナーの方からのお便りの中に相談事のモノもあるかと思いますので、その時はーー>

 

<勿論、お手伝いさせて頂きます。年の功だけしか取り柄がありませんから>

 

 

 

 

 

 

「ーーな、なにをやってるんだ…あの人は…!?」

 

 あっ珍しい、と赤城が酷く狼狽する上官の背中を擦りつつ思った。

 

 

 

 

 

 

<ーーではお便りコーナーへ参りましょう♪本日の一通目はーーこれだ!>

 

<おおっ、本当に箱の中に入れているんですね>

 

<えぇ。この箱、かなり重たいですよ。ーーFifty bellさん 神奈川県在住の女性からです。おや可愛らしい字ですね。

 

【藤堂さん、こんばんは】

 

はい、こんばんは~♪

 

【いつも楽しくラヂオ、拝聴させて頂いております。いきなりではありますが少し相談に乗って頂きたいのです】

 

勿論ですよ。しかも本日は凄いお客様もいらっしゃいますからね♪>

 

<お手柔らかにお願いしたいですねーーうん?Fifty bell…?>

 

<さて…Fifty bellさんの悩み事とはなんでしょうか。

 

【詳細には申せないのですが私は国内でも一位、二位を争うであろう大きな会社に勤めております。仕事は大変ですが遣り甲斐を感じており、苦と思った事はーーありますが、自身を奮起させ、頼りになる仲間や同僚達と助け合いながら日々の業務にあたっています。仕事面ではそれなりの成績を出しておるのですが……その…私、他の同姓の方々と比べると胸部が大きい部類に入るらしく…殿方の視線が気になって仕方ありません。実際、直属の上司ではない殿方とお話する時は視線が……チラチラと下を…。私事で申し訳ないのですが気にならないようにするにはどうすれば宜しいでしょうか?】

 

うーん…いや…まぁ…僕も殿方ーー男性ですが…確かに女性の胸部……というかこれ放送しちゃって良いのかな?兎に角、女性の胸ばかり見るのは失礼ですよね。山本大臣閣下、どう思われますか?>

 

<簡単ですよーーその野郎を直属の上司に説教してもらえば良いだけだ>

 

<おおっ!確かにーーいや確かにって変な言い方だ。でも説教だけで…大丈夫なのでしょうか?>

 

<ふむ…懸念は尤もですね。…では不埒な事を考えるその野郎を去勢するとかーー>

 

<いや、ちょっ!!?>

 

<もしくは…横浜の沖にでも石を抱かせて沈めるとかーー>

 

<本当に放送して大丈夫なのかなこれ!?打ち切りとかないよね!?>

 

 

 

 

 

 

 

「ーー匿名なのか」

 

 お客様ーー山本の登場に狼狽していた桂木だが落ち着きを取り戻し、現在は先程と同じ格好でラヂオへ耳を傾けている。

 

「えぇ。お名前を知られたくはないでしょうからね。ちなみに提督はお便りを送るとしたら…どのようなお名前に?」

 

「ふむ……思い付かんな。……しかし…Fifty bellか。…Fifty…五十…bellは呼び鈴や鈴…………あっ」

 

 

 

 

 

 

<ーーいやまぁ冗談です。海軍ジョークという奴ですよ>

 

<それにしては随分とーーあ、いえ、なんでもありません>

 

 

<私も男性なので所謂、肉感的な女性に視線がいってしまう事がありますが……女性からすれば不快でしかないでしょう。そういった時は、やはり上長への報告と相談ですね。私の勘ですが…Fifty bellさんの直属の上司という方は貴女の悩みに無関心な方ではないだろうと察します>

 

 

 

 

 

 

 

「…………なぁ赤城。俺はトラックにいる諸君以外の艦娘とは面識がないのだがーーあぁ、いやなんでもない。忘れてくれ」

 

「は、はぁ」

 

 言い掛けた言葉を途中で止めた彼に赤城は小首を傾げた。

 

 

 

 

 

 

<ーーでは次のお便りで本日の放送は申し訳ありませんが終わりになります。ーーおや、珍しい。こちらは外地からの投稿ですね。Diamondさん、トラック諸島に在住している女性からの投稿です。

 

【Good evening,Mr.藤堂】

 

Good evening ,Ms.Diamond♪

 

【いつも楽しく聞いてマース。今日は悩みがあってLetterを送らせて頂きマシタ。私の上司なのですが…真面目で仕事が速くて背が高くてCoolなのデース。ちょっと目付きは恐いのは内緒ですケドネ】

 

内緒になってないですよ~♪

 

【一緒に仕事をしてまだHalf a yearも経ってないのデスガ……彼の事が段々と気になってしまい大変なのデス。彼の気を引きたくてなにかPresentしたいのデスガ上司の好みが判りマセン!時々、上司は持っているSamurai swordを笑いながらお手入れしていますがそれ以外、何が趣味なのか何が好きなのか判らないのデース。男性の視点から何をPresentされたらHappyか教えて下サイ!】

 

うーん…Diamondさんは英語が得意なんですかね?それにしても…意中の上司の方…笑いながら日本刀を手入れって…ちょっとどころか…かなり恐いのですが>

 

<おおっ綺麗な字ですね。是非とも我が海軍へお招きしたいモノです。恐らく手入れの際は…こう…ニタァと笑いながらしているのでしょうね>

 

 

 

 

 

ーーまさか彼女もリスナーの一人で放送局へ手紙を送るとは。

 

 赤城は自身の居室でラヂオで読まれた内容を便箋へ綴る同僚の姿を想像し、微かな笑顔を浮かべる。

 

 同僚が気になっている相手は自分の隣でラヂオを聞いていた。

 

 チラっと赤城が横を盗み見る。

 

「ーーSamurai sword…つまりは日本刀か。素晴らしい…トラックに在住していると言うが、機会さえあればその上司と語り合いたいモノだ。気が合いそうだ」

 

 そりゃそうでしょうとも、と赤城が無言で彼へツッコミを入れる。

 

 

 

 

 

 

<男性の視点で貰って嬉しい贈り物……うーん…中々、難しいですね。個人差がありますし。僕は…そうですね…予定なんかを書き込める手帳でしょうか。山本大臣閣下は如何でしょうか?>

 

<そうですねぇ…私は菓子なんか贈られたら嬉しいですかね。甘党なんですよ>

 

<意外です!やはり人によって好みは分かれるようですね>

 

<ただ日本刀が好きというなら…手入れする道具などを贈られたら良いのではないかと思いますね。若しくはそれとなく趣味や好物を聞くとか。ありきたりですがね>

 

<なるほど。でもそれが一番かもしれませんね。ーーという事ですDiamondさん。貴女の悩みに応えられたか不安ですが想いが成就する事を祈ってます!Good Luck!>

 

 

 

 

 

 

「ーーちなみに提督は何を贈られたら嬉しいでしょうか?」

 

「む?…ふむ…これといって思い付かんな。…それに俺は贈られるより贈る側だろう」

 

「…と申しますと?」

 

「艦娘である諸君、国民にだ。外敵を打ち負かし我が軍が凱歌をあげる勝利。そして安心して日々の営みを送り、安心して夜を眠れる平和」

 

「ーーーー」

 

「こう言っては多分に語弊があるが敢えて言おう。軍隊は然るべき時には武力を発揮する暴力装置だ」

 

「いえ、それはーー」

 

「違うかね?…軍隊という暴力装置が本格的に起動するーーそれは国家に良からぬ事が起きた時、もしくは寸前の状況だ。この装置の燃料は資源や人間など…つまりは国力だ。動いている限り燃料は消費され続ける。だからこそと言えば良いのか……一刻も速く暴力装置を停止…いや訓練やらも必要だからな…暖気運転にしよう。その状態へ戻し、燃料の消費を抑えなければならない。それが出来るのは俺達だけだろう。…やはり…軍人は昼行灯などと言われる世の中が一番だ」

 

 

 

 

 

 

<ーーでは本日の放送はここまでとなります。山本大臣閣下、お忙しい中ありがとうございました>

 

<とんでもない。有意義な時間を過ごせました。機会があれば、またいつかお願いします>

 

<こちらこそ宜しくお願いします。ではリスナーの皆様、また来週~~♪>

 

 

 

 

 

 

 

 放送が終わり、ラヂオが流行歌を奏で始めた。それへ歩み寄った彼はスイッチを切る。

 

「さて、放送は終わった。赤城、そろそろ宿舎へ戻りなさい。俺は一服を済ませてから上がるとしよう」

 

「はい、提督。では、お先に失礼致します」

 

「あぁ」

 

 退室する寸前に赤城が頭を下げた。

 

 軽く首肯で応えた彼を認め、彼女が静かに扉を閉める。

 

 窓辺へと歩み寄り、煙草を銜えた桂木は火を点けたーー

 

 

 

 

 

 

「ーーやはりもう少し仕事してから上がろう」

 

ーーそんな事を呟きつつ紫煙を吐き出した。

 

 




※「暴力装置」という表現がご不快に思われたら申し訳ありません。作者も書いていて気分が良い表現ではありませんでした。

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