天災兎と人喰いトカゲ 〜Armour Zone〜   作:TearDrop

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新年あけましておめでとうございます。
そして、約二年ほど投稿出来ずに申し訳ありませんでした。
難航するプロット製作で中々いいアイデアが出ず、モチベーションが下がっておりました。申し訳ありません。
今年も投稿が遅れると思いますが、何卒よろしくお願いします。
そして、後書きの方にご報告がございます。


EP.17 Question

 チヒロはあの後、すぐに医療室へ運び込まれた。

 ゾウアマゾンとゾウムシアマゾンに脳髄を捕食された女性に〝食人衝動〟が起こってしまったチヒロを攻撃したイユは、マドカに詰め寄られていた。

 

「何故チヒロに攻撃した! 答えろっ!」

「落ち着けマドカッ!」

「こんな時に言い争ってる場合ではないだろう!」

「離せっ!! こいつだけは許せないっ!!」

 

 一夏と箒に抑えられるマドカは、二人の制止を振り切りイユに詰め寄る。しかしイユの無表情が気に食わなかったのか、睨みつける。

 

「イユ、なんでチヒロを攻撃したんだ? 確かにチヒロに食人衝動が起こってたなんて知らなかったけど……だけど仲間を攻撃するなんて……」

「チヒロはあの時、アマゾンに襲われた女性を捕食しようとした。だから止めた」

「止め方にも限度があるだろう!」

「マドカ、一つ聞きたい。チヒロは今まで食人衝動が起こった事はあったか?」

「──ッ! ……お前に答えるつもりはない……」

「…………そうか。ならいい」

 

 マドカの答えを聞いたイユは、そのままその場を後にした。マドカが制止の声を上げようと、イユは立ち止まる事はなかった。

 イユがその場から離れて数分。目の前の人物が視線に入り、立ち止まる。其処に居たのは──。

 

「イユ、少し話がある」

「────織斑千冬……」

 

 千冬は笑みを浮かべ、イユを連れて学園の屋上へと赴く。夕陽が照らし、二人はオレンジ色に染まる。イユは千冬に視線を移し、視線に気づいた千冬はようやっと口を開く。

 

「お前がチヒロを攻撃したのは聞いている。食人衝動を止める為とは言え、やりすぎだ。まぁ、あの場合はあぁするしかなかったのかもしれないがな……」

 

 缶コーヒーを口にする千冬は、再び言葉を紡ぐ。

 

「だが、過ぎた事を責めてもしょうがない……。イユ、これからお前は私が質問する内容に答えてもいいし、答えなくてもいい。いいな?」

「分かった……」

「よし……先ずは一つ。お前は束の指示で私達に合流して来た。それは本当だな?」

「そうだ」

「二つ目。お前はチヒロの食人衝動を止める為にチヒロに攻撃した。これは合ってるか?」

「そうだ」

「…………三つ目。お前……本当にチヒロの食人衝動を止める為に攻撃したのか?」

「…………」

「…………なら、最後の質問だ。チヒロを攻撃したのは、〝自分の意思〟か? それとも──〝ハルカからの指示〟か?」

「…………」

「……そうか。質問は終わりだ。時間を取らせてすまなかったな。今日はゆっくり休め」

「了解」

 

 イユはその場を後にし、一人屋上に残される千冬。

 夕陽を見ながらコーヒーを飲む姿は、これから残業に入るOLのようだった。

 千冬は携帯を取り出し、束に電話を掛けようと思ったが、聞いたところで彼奴が答えるわけもないかと諦めると携帯をしまい、最後の一口を飲み干す。

 夕陽はまだ、眩しかった。

 

 ◇◇◇◇

 

 イユは千冬と別れた後、そのまま自分専用の部屋へと向かっていた。IS学園の生徒の何人かがイユをジロジロと見ていたが、そんな事すら興味がないイユ。

 そのまま自室へと向かっていると、部屋の前に一人の生徒──ーセシリア・オルコットが立っていた。

 

「イユさん、少しよろしいかしら?」

「なんだ?」

「ここではアレなので……部屋の中に入れてもらっても?」

「…………」

 

 イユは何も言わず、セシリアを自室へと招き入れた。すると、セシリアはポケットから小型の端末を取り出し、イユに渡す。其処には、イユの知っている人物からのメールだった。

 

「──ーハルカか」

「えぇ。詳しい事はまだ伝えられていませんが、次の作戦では自分も合流するとの事です」

「合流? ハルカはチヒロを攻撃したのにか……いや、それは私も同じだな」

「イユさんが次の作戦に参加するかは、織斑先生の指示が無いと分かりません。幾ら私が班のリーダーと言えど、其処までの決定権はありませんから」

 

 セシリアはそう言い、イユから小型の端末を受け取るとポケットにしまう。ふと、セシリアは窓の外へ視線を向ける。陽は傾きかけ、時期に夜が訪れようとしている光景を目に焼き付けながら。

 

「……少し、お聞きしてもよろしいかしら?」

「なんだ?」

「……三年前、ハルカさんに何があったのですか?」

「──────」

 

 セシリアの問いに、イユは答える事が出来なかった。

 言っていいのか、分からない。セシリアはハルカを信頼している。だが、IS学園に入学する前の晩、ハルカと出会った時の事は今でも忘れない。

 久しぶりに会ったハルカは、何処か人が変わったかのような雰囲気に身を包んでいた。何があったのか聞く事も出来なかった。

 ハルカとは少しばかりの世間話とIS学園の事を話しただけだったが、別れ際に一言。

 

『────チヒロをよろしくね、セシリア』

 

 最初は良く分からなかったセシリアは、チヒロと会うまでその言葉の意味を考えていた。いや、会ってからも考えていた。

 チヒロを守ってほしいのか、それとも駆除してほしいのか未だに分からない。だが、別れ際の時のハルカの表情は今までのハルカと同じ、優しい表情だったのは確かである。

 

「……悪いが、教える事は出来ない。それは直接ハルカに聞いた方が早いと思うぞ」

「……そうですわね。そうする事にしますわ」

 

 二人は、共に月に視線を移す。

 ────夜が訪れる。

 

 ◇◇◇◇

 

 深夜。

 人が通らない裏路地にゾウムシアマゾンは隠れていた。

 ゾウムシアマゾンは人間の姿に戻ると一人の男性へと姿を変える。男性はその場に座り込むと、息を整える。

 その時だった。

 裏路地に足音が響き渡る。男性は警戒して周りを見渡すが、後ろを振り向いた時には既に遅かった。

 首を切り裂かれ、地面に首が落ちていた。

 悲鳴を上げる間もなく、男性は形を残したまま絶命した。

 形を残したままの男性を見た襲撃者は舌打ちをし、自身の後ろにいる人物に声をかけた。

 

「おい、代わりに殺ってやったんだ。情報は渡してもらうぞ」

 

 その場に月明かりが差し込み、襲撃者を照らした。

 そこに居たのは、オータム。

 かつてハルカ達と死闘を繰り広げた亡国機業のメンバーであった。

 そして、オータムの目の前に居たのは──。

 

「アイツは……チヒロはどこに居る、()()()()()()

 

 ──ハルカだった。




いかがでしたでしょうか?
よろしければ、ご意見・感想をよろしくお願いします。

そして前書きにも書きましたがご報告がございます。
この天災兎と人喰いトカゲですが只今展開している第二章が終了次第、第三章に突入し、第三章が終わったら次回作を書きたいと思っております。まだどういった作品にしようか検討中ですが、決まり次第何かしらの形で皆さんにお知らせできたらいいなと思っております。

それでは、次回お会いしましょう。

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