天災兎と人喰いトカゲ 〜Armour Zone〜   作:TearDrop

9 / 18
お待たせしました。
今回はアマゾンシグマとの決着回です。
次回からはクライマックスに向けて物語が動き出します。

第1章最終回までぶっちぎるぜぇ。


EP.9 I am are broken

「いやぁ、〝あの人〟が居なかったら僕達今頃殺されてたね」

「そうですね。あの人もハルカさんと同じく、大切な者を守る為に戦ってるんでしょうね」

「束さん、もう二度とアマゾンに来ないからね……」

 

 アマゾンにやって来たハルカ達一行は、ISを纏ったシグマの反応があった場所へと向かっていた。

 途中、不思議な事に巻き込まれてしまったが、これはまたいずれ話すとしよう。ハルカ達は汗を流しながらアマゾンの奥地へと進んでいく。

 束がシグマの反応を調べていると、何処からか機械音が鳴り響く。

 ハルカ達は近くの茂みに隠れると上空に数人のIS部隊が飛翔していた。どうやら、ハルカ達を探している訳ではなかった。

 IS部隊はその場から飛び去っていくと、ハルカ達は茂みから出る。

 

「あのIS部隊……僕達を探してる訳じゃなさそうだね。もしかして、シグマを捜索してるのかな?」

「そうみたいだね。反応があった場所にシグマの反応が無くなって各地を転々としてるし……兎に角、今はシグマを探すのが先決だね」

「ですが、どうやってシグマを見つけるのですか?反応が転々としているなら場所を特定するのは難しいのでは……」

「そうだね……どうすればシグマを見つけられるんだろう……」

 

 ハルカ達はどうやってシグマを見つける事が出来るのかを考える。シグマを探し出し、助け出すことが今回の目的でもありサンプルの確保でもあった。

 しかし、アマゾンの各地を転々としているシグマを探し出すのは難しかった。せめて何処かに点在してくれさえすればその場に行けるのだが……。

 

「悩んでいても仕方ない。取り敢えず歩いてみよう。何か手がかりが見つかるかもしれない」

 

 ハルカ達はそう言うと、その場を歩き始めた。

 

「だけど、何故シグマはこんな所に?こんな所に研究所なんて無いのに……」

「でもIS部隊がいるって言うことは、亡国機業がこのアマゾンに来てるってことだよね。もしかすると束さん達が考えてる事よりヤバイことをしでかそうとしてるんじゃあ……」

「ですが、束様が言うようなヤバイことをしようとするなら、何故アマゾンに来たのでしょうか。此処は研究所も無ければ電気も通らないような場所です。そんな場所で一体何を……」

「亡国機業が何を企んでるか知らないけど、恐ろしい事なのは間違いないと思う……だからーーー」

 

 その時だった。

 遠くの方から爆発音が鳴り響き、炎と黒煙が上がっているのが見えた。ハルカ達は頷き、急いで爆発音が鳴り響いた場所まで走り出した。

 辿り着いた場所には、ISを纏ったシグマがIS部隊を襲っていた。

 ISの装甲を剥がされたIS部隊の一人がシグマの手によって腹部を貫かれ、息絶える。更には、シグマの攻撃によってIS部隊の一人一人が怯え、その場から逃げ出していく。

 その光景を見て、ハルカは静かにアマゾンズドライバーを装着した。

 

「ハルカ……」

「束とクロエは下がってて。多分無事じゃすまないけど……何とかしてみせるよ」

「ハルカさん……無茶だけはしないでくださいね」

「うん……!」

 

 ハルカは頷き、束とクロエが物陰に隠れるのを確認するとシグマに視線を向ける。

 シグマはハルカの姿を確認すると、静かに紫色の瞳をハルカに向ける。

 

「うぉおおおおっ!!アマゾンッ!!」

 

 《Omega…!Evolu…Evo…Evolution…!》

 

 アマゾンズドライバーのグリップを捻り、シグマに向かって叫ぶと緑色の炎と爆風に身を包み、アマゾンオメガへと姿を変えるハルカ。

 静かに構えるオメガとシグマ。

 それを見つめる束とクロエ。そして、オメガが走り出すとシグマに向かって跳躍し拳を放つーーが、シグマはそれを受け止め、オメガは投げ飛ばす。

 

「ぐっ……!ガァアアアッ!!」

「ーーーーーーー」

 

 オメガは立ち上がり、シグマに回し蹴りや拳を放つがシグマはそれを防ぎ、オメガに拳を叩き込む。シグマの力にISの力が加わり、オメガは吹き飛ぶ。

 

「やっぱり、一筋縄じゃ行かないみたいだ……」

「ーーーーーーー」

「何か喋ってくれないかな……何を考えてるのか分からないからさ!」

 

 オメガは跳躍し、シグマに飛びかかると拳を叩き込んでいく。しかしISのシールドバリアーによりオメガの攻撃が通らないのか、ビクともしなかった。

 シグマはオメガを掴み、地面に叩きつける。地面に叩きつけられた事によって、激痛で声も出せないオメガを何度も地面に叩きつけるシグマ。

 そして、シグマはオメガに視線を向ける。地面に倒れるオメガを見て、シグマは急に動きを止めた。

 

「ーーーーーーー」

「動きが止まった……?」

「束様、これは一体……」

「分からないけど、ハルカ!今がチャンスだよ!」

 

 束の叫びにオメガは身体を捻らせるとシグマの手から離れ、その場をバックステップで後方に下がるとシグマに向かって走り出す。

 

 《Violent Punish……!》

 

 トドメを刺さず、ISだけを破壊しようとISのコア部分を右腕の刃で切り裂こうとした時だった。シグマの瞳に視線を向けた時、不思議な感覚に陥った。

 シグマの変身者であり、ISの操縦者であろう幼き少女がオメガのーーハルカの目の前に立っていた。

 少女はハルカを見つめながら、何かを呟く。小さくて聞こえない少女の声を聞き返そうとすると、少女の瞳から涙が流れ始めた。

 少女は涙を流しながら、頭を抑えながらその場に膝をつく。頭の痛みに耐えているのか、少女は声にならない叫びを上げながらその場でのた打ち回る。

 ハルカは少女に近づこうとした時だった。少女はこんな言葉を叫んだ。

 

 ーーー誰か私を殺してッ!!

 ーーー私は壊れてるッ!!

 ーーーこれ以上、私を苦しめないでッ!!

 

 そんな言葉と共に、夢から醒めたようにハルカーーオメガはシグマのISコアの目の前で手を止めた。

 動きを止めたオメガを不思議に思ったのか、束が声を掛けた。

 

「ハルカ、どうしたの!?」

「………この子、苦しんでる」

「えっ……?」

「殺してほしいって……束、僕はどうすれーーー」

「ーーーーーーー」

 

 その瞬間シグマがオメガを薙ぎ払い、オメガを吹き飛ばした。地面を倒れ、立ち上がろうとするオメガだったが先ほどのダメージで立ち上がれずにいた。

 シグマはISの武装武器である刀を展開し、オメガに斬りかかろうと構える。

 束とクロエがオメガに駆け寄ろうとするが、シグマの刀は着実にオメガへと降りかかる。死を覚悟したオメガは身構えるーーーが、一向に刀は振り下ろされなかった。何故ならーーー

 

 

「おいおい、俺を仲間外れにするなんて寂しいじゃねえか。俺も仲間に入れてくれよ」

 

 

 ーーーアマゾンアルファが腕の刃でシグマの刀を防いでいた。

 

「雨宮……ジン……!?」

「やっぱり亡国機業も来てたみたいですね」

「亡国機業がなんでこんな所に!」

「そんな睨むなって。別に俺たちはアンタらの邪魔をしに来た訳じゃない。コイツを止めに来たんだよ」

 

 アルファは刀を振り払うとシグマを蹴り飛ばし、オメガに手を差し伸べる。オメガは一瞬躊躇するが手を振り払い自分で立ち上がる。

 

「おいおいそんな怖い顔すんなって。まぁ、分かんねえけど……」

「それより、シグマを止めに来たってどういうこと?亡国機業はシグマを操ってたんじゃ……」

「確かにあのアマゾンシグマは俺たちが死体の少女に特殊なアマゾン細胞を投与して蘇らせたアマゾンだ。そうする事で感情を持たない殺戮兵器にしようと考えたが……正直に言うと、彼奴は失敗作だ。本来ならシグマタイプは感情なんか持たない。ただ、彼奴は感情を持った。感情を持ったらいざという時に戸惑いが生じるからだ。だからーーー」

 

 オメガがアルファの肩に手を置く。その手は怒りに震えていた。

 

「もういい……もう喋らないでくれますか。それ以上喋るとーーー僕は貴方を殺さないといけない」

「ほぉ……言うようになったじゃねぇか。ならどうするんだ?アマゾンシグマを殺すのか?」

「そんなことする訳ない。僕はシグマをーーーあの子を助け出す。だから、貴方が邪魔をするなら……」

「邪魔なんかしない。彼奴を殺そうが生かそうが俺の自由にしていいってスコールに言われてるんでな……だから、今回限りはお前に力を貸してやるよ」

「別にいいですけど……僕の邪魔だけはしないでくださいね。束とクロエは下がってて」

 

 アルファとオメガはシグマの目の前に立つと、シグマに構える。二人の獣が、機械を纏った獣に立ち向かう。

 今ここに、二人の獣の共闘が始まる。オメガとアルファは走り出すとオメガは跳躍し蹴りを、アルファは拳を叩き込む。

 シグマはオメガを薙ぎ払い、アルファに刀を振り下ろすがそれを避けるアルファは回し蹴りをシグマが纏うISの装甲に叩き込む。

 少しばかり仰け反るシグマにオメガが追撃を叩き込んでいく。跳躍し連続蹴りを叩き込んでいき、膝をついたまま回転し、シグマの足を薙ぎ払う。

 アルファはオメガの肩に手を置き、シグマの腹部に飛び蹴りを放つとシグマは吹き飛ぶ。

 敵同士であるオメガとアルファの息ぴったりのコンビネーションに感嘆の声を上げる束とクロエ。

 

「凄いです……敵同士の二人があんなコンビネーションをするなんて……」

「喧嘩するほど仲が良いって言うからね。実はあの二人、仲が良いんじゃ……」

『良くないッ!!』

 

 二人の声が重なり、束にツッコむ。

 同時にシグマに視線を向けるオメガとアルファはシグマに向かって走り出す。シグマはISのブースターで飛翔し、オメガとアルファに襲いかかる。シグマはオメガを掴み、空中へと飛ぶ。

 しかしアルファは跳躍し、シグマのISのブースター部分に飛びかかると両腕の刃でブースターを破壊していく。空中でバランスを取れなくなったシグマはオメガと共に地面へと落下する。

 地面を転がるオメガはフラフラと立ち上がり、地面に着地したアルファに近づくと肩を大きく叩く。

 

「ちょっと!僕がいるのになんで真っ先にブースターを破壊するんですか!」

「仕方ないだろ。空に逃げられたら元も子もない。それに油断してたお前が悪いんじゃないのか?」

「ならそう言ってくださいよ!」

「やっぱり二人、仲良いんじゃあーーー」

『だから良くないッ!!』

「ーーーーーーー」

 

 二人がコントのようなやり取りを繰り広げているとシグマは立ち上がる。ISの装甲はボロボロになり、肩や脚の装甲は地面に落ちていく。

 

「ジンさん、あの子を助ける為にはやっぱり……」

「あぁ。アマゾンズドライバーとISコアを破壊すればシグマタイプを助けることが出来る。だが、一瞬でも打ち所を間違えれば、確実に死ぬ」

「なら、貴方のタイミングに合わせます。束、あの子を助けたいんだ。悪いけど……」

「うん、大丈夫。あの子を助ける為だもの。壊したって束さんが直して上げるよ!」

「ありがとう、束……行きますよ、ジンさん」

「ふん……あぁ、俺に合わせろよ」

 

 オメガは走り出すとシグマに飛びかかり、連続蹴りを叩き込むと地面に着地する。それと同時にアルファがグリップを捻ると構える。

 

 《Violent Slash……!》

 

 アルファは走りだし、シグマに向かって突進すると右腕の刃でシグマのISコアを切り裂くとコア部分から火花が散る。続けざまにオメガがグリップを捻る。

 

 《Violent Strike……!》

 

 オメガは走りだし、シグマのアマゾンズドライバーに向かって右足を突き出すとアマゾンズドライバーに直撃する。

 吹き飛ぶシグマは地面を転がり、フラフラと立ち上がるとISコアとドライバーが火花を散らしながら砕け散ると、シグマはそのまま地面に倒れる。

 変身が解除されると、地面に倒れているのは幼き少女が其処にいた。

 束とクロエが少女に駆け寄り、息をしていることを確認する。意識を失っているらしく、命に別状はなかった。

 オメガとアルファは変身を解除する。息を整え、視線を合わせる。

 

「ジンさん……」

「俺の仕事は終わりだ。次に会う時は敵同士だ……覚悟しておくんだな」

「ちょっと待ってください。一つだけ聞かせてください」

「……なんだ?」

「……どうして、人間をアマゾンにしようと?」

「ーーーー〝アマゾン計画〟。俺たち亡国企業によって様々な人間の遺伝子を使い、生物兵器アマゾンを造る為に起こされた計画の事だ。其処に居る篠ノ之束が作ったISに対抗する為の計画だが……お前と其処のガキやシグマタイプ以外の3,900体以上のアマゾンは廃棄処分されたがな……」

「なんでそんな計画を……!」

「計画したのは俺じゃないぞ。ーーー俺の親父が計画したんだ。まぁ、親父はその後行方不明になったがな……まぁ、阻止したきゃ阻止すればいい。その時は俺はお前を殺しにくるがな」

 

 そう言って、ジンはその場を去って行った。ハルカはそれを見届け、束達の元へ駆け寄る。その後、少女を連れてラボへ戻って行ったのだった。




如何でしたでしょうか。
少しでも楽しんで頂けたら幸いです。批評・ご意見・感想・評価・お気に入り登録をお待ちしております。

→アマゾン化計画
雨宮ジンの父親が亡国機業と共に人間の遺伝子を使い、生物兵器アマゾンを創り出そうとした計画。現在、ジンの父親は行方不明になっている為、その後の計画がどうなったかは知る由もない。

→アマゾンシグマに変身していた少女
シグマとISを纏っていた幼き少女であり、シグマタイプ。本来ならシグマタイプに感情は無い様に作られているのだが、何故少女に感情が生まれたのかは謎である。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。