読者からの反応が怖い。
と言うわけで、注意。
グロ系、ホラー系が苦手な人は、今すぐブラウザバック。どうせこの話を読まなくても(多分)これからの話にはついていけるはず……なので、前半は読み飛ばしましょう。
前半を読む人はお覚悟を。『何がホラーだよ、こんなのグロでもホラーでもねえよ、くだらねえ』と笑い飛ばせる人のみ読んで下さい。
……ところで、エロなければR18なくても大丈夫……ですよね?読む側の時はともかく、書く側になって見るとどのラインまでが大丈夫なのか分からなくなる……。後で投稿したことを後悔して消すかもしれない。
街は焼け、人は食われる。それはまさしく地獄絵図。
「《我が身は剣・我が手は刃ーーー」
呪文を紡ぎながら疾走する。敵の姿を注視しないように意識しながら、敵に向かって突き進む。ーーーその敵の姿を見れば、それだけで精神の均衡を失い、まともに魔術が使えなくなる。彼女はそれを理解していた。
「ーーー其は、全てを斬り裂くもの》!」
本来七節の呪文を三節にまで短縮して固有魔術を発動。両手首の周りに3つの方陣が並び、高速で回転する。手首より先に光の刃が形成された。
「はああぁぁっ!」
突撃。
形成された刃で敵を斬り裂き、体液を浴びる前に飛び退く。あとはそれの繰り返し。
「やめろ、やめてくれっ!ーーーひっ…」
「ぎゃああぁぁーーーっ!」という悲鳴と、「ブチブチ」という理性を蝕むほどの嫌な音が聞こえるが、無視する。ーーー意識したが最後、次に変わり果てるのは自分だ。絶対に意識してはならない。
(守らなきゃ……。あの2人だけでも、絶対に!)
数メートル離れた場所には、ルミアとシスティーナの姿。
だが、いくら奮戦しようとも、総計数千にも及び、なお増殖し続ける敵を全て足止めすることなどできない。討ち漏らした敵が「ギチギチ」と嫌な音を立てながら2人に殺到するが、
「《大いなる風よ》ーーー!」
ルミアによって強化されたシスティーナの風の魔術が、触れる前に敵を吹き飛ばす。胆力に長けたルミアは敵の姿を目にしてなお正気を保ってシスティーナに指示を出し、システィーナは目を瞑りながらその指示通りに魔術を行使。2人の長所を活かした、素晴らしいコンビネーションだ。
とはいえ、長くは保たない。長期戦によってシスティーナは息を切らし、もはやマナ欠乏症寸前。2人を生き残らせるためには、このまま戦闘を続けるわけにはいかない。
ーーーそして、見てしまった。建造物の屋上から飛び降り、死角から2人に襲い掛かる敵の姿を。
「…逃げなさいっ!」
2人に向かってなりふり構わず全力疾走。2人が異変に気づくのと、黒髪の少女が辿りつくのはほぼ同時。
「……ふっ!」
刃を消失させた左手で2人を突き飛ばし、もう片方の手に宿したままの刃で敵を両断。2人を逃すために回避が遅れ、体液が刃の無い左手に掛かった。
「〜〜〜〜〜ーーーっ⁉︎」
声にならない悲鳴が上がった。
体液の掛かった箇所から激痛が走り、じゅうじゅうと蒸気が発生する。即座に彼女は、左腕を刃で斬り落として飛び退いた。
「……え?あっ、え、リーナ?」
刹那の出来事で現状を把握していないのか、それとも敵の姿を僅かでも目にしてしまったが故の混乱か。システィーナは呆然と、左腕を犠牲にした少女の名を呟いた。
そして、斬り落とした腕から「ギチギチ」という音。その音を聞き、リーナは残った手で慌ててシスティーナの目を塞ぐ。
「……ひっ」
それを目にしたルミアが、彼女にしては珍しい怯えの表情を見せる。
吐き気を堪えつつ、リーナも
自分の切り離した腕が青黒く染まり、ブクブクと膨張。そして膨らんだ腕がぐちゅぐちゅと変形し、小型の『敵』になった。
ーーー敵の姿を、見てしまった。
全体的に鈍く光を反射する薄橙色の、まるで蜘蛛のようなシルエット。足は8本で、その先には五本の指。まるで人の腕を無理やり取り付けたかのような、グロテスクな形状。背中からは長い触手が一本生え、その先には白目と濁った黄金の瞳から成る眼球がぶら下がっている。そして口に当たる部分には人と同じ形状の歯が生え、口腔から人と同じ形の鮮やかなピンクに光る舌が覗いていた。
その瞳が、ギョロリとこちらを見る。
「あ、ああぁっ……」
目が、離せなくなった。あまりにも悍ましい、まるで『人のパーツをバラバラにして無理やり他の生物の形に組み立てた』かのような、その姿。
ーーー吐き気がする。
早く目を背けたい。なのに体が言うことを聞いてくれない。腰を抜かし、その場に崩れ落ちる。
ーーー助けて。
「リーナ、見ちゃダメ!早く逃げよう!……しっかりして、システィ⁉︎」
ルミアの声も、聞こえない。
ーーー怖い。
血の気が失せる。身体が寒い。冷や汗が止まらない。
ーーー助けて、◯◯◯◯
下半身に生暖かい感触。流れ出た液体が、タイルで舗装された街路に広がった。
「……あ」
いつの間にか、大小様々なその天敵に囲まれていた。もう、周囲の様子は見えない。見渡す限り、気持ちの悪い肌色。
「……いや、やめて、せめてシスティ達だけでも助けてえ……」
そのルミアの嘆願が、聞こえたのか否か。敵の集団がまず狙ったのは、ルミア。
ギチギチと音を立て、敵が殺到する。たちまちルミアの姿が見えなくなった。
「痛い、あああ、ああぁーーーっ⁉︎」
迸る悲鳴。ブチブチと音を立て、血と肉片が辺りに飛び散る。………飛んできた肉片が敵に生まれ変わるのが見えた。
「…痛、なんで、システィだけは助け……」
それっきり、ルミアの声は聞こえなくなった。
そして、しばらくぐちゅぐちゅと蠢いた後、まるで興味が失せたかのようにその場を離れる悍ましい天敵。……そこに残っていたのは、血溜まりの中に浮かぶ金と銀の糸くずのようなものと、白い硬質の残骸。
ーーー敵の集団が自分に襲い掛かるのは、その直後だった。
「おい、リーナ!大丈夫かっ⁉︎しっかりしろ⁉︎」
「……あれ、兄様?」
「リーナ、起きたか」
リーナは、辺りを見渡した。いつも見ている、何も変わらない景色。セリカの屋敷だ。
「…わたしは何をして……」
確か、朝食を食べ終え、制服に着替えたはずだ。だが、そこから何をしたのかがどうも思い出せない。そもそも自分はなぜ制服姿でベッドに寝ているのか。
「…お前、倒れてたんだよ。やっぱり今日は休んだ方がいいんじゃないか?」
「なんかとんでもない悪夢にうなされていたみたいだし」、とグレンは心配そうに付け足す。
「…?倒れた?」
確かに、途轍もなく恐ろしい夢を見ていたような気がする。冷や汗で寝巻きはびっしょりと濡れ、すこし身体も震えていた。
しかし、どうもそれだけではない気がする。何か大切な事を忘れているような気がするのだが、思い出そうとしても何も浮かんでこないのが現状だった。
(そもそも、兄様はどうしてここに……。いや、そういえば盗聴されてるんだったわね、わたし)
おそらく、いつものように盗聴していたらいきなり倒れたものだから、慌てて戻ってきたのだろう。ありがたいことだ。
その密かな感謝には気づかず、グレンは心配そうにこちらを見ている。このままでは本当に休みにされてしまいそうだった。
「大丈夫よ。いざとなったらクラスのみんなもいるし、何かあってもそうそう深刻なことにはならないでしょう」
「それにシスティーナとルミアの2人とも久しぶりに話したいわ」と、リーナは薄く微笑みながら言う。
療養中、システィーナとルミアの2人はよくお見舞いに来てくれたが、リーナの体調を気遣ってあまり長居はしなかった。しかも最近は魔術競技祭の準備などで忙しかったようで、あまり来てくれなかった。要するに、話し足りないのだ。
グレンもそれは分かっていたのか、あまり強く反対はしなかった。
(久しぶりの登校日、本当に楽しみだわ)
「リーナ⁉︎大丈夫ですの⁉︎」
「ええ、問題ないわ。もう普通に歩けるもの」
「むしろまだ完治してないのかよ⁉︎本当に大丈夫か⁉︎」
「大丈夫よ。もう命に関わることはないもの」
「それって命に関わる傷だったって事だろ⁉︎」
「…ええと、それは」
「今更だけど、本当にありがとう!僕達が無事だったのは、リーナちゃんのおかげだよ‼︎」
「ええ、どういたしまして」
ーーーどうして、こうなったのか。
開会式が始まる前に余裕を持って学院に到着したリーナとグレン。敷地内に入り、魔術競技祭の会場に入る前にグレンと別れたリーナは、早速二組の集まる場所に向かったのだが、そこで騒ぎになった。
ーーー目的地に着いた途端、クラスメイトが押し寄せてきたのである。
自分がそこまで心配されていたという事実に、リーナは戸惑いを隠せない。
しかし、彼ら二組の生徒にしてみれば、リーナは先の事件で恐ろしいテロリストに勇敢に立ち向かっていった英雄であり、命の恩人だ。いくら事件前はシスティーナとルミア以外ほとんど交流がなかったとはいえ、皆の為に体を張り、しばらく学院に来られなくなるほどの重症を負ったともなれば心配もするというもの。実際、二組の生徒の大半は、(いくらグレンからリーナの容態を聞いているとはいえ)実際に目にするまで気が気でなかった。
しかしながら、リーナにはそれが分からない。学院に来るまでほとんど人と接してこなかったため、人の感情の機微に疎かったのだ。
生徒達に囲まれ、身動きも取れず、少し涙目になっていると、救いの女神が現れた。
「ほら、リーナが困ってるじゃない。病み上がりなんだから、無理させちゃ駄目でしょ」
「リーナも困ってるし、そろそろ放してあげよう?」
システィーナとルミア。ずっと会いたかった2人が、リーナをクラスメイトから救い出した。
クラスメイト達の輪から抜け出し、リーナ達三人は歩き回る。やがて人の少ない落ち着ける場所を見つけると、三人はそこへ座り込んだ。
「ありがとう、……助かったわ、本当に……」
「ええと、リーナ、大丈夫?」
息を切らすリーナに、心配そうに声をかけるシスティーナ。確かに歩いている途中で少し走りはしたものの、せいぜいが物陰に隠れる時くらいで、しかも小走り程度だ。現に、システィーナとルミアは息切れどころか、呼吸を乱してすらいない。
「……ええ、大丈夫よ。少し、疲れただけだから」
呼吸を整えながら答える。
(いくら何でも、虚弱過ぎよ、わたし)
以前はフェジテの街を二周ほど走り回っても平気だった筈だが、事件後のほとんどの時間をベッドの上で過ごした結果、今は歩き回るだけで疲労が滲む始末。一体どれだけ体力が落ちたのか、リーナは少し恐ろしくなった。
そして、その様子を見たルミアとシスティーナは、
((やっぱり、まだ休んでいた方が良かったんじゃ………))
と、内心で呟いた。
やがてリーナの呼吸が落ち着き、会話を始める3人。影から見守る複数のクラスメイト達の姿に、3人は気付かなかった。
ルミアちゃんに何の恨みがあるのかって?全く無い。むしろルミアちゃん推し。書いた時は頭がおかしくなっていたんだ、多分。
……読者からの反応が怖い。一気に評価が下がる自信がある。