天災兎と人喰いトカゲ 〜Armour Zone〜 作:TearDrop
ですが、第1章はこんな感じです。束とクロエのキャラ、これで合っているのだろうか……。
ハルカとクロエは、共に〝シグマタイプ〟が保管されている研究室へと向かっていた。
道中、血の臭いを感じたが、嫌な予感が身体の中を渦巻きながらも研究室へと歩みを進める。
しかし、何故こうも血の臭いが充満しているのか。
恐らくは〝シグマタイプ〟の暴走が考えられるが、束の通信では〝シグマタイプ〟は研究室にいると言う情報があった。
ならば何故ーー前方から何かを引きずる音が聞こえてくるのか。ハルカはクロエは一刻も早く研究室へと向かう為、急いだ。
「ーー束、研究所内をスキャンしてこっちに送ってくれないかな?」
『いいけど、どうして?』
「念の為さ。緊急事態に備えてねーーほら、目の前にIS部隊が現れたから」
『そういうこと。分かった、すぐに送信するね』
「お前達、此処で何をしている!まさかお前ら、〝アイツ〟の仲間かっ!?」
「アイツ?一体誰のこと?」
「ハルカさん。今はこの人達を相手している時間はありません。此処は私に任せて、先に行って下さい」
「でもーー」
「大丈夫です。私を信じて下さい」
「ーー分かった。後は任せたよ」
ハルカは後の事をクロエに託し、IS部隊を飛び越えて研究室へと走り出した。IS部隊がハルカを逃がし、クロエへ視線を向ける。
「貴様、私達を一人でどうにか出来ると?よく見たら丸腰じゃないか。貴様一人で、私達を相手ーー」
「ーー出来ますよ。〝私〟なら……」
次の瞬間、クロエが目を開いた。
眼球の白い部分は黒く、瞳の色は金色だった。これがハルカに見せたくない理由だった。しかし、今はそんな事はどうでもよかった。
今は、目の前のIS部隊を鎮圧するのみ。クロエはゆっくりとIS部隊へと近づいていくと、小さく、自分に聞こえる程度の声で囁いた。
「ーーワールド・パージ、起動」
◇◇◇◇
ハルカは研究室へと到着し、中へと入る。
中へ入った瞬間、血の臭いが今までよりも強くなっていく。思わず鼻を抑えるハルカは、目の前の惨状に目を背けたくなった。
身体半分、何かに食われた痕が残った死体。頭部だけが残った死体に、臓器が出たまま放置された死体など様々な残骸が残っていた。
それをハルカのバイザーから見ていた束も、思わず吐き気を催した程だった。ハルカは研究室の内部の調査を開始する。
「酷い現状だけど、此処に〝シグマタイプ〟が保管されているんだよね?」
『う、うん。そこに腕輪の反応があるから〝シグマタイプ〟はそこにいるよ。もしもの時は駆除、もしくはサンプルの回収をお願いね〜……束さん、ちょっとトイレに行ってくる』
ハルカの時はそこまで酷くない惨状だったが、目の前の惨状には流石の束も吐き気を催した。
束の通信が切れ、ハルカは研究室の内部を調査し始める。目の前のポッドに〝シグマタイプ〟が容れられていたのだろうか。
ポッドは破壊され、液体は床に垂れていた。ハルカはコンソールを操作し、メモリーを差し込む。コンソールからメモリーにデータが送信されていくのを見ていたハルカだったが、突如背後から殺気を感じた。
次の瞬間、ハルカがその場から避けるとコンソールが破壊された。
『ハ、ハルカ!今の音は何!?』
「分からない!僕も何が起こったのかーーーーなんだあれ……束、〝シグマタイプ〟は今目の前にいるんだよね?」
『うん!間違いなく〝シグマタイプ〟だーーーーなんだこれ……なんで?なんで〝IS〟の反応が目の前にあるのさ!』
ハルカの目の前にいるのは確かに〝シグマタイプ〟のアマゾンだった。
アマゾンオメガに似ているが、銀色のボディに紫の瞳が目立つ姿をしている。
さしずめ、〝アマゾンシグマ〟と言ったところだろうか。腰にはハルカが持つ〝アマゾンズドライバー〟が装着されているが、それ以上に一つだけ違うものがあるーーー〝IS〟が装着されているのだ。
「ーーーーーーー」
「っ!?ーーーアマゾンッ!!」
《Omega…!Evolu…E…Evolution…!》
とてつもない殺気を感じたハルカはすぐさまアマゾンズドライバーを装着し、グリップを捻る。
その瞬間、ハルカの身体は緑色の炎と共に爆風と熱風が発せられる。
アマゾンオメガへと変身を遂げたハルカは、目の前の〝ISを纏ったアマゾンシグマ〟に向かって走り出し拳を叩き込む。
しかし、シグマにダメージが通っていないのか、それとも〝IS〟の操縦者を守るシールドバリアーが張られているのか、ビクともしなかった。
シグマはオメガの腕を握ると、そのまま空中に投げ飛ばすと天井に叩きつけられ、地面に落下し激突するオメガ。
「ガッーーーー」
「ーーーーーー」
シグマはそのままオメガの方へゆっくりと歩みを進める。ISを纏っている為、空中を浮きながらオメガを見つめている。
そして、ゆっくりと手を差し出すーーー瞬間、オメガはその場から起き上がるとシグマを蹴り、地面に着地する。
『ハルカッ!大丈夫!?』
「分かんない……シグマを止められるかどうかも分からないけどーーーその前に駆除とサンプルの回収は難しいかも。コイツ、ISを纏ってるからダメージが通らないんだ」
『ISを装着してるってことは女性だね。でも、アマゾンズドライバーを装着しているって事はアマゾンって事だし……二つの力を合わせて使うなんて……流石の束さんもびっくりだね』
束は〝IS〟を開発する際、〝人間〟が使う事を想定してISを開発した。
しかし、〝アマゾン〟が使う事を考えてなかった。束の範疇を超えている為か、ハルカの耳元に掛けられているインカムから何かを呟いていた。
『ISをアマゾン用に改造したって事?でも、どうやって?コアを初期化したならまだしもISのコア自体を製造することは出来ないはず……あれは束さんにしか出来ないのに……まさか、アイツらが……』
「束、考えるのは後だ。今はコイツをどうにかするしかない……ウォオオッ!」
オメガはシグマの頭上に跳躍すると、拳シグマへと叩き込んでいく。しかし、ISを纏っているからかダメージが通らない。
シグマはオメガの拳を払い、右手に専用武器である一本の刀を展開し、オメガに向かって刀を振るう。
オメガはそれをなんとか避けていき、反撃の隙を伺うがシグマの攻撃は中々隙を見せない。
ふと、この場をどうやって切り抜けるかをオメガは考えていた。恐らくクロエはIS部隊に苦戦しているだろう。ならば早く助けに行かなければ。
しかし、シグマを置いて行けば必ずオメガを追ってくるだろう。どうすればいいのか考えていると、腹部を刀によって切り裂かれ、血を吹き出した。
「ぐっ……」
一か八かの勝負を掛けるオメガ。
シグマが刀を自身に向かって振り下ろそうとした瞬間にグリップを捻る。
《Violent Punish……!》
その瞬間オメガの右腕の刃が鋭利な刃となり、シグマの刀と右腕の刃がぶつかり合った瞬間、オメガはそのまま力の限りに刃を振るった。そしてシグマの刀の刀身が折れ、ISの鎧を傷つけた。
「ーーーーーー」
何が起こった理解出来ないシグマは呆然とする。
オメガはその隙にその場から走り去り、研究室を出て行く。オメガがクロエの元へ向かう途中、シグマはオメガが居ない事に気付き、オメガを追いかける。
「くっ……クロエッ!」
「ハルカさん。〝シグマタイプ〟はーーー」
「話は後!今は逃げるよ!」
オメガはクロエを抱き上げ、走り出す。
突然の事について行けないクロエを他所に、オメガは出口へと走り出す。先ほど、束に送ってもらった研究室内部の見取り図を思い出しながら走るオメガだったが突如天井が破壊され、シグマが現れた。
「ーーーISを纏ったアマゾン……?」
「くっ……クロエ、ちゃんと捕まって!」
「ーーーーーー」
オメガは出口とは違うルートへと走り出すと、それを追いかけるシグマ。
クロエは追いかけてくるシグマを見て、オメガを問いただす。
「ハルカさん!あれは一体……!」
「見ての通りアマゾンだよ。でも、ISを纏ってる時点でおかしいんだ!束は少し混乱してたし……束、外に置いてある無人機を僕が言う所に!」
『分かった!』
「あとは、僕の合図で僕達を回収して!あとそれからーーーー」
◇◇◇◇
「まさか〝シグマタイプ〟がISを纏うとはね……アンタも恐ろしい事を考えるねぇ」
「フフッ……本来なら〝人間〟にしか装着する事が出来ないISのコアを初期化し、アマゾン専用に変更するシステムを埋め込む。それにより、ISのコアはアマゾンを〝人間〟と認識する。これなら、アマゾンでもISを扱える……」
ジンとスコールはモニターでオメガとクロエがシグマから逃亡の光景を見ている中、ジンの傍に座るスコールはジンに説明していた。
「しかし、〝シグマタイプ〟にとってISは無理があったんじゃないか?コイツ、声も出せないほど苦しんでるぜ?」
「大丈夫よ。〝彼女〟は従来の〝シグマタイプ〟より強力な力を宿したアマゾン。廃棄処分する予定だった〝アマゾン〟の中に紛れ込んでいた〝彼女〟の闘争本能は絶大よ」
「へぇ〜……しかし〝オメガタイプ〟も馬鹿だな。女一人を守る為にシグマから逃げるとは……ガキが考える事はよく分かんねぇなぁ」
ジンはモニターに映るオメガを見ながら、そんな事を呟いた。まるで、面白くない映画を見ているかの様な目をしているジンだったが、その目は徐々に面白いものを見たと言わんばかりの目に変わるのだった。
◇◇◇◇
シグマから逃げるオメガとクロエ。
それを追うシグマ。獲物を必ず逃さず、喰い殺すと言わんばかりの殺気がオメガとクロエに当たる中、着々と出口とは違う場所に近づく二人。
「よしッ!束!」
『オッケー!』
オメガの合図の元、ラボに居る束が遠隔操作で無人機を操作し、研究所の壁をぶち破る。瓦礫は研究所内に崩れ落ち、外には無人機が待機していた。
「クロエッ!」
「はいっ!」
オメガがクロエを降ろすと、クロエは真っ先にISの元へ走り出す。オメガはシグマを食い止める為、シグマと戦闘を開始する。
「お前の相手は僕だッ!」
「ーーーーーー」
オメガはシグマの刀を避け、着実にIS部分に拳や蹴りを叩き込んでいく。オメガの猛攻にビクともしないシグマだったがほんの一瞬、シグマがよろけた。
その隙を狙っていたオメガはグリップを捻り、シグマへと走り出し、そしてーー
《Violent Strike……!》
「ウォオオオッ!!」
飛び蹴りを放つオメガは、シグマをその場から吹き飛ばす。流石にIS全部を破壊する事は出来なかったが、これでいい。
飛び蹴りによってシグマをバネにし、跳躍したオメガはそのままISを纏ったクロエにキャッチされ、研究所の上空へ飛翔する。
「束ッ!今だッ!」
『りょーうかいっ!』
その瞬間、研究所内のシステムをハッキングしていた束が研究所内に備え付けられていた証拠隠滅用の自爆スイッチを遠隔操作で作動させた。
爆発が起こらない場所まで二人は飛翔し、研究所が爆発する光景を目の当たりにする。
「終わりましたね……」
「うん。サンプルは確保出来なかったけど、研究資料は手に入っーーー嘘だろ……」
オメガの視線の先には、ISの装甲の数箇所だけが爆発によって破壊されたシグマがこちらを見つめていた。
「アレで死なないのか……」
「〝シグマタイプ〟……私達が思っているより、恐ろしい敵ですね……」
『二人共、シグマはISが損傷しているみたいだし、此処まで来られない。今の内にラボへ戻って来て』
「……分かった」
オメガはクロエに抱えられながら、束がいるラボへと戻っていった。それを地上から見ていたシグマを通して、ジンは笑っていた。
「あはははははっ!まさか研究所の自爆スイッチをあんな風に使うなんてなぁ……流石は俺が作った〝オメガタイプ〟……これは面白くなりそうだ」
笑っているジンを見て、スコールは笑みを浮かべる。
それはまるで、愛しい人を見る眼差しだった。
如何でしたでしょうか?
楽しんで頂けたら幸いですが、シグマの件に関しては謝罪しないといけません。ISファン、アマゾンズファンの皆様、こんな展開になってしまい申し訳ございません。
ですが、第2章まではシグマがISを纏った形で登場する予定です。
アルファはもちろん出て来ます。オメガとアルファ、シグマの戦いにご注目下さい。
それとお気に入り登録、評価をしてくださった方々、ありがとうございます。今後ともよろしくお願いします。
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